シンチレーション検出器

シンチレーション検出器とは

シンチレーション検出器とは、シンチレータと呼ばれる荷電粒子が通過する時に起こるシンチレーション光を、光検出器を用いて可視化する装置です。

放射線測定器の1つで、私たちの目には見えない放射線を可視化するために使用されます。
シンチレーション検出器には使われるシンチレータには種類があり、無機、有機、固体、液体などさまざまです。

また、放射線の測定にはシンチレーター検出器以外にGM計数管式サーベイメータ、電離箱などの計測器があります。

シンチレーション検出器の使用用途

シンチレーション検出器は幅広い分野で使われているデバイスです。

1. 石油を含む鉱物資源の調査

石油層の周囲には放射性同位体を含んだ層が存在している場合が多く、石油の掘削位置を決定することに役立っています。

2. 空港の荷物検査

セキュリティ分野においては、空港の手荷物検査機です。原理はX線レントゲンと同じ透過撮像であり、手荷物に放射線を照射すると、荷物がある部分の放射線は弱く、荷物のない部分の放射線強度が高くなることを利用しています。

3. PET

病院で利用されるPET (Positron Emission Tomography) は、癌細胞の発見に利用される装置です。癌細胞は正常細胞よりも多くのブドウ糖を消費するため、微量の放射線を混ぜたブドウ糖を患者に投与することによって、癌細胞を見つけることができます。

4. その他

食品の検査装置、核融合炉といった高エネルギー物理学分野、電子部品や文化遺産の非破壊検査装置、地雷探査機にもシンチレーション検出器が用いられています。

シンチレーション検出器の原理

シンチレーション検出器は、大きくシンチレータと受光素子の2つで構成されている装置です。まずシンチレータでは入射したX線を吸収し、X線のエネルギーに比例した数の可視光と紫外線を放出します。

受光素子は光電子倍増管とも呼ばれ、電子を光に変換して倍増させる部位です。シンチレータで発生した光を電子に変換する光電面と、変換した電子を増幅する電子増倍部から構成されています。

光電面はアルカリ金属が主な成分であり、ガラスの窓を通してシンチレーション光を受けます。光電面が変換した電子は高電圧がかけられた電子増倍部に作られた電場によって増幅されます。この増幅された電子が電気信号となって、X線の存在がわかる仕組みです。

シンチレーション検出器の種類

シンチレーション検出器はシンチレータの種類によって分けられ、シンチレータは対象とする放射線の種類や使用目的によって選ばれます。

1. 無機シンチレータ

無機シンチレータはγ線、α線、中性子などの検出に使われます。代表的なものにNal (Tl) 、ヨウ化セシウム結晶 (Csl)、酸硫化ガドリニウム (GOS) 、ケイ酸ガドリニウム結晶 (GSO) などの無機結晶が使われます。無機結晶のシンチレータは発光量が大きく、エネルギー分解能が高いことなどが特徴です。X線撮像装置、食品検査装置、荷物検査装置、医療用PET、車体検査装置、X線衛星などに用いられています。

2. 有機シンチレータ

有機結晶を用いた有機シンチレータは無機シンチレータに比べると、応答性が良いのが特徴です。代表的な物質はアントラセン、スチルベンなどがあります。

3. 有機液体シンチレータ

有機液体シンチレータは、強い放射線が照射されても損傷を受けにくいのが特徴です。ナフタレンやトルエン、キシレンといった有機溶媒にPPO (ジフェニルオキサゾール) などの有機シンチレータが溶解されています。

4. プラスチックシンチレータ

プラスチックシンチレータは、プラスチックに複数種類の有機発光物質を溶け込ませたものです。特徴は取り扱いがしやすく、加工性も良好であることが挙げられます。α線やβ線の検出に適しています。

5. 気体シンチレータ

気体シンチレータには、高純度のキセノン、ヘリウムなどが用いられます。