ナフトキノンとは
ナフトキノンとは、ナフタレンに2つの酸素原子が結合した有機化合物です。
酸素原子の結合位置により、1,4-ナフトキノンや1,2-ナフトキノンなどがあります。ナフトキノンの中で、1,4-ナフトキノンが最も一般的です。
1,4-ナフトキノンは、常温で黄色の三斜晶系結晶で、ベンゾキノンに似た芳香を持っています。水には難溶ですが、比較的多くの極性溶媒に可溶です。酸性および酸化性を示します。
空気中で酸化されやすいため、光や空気から遮断された容器で保存します。ナフトキノンは皮膚や粘膜に対して刺激性を持つため、取り扱いには注意が必要です。なお、工業的には触媒下でナフタレンを酸化することで合成されます。
ナフトキノンの使用用途
ナフトキノンは、さまざまな工業的用途を持つ化学物質を合成する原料として使用されています。ディールス・アルダー反応の名で知られるナフトキノンと1,3-ジエンの反応では、アントラキノンを合成可能です。アントラキノンは、さまざまな色素の原料やパルプを製造する際の触媒として用いられます。
また、ナフトキノンのジアゾ誘導体であるジアゾナフトキノンは、半導体の製造過程における水銀露光などに用いられています。ナフトキノンの誘導体には細胞毒性を持つものが多く、抗ウイルス剤や解熱剤などに使用されるものもあります。
1,4-ナフトキノンおよびその誘導体は、抗菌、抗真菌、抗ウイルス、抗炎症、抗がんなどの薬理作用が報告されており、これらの効果を利用した医薬品が開発されています。また、そのほか、高い着色力を持つため、染料や顔料として用いられます。特に、赤色や黄色の染料には、ナフトキノン誘導体が有用です。
ナフトキノンの性質
ナフトキノンは、有機化合物であり、キノン構造を持つナフタレン誘導体です。1,4-ナフトキノンは黄色からオレンジ色の結晶で、特有の刺激臭があります。無水物は融点約124℃、沸点は>300℃と報告されています。
水への溶解度は低いですが、アルコール、エーテル、アセトンなどの極性有機溶媒には溶けやすくなります。二重結合とカルボニル基が環状に並ぶキノン構造は、容易に還元され、ヒドロキノン構造へ変換されます。また、1,4-ナフトキノンは、空気中で酸化されやすいため、光や空気から遮断された容器で保存することが重要です。
ナフトキノンの構造
1,4-ナフトキノンは、二環式の芳香族炭化水素であるナフタレンの1位と4位にカルボニル基が結合した構造を持っています。平面的な構造を持っており、分子内で二重結合とカルボニル基が交互に並ぶ共役系が形成されています。
π電子が全体に広がっているため、紫外線や可視光線を吸収するのが特徴です。この特徴は、染料や顔料としての利用に関連しています。
分子式はC10H6O2であり、IUPAC名は「4H-cyclopenta[def]phenanthrene-4,5(1H,3H)-dione」です。1,4-ナフトキノンの構造は容易に還元される性質を持っており、還元されると、ヒドロキノン構造へ変換されます。
また、この構造は生体内で重要な役割を果たす化合物の基本骨格でもあります。例えば、ビタミンK、ウビキノン (コエンザイムQ) などは、1,4-ナフトキノンの基本骨格を持つ化合物です。
ナフトキノンのその他情報
ナフトキノンの製造方法
1,4-ナフトキノンは、通常、ナフタレンから誘導されます。ナフタレンにクロム酸ナトリウムなどの酸化剤を作用させることで、1,4-ナフトキノンが生成されます。
また、他の方法として、アントラキノン誘導体の環縮合や、1,4-ナフトールの酸化などが挙げられます。