ペントバルビタール

ペントバルビタールとは

ペントバルビタール (英: Pentobarbital) とは、白色粉末の有機化合物です。

IUPAC名は5-ethyl-5-pentan-2-yl-1,3-diazinane-2,4,6-trione、別名としてNembutalやMebubarbital、Mebumalとも呼ばれます。

ペントバルビタールの使用用途

1. 鎮静催眠薬

ペントバルビタールは、短時間〜中間型の作用時間を有するバルビツール酸系の鎮静催眠薬です。日本では、1952年よりペントバルビタールのカルシウム塩がラボナという名称で販売されています。不眠症、麻酔前投薬、不安緊張状態の鎮静、あるいは持続睡眠療法における睡眠調節などに用いられています。

なお、ペントバルビタールは、服用量における安全域が狭いことから、不眠症に処方される機会は減少しています。また、以前は、ペントバルビタールの内服薬と注射液が販売されていましたが、注射薬は2009年に販売が中止されました。

2. 安楽死用薬

ペントバルビタールのナトリウム塩は、スイスやオランダで安楽死用の薬剤として用いられています。

スイスでは、ペントバルビタールナトリウムを患者に静脈投与し、投与後30秒以内に睡眠が誘導され、3分以内に心臓が停止するとされています。

3. 動物用医薬品

ペントバルビタールは、動物用の麻酔薬や安楽死の薬としても用いられてきました。日本では、共立製薬がソムノペンチルという名称で販売していましたが、2019年に販売停止しています。

ペントバルビタールの性質

ペントバルビタールの化学式はC11H18N2O3で表され、分子量は226.27です。CAS番号は76-74-4で登録されています。

融点は130 °Cで、常温で固体です。結晶多型により、融点が115 °Cを示す場合もあります。無臭の化合物で、水やメタノールアセトンによく溶け、エーテルにはほとんど溶けません。ペントバルビタールは、水中で徐々に分解します。

酸性・アルカリ性の程度を表すpHは9.6〜11 (飽和水溶液中) 、酸解離定数 (pKa) は8.1です。酸解離定数とは、酸の強さを定量的に表すための指標のひとつです。pKa が小さいほど強い酸であることを示します。

ペントバルビタールの種類

ペントバルビタールは、通常ナトリウム塩として販売されています。医薬品として、カルシウム塩として販売されている場合もあり、金属塩とすることで安定化されています。

ペントバルビタールのその他情報

1. 副作用

内服薬では、眩暈や嘔気、頭痛、頭重感、覚醒後不快感、注射薬では興奮や嘔吐などが主な副作用です。また、ペントバルビタールの慢性使用により薬剤耐性が生じ、薬物依存症を引き起こすことが知られています。急激な投与量の減少により、離脱症状を生じることもあります。

以下の患者への投与は禁忌です。

  • バルビツール酸系化合物に対し過敏症を持つ患者
  • 気管支喘息または急性間歇性ポルフィリン症の患者
  • 気道閉塞のある患者

2. ペントバルビタールの合成法

1-メチルブチルシアノ酢酸エチルとグアニジンナトリウムエトキシド溶液中で加熱し、希硫酸でケン化することにより合成できます。また、5位がジアルキル置換されたマロン酸エステルと尿素の縮合によっても合成可能です。合成したペントバルビタールは、アルコール溶媒中で再結晶により精製できます。

3. 法規情報

ペントバルビタールは、以下の国内法令に指定されています。

  • 船舶安全法
    毒物類・毒物 (危規則第3条危険物告示別表第1)
  • 航空法
    毒物類・毒物 (施行規則第194条危険物告示別表第1)
  • 麻薬及び向精神薬取締法
    第2種向精神薬 (法第50条の9第4項施行令第4条)

4. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱う場合の対策
酸化剤との接触で反応することがあります。接触は極力避けてください。局所排気装置内で、個人用保護具を着用して使用してください。

火災の場合
燃焼すると、窒素酸化物などの有毒なガスを生成します。消火には水、粉末消火剤、二酸化炭素、乾燥砂、泡消火剤などを使用します。使ってはならない消火剤は、特にありません。

接触した場合
皮膚に付着したり、眼に入った場合は、大量の水でしっかり洗浄します。直ちに、医師の診察を受けてください。

保管する場合
保管する際は、ガラスやポリエチレン、ポリプロピレン製容器に入れて密閉します。直射日光を避け、換気のよい涼しい場所に施錠して保管してください。

5. ペントバルビタールナトリウム

ペントバルビタールナトリウムの化学式はC11H17N2NaOで表され、分子量は248.25です。CAS番号は57-33-0で登録されています。

常温で白色の結晶または粉末です。吸湿性を持ち、水によく溶け、エタノールにはあまり溶けません。酸性・アルカリ性の程度を表すpHは9〜10 (50 g/L、H₂O、25 °C) です。

参考文献
https://anesth.or.jp/files/pdf/hypnosis_sedative_20190418.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Pentobarbital
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Pentobarbital-sodium

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