メタクリル酸グリシジルとは
メタクリル酸グリシジルとは、別名で「メタクリル酸2,3-エポキシプロピル」、略称で「GMA」といわれる有機化合物です。
融点が-41.5℃、沸点が189℃、引火点が 76.0℃ (密閉式) または84.0℃ (開放式) であり、発火点が 421℃です。常温において無色透明の液体で、特有の刺激臭を有します。
消防法により第4類引火性液体、第三石油類非水溶性液体に指定されています。化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) により第1種指定化学物質に指定されています。
また、労働安全衛生法では、変異原性が認められた既存化学物質です。消防法によって第4類危険物・第三石油類(非水溶性液体)に指定されています。さらに、毒物および劇物取締法における劇物です。
メタクリル酸グリシジルは、例えばメタクリル酸ナトリウムとエピクロロヒドリンを反応させて合成します。なお、メタクリル酸グリシジルからメチル基 (-CH3) が取れた分子構造の化合物は、アクリル酸グリシジルです。
メタクリル酸グリシジルの使用用途
メタクリル酸グリシジルは、他の重合性化合物と重合反応させるための用途で使用されます。メタクリル酸グリシジルは、例えばスチレン、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリルなどの各種モノマーと容易に共重合する物質です。また、メタクリル酸グリシジルは、共重合した後でも分子中にグリシジル基 (エポキシ基) を有するため、触媒の存在下で開環して架橋反応などを起こします。
上記の性質を利用して、アクリル粉体塗料または溶剤型アクリル塗料などの塗装用樹脂の原料として用いられます。また、エポキシ樹脂接着剤の希釈剤、塩化ビニルの安定剤、イオン交換樹脂、印刷インキのバインダーなどの各原料としても有用です。
メタクリル酸グリシジルを単独で重合したポリマーは、工業的にはあまり利用されません。メタクリル酸グリシジルと他のモノマーとを共重合させたポリマーは、グリシジル基の反応性を利用して、各種の用途で使用されます。
メタクリル酸グリシジルの性質
メタクリル酸グリシジルは、異なる反応性を有しています。重合反応できる部分と開環反応できる部分の両方を有するため、重合反応によってメタクリル酸グリシジルを分子内に導入したポリマーに開環反応させる目的で使用されます。例えば、重合反応によって得たアクリル系ポリマーに反応性 (開環反応性) を付与するために有用です。
重合反応によって高分子化してアクリル系ポリマーの一部となります。高分子化したアクリル系ポリマーのグリシジル基は、さらに他の化合物のヒドロキシ基 (-OH) などと結合できます。
このように、メタクリル酸グリシジルは、重合反応を経て高分子化した後、反応性を有するアクリル系ポリマーの一部となります。
メタクリル酸グリシジルの構造
メタクリル酸グリシジルは、メタクリル酸の-COOH基に対してグリシジルアルコールの-OH基がエステル結合した分子構造を有します。すなわち、メタクリル酸グリシジルの分子構造は、メタクリル酸由来の重合性二重結合と、グリシジルアルコール由来の環状エーテル (3員環) の両方を有します。
また、分子中にメタクリル酸部分とグリシジル部分 (グリシジル基) の両方を有する化合物です。メタクリル酸部分は二重結合を有するため、ラジカル重合開始剤によって重合反応して高分子化できます。グリシジル基は、開環反応によって他の化合物のヒドロキシ基 (-OH) などと容易に結合します。
メタクリル酸グリシジルのその他情報
メタクリル酸グリシジルのグリシジル基
メタクリル酸グリシジル中のグリシジル基は、エポキシ基と類似する構造を有します。グリシジル基とエポキシ基の違いは、グリシジル基の方が炭素数が1つ多い点です。
エポキシ基は、2つの炭素 (C) と1つの酸素 (O) で三角形を作っています。一方、グリシジル基は、この三角形中の1つの炭素 (C) に対してさらに1つの炭素 (C) が結合した構造を有します。