温度サイクル試験とは
温度サイクル試験は、製品や部品を異なる温度環境に繰り返しさらすことで、その耐久性や信頼性を評価する試験です。
試験対象を設定された高温と低温の環境に繰り返し曝露し、温度変化による物理的・化学的な劣化や故障の可能性を確認するものです。温度の上限・下限や保持時間、サイクル数は製品の用途や規格に基づいて設定します。材料の膨張・収縮、熱応力、接合部の剥離、ひび割れ、電子部品の接触不良などの問題が検出されることがありますが、これにより製品の信頼性と耐久性が確認され、長期的な性能維持が保証されます。
温度サイクル試験の使用用途
温度サイクル試験は、特に厳しい環境下で使用される部品や高い信頼性を求められる製品の、品質保証の一環として使用されます。
1. 主に使われる製品分野
- 電子機器/半導体:チップ部品、基板、コネクタの信頼性評価を目的とします。
- 自動車産業:エンジン部品、センサー、コントローラーの耐久試験の一環として使用します。
- 航空宇宙産業:機体部品、電子制御機器の過酷な環境下での耐久性を確認します。
- 医療機器:研究用機器や医療機器の性能劣化の評価に利用します。
- 建築/土木:材料の耐候性や長期的な性能維持の評価試験の一部として実施します。
2. 温度サイクル試験が有効な項目
- 製品の耐久性評価:温度変化による物理的/化学的劣化を確認するために有効です。
- 設計の改善:試作品に対してストレスを与え、設計段階での潜在的な欠陥を検出します。
- 品質保証:製造後の品質保証および出荷前にストレスを加えて、商品の品質を確認します。
- 故障解析:中途半端に動作している不良品に対して、ストレスをかけて故障状態を明確にし、その故障モードを特定することに役立ちます。
以上のように温度サイクル試験は、製品の長期的な信頼性や寿命を評価し、設計や製造工程の改善に寄与する重要な試験です。適切な条件設定と評価手法を用いることで、製品の品質と耐久性を確保することに役立ちます。
温度サイクル試験の原理
温度サイクル試験では、製品や部品を一定の高温と低温の環境に繰り返し晒し、温度変化による物理的および化学的な影響を検証します。材料は温度変化に伴って膨張・収縮を繰り返し、その過程で応力が発生します。特に異なる材料が接合された部品では、材料ごとの熱膨張率の違いによる内部応力が蓄積し、破損や劣化を引き起こす可能性があります。
温度サイクル試験の手順を以下に示します。
- 試験前の準備
試験対象物の外観検査、寸法測定、性能を確認しておきます。 - 試験条件の設定
試験温度条件、雰囲気中での保持時間、温度変化の速度、試験回数などの条件を設定します。 - 温度サイクルの実施
設定した温度範囲で温度上昇と降下を繰り返し、最高温度下並びに最低温度下では一定時間保持します。 - 試験後の評価
外観検査、性能試験、物理的特性を再測定し、試験前のデータと比較検討します。
温度サイクル試験の種類
温度サイクル試験では、主に以下の異なる試験機が使用されます。これらの試験機は、温度制御精度、耐久性、被試験品の容量などの仕様に応じて選定され、製品の信頼性試験に重要な役割を果たします。
1. 恒温恒湿槽
恒温槽内を使った試験では、被試験サンプルに対して、槽内に高温高湿の空気を充満させて高温・高湿下に晒し、次いで冷やした空気を槽内に送り込んで極低温まで冷却することを繰り返してストレスを与えます。恒温恒湿槽では槽内の温度・湿度を正確に制御できるため、正確な温度サイクルを再現できることが特徴の一つです。
2. 温度衝撃試験装置
急激な温度変化を繰り返す装置で、高温状態を維持した恒温槽と低温状態を維持した恒温槽を用意し、被試験サンプルが二つの温度層を移動する方式です。チャンバーとも呼ばれます。被試験サンプルは電子部品など小型のものに限りますが、温度変化が極めて急峻なので、熱的なストレスは非常に大きいものになります。
温度サイクル試験のその他情報
温度条件と試験時間
温度サイクル試験の温度条件並びに試験時間は、製品が使用される環境条件や要求寿命に応じて設定されます。一般的な条件は以下の通りです。
- 試験温度範囲:-40°C ~ 150°C(電子部品の場合)
- 温度変化速度: 5°C ~ 100°C/分
- 保持時間:被試験品の特性、熱容量などを基に、最高温度/最低温度下で10分 ~ 数時間保持
- 試験回数:要求される信頼性条件に応じて数十回 ~ 数千回
これらの試験条件は、IEC、MIL-STD、JISなどの特定の規格 下手詳細に規定されており、それに従うことが求められます。