メトキシベンゼン

メトキシベンゼンとは

メトキシベンゼンの基本情報

図1. メトキシベンゼンの基本情報

メトキシベンゼン (英: methoxybenzene)とは、化学式がC7H8Oで表される有機化合物です。

メチルフェニルエーテル (英: methyl phenyl ether) やアニソール (英: anisole) とも呼ばれているエーテルです。昆虫のフェロモンの一種で、アニスの実のような甘い香りを有します。

メトキシベンゼンは、直射日光、高温、熱、火花、炎、静電気などを避けて、換気が良く涼しい場所に密閉して保管する必要があります。強酸化剤との混触も避けるべきです。労働安全衛生法で危険物・引火性の物に該当し、消防法では「第4類危険物・第二石油類 (非水溶性液体) 」に指定されています。

メトキシベンゼンの使用用途

メトキシベンゼンは、有機溶剤、合成中間体、駆虫剤、石鹸、工業用香料など、安価な香料の原料として用いられています。

メトキシベンゼンはオルト・パラ配向の大きな反応性を示すため、メトキシベンゼンと無水酢酸と反応させると、p-メトキシアセトフェノンが得られます。p-メトキシアセトフェノンは、花の香りの香料やフレーバーとして利用可能です。

このほか、メトキシベンゼンと五硫化二リンを反応させることで、ローソン試薬 (英: Lawesson’s reagent) が得られます。ローソン試薬とは、有機化合物上の酸素原子を硫黄原子へ交換可能な硫化剤です。化学式は[(CH3OC6H4)PS2]2で表されます。

メトキシベンゼンの性質

メトキシベンゼンの融点は-37.5°Cで、沸点は155.5°Cで、常温で無色の快い芳香を有する液体です。エタノールやジエチルエーテルによく溶解しますが、水にほとんど溶けません。

ラットでの半数致死量 (LD50) は3,700mg/kgで、毒性は比較的ありません。引火点は52°Cと低く、主な危険性は可燃性です。

メトキシベンゼンは電子供与性のメトキシ基の共鳴効果によって、ベンゼン環の電子密度が高いです。そのため求電子的反応では、オルト-パラ配向性 (英: ortho-para orientation) を示します。ハメットの置換基定数 (英: Hammett constant) は、パラ効果が−0.268で、メタ効果が+0.115です。

メトキシベンゼンの構造

メトキシベンゼンはベンゼンの水素1個を、メトキシ基 (–OCH3) に置き換えた構造を有しています。すなわちメチル基 (-CH3) とフェニル基 (-C6H5) が、エーテル (-O-) によって結合した構造です。

メトキシベンゼンの示性式はC6H5OCH3と表されます。モル質量は108.14g/molで、密度は0.995g/mLです。

メトキシベンゼンのその他情報

1. メトキシベンゼンの合成法

メトキシベンゼンの合成

図2. メトキシベンゼンの合成

メトキシベンゼンは、硫酸ジメチルフェノールをアルカリ溶液中で反応させて合成します。

ウィリアムソン合成 (英: Williamson synthesis) によって、ナトリウムフェノキシドとハロゲン化メチルの反応でも合成可能です。

2. メトキシベンゼンの反応

メトキシベンゼンの反応

図3. メトキシベンゼンの反応

メトキシベンゼンは無水酢酸と反応すると、p-メトキシアセトフェノンを合成可能です。アセトフェノンとは異なり、p-メトキシアセトフェノンはメトキシ基の影響によって、さらにアセチル化が進行します。

メトキシベンゼンは、金属カルボニルとπ錯体を容易に形成します。具体例はCr(η6-メトキシベンゼン)(CO)3です。

五硫化二リン (P4S10) とメトキシベンゼンの反応によって、ローソン試薬が得られます。メトキシベンゼンのエーテル結合は非常に安定ですが、ヨウ化水素酸によってメチル基を除去可能です。メトキシベンゼンのバーチ還元 (英: Birch reduction) によって、1-メトキシシクロヘキサ-1,4-ジエンが得られます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/100-66-3.html

メチルメルカプタン

メチルメルカプタンとは

メチルメルカプタン (CH3SH) とは、「メルカプトメタン」や「メタンチオール」などとも呼ばれているチオールの1種です。

融点-123℃、沸点5.95℃で、常温において無色の腐敗したキャベツのような臭気のする気体です。また、メチルメルカプタンは、引火性を有し、加熱分解とともに有毒なSOxガスを発生させます。

労働安全衛生法において「名称等を表示すべき危険有害物」「名称等を通知すべき危険有害物」「リスクアセスメントを実施すべき危険有害物」および危険物・可燃性のガスに指定されています。このほか、毒物および劇物取締法における毒物です。なお、メチルメルカプタンは、口臭や屁に含まれる悪臭の成分の1つです。

メチルメルカプタンの使用用途

メチルメルカプタンは、メチオニンの原料として用いられています。メチオニンは、必須アミノ酸の1つであり、体内においてグルタチオンタウリンに変換されます。これらによるコレステロールの分解、あるいは免疫の増強作用が報告されています。

また、プラスチックやメチルチオエーテル触媒活性調整剤、有機合成中間体、反応促進剤、医薬品、殺虫剤、ジェット燃料、ガス検知器の試薬に用いられています。このほか、ガスが漏れたことを感知しやすくするために、ガス付臭剤として無臭のガスに添加される場合もあります。

メチルメルカプタンの性質

メチルメルカプタンは、有機硫黄化合物の1種で、特徴的な臭いを持つ物質です。メチルメルカプタンは無色の液体であり、沸点は6°C、融点は-123°Cです。水やエタノール、エーテルなどの極性溶媒に良好に溶ける一方、非極性溶媒には溶けにくい傾向があります。

メチルメルカプタンは還元性を持ち、空気中の酸素と反応して酸化されることがあります。また、酸と反応してメチルメルカプタン塩を生成することもあります。非常に強烈な不快な臭いを持ち、悪臭の原因物質です。この臭いは、カビや腐敗した食物、腐敗したタンパク質などからも発生することがあります。

また、他の有機化合物と反応して、硫黄化合物やチオエーテルなどの化合物を生成することがあります。また、ハロゲンとも反応し、ハロゲン化物を生成します。

これらの性質から、メチルメルカプタンは、ゴムやプラスチックの硫黄化剤、合成化学の中間体、医薬品の合成や、ガス漏れ検出用の添加剤などとして利用されます。

メチルメルカプタンの構造

メチルメルカプタンは、有機硫黄化合物の1種であり、メタン分子から1つの水素原子が硫黄原子に置換された構造をしています。この構造は、四面体構造をとっています。

チオール基はヒドロキシル基に比べて反応性が高く、特有の強烈な臭いがあります。メチルメルカプタンは、このチオール基を持つ最も単純な構造の化合物であり、他の有機硫黄化合物の基本構造です。

メチルメルカプタンのその他情報

メチルメルカプタン の製造方法

メチルメルカプタンの製造方法には、いくつかの方法が存在しますが、特に一般的なものは以下の2つです。

1. チオアセトンを原料に用いる反応
この方法では、チオアセトンと、強力な還元剤である水素化アルミニウムリチウムを用いて、チオアセトンのカルボニル基を還元してチオール基に変換することでメチルメルカプタンを生成します。

2. チオ尿素とメチルハロゲン化物を用いる反応
ヨードメタンなどのメチルハロゲン化物を用いる合成法です。この反応は、主に塩基性条件下で行われ、メチルハロゲン化物のハロゲン原子がチオ尿素からの硫黄原子に置換されることでメチルメルカプタンが得られます。

 

これらの方法のうち、特に2つ目の方法は、原料化合物が比較的容易に入手でき、反応条件が簡単であるため、実験室レベルでも工業的にもよく用いられます。原料化合物が比較的容易に入手でき、反応条件が簡単であるためです。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/74-93-1.html

メチルヘスペリジン

メチルヘスペリジンとは

メチルヘスペリジン (英: Methyl hesperidin) とは、ビタミンPの主成分として知られるヘスペリジンを水に可溶化させた化合物です。

IUPAC名は、(2S) -2- (3,4-ジメトキシフェニル) -5-ヒドロキシ-7- { [ (2S,3R,4S,5S,6R) -3,4,5-トリヒドロキシ-6- ( { [ (2R,3R,4R,5R,6S) -3,4,5-トリヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル] オキシ} メチル) オキサン-2-イル] オキシ} -3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-オン (英: (2S) -2- (3,4-dimethoxyphenyl) -5-hydroxy-7- [ (2S,3R,4S,5S,6R) -3,4,5-trihydroxy-6- [ [ (2R,3R,4R,5R,6S) -3,4,5-trihydroxy-6-methyloxan-2-yl] oxymethyl] oxan-2-yl] oxy-2,3-dihydrochromen-4-one) です。

メチルヘスペリジンの使用用途

ヘスペリジンは、フラボノイド類に分類されるポリフェノールの1つで、オレンジやレモンなどの柑橘類に多く含まれています。ビタミンCの効果を持続させるあるいは毛細血管を強化し、血行を促進するなどの生理作用が知られており、さらには抗酸化作用や抗アレルギー作用などにも関与しているとの報告もあります。

有用化合物であるにもかかわらず、ヘスペリジンは水にほとんど溶けないため使用が困難とされていましたが、メチルヘスペリジンへと誘導することでさまざまな製品への応用が可能になりました。

1. 化粧品添加剤

メチルヘスペリジンは、メラニン合成の抑制や抗糖化作用、血流促進などが期待され、アンチエイジング向けの化粧品添加剤として利用されます。真皮コラーゲンの硬化によりもたらされる肌のハリの低下をはじめ、真皮や角層の黄色化および肌の透明感の喪失は、皮膚たんぱく質の糖化が原因の1つです。

メチルヘスペリジンの抗糖化作用により、老化の原因の1つとされる皮膚のタンパク質の糖化の抑制が期待されます。また、経口または経皮でビタミンCと共に摂取すると、各々の効果が相乗的に促進されるとの報告もあります。

2. その他

この他、栄養機能食品や栄養補助食品 (サプリメント) の添加物としても用いられています。

メチルヘスペリジンの性質

化学式はC29H36O15で表され、分子量は624.59です。CAS番号は11013-97-1、化審法番号は9-1458で登録されています。

常温で淡黄色~褐色の結晶性固体です。水やジメチルスルホキシドによく溶けますが、エタノールには溶けません。

メチルヘスペリジンのその他情報

1. メチルヘスペリジンの製造法

ヘスペリジンに対し、硫酸ジメチルでメチル化した後、脱塩装置により精製、凍結乾燥を経て結晶として得られます。

2. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱い時の対策
酸化剤は、メチルヘスペリジンの混触危険物質です。取り扱い時および保管時の接触を避けてください。取り扱う際は、保護手袋と保護メガネ、袖の長い保護衣を着用して皮膚や眼との接触を避けます。

必要に応じ、防じんマスクや保護面を使用してください。ドラフトチャンバー内で使用し、使用後は手や顔などをよく洗います。

火災の場合
燃焼による分解で、二酸化炭素や一酸化炭素などの刺激性で有毒なガスと蒸気を放出するおそれがあります。消火には、粉末消火剤や泡消火剤、水噴霧、二酸化炭素を用いてください。消火作業者は、必ず保護具を着用します。

保管する場合
容器を密閉し、直射日光を避けた涼しい場所に保管してください。保管場所は施錠する必要があります。

参考文献
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/M0338#docomentsSectionPDP
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/5284419

メタクリル酸グリシジル

メタクリル酸グリシジルとは

メタクリル酸グリシジルとは、別名で「メタクリル酸2,3-エポキシプロピル」、略称で「GMA」といわれる有機化合物です。

融点が-41.5℃、沸点が189℃、引火点が 76.0℃ (密閉式) または84.0℃ (開放式) であり、発火点が 421℃です。常温において無色透明の液体で、特有の刺激臭を有します。

消防法により第4類引火性液体、第三石油類非水溶性液体に指定されています。化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) により第1種指定化学物質に指定されています。

また、労働安全衛生法では、変異原性が認められた既存化学物質です。消防法によって第4類危険物・第三石油類(非水溶性液体)に指定されています。さらに、毒物および劇物取締法における劇物です。

メタクリル酸グリシジルは、例えばメタクリル酸ナトリウムとエピクロロヒドリンを反応させて合成します。なお、メタクリル酸グリシジルからメチル基 (-CH3) が取れた分子構造の化合物は、アクリル酸グリシジルです。

メタクリル酸グリシジルの使用用途

メタクリル酸グリシジルは、他の重合性化合物と重合反応させるための用途で使用されます。メタクリル酸グリシジルは、例えばスチレン塩化ビニルアクリル酸メタクリル酸アクリロニトリルなどの各種モノマーと容易に共重合する物質です。また、メタクリル酸グリシジルは、共重合した後でも分子中にグリシジル基 (エポキシ基) を有するため、触媒の存在下で開環して架橋反応などを起こします。

上記の性質を利用して、アクリル粉体塗料または溶剤型アクリル塗料などの塗装用樹脂の原料として用いられます。また、エポキシ樹脂接着剤の希釈剤、塩化ビニルの安定剤、イオン交換樹脂、印刷インキのバインダーなどの各原料としても有用です。

メタクリル酸グリシジルを単独で重合したポリマーは、工業的にはあまり利用されません。メタクリル酸グリシジルと他のモノマーとを共重合させたポリマーは、グリシジル基の反応性を利用して、各種の用途で使用されます。

メタクリル酸グリシジルの性質

メタクリル酸グリシジルは、異なる反応性を有しています。重合反応できる部分と開環反応できる部分の両方を有するため、重合反応によってメタクリル酸グリシジルを分子内に導入したポリマーに開環反応させる目的で使用されます。例えば、重合反応によって得たアクリル系ポリマーに反応性 (開環反応性) を付与するために有用です。

重合反応によって高分子化してアクリル系ポリマーの一部となります。高分子化したアクリル系ポリマーのグリシジル基は、さらに他の化合物のヒドロキシ基 (-OH) などと結合できます。

このように、メタクリル酸グリシジルは、重合反応を経て高分子化した後、反応性を有するアクリル系ポリマーの一部となります。

メタクリル酸グリシジルの構造

メタクリル酸グリシジルは、メタクリル酸の-COOH基に対してグリシジルアルコールの-OH基がエステル結合した分子構造を有します。すなわち、メタクリル酸グリシジルの分子構造は、メタクリル酸由来の重合性二重結合と、グリシジルアルコール由来の環状エーテル (3員環) の両方を有します。

また、分子中にメタクリル酸部分とグリシジル部分 (グリシジル基) の両方を有する化合物です。メタクリル酸部分は二重結合を有するため、ラジカル重合開始剤によって重合反応して高分子化できます。グリシジル基は、開環反応によって他の化合物のヒドロキシ基 (-OH) などと容易に結合します。

メタクリル酸グリシジルのその他情報

メタクリル酸グリシジルのグリシジル基

メタクリル酸グリシジル中のグリシジル基は、エポキシ基と類似する構造を有します。グリシジル基とエポキシ基の違いは、グリシジル基の方が炭素数が1つ多い点です。

エポキシ基は、2つの炭素 (C) と1つの酸素 (O) で三角形を作っています。一方、グリシジル基は、この三角形中の1つの炭素 (C) に対してさらに1つの炭素 (C) が結合した構造を有します。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/106-91-2.html

メタアルデヒド

メタアルデヒドとは

メタアルデヒド (英: Metaldehyde) は、有機化合物の一種に分類される物質で、アセトアルデヒトがアセタール化した4量体です。

CAS登録番号は、108-62-3です。別名にはIUPAC名である「2,4,6,8-テトラメチル-1,3,5,7-テトラオキソカン」の他、慣用名である「メタアセトアルデヒド」の名称があります。

毒物および劇物取締法において劇物に指定されており、消防法においては指定可燃物 (可燃性固体) として扱われている物質です。

メタアルデヒドの使用用途

メタアルデヒドの主な使用用途は、殺虫剤です。穀物粉などと混合したペレット状の薬剤あるいは水和剤として、ナメクジやカタツムリ駆除剤に用いられています。

これは、メタアルデヒドが、ナメクジ類、カタツムリ類や淡水性リンゴガイ科巻貝などに対して、経口吸収及び腹足部からの 接触吸収により、麻痺を誘発するとともに粘液分泌を促して収縮させる物質であるためです。また、他剤と混合してダンゴムシやコオロギの駆除剤にも用いられています。

それ以外の用途には、キャンプなどで使用する携帯用固形燃料の材料などがあります。

メタアルデヒドの性質

メタアルデヒドの基本情報

図1. メタアルデヒドの基本情報

メタアルデヒドは分子式C8H16O4、分子量176.2、融点246.2℃、沸点 (昇華点) 112℃であり、常温での外観は白色固体です。

メントール臭とされる独特の臭気があります。密度は1.27g/mLであり、引火点は36℃です。可燃性の物質として取り扱われます。水への溶解度は、0.222g/Lであり、トルエン、メタノール、ベンゼン、クロロホルムに容易に溶解する物質です。

メタアルデヒドの種類

メタアルデヒドの純粋な物質は、主に研究開発用試薬製品として販売されています。販売されている物質は、主に分子式(CH3CHO)nの重合体として扱われ、CAS登録番号は9002-91-9です。

容量の種類には、25g、500g、1kgなどがあり、実験室で取り扱いやすい容量での提供が中心です。冷蔵保管が必要な試薬製品として扱われる場合と、室温で保管可能とされる場合があります。純粋な物質以外では、ナメクジ、カタツムリ駆除剤や固形燃料などに含有され、販売されている物質です。

メタアルデヒドのその他情報

1. メタアルデヒドの合成法

メタアルデヒドの合成

 図2. メタアルデヒドの合成

メタアルデヒドの合成方法には、0℃でアセトアルデヒドに臭化カルシウムと臭化水素を作用させる方法のほか、アセトアルデヒドに塩化カルシウム塩酸を反応させる方法があります。

2. メタアルデヒドの化学反応

パラアルデヒドの構造

図3. パラアルデヒドの構造

メタアルデヒドは、アセトアルデヒドの4量体で分子式 (C2H4O)4 の無色針状晶ですが、徐々にアセトアルデヒドの3量体であるパラアルデヒドに転換します。そのため、通常は両者の混合物となっている物質です。また、メタアルデヒドを加熱すると、80℃で徐々に分解をはじめ刺激性の煙やガスを発生します。

3. 重合度nのメタアルデヒドの基本情報

市販されているメタアルデヒドは、分子式(CH3CHO)nの重合体として取り扱われる場合が多くあります (CAS登録番号9002-91-9) 。この物質に関しては、融点246.2℃の白色の結晶性粉末として取り扱われます。

引火点は55℃であり、先述の物質と同様に可燃性固体です。熱クロロホルムに溶解し、水、エタノール及びアセトンにほとんど溶けないとされています。

4. メタアルデヒドの有害性情報

メタアルデヒドは、人体にとって経口摂取による毒性がある他、眼刺激、神経系の障害などの有害性が報告されています。また、長期又は反復の曝露によって神経系、肝臓、精巣の障害を起こす可能性がある物質です。

メタアルデヒドを誤飲すると、胃の中でアルデヒドや酸に変化し、ヨダレなどの軽い症状から嘔吐、下痢、高熱や痙攣などの重篤な症状を引き起こします。

これらの理由により、メタアルデヒドは毒物及び劇物取締法では劇物に指定されている物質です。法令を遵守して正しく取り扱うことが必要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/108-62-3.html

マレイミド

マレイミドとは

マレイミドとは、マレイン酸にカルボニル基が2つ結合した構造を持つ有機化合物です。

化学式はC4H3NO2で表され、常温常圧で白色の粉末状固体です。水に可溶で、エタノールやその他の有機溶媒に対しても可溶です。

マレインアミドを塩化亜鉛と混合し、加熱するなどの方法によって得られます。さまざまな誘導体が存在し、樹脂や架橋剤として使用されています。代表的な誘導体は、N-フェニルマレイミドです。

N-フェニルマレイミドなどの一部のマレイミド誘導体は、「毒物及び劇物取締法で毒物類・毒物」に指定されています。

マレイミドの使用用途

マレイミドは、生物学的研究において、タンパク質やペプチドの修飾に利用されます。特に、チオール基を持つシステイン残基と反応することで、タンパク質やペプチドに共有結合を形成可能です。

同様に、システイン残基との反応性を利用して高分子やゲルの架橋剤としても利用されています。また、マレイミド誘導体の形で利用される場合も多数あります。

マレイミドの性質

マレイミドは無色の結晶性固体で、熱に弱く、加熱すると分解します。水にはほとんど溶けませんが、アルコールやアセトンなどの極性溶媒には溶けやすく、非極性溶媒によく溶けます。また、紫外可視光スペクトルに吸収帯を持ちます。

マレイミドは、チオール基を持つ化合物との反応性が高く、マイケル付加反応やチオール-エン反応を経由して、共有結合を形成します。この反応は、マイケル付加と呼ばれる1,4-付加反応の1種です。速やかに進行し安定であるため、バイオコンジュゲート研究やタンパク質修飾に広く利用されています。

これらの性質から、マレイミドは生物学的研究や有機合成化学などの幅広い分野で利用されています。マレイミドを取り扱う際は、吸入や皮膚接触、目への接触を避けるよう注意し、適切な保護具を着用して取り扱うことが重要です。

マレイミドの構造

マレイミドは、分子式C4H2NO2を持つ有機化合物です。マレイミドのイミド環は、平面的で共鳴安定化された構造を持ち、共鳴効果により電子が環全体に分散されます。この共鳴安定化により、マレイミドは高い化学的反応性を示します。

また、マレイミド分子内には炭素-炭素二重結合も存在しており、ディールス・アルダー反応など、特定の化学反応で重要な役割を果たします。

マレイミドのその他情報

1. マレイミド誘導体の種類

ビスマレイミド
ビスマレイミドは硬度に優れているため、強度のある樹脂として利用されています。また、反応性にも優れているため、他の材料へ添加することで簡単に強度を付加することができます。樹脂として利用されるだけでなく、分解物の揮発を抑制する高分子の重合開始材としても期待されています。

N-フェニルマレイミド
N-フェニルマレイミドは、他のマレイミド誘導体に多く見られる様々な重合性以外に、殺菌性や感光性などの特性を持ちます。そのため、一般的な樹脂や中間体としての利用に加えて、感光性樹脂や殺菌剤などの用途に用いられます。

2. マレイミド の製造方法

レイミドの製造方法にはいくつかの方法がありますが、ここでは一般的な2つの製造方法を詳しく解説します。

マレイン酸無水物と尿素を用いる合成法
マレイン酸無水物と尿素を1:1のモル比で混合し、加熱することでマレイミドが生成します。この方法は、操作が簡単で、安価な原料を使用するため、工業的に広く利用されています。

マレイン酸無水物とアンモニアを用いる合成法
この方法では、マレイン酸無水物とアンモニアを混合し、加熱します。この方法は生成物の収率が高いことが利点ですが、アンモニアの取り扱いが比較的難しく、尿素を用いる方法と比較してコストが高くなります。

このため、工業的な規模では、マレイン酸無水物と尿素を用いた合成法が主に採用されることが多いです。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0116-0674JGHEJP.pdf
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0235-1777JGHEJP.pdf

ポリスチレンスルホン酸ナトリウム

ポリスチレンスルホン酸ナトリウムとは

ポリスチレンスルホン酸ナトリウムとは、陽イオン交換樹脂製剤です。

ポリスチレンスルホン酸ナトリウム内のナトリウムイオンと体内のカリウムイオンを交換する目的で使われます。性状は黄褐色の粉末で、においや味はありません。

また、水、エタノール (95) 、アセトンおよびジエチルエーテルにほとんど溶けません。

ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの使用用途

ポリスチレンスルホン酸ナトリウムは、急性および慢性腎不全による高カリウム血症に対して使われます。投与方法は、経口投与と注腸投与の2パターンです。

経口投与する際は、1日30gを2〜3回に分け、その1回量を水50〜150mLに懸濁します。注腸投与する際は、1回30gを水または2%メチルセルロース溶液100mLに懸濁します。

ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの性質

ポリスチレンスルホン酸ナトリウムは、陽イオン交換樹脂に分類され、体内に吸収されない薬剤です。作用機序は、本剤のナトリウムイオンと体内のカリウムイオンが結腸で交換され、ポリスチレンスルホン酸と結合したカリウムが便と共に体外へ排泄されることです。結果、体内にある過剰のカリウムが除去され、高カリウム血症を改善します。

ただし、心不全誘発や腸穿孔・腸潰瘍・腸壊死などの副作用があります。心不全誘発は血清カリウム値の代わりに血清ナトリウム値が上昇することが原因です。腸穿孔・腸潰瘍・腸壊死は、ソルビトール液に溶解、またはソルビトール溶液と併用した際に生じやすいと言われています。

頻度の高い副作用は浮腫、低カルシウム血症、下痢、悪心、嘔吐、便秘です。浮腫は血清ナトリウム値の上昇が関係しています。

ポリスチレンスルホン酸ナトリウムのその他情報

1. 併用する際の注意点

ポリスチレンスルホン酸ナトリウムとの併用で注意すべき薬剤は、「ジギタリス製剤」、「アルミニウム、マグネシウムまたはカルシウムを含有する制酸剤または緩下剤」、「甲状腺ホルモン剤」が挙げられます。

ジギタリス製剤
ジギタリス製剤を併用すると、食欲不振、悪心、不整脈などのジギタリス中毒を起こしやすくなります。ポリスチレンスルホン酸ナトリウムにより、血清カリウム値が低下することが原因です。

アルミニウム、マグネシウムまたはカルシウムを含有する制酸剤または緩下剤
アルミニウムやマグネシウム、カルシウムを併用すると、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの作用が減弱します。つまり、高カリウム血症が改善しにくくなります。ナトリウムイオンがカリウムイオンではなく、上記の陽イオンと交換されることが原因です。

甲状腺ホルモン剤
甲状腺ホルモン剤を併用すると、消化管内で甲状腺ホルモン剤とポリスチレンスルホン酸ナトリウムが吸着し、甲状腺ホルモン剤の働きが弱まります。

2. 使用上の注意点

ポリスチレンスルホン酸ナトリウム投与中は、定期的に血清カリウム値、ナトリウム値の確認が必要です。また、便秘にも注意が必要です。便秘により消化管内にポリスチレンスルホン酸ナトリウムが蓄積すると、腸壁壊死の恐れが高まります。

前述した通り、ソルビトール液での溶解やソルビトール液との併用で腸壊死の報告があります。消化管X線造影時の便秘防止のため、D-ソルビトールを使用することがありますが、本剤とD-ソルビトールの併用は避けるのが望ましいです。

また、妊婦・授乳婦に対しては、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムによる治療の有益性が、治療しない場合のリスクを上回った場合、投与可能とされています。高齢者は生理機能が低下している可能性が高いため、減量を考慮することが望ましいです。

3. ポリスチレンスルホン酸カルシウムとの違い

ポリスチレンスルホン酸カルシウムも、急性または慢性腎不全による高カリウム血症に対する治療薬です。ナトリウム塩は散剤ですが、カルシウム塩は散剤に加えて、ゼリーや経口液も販売されています。

一般的に、ナトリウム塩の方がカリウム交換能が高いと言われています。つまりナトリウム塩の方が効率良く血清カリウム値を下げることが可能です。また、カルシウム塩の方が便秘を起こしやすく、高カルシウム血症による血管石灰化、心血管疾患発症リスクが高いです。

ただし、腎不全などでナトリウム貯留傾向の方にはカルシウム塩の方が適しています。元々の基礎疾患や全身状態によって、カルシウム塩とナトリウム塩を使い分けることが重要です。

ポリエチレンスルホン酸ナトリウム

ポリエチレンスルホン酸ナトリウムとは

ポリエチレンスルホン酸ナトリウムは、アポラートナトリウムとも呼ばれる高分子化合物です。常温において黄色の液体です。

患部における血行を促す目的で、ポリエチレンスルホン酸ナトリウムをはじめ、ヘパリン類似成分、ニコチン酸ベンジル、ビタミンE(酢酸トコフェロールなど)などが用いられています。

しかしながら、ポリエチレンスルホン酸ナトリウムやヘパリン類似成分には、血液凝固を抑える働きがあることから、出血しやすい人、出血が止まりにくい人、あるいは出血性血液疾患の診断を受けた人への使用を避ける必要があります。

ポリエチレンスルホン酸ナトリウムの使用用途

ポリエチレンスルホン酸ナトリウムには、うっ血を取り除き血行を促進する働きがあり、内出血や打ち身によるあざや腫れを改善する効果があります。以前は、外用鎮痛・消炎剤として医薬品に使用されていました。しかしながら、現在は、医療用としては用いられていません。

なお、第二類医薬品の血行促進剤として、佐藤製薬から「ペリドール」が販売されています。

また、青あざを伴う内出血に対する治療薬として小林製薬より「アットノン アオキュア」が販売されていましたが、現在は、製造および販売とも終了しています。

ペントバルビタール

ペントバルビタールとは

ペントバルビタール (英: Pentobarbital) とは、白色粉末の有機化合物です。

IUPAC名は5-ethyl-5-pentan-2-yl-1,3-diazinane-2,4,6-trione、別名としてNembutalやMebubarbital、Mebumalとも呼ばれます。

ペントバルビタールの使用用途

1. 鎮静催眠薬

ペントバルビタールは、短時間〜中間型の作用時間を有するバルビツール酸系の鎮静催眠薬です。日本では、1952年よりペントバルビタールのカルシウム塩がラボナという名称で販売されています。不眠症、麻酔前投薬、不安緊張状態の鎮静、あるいは持続睡眠療法における睡眠調節などに用いられています。

なお、ペントバルビタールは、服用量における安全域が狭いことから、不眠症に処方される機会は減少しています。また、以前は、ペントバルビタールの内服薬と注射液が販売されていましたが、注射薬は2009年に販売が中止されました。

2. 安楽死用薬

ペントバルビタールのナトリウム塩は、スイスやオランダで安楽死用の薬剤として用いられています。

スイスでは、ペントバルビタールナトリウムを患者に静脈投与し、投与後30秒以内に睡眠が誘導され、3分以内に心臓が停止するとされています。

3. 動物用医薬品

ペントバルビタールは、動物用の麻酔薬や安楽死の薬としても用いられてきました。日本では、共立製薬がソムノペンチルという名称で販売していましたが、2019年に販売停止しています。

ペントバルビタールの性質

ペントバルビタールの化学式はC11H18N2O3で表され、分子量は226.27です。CAS番号は76-74-4で登録されています。

融点は130 °Cで、常温で固体です。結晶多型により、融点が115 °Cを示す場合もあります。無臭の化合物で、水やメタノールアセトンによく溶け、エーテルにはほとんど溶けません。ペントバルビタールは、水中で徐々に分解します。

酸性・アルカリ性の程度を表すpHは9.6〜11 (飽和水溶液中) 、酸解離定数 (pKa) は8.1です。酸解離定数とは、酸の強さを定量的に表すための指標のひとつです。pKa が小さいほど強い酸であることを示します。

ペントバルビタールの種類

ペントバルビタールは、通常ナトリウム塩として販売されています。医薬品として、カルシウム塩として販売されている場合もあり、金属塩とすることで安定化されています。

ペントバルビタールのその他情報

1. 副作用

内服薬では、眩暈や嘔気、頭痛、頭重感、覚醒後不快感、注射薬では興奮や嘔吐などが主な副作用です。また、ペントバルビタールの慢性使用により薬剤耐性が生じ、薬物依存症を引き起こすことが知られています。急激な投与量の減少により、離脱症状を生じることもあります。

以下の患者への投与は禁忌です。

  • バルビツール酸系化合物に対し過敏症を持つ患者
  • 気管支喘息または急性間歇性ポルフィリン症の患者
  • 気道閉塞のある患者

2. ペントバルビタールの合成法

1-メチルブチルシアノ酢酸エチルとグアニジンナトリウムエトキシド溶液中で加熱し、希硫酸でケン化することにより合成できます。また、5位がジアルキル置換されたマロン酸エステルと尿素の縮合によっても合成可能です。合成したペントバルビタールは、アルコール溶媒中で再結晶により精製できます。

3. 法規情報

ペントバルビタールは、以下の国内法令に指定されています。

  • 船舶安全法
    毒物類・毒物 (危規則第3条危険物告示別表第1)
  • 航空法
    毒物類・毒物 (施行規則第194条危険物告示別表第1)
  • 麻薬及び向精神薬取締法
    第2種向精神薬 (法第50条の9第4項施行令第4条)

4. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱う場合の対策
酸化剤との接触で反応することがあります。接触は極力避けてください。局所排気装置内で、個人用保護具を着用して使用してください。

火災の場合
燃焼すると、窒素酸化物などの有毒なガスを生成します。消火には水、粉末消火剤、二酸化炭素、乾燥砂、泡消火剤などを使用します。使ってはならない消火剤は、特にありません。

接触した場合
皮膚に付着したり、眼に入った場合は、大量の水でしっかり洗浄します。直ちに、医師の診察を受けてください。

保管する場合
保管する際は、ガラスやポリエチレン、ポリプロピレン製容器に入れて密閉します。直射日光を避け、換気のよい涼しい場所に施錠して保管してください。

5. ペントバルビタールナトリウム

ペントバルビタールナトリウムの化学式はC11H17N2NaOで表され、分子量は248.25です。CAS番号は57-33-0で登録されています。

常温で白色の結晶または粉末です。吸湿性を持ち、水によく溶け、エタノールにはあまり溶けません。酸性・アルカリ性の程度を表すpHは9〜10 (50 g/L、H₂O、25 °C) です。

参考文献
https://anesth.or.jp/files/pdf/hypnosis_sedative_20190418.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Pentobarbital
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Pentobarbital-sodium

ブチルスコポラミン

ブチルスコポラミンとは

ブチルスコポラミン (英: Butylscopolamine) とは、スコポラミンというアルカロイドの誘導体で、スコポラミンの持つ窒素原子にブチル基が結合した構造を持つ化学物質です。

ヒオスシン-N-ブチルブロミドとも呼ばれています。ブチルスコポラミンは副交感神経を抑制する働きや鎮痙作用があり、筋弛緩剤および鎮痙薬が主な用途です。平滑筋の緊張を緩和させることで、消化器官の痙攣を緩和し、消化不良や胃痛、腸の運動性の異常などの症状を緩和する効果があります。

副交感神経を抑制する抗コリン薬のうち、アトロピンと同様の効果を期待して合成された「アトロピン代用薬」に分類されます。口渇や眼圧上昇、排尿困難といった副作用が報告されいるほか、出血性大腸炎や前立腺肥大など、禁忌にもさまざまなものがあり、使用には注意が必要です。

ブチルスコポラミンの使用用途

ブチルスコポラミンは、主に腹痛やお腹の痙攣を抑える薬として用いられます。胃や腸などの消化管の痙攣や、子宮の筋肉の痙攣によって激しい腹痛が引き起こされます。ブチルスコポラミンは副交感神経の働きを抑制することにより、これらの筋肉の痙攣を鎮めることが可能です。

主な副作用には目のレンズ調節機能への障害、口の渇き、便秘、頭痛などさまざまなものがあります。また、ごくまれにアナフィキラシーショックなどの重大な副作用が発生する場合があります。緑内障患者や細菌性下痢の患者、心疾患を抱える患者に対してブチルスコポラミンを投与することは禁忌とされています。

ブチルスコポラミンの性質

ブチルスコポラミンは、白色からほぼ白色の結晶性粉末で、無色で微かな特有の臭気があります。分子量は440.4で、水にやや溶けやすく、アルコールやクロロホルムにも溶ける性質を持ちます。

ブチルスコポラミンは、抗コリン薬として作用し、アセチルコリン受容体 (主にムスカリン受容体) を競合的に阻害します。これにより、消化器官の痙攣や緊張が緩和され、消化不良や胃痛、腸の運動性の異常などの症状が緩和されます。また、ブチルスコポラミンはスコポラミンの誘導体であり、中枢神経系への通過が制限されるため、末梢神経系に主に作用します。これにより、中枢神経系に起因する副作用を軽減可能です。

投与されたブチルスコポラミンは吸収が速やかで、効果が比較的早く現れます。代謝は主に肝臓で行われ、腎臓を通じて尿中に排泄されます。

ブチルスコポラミンの構造

ブチルスコポラミンは、スコポラミンの誘導体で、トロパンアルカロイドと呼ばれる植物アルカロイドの1種です。その分子は環状のトロパン骨格と、エステル機能基を持つ骨格から構成されています。活性に寄与しています。

ブチルスコポラミンは、スコポラミンの構造にブチル基が結合しています。この官能基によって、ブチルスコポラミンはスコポラミンよりも中枢神経系への通過が制限されます。このため、末梢神経系に主に作用し、中枢神経系に起因する副作用が軽減されます。

ブチルスコポラミンは、一般的に四級アンモニウム塩の形で存在します。この構造により、ブチルスコポラミンは脂溶性が低下し、この構造が水への溶解性を高めるとともに、脳内への移行が制限されます。 

ブチルスコポラミンのその他情報

ブチルスコポラミン の製造方法

ブチルスコポラミンは、スコポラミンを原料として合成されます。

1. スコポラミン抽出
スコポラミンは、チョウセンアサガオ、ジムソンウィード、マンドレイクなどのナス科植物から抽出されます。これらの植物の葉や根からアルカロイドを抽出し、スコポラミンを精製します。

スコポラミンの化学合成方法はいくつか報告されていますが、多段階の反応や高度な技術が必要であるため、工業的な規模では植物からの抽出が一般的です。

2. スコポラミンのN-アルキル化
スコポラミンの窒素原子にブチル基を導入します。この工程は、スコポラミンをブロモブタンなどのブチルハロゲン化物と反応させることによって行われます。