風洞試験

風洞試験とは

風洞試験

風洞試験とは、人工的に風を発生させ、縮小模型や対象物にその風を当てて挙動を分析する試験のことです。

風洞試験は、主に超高層ビルや大型建築物の耐風設計に利用されますが、自動車や航空機などの輸送機械の空力性能向上にも重要です。

試験では建物の風耐性や風切り音、居住性への影響を評価し、安全性や快適性の向上を目指します。建物周辺の風環境への影響や災害リスクの軽減策を検討するためにも、風洞試験は欠かせない試験となっています。

風洞試験の使用用途

風洞試験は、建築物の耐風設計や輸送機械の空力性能向上、風切り音や外装材の耐久性評価などに利用されます。さらに具体的に述べると、使用用途として3つが挙げられます。

1. 建築物の耐風設計

風洞試験は、高層建築物や大スパン構造物に対する風荷重の予測に用いられる試験です。建築物の周辺に発生するビル風の挙動を測定し、居住性や歩行者への影響を評価することで、安全で快適な設計を実現します。

また、風による建物の振動を分析し、振動抑制デバイスの設計にも活用されています。

2. 輸送機械の空力評価

自動車や航空機の空気抵抗を低減し、燃費効率を高める目的で風洞試験が行われます。自動車では車体形状の最適化、航空機では翼形やエンジン設計の評価に使用されます。

鉄道車両のトンネル内空気抵抗の分析や高速移動時の安定性評価も使用用途です。

3. 機能性と快適性の評価

風切り音や外装材の耐久性、太陽光発電パネルの安全性など、風の影響を受ける付帯設備の性能評価にも風洞試験が活用されます。そのため、建物や製品の機能性と快適性の評価を改善することが可能です。

2. 風洞試験の原理

風洞で人工風を発生させ、縮小模型に風を当てて挙動を測定します。数値流体解析で試験結果を補完し精度を向上させます。

1. 風洞の仕組み

風洞とは、人工的な風を発生させる装置のことです。風洞は試験室内に一定の風速と風向を作り出します。

ブロワー (送風機) を使用して空気を送る仕組みで、風速は調整可能です。風洞内では流れる風を視覚化するため、煙や粒子を用いることもあります。

2. 模型のスケーリング

風洞試験では、対象となる建物や構造物の縮小模型を使用します。縮小模型は、実際の建物と幾何学的に相似になるよう製作されます。試験中に発生する風圧や振動のデータをもとに、実際の建物での挙動を推定します。

3. 数値流体解析の併用

近年では、風洞試験に数値流体解析 (CFD) が併用されることが一般的です。CADデータをもとに建物や市街地のモデルを作成し、シミュレーションを行うことで、試験結果をより詳細に補完します。そのために設計初期段階でも風の影響を効率よく分析できます。

風洞試験の種類

大気乱流風洞試験や風圧試験、空力振動試験、超音速試験など、多様な目的に応じた試験が実施されています。具体的な種類として4種類の風洞試験が挙げられます。

1. 大型大気乱流風洞試験

大型大気乱流風洞試験とは、自然風を再現し耐風安定性を評価する試験のことです。吊橋や高層ビルの耐風安定性を評価する際に行われる試験でもあります。

風洞内で自然風を再現し、構造物が風に対してどのように振る舞うかを調べます。特に、強風時の安全性が重視されます。

2. 風圧試験

風圧試験とは、壁面の風圧分布を測定する試験のことです。建物壁面に小さな孔を設けた模型を用い、壁面全体の風圧分布を測定します。風圧試験では、外装材や構造骨組みに作用する風荷重を算定し、耐久性や構造設計に役立てます。

3. 空力振動試験

空力振動試験とは、建物が風によってどのような振動を起こすかを評価する試験のことです。建物が動いた際に発生する追加的な風力も考慮され、実際の振動応答を測定します。空力振動試験によって、振動が建物の居住性や構造安定性に与える影響を分析します。

4. 遷音速・超音速風洞試験

遷音速・超音速風洞試験とは、高速環境で空力特性を評価する試験のことです。高速移動する航空機や宇宙機の設計には、遷音速 (音速に近い) や超音速の環境を模擬する風洞試験が用いられます。遷音速・超音速風洞試験により、衝撃波や気流特性を把握し、空力特性を最適化します。

参考文献
https://lab.atengineer.com/shiken/cls01911.html
https://www.gbrc.or.jp/test_research/wind_tunnel

非破壊試験

非破壊試験とは

非破壊試験は、検査対象を破壊せずに、表面や内面の傷の有無・大きさ・形状・分布などを調べる試験です。

検査対象の形状や機能を損なわずに欠陥を検出できます。大きな検査対象や稼働中の検査対象の検査も可能です。非破壊試験には、放射線透過試験、超音波探傷試験、磁粉探傷試験、浸透深傷試験、渦流探傷試験などがあります。非破壊試験はNondestructive Testingの略記号NDTと表されます。

非破壊試験の使用用途

非破壊試験の使用用途は幅広く、様々な分野に用いられます。例えば以下のような分野で使用されています。

  • 飛行機や鉄道などの輸送機器
  • 発電設備や石油化学プラントなど
  • 橋梁や鉄塔などの大型の構造物
  • ビルなどのコンクリート構造物

輸送機器やプラントなどは稼働していない状態での欠陥の発見も重要ですが、稼働している状態で欠陥などを発見できれば稼働時の危険性などを早期発見および回避できます。橋梁や鉄塔、ビルなどは構成する部品や素材の欠陥の発見ももちろん重要です。さらに、部品や素材を使い、実際に建設した後の欠陥の発見はより重要です。

非破壊試験の原理

非破壊試験は検査対象を破壊せずに、表面や内部の傷の有無や大きさ、形状および分布などを調べる方法です。金属やプラスティックなどの検査対象の微細な傷や外からは発見できない内部の傷を検査対象の形状や機能を損なうことなく発見できます。

例えば、検査対象に外部から放射線を照射して透過すると、欠損がある部分だけ放射線の透過率や透過した放射線の強度が変わります。この透過率や強度の変化で欠損の有無や大きさなどを判別可能です。非破壊試験には様々な試験があるため、検査対象や検査項目に合わせた非破壊検査の選択が必要です。

非破壊試験の種類

非破壊試験には様々な試験が存在し、それぞれの原理も異なります。以下では、代表的な非破壊試験の原理を解説します。

1. 放射線透過試験

放射線透過試験の原理

図1. 放射線透過試験の原理

放射線透過試験は、図1に示すように検査対象にX線やγ線を透過させ、フィルムやイメージプレートに投影された画像から内部の状態を把握する試験です。

放射線は物質を透過する性質があり、検査対象の内部の状態に応じて透過のしやすさが異なります。すなわち、この試験の仕組みはこの差から傷の有無を判断する仕組みです。例えば、内部に傷等がある部分は、傷がない部分と比較すると放射線が透過しやすくなりフィルムに濃く記録されます。

この試験は撮影の方法などによりいくつかの種類に分類されます。例えば、フィルムではなくイメージプレートを用いて画像データを得る方法などがあります。

2. 超音波探傷試験

超音波探傷試験の原理

図2. 超音波探傷試験の原理

超音波探傷試験は、検査対象に超音波を入射し、超音波の変化により検査対象内部の状態や厚みなどを推定する試験です。

大きく分類すると、図2に示すようなパルス反射法、透過法、共振法の3種類になります。超音波の種類や当て方などでさらに細かく分類され、使用用途により使い分けられますが、この章では上記3種類を解説します。

1. パルス反射法
パルス反射法は、超音波の反射を利用した方法で、傷の有無や位置、大きさ等を特定する方法です。

図2に示すように、超音波を送受信できる探触子を検査対象表面に当てて測定します。検査対象内部に入射した超音波は底面で反射し、再び探触子に戻ってきます。内部に傷等がある場合には傷表面で反射してしまうため、検査対象全体を透過して反射したものと反射波が異なります。すなわち、送信波パルス、傷等からの反射波、底面からの反射波を受信して比較すれば内部の状態が推定可能です。

2. 透過法
透過法は、送信した超音波と受信した超音波の強さを比較して内部の状態を推定する方法です。

図2に示すように、検査対象表面に超音波を入射させる探触子を当て、底面に超音波を受信する探触子を接触させます。検査対象表面に接する探触子から入射した超音波は検査対象内部を透過し、底面に当てられた探触子に到達します。内部に傷等がある場合は、超音波はそれ以上進めません。そのため、傷の有無で受信される超音波の強度が変わります。この方法は、このような現象を利用して内部の傷等を把握する方法です。

3. 共振法
共振法は、検査対象の共振を利用して検査対象の厚み等を測定する方法です。

図2に示すように、波長を連続的に変化させながら超音波を検査対象に入射すると、半波長の整数倍が検査対象の厚みに等しくなる時に検査対象は共振します。共振のための振動エネルギーは発振器より供給されるものであり、電流の増加を検出すれば共振の発生を確認可能です。共振した時の音速度や周波数、共振次数から検査対象の厚みを推定できます。共振の強さから検査対象内部の傷の有無の推定も可能です。

3. 磁粉探傷試験

磁粉探傷試験の原理

図3. 磁粉探傷試験の原理

磁粉探傷試験は、漏洩磁場を利用して検査対象の表面付近にある傷等を目視で確認する試験です。

図3に示すように、強磁性体である検査対象に磁束を流し、大きくしていくと、傷がある部分で磁束の一部が外部空間に漏洩します。この漏洩磁場に磁粉を散布すると傷周辺に磁粉が付着し、磁粉指示模様が現れます。この磁粉指示模様を観察すれば微小な傷も検出可能です。

この方法では傷の検出に対して方向性があり、探傷箇所を適切な方向に磁化するための方法として分類されます。また、使用する磁粉や観察用光源によってもいくつかの方法に分類できます。これらの方法は、検査対象の形状や検出しようとする傷等により適切に使い分けが必要です。

4. 浸透探傷試験

浸透探傷試験の原理

図4. 浸透探傷試験の原理

浸透探傷試験は、浸透液を用いて検査対象の表面にある傷等を検出する試験です。

図4に示すように、最初の工程は、検査対象の表面を洗浄し傷内部を開口させ乾燥する前処理です。次に、検査対象表面に浸透液を浸透させ余分な浸透液を除去します。最後に現像皮膜を塗布して傷部に浸透した浸透液を吸い出し、これにより拡大されて現れる浸透指示模様を観察します。

浸透探傷試験には、2種類の観察方法、3種類の浸透液除去方法、4種類の現像方法があり、用途により適切な組み合わせが選択可能です。

5. 渦流探傷試験

渦流探傷試験の原理

図5. 渦流探傷試験の原理

渦流探傷試験は、導体である検査対象表面に渦電流を誘導し、その渦電流の乱れを検知して傷等の有無を判断する試験です。

図5に示すように、交流を流したコイルを検査対象に近づけると、電磁誘導により検査対象の表面近傍に渦電流が発生します。図5に示すように、検査対象表面に傷がある場合にはその渦電流に乱れが生じます。

渦電流の乱れは、コイル内部の磁束の変化をもたらし、結果、コイルの起電力が変化するため、この起電力変化を検知すれば渦電流の乱れ、つまり、傷の有無の確認が可能です。渦電流は、検査対象の表面近傍にのみ集中的に誘導され、検査対象内部にはほとんど誘導されません。そのため、渦流探傷試験は、主に検査対象表面の探傷に用いられます。

非破壊試験のその他情報

上述した非破壊試験の使用用途の中でも、高い安全性が必須とされる人を運ぶ飛行機や電車などの輸送機器は、特に非破壊検試験が重要な役割を果たします。欠陥や重大な劣化は人命に関わる問題につながる可能性があるためです。

同様の理由で、ロケットなど宇宙産業機械の点検や、ジェットコースターなどアミューズメントパークのアトラクションの保守点検に非破壊試験が使用されています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/imono/63/8/63_706/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/10/2/10_KJ00001451681/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsaem/24/3/24_155/_article
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjws/80/8/80_709/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/imono/65/12/65_921/_article/-char/ja/

静電気試験

静電気試験とは

静電気試験

静電気試験とは、電子部品や半導体に静電気起因の高い電圧を印加しその耐性を評価する試験のことです。

ESD (Electro-Static Discharge) 試験とも呼ばれます。電子部品や半導体デバイスは静電気により破壊されやすく、その耐電圧を評価しESD試験による誤作動が発生しないように、静電気試験による製品の信頼性保証を行う必要があります。

静電気試験にはその静電気発生モデルによって、人体モデル (HBM:Human Body Model) 、マシンモデル (MM:Machine Model) 、デバイス帯電モデル (CDM:Charged Device Model) の大きく3種類の試験方法があります。

静電気試験の種類

1. 人体モデル (HBM)

HBMは人体に帯電した静電気を起電力として、デバイスに高電圧を印加する試験です。一般にMIL-STD 883 method 3015が広く用いられています。100㎊の並列容量と1.5Kオームの直列抵抗を電圧負荷として用いるモデルです。

2. マシンモデル (MM)

MMは主に電子部品を工場などで組立する際に、機械や金属接触による放電ダメージを想定して行う試験です。想定のモデルは放電容量が200pF 直列抵抗は0オームで仮定されています。

3. デバイス帯電モデル (CDM)

CDMはデバイス自体が帯電した状態を想定しています。そのデバイスが金属接触を介して対地放電する動作をモデル化した静電気試験です。この場合は放電容量と直列抵抗には、規定がありません。

静電気試験の原理

実際のESD試験の手法からその試験に関する原理を説明します。

静電気試験時に印加する電圧波形は、そのピーク波形値だけでなく、リプル波形に要する時間についてもある範囲で規定されています。この規定の意図は、各々の耐電モデルから実際の電子部品の組み立て選別工程や、人体からの放電起因での静電気破壊にあたる物理現象に適した試験電圧波形を、実際の計測器で再現させるためです。

静電気試験の印加する電圧値については、破壊する閾値電圧を把握するため下限から印加するのが一般的です。ただし試験したいデバイスの実力値がある程度把握され、N増し評価の場合には、必ずしも下限から評価することを、強いてはいません。

特にデバイス帯電モデルについては、帯電したデバイスから金属面へ放電される原理であるため、そのデバイスのパッケージサイズや形状材質等に強く依存します。

静電気試験のその他情報

1. イミュニティ試験

イミュニティ試験とは、静電気試験の中でも特に電磁波の過渡応答に対する誤動作防止のノイズ耐性やアンテナへのサージ耐性を評価する試験をいいます。

例えばスマートフォンのアンテナ端子への8kVの印加試験や、リチウムイオン電池の充放電制御管理における電磁波ノイズの悪影響を評価する試験であり、移動体通信端末やIoTデバイスが増加している現在においては重要視されている試験です。

通常の静電気試験でもそうですが、このイミュニティ試験も規格を満足できないと、製品として動作保証できず出荷できないことになり、各国で規定も異なるため注視する必要があります。

イミュニティ試験と対になる事項として反対に機器から発生する電磁波ノイズを規定する事項もあり、これはエミッション規制と呼ばれます。

2. 静電気試験シミュレーション

静電気試験の目的は、製品の静電気耐性の評価保証だけではありません。もし耐圧が不足している場合には、回路面等での静電気対策を施す必要があるため、製品開発の途中段階で実力把握のために実施されることが多いです。

その際実際に静電気試験を実施して改善確認する手法もありますが、試験に要する準備工数やコストおよび煩雑さを考慮して、シミュレーションで対策を行う事例があります。

静電気試験のシミュレーションは、その電圧波形の過渡応答をいかに現実に即して再現できるかと、破壊の現象をどう表現するかという大きな課題があります。

よって市販のシミュレーターでESDのシミュレーションを実施するだけでなく、場合によっては、実際の対象サンプルに印加される電圧波形をモニターして、実測ベースの波形を開発製品の回路シミュレーションに取り込む手法も開発されています。

特に、デバイス帯電モデルやイミュニティ試験などは、測定系のセットアップや電磁波ノイズの印加手法で実力が左右されるため、実測ベースの波形を取り込む手法は注目されています。

雷サージ試験

雷サージ試験とは

雷サージ試験とは、雷サージを模擬して発生させ、試験対象機器がサージに耐えて正常に動作するかを評価する試験です。

雷サージは落雷によって瞬間的に非常に高い電圧が発生し、過大電流が発生する現象のことです。このサージ電圧とサージ電流は、電線、通信線、アンテナ、大気中を通って電気・電子機器に侵入し、機器を破壊する・劣化させるなどの危険性があります。サージ電圧、サージ電流は電力線や通信線による誘導で機器内に侵入する場合が多いため、雷サージ試験では、規定のサージを電源や通信線に注入して試験を実施します。

雷サージ試験の使用用途

1. 電力設備の評価

雷サージ試験は、特に電力設備の耐久性を確認するために利用されます。高電圧のサージは、電力変圧器や配電盤、送電線などに大きな影響を与えるため、これらの機器が雷サージに耐える能力を確認する必要があります。これにより、停電や設備の故障を未然に防ぐことが可能です。

2. 家庭用電子機器の安全性確認

家電製品や情報機器など、一般家庭で使用される機器も雷サージの影響を受ける可能性があります。試験を通じてこれらの製品が雷サージに対する耐性を持つことを確認することで、安全性と信頼性を向上させます。

3. 通信機器の耐久性向上

通信インフラにおける雷サージ対策は、安定した通信サービスを提供するために重要です。雷サージ試験により、通信機器やケーブルの耐久性が確認され、雷の影響による通信障害を最小限に抑えることができます。

雷サージ試験の原理

雷サージ試験の原理を、以下の3つの点から解説します。

1. サージ電圧の再現

雷サージ試験では、雷によって発生するサージ電圧を人工的に再現します。この電圧は通常、規格 (例:IEC 61000-4-5) に基づいて設定されます。模擬的な高電圧が試験対象の回路に注入され、機器が正常に動作するかを検証します。

2. 試験波形の種類

試験で使用されるサージ波形は、主に波頭時間と波尾時間で定義されます。たとえば、標準的な波形は「1.2/50μs波形」と呼ばれ、これは波頭時間が1.2μs、波尾時間が50μsであることを示します。この波形は雷サージの典型的な特性を模倣しています。

3. 試験環境の設定

試験環境では、サージジェネレーターを使用して電圧や電流を制御します。また、試験対象の機器は絶縁材や保護機構を施した条件下で設置され、効果的な試験が行えるよう調整されます。

雷サージ試験の種類

雷サージ試験には、主に以下の3つの種類があります。

1. 直接雷サージ試験

直接的に雷サージを模擬し、高電圧を試験対象の機器に注入する方法です。この試験は、落雷に対する最悪のシナリオを想定して行われます。

2. 間接雷サージ試験

電線や通信線を通じて間接的に伝わるサージを模擬する試験です。この試験では、実際の環境で発生しやすいシナリオを再現し、機器の耐性を評価します。

3. 絶縁耐力試験

絶縁材料の性能を評価するための試験で、高電圧環境において絶縁体がどの程度耐久性を持つかを調べます。これは、雷サージが発生した際に絶縁が破壊されないことを確認するために行われます。

雷サージ試験の選び方

雷サージ試験は、電子機器や電力設備の安全性と信頼性を確保するために欠かせない試験です。適切な試験を実施することで、雷の影響を最小限に抑え、社会インフラや個人の生活を守ることができます。雷サージ試験を実施する際は、以下それぞれの点で選定を行います。

1. 試験対象の特性に応じた試験条件の選定

試験対象が家庭用電子機器なのか、大型の電力設備なのかによって、適切な試験条件を選定する必要があります。たとえば、小型の電子機器では間接サージ試験が適している場合がありますが、大型設備では直接サージ試験が推奨されることが多いです。

2. 規格に基づいた試験条件の選定

試験条件は、国際規格 (例:IEC 61000-4-5) や業界基準に基づいて設定します。これにより、試験結果が客観的かつ信頼性のあるものとなります。

3. 試験環境の選定

試験を実施する環境も重要です。電磁波やノイズの影響を最小限に抑えるため、専用の試験室や設備を使用することが推奨されます。

蛍光X線分析装置

蛍光X線分析装置とは

蛍光X線分析

蛍光X線分析装置は、蛍光X線分析 (XRF:X-ray Fluorescence) 手法を用いて、物質に短波長のX線を照射し、発生する特性X線を測定することで物質の化学組成を分析する装置です。

蛍光X線分析装置は測定対象に損傷を与えずに、特定元素を数ppmの感度で検出したり、主成分の定量分析を迅速に行うことが可能です。高感度・高精度の大型装置から、人が持ち運んで数秒で分析を終えることのできるポータブル装置まで、様々なタイプの分析装置があり、目的に応じたものを選択できます。

蛍光X線分析装置の使用用途

蛍光X線分析装置は金属元素の検出が手軽にできるため、製品への異物混入検査や重金属による環境汚染の判定などに用いられることが特に多いです。また、測定可能な全元素の分析が一度にできるので、成分が不明の物質の組成分析に最適で、様々な研究や調査にも幅広く用いられています。

熟練した技術者でなくても取り扱える上、分析試料の作成が容易あるいは必要ありません。非破壊で素早く手軽に化学分析が可能なため、蛍光X線分析には数多くの用途があります。

迅速さを主眼とした分析の一例は、以下の通りです。

  • 土壌や産業廃棄物、リサイクル製品などに含まれる有害元素の検出
  • 電子材料や部品の中の不純物の分析
  • 金属材料、岩石、鉱石、セメント、ガラス等の組成分析
  • 植物中の金属、リン、硫黄などの分析
  • 食品や食品容器中の異物あるいは残留添加物の分析

なお、非破壊で分析できる利点を活用した使用用途は、以下の通りです。

  • 宝石、美術品、文化財、考古学出土品、証拠物などの鑑定
  • 空港や税関での荷物検査

蛍光X線分析装置の原理

波長の短いX線を照射された物質から二次的に発生するX線を蛍光X線といいます。太陽光が様々な波長の光を含むのと同様に、蛍光X線は様々な波長のX線を含みますが、波長と強度のスペクトル中には幾つもの鋭いピークが見られます。これらは、物質中の元素が出す特性X線のピークです。

原子の電子殻に高いエネルギーを持つ (波長の短い) X線が照射されると、内側の殻にある電子が弾き出されて外側の殻に移動することで不安定な状態が発生します。この状態を解消するために、空白となった内側の殻に外側から電子が移動し、2つの殻のエネルギー差に対応した波長のX線が特性X線です。

特性X線それぞれが持っている固有の波長により元素が同定可能で、それらの強度から元素の含有量がわかります。

蛍光X線分析装置の特徴

長所

蛍光X線分析装置では、マグネシウムより重いほぼ全ての元素を同時に短時間で測定することができます。固体でも液体でも非破壊での分析が可能で、ハンドヘルドタイプの装置を用いればどこにでも持ち歩けて、分析対象に装置を数秒間押し当てるだけで測定が終了します。

短所

蛍光X線分析装置は軽元素の検出が苦手で、有機物の主要構成元素である水素、炭素、窒素そして酸素などの分析には適していません。また、元素の存在と量が測定できるだけで、元素同士の組み合わせを判定することは不可能です。

例えば鉄が検出された場合、それが金属鉄なのか酸化鉄なのかを判定できないため、カリウム塩素が検出されても塩化カリウムが存在すると断定するのは不可能です。

蛍光X分析装置の種類

蛍光X線分析では、物質に含まれるそれぞれの元素から複数の特性X線が発生するため、これらを適切な方法で分離して別々に強度を測定する装置が必要です。装置のタイプは、X線の検出方法により2種類に分けられます。波長分散型 (WDX) とエネルギー分散型 (EDX) です。

1. 波長分散型装置

分光素子によりX線を波長毎に分光して検出器に導く装置です。目的とする特性X線の強度だけを検出器で測定するもので、波長分解能が高く測定感度・精度ともに優れています。

しかし、測定試料の表面を平滑にする必要があり、分光素子と検出器を正確に回転移動させなければならないため装置が大がかりになり、価格も高めです。

2. エネルギー分散型装置

蛍光X線をそのまま検出器に取り込み、受けた信号を装置内部で電気的に処理して特性X線を検出します。波長分散型に比べると、分解能、感度、精度などは劣りますが、分析に要する時間が少なく、取り扱いが容易で、低価格です。また、小型化が容易で、表面に凹凸があっても測定できますので、ハンドヘルドタイプものを含む様々な製品が販売されています。

蛍光X線分析装置のその他情報

1. 検出可能な元素

蛍光X線分析装置は、原理的には原子番号4のベリリウムから原子番号95のアメリシウムまでの元素の特性X線を測定することができます。しかし、軽元素の特性X線は強度が弱すぎるため、原子番号12のマグネシウムより軽い元素の分析は難しいと考えた方がよいでしょう。

2.  元素の含有率を調べる定量分析

蛍光X線装置で検出された特性X線を既存のデータと比較するだけで試料にどのような元素が含まれているかがわかります。これを定性分析といいますが、それぞれの元素の含有率を調べる定量分析を行うにはもう一工夫必要です。

検量線法
正確な定量分析を行うには、元素の含有率が分かっている複数の物質 (標準試料) の特性X線強度を測定して作成した検量線を用います。分析対象である試料についても同じ特性X線の強度を測定し、検量線のどの位置にくるかを見て、元素の含有率を判定します。

FP (ファンダメンタルパラメータ) 法
標準試料がない場合、あるいは検量線を作成する手間をかけたくない場合はFP法を用います。FP法とは、分析対象試料の特性X線強度のみを用いて、試料の組成を理論的に推定する方法で、検量線を用いるより簡便ですが、精度は落ちます。

3. 選び方や注意点

分析精度と感度を要求するのであれば波長分散型、手軽さと迅速さを求めるならエネルギー分散型の装置を選択します。また、蛍光X線分析にはX線を用いるため、民間企業が装置を導入する際には30日前までに労働基準監督署に届け出なければなりません。装置の種類によってはX線作業主任者が必要になるため、導入前にメーカーに確認することをおすすめします。

耐候性試験

耐候性試験とは

耐候性試験とは、製品や材料が太陽光、降雨、湿気、温度変化などの自然環境にさらされた際にどの程度耐えられるかを調べる試験です。

この試験では、太陽光を模倣した人工光源を使用した紫外線照射や、水を繰り返し噴射して雨の影響を再現するなど、自然環境を人工的に再現することで製品の劣化を促進させます。その結果、天候の変化による劣化具合や耐性を評価することが可能です。実験室で人工環境を作り出す方法と、実際の屋外に製品をさらす方法があります。

耐候性試験の使用用途

耐候性試験は、製品や材料が実際の使用環境でどの程度性能を維持できるかを評価するために用いられます。この試験は、製品開発、品質保証、さらには材料選定の基準を確立するために重要な役割を果たします。以下はその主な使用用途です。

1. 建築材料や外装材の評価

建築材料や外装材は、長期間にわたり太陽光や雨風、温度変化にさらされます。そのため、耐候性試験を通じて、これらの材料がどの程度耐久性を持つかを確認することが求められます。たとえば、外壁塗料の退色や劣化、金属製雨どいの錆びやすさ、防水シートの劣化などが評価の対象です。これにより、建材の選定や改良が進み、より信頼性の高い建築物の実現に貢献します。

2. 自動車部品の評価

自動車の外装部品は、強烈な紫外線、急激な温度変化、さらには塩害など過酷な条件に耐える必要があります。耐候性試験を行うことで、車体塗装の耐久性、プラスチックやゴム製パーツの劣化具合を検証し、長期間にわたる性能の維持が確認されます。また、試験結果をもとに、劣化を防ぐための保護コーティングや材料選定が進められます。

3. 消費財や衣料品の評価

消費者向け製品、特に衣料品やアウトドア用品は、太陽光や雨風にさらされることが多いため、耐候性が重要です。耐候性試験では、紫外線による色褪せ、素材の劣化、撥水性能の低下などが評価されます。この評価により、製品の改良が進み、消費者が長く使用できる高品質な製品を提供することが可能となります。

耐候性試験の原理

耐候性試験は、自然環境の条件を模倣して、製品や材料の耐久性を評価します。基本原理は、人工的に作り出した厳しい環境下で製品を加速的に劣化させることです。

1. 紫外線照射試験

太陽光に含まれる紫外線は、材料劣化の主な要因の一つです。この試験では、人工光源を用いて紫外線を照射し、製品の色褪せや素材の脆化を調査します。紫外線耐性が低い製品は、特に長期使用での性能低下が問題となるため、対策が必要です。

2. 湿気および温度変化の再現

温湿度サイクル試験は、高温・高湿状態と低温状態を繰り返し製品に与えることで、温度や湿気の影響を評価します。電子機器や密閉構造の製品においては、内部結露や部品間の膨張収縮の影響が試験を通じて確認されます。

3. 塩水噴霧試験

塩害に対する耐性を調べるために行われる試験です。塩分を含む霧を製品に噴射して、錆や腐食の進行具合を観察します。海岸沿いで使用される製品や輸送中に塩害にさらされる可能性のある部品において、この試験は特に重要です。

耐候性試験の種類

耐候性試験には多くの種類があり、それぞれ異なる環境条件を模倣しています。主な試験方法は以下の通りです。

1. 屋外暴露試験

実際の自然環境に製品をさらして評価する方法です。環境条件が厳しい地域を選んで行うことで、より実際に近い劣化状況を確認することができます。試験期間は通常数ヶ月から1年以上に及び、建築材料や長寿命が求められる製品に適しています。

2. 加速劣化試験

人工環境を用いて、紫外線、湿気、温度変化などを短期間に集中して与える試験です。この方法により、数年分の劣化を数週間から数ヶ月で再現することが可能です。製品開発の初期段階での評価に用いられることが多いです。

3. サイクル試験

異なる環境条件を交互に繰り返す試験です。たとえば、高温多湿と低温乾燥の状態を連続的に与えることで、複合的な劣化要因に対する製品の耐性を評価します。

耐候性試験の選び方

耐候性試験を選定する際には、製品の使用環境や目的に応じた方法を選ぶ必要があります。屋外使用が前提の製品には屋外暴露試験が適しており、短期間での結果が求められる場合には加速劣化試験が有効です。また、製品の材質や設計に応じて、塩水噴霧試験や温湿度サイクル試験を組み合わせることも効果的です。

耐候性試験は、製品や材料の信頼性を確保し、長期間にわたり安定した性能を提供するために欠かせない工程です。適切な試験を行うことで、製品の品質を向上させ、消費者や市場の期待に応えることが可能となります。また、これにより製品の寿命が延び、廃棄物の削減や環境への負荷軽減にもつながるため、持続可能な社会の実現にも貢献します。

耐電圧試験

耐電圧試験とは

耐電圧試験

耐電圧試験とは、電気機器が使用される際の電圧に対して、十分な絶縁耐力が備わっているかどうかを確認する試験です。

この試験では、機器が通常の運転電圧の10倍から20倍程度の高電圧に耐えられるかを調べます。具体的には、決められた時間内にこの試験電圧を機器に印加し、絶縁が施されているかを確認します。破壊が起こる危険のある製品を市場に流通させないという点において、事故のリスクを軽減する重要な役割を果たします。適切な耐電圧試験を実施することにより、製品の品質と安全性が確保され、長期的に安定した使用が保証されます。

耐電圧試験の使用用途

耐電圧試験は、製品が設計通りの条件で安全かつ正常に動作することを確認するための重要なプロセスです。以下のような用途で広く使用されています。

1. 品質管理における役割

耐電圧試験は、製造工程において絶縁体や電気部品の品質を検査するために実施されます。これにより、初期不良や設計上の問題を早期に検出し、製品の信頼性を向上させることが可能です。

2. 安全性確保のための検証

電気機器は、設置環境や使用条件によって高い絶縁性能が要求されます。耐電圧試験は、感電や漏電といった危険を回避し、使用者の安全を保証するために実施されます。特に、医療機器や家庭用電化製品では、この試験が欠かせません。

3. 規格適合性の確認

国際規格や業界基準を満たすために、耐電圧試験が行われます。これにより、製品が市場で受け入れられるために必要な条件をクリアすることができます。

耐電圧試験具体的な使用例としては、高電圧設備や電子回路基板の設計・製造プロセスにおける検査が挙げられます。これらの用途では、耐電圧試験が品質と安全性の保証に大きく寄与しています。

耐電圧試験の原理

耐電圧試験の基本的な原理は、通常運転時の電圧を遥かに上回る高電圧を機器に印加し、その絶縁性能を評価することにあります。試験の主な手順は以下の通りです。

  1. 印加電圧の設定
    試験では、通常使用される電圧の10倍から20倍程度の高電圧を試験対象に印加します。この高電圧は一定時間にわたって安定的に加えられ、機器がその電圧に耐えることができるかどうかを確認します。

  2. 漏洩電流の測定
    試験中、対象機器から漏れる微弱な電流を測定します。この漏洩電流が規定値を超える場合、絶縁性能に問題があることが示唆され、試験は不合格となります。この測定により、機器の絶縁状態を精密に評価することができます。

  3. 絶縁破壊の確認
    印加された高電圧に耐えきれない場合、絶縁が破壊されます。絶縁破壊が発生すると、火花放電や漏電が発生し、その機器は試験に不合格となります。この現象を確認することで、市場に流通すべきでない不良品を発見することができます。

耐電圧試験を実施することにより、製品が適切な絶縁性能を持ち、使用中の安全性が確保されていることを確認できます。

耐電圧試験の主な種類

耐電圧試験には、評価対象や目的に応じてさまざまな種類があります。それぞれの試験は、絶縁性能や安全性を評価するために必要不可欠であり、設計段階から量産品に至るまでの品質確保に役立ちます。

1. 交流耐電圧試験

交流耐電圧試験は、商用電源と同様の交流電圧を用いて行う試験です。これは最も一般的な耐電圧試験の一つであり、多くの電気機器で採用されています。実際の使用環境を模した試験が可能ですが、高電圧印加中の発熱や漏洩電流の監視がが課題です。

2. 直流耐電圧試験

直流耐電圧試験は、直流電圧を用いる方法で、高い絶縁抵抗が必要な場面でよく使われます。直流環境での信頼性評価が可能であることが利点で、電圧が安定するまでの時間が長いことが課題です。

耐電圧試験は、製品が安全に使用できるかどうかを保証するために欠かせない試験です。この試験を通じて、製品が国際的な安全基準をクリアし、消費者にとって安心して使用できる品質であることが確認されます。また、耐電圧試験を適切に実施することで、事故のリスクを最小限に抑えることができます。製造者にとって、この試験は品質管理の一環であり、社会的責任を果たすためにも重要な役割を果たします。

絶縁抵抗試験

絶縁抵抗試験とは

絶縁抵抗試験は、電気機器や配線の絶縁性能を評価するための試験です。

主に漏電や絶縁劣化を検出し、安全性を確認する目的で行われます。試験では、絶縁抵抗計 (メガー) を用いて、対象機器に一定の直流電圧を印加し、漏れ電流を測定します。測定された電流値から絶縁抵抗値が計算され、値が高いほど絶縁性能が優れていると判断されます。

試験は工場出荷時、設置時、定期点検時に実施され、安全基準に基づいて判定されます。絶縁抵抗試験は感電事故や火災の防止に重要で、電気設備の信頼性と長期的な運用を支える基本的な保守作業の一つです。

絶縁抵抗試験の使用用途

絶縁抵抗試験の主な使用目的を以下に記します。

  • 配電設備:配線やスイッチギアの絶縁性能の確認
  • 電気機器:モーター、トランス、ヒーターなどの機器の絶縁状態の評価
  • 工場や建物の保守:漏電や事故を未然に防ぐための定期試験
  • 品質管理:新しい電気機器や部品の出荷前検査
  • 規格への適合判断:電気設備が定められた規格や基準に適合しているかの検査

電気機器や配線は、感電や漏電などの事故を防ぐために電流が流れる導体を絶縁物で覆うように作られています。しかし経年劣化や、吸湿、化学変化、汚染などの影響から絶縁物の抵抗値は徐々に小さくなっていく傾向があり、定期的な絶縁抵抗試験の実施が求められます。

絶縁抵抗試験の原理

絶縁抵抗試験は、オームの法則を基にした試験です。印加電圧と流れる漏れ電流の測定値から、絶縁抵抗を計算します。

ただし、印加電圧は対象機器に実施に印加される電圧と同程度の比較的高い電圧に設定します。印加電圧が低く過ぎると絶縁破壊によるショートなどを見落とす可能性があります。一方で、例えば電池駆動などの耐電圧が比較的小さな機器では、印加電圧が高過ぎると回路を過電圧破壊する恐れがあります。

絶縁抵抗試験は以下の方法で実施します。

1. 試験の準備

試験対象の電気回路の電源を遮断し、回路内の電荷をディスチャージします。また、必要に応じて感電防止を防止するために試験対象を接地します。測定対象に適した絶縁試験装置を準備する必要があります。

2. 試験手順

試験対象となる2点のポイントに、絶縁試験機の測定端子を接続し試験電圧を印加します。絶縁試験装置は2点間に流れる電流から抵抗値を算出し、表示装置上に表示します。

試験電圧は複数用意されていて選択可能であり、測定対象により最適なものを選びます。一般的には次のように使い分けます。

  • 25/50V:低電圧で動作する機器の絶縁測定
  • 100/125V:電源が100V系の機器の維持管理
  • 250V:電源が200V 系の機器の維持管理
  • 500V:600V以下の配電路や機器の維持管理、竣工時検査
  • 1000V:600Vを超える回路、機器の絶縁測定

3. 測定結果の判断

測定対象により絶縁抵抗の目安や規格が定められているため、測定結果と比較して良否判断を行います。

絶縁試験の種類

絶縁試験には、電気的に独立した2点間の絶縁抵抗測定と、回路内の1点と大地 (アース) 間の絶縁抵抗の測定があります。前者は互いに絶縁されているケーブル間の絶縁性能であり、短絡事故を防ぐために実施します。後者は回路から大地に漏れる電流を算出して、感電事故を防ぐための試験です。

絶縁試験のその他情報

1. 絶縁試験装置の種類

市販されている絶縁試験装置には以下のタイプがあります。これらの試験機を使い分けることで、用途に応じた効果的な絶縁試験を実施できます。

1. ハンドヘルド型
小型で持ち運びが容易なものです。主に現場に持ち出して点検するための機器です。

2. 据置型
大型で高精度な測定が可能な機器で、基本据え置き状態で使います。主に工場や試験所などで使用されるものです。

3. デジタル表示型
抵抗値を数値で表示します。多くの機器では測定結果を記録しておく機能があります。

4. アナログ型
かつて主流であったアナログメーターによる表示機能を備えた絶縁試験機で、表示が直感的で分かり易いことから根強い需要があります。

2. 絶縁試験の注意事項

絶縁抵抗試験は、電気設備の安全性を確保するための基本的な試験です。定期的な実施と正しい手順の遵守により、事故の予防と設備の長寿命化が期待できます。以下の点に注意して試験を実施します。

1. 安全対策
試験前後に電源の遮断と放電を必ず実施する必要があります。また、試験中は絶対に試験対象に触れてはいけません。うっかり触ると感電するおそれがあります。

2. 環境条件
湿度や温度の影響を受けやすいため、適切な環境条件での実施が必要です。特に雨天など高湿度な条件では、絶縁抵抗値は低くなります。

3. 測定結果の解釈
測定値が規格値を満たさない場合、絶縁劣化や破損の可能性を疑い、追加試験を検討します。放置したままだと危険な場合があります。

4. 定期点検
定期的な試験を行い、記録を保管することで設備の保守管理に役立ちます。

破壊試験

破壊試験とは

破壊試験

破壊試験とは、鋼材やアルミニウムなどの非鉄金属を含む材料に対して、引っ張り、圧縮、ねじりなどの荷重を加え、亀裂が入る、または完全に破断するまでの強度や性質を測定する試験方法のことです。

破壊試験の目的は、材料の限界性能を明らかにすることで、構造物や機械が様々な環境下で十分な耐久性を持つかを評価することにあります。

建築や製造業、航空宇宙など、多岐にわたる分野で使用されており、適切な材料選定や製品の安全性確保に不可欠です。一方で、試験によってサンプルが破壊されるため、検査対象を壊さずに内部状態を評価する非破壊試験が併用されるケースもあります。

破壊試験の使用用途

破壊試験の主要な用途は、構造物や機械に使用される材料の強度や性質を科学的に検証し、安全性を確保することにあります。破壊試験の使用用途として代表的なもので主に3種類が挙げられます。

1. 建築分野における使用例

建築用鉄骨やコンクリートに対して、外部環境や長期使用による劣化を想定し、十分な耐荷重性能があるかを評価します。特に地震や強風といった極端な条件下での耐久性検証に用いられます。

2. 製造業における用途

自動車や航空機の部品が長期間にわたって安全に動作するかどうかを確認します。これには、部品が高温、高圧、振動などに耐えられるかを試験することが含まれます。

3. 品質管理および規格適合

国際規格 (ISO) や各国の産業基準 (JISなど) に準拠していることを証明するため、材料の特性を数値化します。材料の特性を数値は、製品開発や改良に役立てられます。

また、破壊試験は製品開発段階で潜在的な欠陥や弱点を発見し、コスト削減や事故防止につながる点でも欠かせない手法です。

破壊試験の原理

破壊試験の原理は、試験片に特定の荷重を段階的に加え、材料がどのように変形し、最終的に破壊に至るかを観察することです。破壊の過程で測定されるのは、材料の限界性能や破壊の兆候を示すデータです。

荷重は静的 (一定速度で加える) または動的 (急激に加える) の方法で適用されます。例えば、引っ張り試験では試験片に徐々に引っ張る力を加え、圧縮試験では押しつぶす力を加えます。

試験中に記録されるデータは、荷重と変位、破断時の応力、ひずみなどです。データにより、材料の引っ張り強度、降伏強度、弾性率などを評価します。

試験後には、破断面の形状や発生した亀裂のパターンを分析します。破壊試験の観察結果は、材料内部の構造的弱点や欠陥を特定するのに役立てられます。

破壊試験の種類

破壊試験の種類は、試験の目的や材料の特性に主に引っ張り試験、圧縮試験、ねじり試験、曲げ試験、衝撃試験の5種類が挙げられます。

1. 引っ張り試験

引っ張り試験とは、試験片に引っ張る力を段階的に加え、破断するまでの応力-ひずみ曲線を記録する試験のことです。引っ張り試験によって、引っ張り強度、降伏点、伸び率、さらには弾性限界が得られます。金属材料、プラスチック、ゴムなどの材料の特性評価に使用される試験であり、製造業や建設業で主に用いられています。

2. 圧縮試験

圧縮試験とは、試験片を押しつぶす力を加えて圧縮強度やひずみ硬化特性を評価する試験のことです。コンクリート、セラミックス、金属部品など、圧縮荷重にさらされる可能性のある材料に適用されます。

3. ねじり試験

ねじり試験とは、試験片にねじる力を加え、せん断応力やねじり剛性を測定する試験のことです。ねじり試験は、シャフト、ボルト、スクリューなど、ねじり荷重がかかる部品に特化した性能評価に使用されます。例えば、自動車の駆動部品や航空機のエンジン部品がねじり応力にどの程度耐えられるかを測定する際に使用されます。

4. 曲げ試験

曲げ試験とは、試験片に曲げる力を加えてその強度や弾性限界を測定する試験のことです。曲げ試験は、建築資材、繊維強化プラスチック、板金などの材料評価に使用されます。試験片が破壊に至る際の荷重や変形挙動を記録し、結果をもとに材料の耐久性を評価します。

5. 衝撃試験

衝撃試験とは、試験片を高速で破壊し、破壊した際の衝撃エネルギーを測定する試験のことです。シャルピー衝撃試験やアイゾッド衝撃試験といった方法が一般的で、材料の靭性や脆性を評価する際に用いられます。

衝撃試験は、極端な条件下での材料の挙動を確認するために特化した試験です。例えば、寒冷地で使用される鉄鋼製品の脆性破壊リスクを評価する際に有効です。

参考文献
https://www.tfs.yamazen.co.jp/column/single-22.html
https://www.kaken.or.jp/test/search/detail/76#:~:text=%E3%80%8C%E5%BC%95%E5%BC%B5%E5%BC%B7%E3%81%95%E8%A9%A6%E9%A8%93%E3%80%8D%E3%81%A8,%E3%81%AE%E3%81%8C%E7%89%A9%E6%80%A7%E8%A9%A6%E9%A8%93%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/testing-machine/material/compression.jsp
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/testing-machine/material/bending.jsp
https://evort.jp/article/impact-test

温度サイクル試験

温度サイクル試験とは

温度サイクル試験は、製品や部品を異なる温度環境に繰り返しさらすことで、その耐久性や信頼性を評価する試験です。

試験対象を設定された高温と低温の環境に繰り返し曝露し、温度変化による物理的・化学的な劣化や故障の可能性を確認するものです。温度の上限・下限や保持時間、サイクル数は製品の用途や規格に基づいて設定します。材料の膨張・収縮、熱応力、接合部の剥離、ひび割れ、電子部品の接触不良などの問題が検出されることがありますが、これにより製品の信頼性と耐久性が確認され、長期的な性能維持が保証されます。

温度サイクル試験の使用用途

温度サイクル試験は、特に厳しい環境下で使用される部品や高い信頼性を求められる製品の、品質保証の一環として使用されます。

1. 主に使われる製品分野

  • 電子機器/半導体:チップ部品、基板、コネクタの信頼性評価を目的とします。
  • 自動車産業:エンジン部品、センサー、コントローラーの耐久試験の一環として使用します。
  • 航空宇宙産業:機体部品、電子制御機器の過酷な環境下での耐久性を確認します。
  • 医療機器:研究用機器や医療機器の性能劣化の評価に利用します。
  • 建築/土木:材料の耐候性や長期的な性能維持の評価試験の一部として実施します。

2. 温度サイクル試験が有効な項目

  • 製品の耐久性評価:温度変化による物理的/化学的劣化を確認するために有効です。
  • 設計の改善:試作品に対してストレスを与え、設計段階での潜在的な欠陥を検出します。
  • 品質保証:製造後の品質保証および出荷前にストレスを加えて、商品の品質を確認します。
  • 故障解析:中途半端に動作している不良品に対して、ストレスをかけて故障状態を明確にし、その故障モードを特定することに役立ちます。

以上のように温度サイクル試験は、製品の長期的な信頼性や寿命を評価し、設計や製造工程の改善に寄与する重要な試験です。適切な条件設定と評価手法を用いることで、製品の品質と耐久性を確保することに役立ちます。

温度サイクル試験の原理

温度サイクル試験では、製品や部品を一定の高温と低温の環境に繰り返し晒し、温度変化による物理的および化学的な影響を検証します。材料は温度変化に伴って膨張・収縮を繰り返し、その過程で応力が発生します。特に異なる材料が接合された部品では、材料ごとの熱膨張率の違いによる内部応力が蓄積し、破損や劣化を引き起こす可能性があります。

温度サイクル試験の手順を以下に示します。

  1. 試験前の準備
    試験対象物の外観検査、寸法測定、性能を確認しておきます。
  2. 試験条件の設定
    試験温度条件、雰囲気中での保持時間、温度変化の速度、試験回数などの条件を設定します。
  3. 温度サイクルの実施
    設定した温度範囲で温度上昇と降下を繰り返し、最高温度下並びに最低温度下では一定時間保持します。
  4. 試験後の評価
    外観検査、性能試験、物理的特性を再測定し、試験前のデータと比較検討します。

温度サイクル試験の種類

温度サイクル試験では、主に以下の異なる試験機が使用されます。これらの試験機は、温度制御精度、耐久性、被試験品の容量などの仕様に応じて選定され、製品の信頼性試験に重要な役割を果たします。

1. 恒温恒湿槽

恒温槽内を使った試験では、被試験サンプルに対して、槽内に高温高湿の空気を充満させて高温・高湿下に晒し、次いで冷やした空気を槽内に送り込んで極低温まで冷却することを繰り返してストレスを与えます。恒温恒湿槽では槽内の温度・湿度を正確に制御できるため、正確な温度サイクルを再現できることが特徴の一つです。

2. 温度衝撃試験装置

急激な温度変化を繰り返す装置で、高温状態を維持した恒温槽と低温状態を維持した恒温槽を用意し、被試験サンプルが二つの温度層を移動する方式です。チャンバーとも呼ばれます。被試験サンプルは電子部品など小型のものに限りますが、温度変化が極めて急峻なので、熱的なストレスは非常に大きいものになります。

温度サイクル試験のその他情報

温度条件と試験時間

温度サイクル試験の温度条件並びに試験時間は、製品が使用される環境条件や要求寿命に応じて設定されます。一般的な条件は以下の通りです。

  • 試験温度範囲:-40°C ~ 150°C(電子部品の場合)
  • 温度変化速度: 5°C ~ 100°C/分
  • 保持時間:被試験品の特性、熱容量などを基に、最高温度/最低温度下で10分 ~ 数時間保持
  • 試験回数:要求される信頼性条件に応じて数十回 ~ 数千回

これらの試験条件は、IEC、MIL-STD、JISなどの特定の規格 下手詳細に規定されており、それに従うことが求められます。