ガラスセラミックスとは
ガラスセラミックスとは、特殊な組成のガラスを再加熱処理し、ガラス内部に結晶を均一に析出させたものです。
結晶化ガラスとも呼ばれます。素材表面は滑らかで光沢を帯びており、色は、透明・乳白色・模様を焼き付けたものなどさまざまです。通常のガラスは非結晶質ですが、ガラスセラミックスはガラスの内部に微細な結晶が多数析出した複合体となっています。強度や耐熱性などの点で通常のガラスよりも優れており、様々な産業において幅広く活用されている素材です。
ガラスセラミックスの使用用途
ガラスセラミックスが使用される場面は非常に幅広いです。日用品では、耐熱食器や、電子レンジのターンテーブル、トレイなどに用いられます。また、IHクッキングヒーターやガス調理器のトッププレート用ガラスや、ストーブや暖炉などの前面窓、オーブントースターの前面ガラスなど加熱機器にも多く採用されています。
また、ガラスセラミックスは火災における高温に強く、放水活動による急冷にも割れないと考えられており、防災の上でも有効な素材です。住宅だけではなく、交通施設、教育施設などの人が多く集まる施設の防火ガラス・防火窓としても広く利用されています。
その他、各種保護カバー (カメラ保護カバー、照明器具カバー、各種測定器のメーターカバー、モバイル機器カバー) 、理化学用の耐熱材、人工衛星の材料、精密軸受、絶縁材、低温封着材なども用途の一つです。また、高出力 LED・LD 用基板としても用いられている素材でもあります。ガラスセラミックス基板は、主に車載分野、屋内外照明分野、ディスプレイ分野、医療分野などで活用されている部品です。
ガラスセラミックスの原理
ガラスセラミックスは特殊組成のガラスを成形したのち、再加熱処理を施すことによって微細な結晶を析出させたものです。微結晶体であるために表面からの亀裂が進みにくく、一般に通常のガラスよりも強度が高い性質です。
結晶の光学的性質を利用して、特有の光学特性をもつガラスセラミックスも存在します。ガラスセラミックスの特性は結晶の種類、大きさや量、残存ガラス相などに左右され、これらは元々のガラスの組成と再加熱条件によって決定されます。
なお、ガラスセラミックスは珪酸塩ガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラスなどのガラスに結晶核形成剤が添加された組成をしています。主な核形成剤は、金・銀・銅・白金などの貴金属や酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化物、酸化バナジウム(III)、酸化ニッケル、酸化クロム(III)などです。
ガラスセラミックスの特徴
ガラスセラミックスの代表的な特徴の一つが、急激な温度変化 (サーマルショック) に強いことです。通常のガラスを急激に加熱すると、加熱された面が膨張する一方で、外面はすぐに熱が伝わらずに膨張しないため、すぐに割れてしまいます。一方、ガラスセラミックスはガラス内に結晶が含有されているため、ほとんど膨張しません。このため、サーマルショックにも割れずに耐えることが可能です。
ガラスセラミックスの種類
ガラスセラミックスは、前述の通り組成や結晶構造によって性質が左右されます。組成や製造方法によって熱膨張係数を調整することができるため、熱膨張係数をゼロまたは負にするように調製した温度の急変に耐える耐熱衝撃性の高い製品も販売されています。
ガラスセラミックスの中でも特に耐熱性の高いものは、超耐熱結晶化ガラスと呼ばれる素材です。耐熱衝撃性と、反復加熱に対する耐性を備えており、堅固なものでは800℃からの急冷にも割れずに耐えることが可能です。また、LED用基板素材では、紫外線から赤外線領域までの幅広い波長の高出力化に最適化されています。様々な用途で使用される素材であるため、使用する際は自分の用途にあった製品を選択することが必要です。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiep1985/4/1/4_1_39/_pdf/-char/ja
https://www.neg.co.jp/rd/topics/product-glassceramic/
https://kotobank.jp/word/%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-47141