スルファミン酸ニッケル

スルファミン酸ニッケルとは

スルファミン酸ニッケル (英: Nickel sulfamate) とは、無臭の青色あるいは緑色の固体です。

スルファミン酸ニッケルのイオン化合物で、化学式はNi(SO2NH2)2、分子量は250.85、CAS登録番号は13770-89-3です。スルファミン酸ニッケルのIUPAC名はビス(スルファミン酸)ニッケル(II)で、ビス-ジブチルジチオカルバミン酸ニッケルといった名称で呼ばれることもあります。

スルファミン酸浴やスルファミン酸ニッケル浴と呼ばれる金属の表面処理に使用されます。

スルファミン酸ニッケルの使用用途

ニッケルは耐食性があるため、金属製品の表面に行うニッケルめっきが広く利用されています。ニッケルめっきには様々な方法がありますが、スルファミン酸浴は最も一般的なニッケルめっきであるワット浴とは異なり無光沢のニッケルめっきです。スルファミン酸ニッケル浴は金属の表面に耐食性や装飾を付与するめっきや、母型に金属イオンを電析させることで金属の型を作る電鋳に使用されます。

電鋳は高い精度で金属を複製することができるため、精密機械やロケットなどの部品に使われています。用途に応じた様々な濃度のスルファミン酸ニッケル溶液がめっき薬として販売されています。また、展開剤や光沢剤などを使用せず、純粋なニッケルに近いめっきであるという特徴があります。

多くのニッケルめっきでは応力緩和剤として硫黄を使用しますが、スルファミン酸浴は硫黄を使用しないため電子部品などにも用いることができるという利点があります。

スルファミン酸ニッケルの性質

スルファミン酸ニッケルの融点は125℃ (三水和物) ですが、沸点や密度などは知られていません。水には溶解するため、日本国内では四水和物の粉末の他、水溶液の形で流通しています。

ニッケルめっきに利用される、スルファミン酸ニッケル浴は電着応力がほとんどなく電流密度を高くでき、管理が簡単という特徴があります。pHは3.5~5.0、温度は40~60℃、抗張力は6300kg/cm2、延率は20~30%、電着応力は35kg/cm2です。ワット浴の電着応力は1260kg/cm2、塩化ニッケル浴の電着応力は2800~3500kg/cm2ですので、大きな差があります。

スルファミン酸ニッケルのその他情報

1. スルファミン酸ニッケルの製法

スルファミン酸ニッケルは、ニッケル粉末または炭酸ニッケル(II)をスルファミン酸と酸性条件下で反応させることで生成します。
 Ni+2H3NSO3→Ni(SO3NH2)2+H2
 NiCO3+2H3NSO3→Ni(SO3NH2)2+CO2+H2O

2. 法規情報

スルファミン酸ニッケルは、消防法や毒物および劇物取締法には指定がありません。一方で、労働安全衛生法では「特定化学物質第2類物質、管理第2類物質」、「名称等を表示・通知すべき危険物及び有害物」、「危険性又は有害性等を調査すべき物」、「作業環境評価基準」に該当します。労働基準法では「疾病化学物質」、化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) では「特定第一種指定化学物質」、化審法では「優先評価化学物質」に指定されています。さらに、スルファミン酸ニッケルは、大気汚染防止法や水質汚濁防止法にも指定がありますので、取り扱いには注意が必要です。

3. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密栓し、乾燥した冷暗所に保管する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡、保護衣、保護面を着用する。
  • 粉塵を吸い込まないよう、充分注意する。吸入などして気分が悪い時は、医師の診断、手当てを受ける。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 皮膚に付着した場合は、速やかに多量の水と石鹸で洗い流す。皮膚刺激又は発疹が生じた場合には、医師の診察や手当てを受ける。
  • 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/13770-89-3.html

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