工業用ラジエーター

工業用ラジエーターとは

工業用ラジエーターとは、主に産業用機械用に開発されたラジエーターです。

私たちの日常生活で最も身近なものに、エンジンを使った車のラジエーターがあります。自動車用のラジエーターはガソリンエンジンやディーゼルエンジンで発生した熱を大気中に放出し、エンジンが壊れるのを防ぐ役割を担うものです。

工業用ラジエーターは、さまざまな産業用機械において発生した熱を放出するために使われます。エンジンのような内燃機関において必須となる装置です。

工業用ラジエーターの使用用途

1. 特殊車両

工業用ラジエーターは、建設現場などで活躍する特殊車両に使用されています。特殊車両にはトラッククレーン車、ブルドーザー、油圧ショベル、バックホー、ダンプカーなどがあります。

2. 工作機械

工作機械にも工業用ラジエーターが必要です。旋盤、フライス盤、マシニングセンタなどは電気で駆動しますがモーターも発熱するため、工業用ラジエータによる冷却が行われています。

その他、非常用発電装置、業務用空調機器にも工業用ラジエーターが取り付けられています。

工業用ラジエーターの原理

工業用ラジエーターには空冷式と水冷式がありますが、いずれも熱伝導の現象を利用しています。熱伝導とは物体の内部に温度の差がある場合、熱が移動する現象のことです。熱は物体の自由電子が移動したり、原子や分子が振動することによって伝わります。

また、熱は高い温度から低い温度へと伝わるのが特徴です。物体内部の熱の伝わりやすさは、材質によって異なります。物体の熱の伝わりやすさを表す物理量が熱伝導率 (W/(m・K) ) です。

金属では銅やアルミニウムの熱伝導率が高く、それぞれ393W/ (m・K) 、222W/ (m・K) です。金属でもステンレスは熱を伝えにくく、熱伝導率は16.3 W/ (m・K) (SUS301の場合) しかありません。工業用ラジエーターは熱源に対して熱伝導率の高い物質を接触させ、さらに表面積が大きくなる形状によって大気との接触面積を稼ぐことで、熱を放出しやすくしています。

また、熱の伝わりやすさは一般的に気体、液体、固体の順番です。固体で冷却するものはヒートシンクなどと呼ばれています。ラジエーターは液体、気体の熱伝導を利用するのが一般的です。なお熱伝導以外に熱が移動する現象には、対流と熱輻射があります。

工業用ラジエーターの種類

工業用ラジエーターには構造に応じていくつかの種類に分類できます。ここでは代表的な3つのタイプについて説明します。

1. 多管式 (シェル&チューブ式)

多管式は液体から液体に熱を伝える場合に用いられる方式です。円筒形の本体の中に細い管を使って熱を持った液体を通し、円筒内の液体との温度差を利用して放熱させます。

2. プレート式

プレート式は金属を例えば波形などにプレス成形し、一定の間隔を確保しながら積層しています。熱を持った気体や液体がプレートと接触することによって、熱の移動が行われます。工場では排熱利用や熱回収、オフィスビルなど大型の建物の空調機器にも多く利用されている方式です。

3. フィンチューブ式

フィンチューブ式は、管に伝熱板を加えることによって表面積を増やしているのが特徴です。気体と液体との熱移動に利用され、管の内部に水、蒸気、油などの液体を流し、空気やガスなどと熱を交換します。

工業用ラジエーターのその他情報

熱交換器との違い

ラジエーターと同様の働きをするものに熱交換器があります。熱交換器とは、高い熱と低い熱とを交換するものです。ラジエーターも熱交換器に含まれます。

一般的にラジエーターは車の部品として広く認知されており、特に内燃機関の冷却を冷却水 (クーラント) を用いて冷却するものに対して呼ぶ場合が多いです。

ただし、ラジエーターの動詞である「radiate」は放出する、射出するといった意味があり、熱が高いものから低いものへと移動する現象を利用するものはラジエーターと一括りにすることができます。