マレイミドとは
マレイミドとは、マレイン酸にカルボニル基が2つ結合した構造を持つ有機化合物です。
化学式はC4H3NO2で表され、常温常圧で白色の粉末状固体です。水に可溶で、エタノールやその他の有機溶媒に対しても可溶です。
マレインアミドを塩化亜鉛と混合し、加熱するなどの方法によって得られます。さまざまな誘導体が存在し、樹脂や架橋剤として使用されています。代表的な誘導体は、N-フェニルマレイミドです。
N-フェニルマレイミドなどの一部のマレイミド誘導体は、「毒物及び劇物取締法で毒物類・毒物」に指定されています。
マレイミドの使用用途
マレイミドは、生物学的研究において、タンパク質やペプチドの修飾に利用されます。特に、チオール基を持つシステイン残基と反応することで、タンパク質やペプチドに共有結合を形成可能です。
同様に、システイン残基との反応性を利用して高分子やゲルの架橋剤としても利用されています。また、マレイミド誘導体の形で利用される場合も多数あります。
マレイミドの性質
マレイミドは無色の結晶性固体で、熱に弱く、加熱すると分解します。水にはほとんど溶けませんが、アルコールやアセトンなどの極性溶媒には溶けやすく、非極性溶媒によく溶けます。また、紫外可視光スペクトルに吸収帯を持ちます。
マレイミドは、チオール基を持つ化合物との反応性が高く、マイケル付加反応やチオール-エン反応を経由して、共有結合を形成します。この反応は、マイケル付加と呼ばれる1,4-付加反応の1種です。速やかに進行し安定であるため、バイオコンジュゲート研究やタンパク質修飾に広く利用されています。
これらの性質から、マレイミドは生物学的研究や有機合成化学などの幅広い分野で利用されています。マレイミドを取り扱う際は、吸入や皮膚接触、目への接触を避けるよう注意し、適切な保護具を着用して取り扱うことが重要です。
マレイミドの構造
マレイミドは、分子式C4H2NO2を持つ有機化合物です。マレイミドのイミド環は、平面的で共鳴安定化された構造を持ち、共鳴効果により電子が環全体に分散されます。この共鳴安定化により、マレイミドは高い化学的反応性を示します。
また、マレイミド分子内には炭素-炭素二重結合も存在しており、ディールス・アルダー反応など、特定の化学反応で重要な役割を果たします。
マレイミドのその他情報
1. マレイミド誘導体の種類
ビスマレイミド
ビスマレイミドは硬度に優れているため、強度のある樹脂として利用されています。また、反応性にも優れているため、他の材料へ添加することで簡単に強度を付加することができます。樹脂として利用されるだけでなく、分解物の揮発を抑制する高分子の重合開始材としても期待されています。
N-フェニルマレイミド
N-フェニルマレイミドは、他のマレイミド誘導体に多く見られる様々な重合性以外に、殺菌性や感光性などの特性を持ちます。そのため、一般的な樹脂や中間体としての利用に加えて、感光性樹脂や殺菌剤などの用途に用いられます。
2. マレイミド の製造方法
レイミドの製造方法にはいくつかの方法がありますが、ここでは一般的な2つの製造方法を詳しく解説します。
マレイン酸無水物と尿素を用いる合成法
マレイン酸無水物と尿素を1:1のモル比で混合し、加熱することでマレイミドが生成します。この方法は、操作が簡単で、安価な原料を使用するため、工業的に広く利用されています。
マレイン酸無水物とアンモニアを用いる合成法
この方法では、マレイン酸無水物とアンモニアを混合し、加熱します。この方法は生成物の収率が高いことが利点ですが、アンモニアの取り扱いが比較的難しく、尿素を用いる方法と比較してコストが高くなります。
このため、工業的な規模では、マレイン酸無水物と尿素を用いた合成法が主に採用されることが多いです。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0116-0674JGHEJP.pdf
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0235-1777JGHEJP.pdf