フッ化マグネシウム

フッ化マグネシウムとは

フッ化マグネシウム (英: Magnesium fluoride) とは、無機化合物の1種であり、フッ化物イオンとマグネシウムイオンからなるイオン化合物です。

CAS登録番号は7783-40-6、組成式はMgF2です。フッ化マグネシウムは、セッラ石として天然にもごくわずかに存在していますが、希産鉱物に分類されます。皮膚刺激性や眼刺激性を持つ他、経口摂取することにより有害となるため注意が必要です。

フッ化マグネシウムの使用用途

フッ化マグネシウムは、代表的な低屈折率材料として幅広く利用されている物質です。レンズやプリズムなどの表面に蒸着させてフッ化マグネシウムの膜を張ることにより、反射防止膜を作ることができます。

この性質を応用した具体的な工業用途には、反射防止膜、多層膜、ビームスプリッター、液晶ディスプレイ用の偏光フィルム、ガラスコーティングなどがあります。

また、フッ化マグネシウムの単結晶はフッ化物の単結晶の中で比較的加工性に優れていおり、0.11–7.5μmの透過波長領域をもつ物質です。そのため、紫外域での偏向素子、光学基板や窓板、レンズの原料として用いられることもあります。

デジタル一眼レフカメラ向け光学用フッ化物レンズ原料、シンチレータ等の光学用単結晶原料、光ファイバー母材などの工業利用を例として挙げられます。

フッ化マグネシウムの性質

フッ化マグネシウムの基本情報

図1. フッ化マグネシウムの基本情報

フッ化マグネシウムは、式量62.30、融点1,248°C、沸点2,260°Cであり、常温常圧での外観は白色の粉末状固体です。密度は3.15g/mLです。水には溶けにくく (溶解度8.7mg/100g (18°C) ) エタノールにも溶けません。希塩酸にも溶けにくい物質ですが、硝酸には溶解します。

0.11~7.5μmの波長を持つ電磁波を透過し、紫外域での偏向素子として用いることができる物質です。また、熱や衝撃に対する耐久性にも比較的優れています。通常の保管条件では安定とされていますが、分解生成物としてハロゲン化物 (フッ化水素) 、金属酸化物などが生成する可能性があるため、強酸化剤との混触や、高温と直射日光などを避けて保管することが必要です。

フッ化マグネシウムの種類

フッ化マグネシウムは、主に研究開発用試薬製品や、工業用材料として一般に販売されています。研究開発用試薬製品としては、5g、25g、100g、500gなどの容量があり、実験室で取り扱いやすい容量を中心とした提供です。室温で保管可能な試薬製品として販売されており、真空蒸着などに適しているとされています。

工業用材料としては、光学薄膜材料や透明な低屈折率コーティング素材として提供されており、希少金属材料にも分類されます。液晶ディスプレイ用の偏光フィルム、ガラスコーティングなどを想定用途として提供されており、容量は20kg (袋) などの工場で取り扱いやすい大容量が中心です。材料としてのフッ化マグネシウムの外観は白色~透明・顆粒状・タブレット状などとされます。

フッ化マグネシウムのその他情報

1. フッ化マグネシウムの合成

フッ化マグネシウムの合成

図2. フッ化マグネシウムの合成

フッ化マグネシウムは、酸化マグネシウムにフッ化水素アンモニウムのようなフッ化水素源となる化合物を加えることで合成が可能です。

2. フッ化マグネシウムの結晶構造

フッ化マグネシウムの結晶構造

図3. フッ化マグネシウムの結晶構造 (灰色: Mg、黄緑: F)

フッ化マグネシウムの結晶構造はルチル型です。ルチル型とは、典型的にはTiO2に見られる結晶構造であり、正方晶系に属します。

単位格子中には2化学単位が含まれており、具体的な構造は、1つのMg原子を中として見たときには6つのF原子が八面体を形成して配位しており、1つのF原子を中心として見たときには3つのMg原子が配位しているような構造です。なお、気相中では1分子のMgF2が直線構造を取っています。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0113-0020JGHEJP.pdf

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