導電性マット

導電性マットとは

導電性マットとは、人体に帯電した静電気を徐々に放電する為のマットです。

床面に敷かれることが多く、作業場や工場、ラボ、クリーンルームなどで使用されます。また、耐久性や耐摩耗性が求められる場合もあり、定期的なメンテナンスが必要です。

導電性マットの使用用途

導電性マットは導電性の素材で作られており、静電気の放電や電磁波のシールディング、静電気による機器の損傷を防ぐなどの目的で使用されます。

1. 静電気防止

導電性マットは、静電気の発生や放電のリスクを低減するために床面に敷かれています。特に作業場や工場、クリーンルームなどで使用されることが多く、人や機器の静電気の放電を促進します。

2. 電磁波シールディング

導電性マットは、電子機器や精密機器の周囲に配置され、外部からの電磁波の侵入を遮断します。これにより、機器の正常な動作を保護し、電磁干渉 (EMI) の問題を軽減します。

3. 防爆環境

導電性マットは、爆発の危険性のある環境で使用される場合があります。爆発性ガスや蒸気の存在する場所では、静電気の発生と放電を抑制しなければなりません。導電性マットを敷くことで、放電による引火リスクを軽減できます。

4. 感電防止

導電性マットは、地面や接地システムに接続されることで、人や機器の安全な接地状態を実現します。確実な接地は、感電や機器の故障のリスクを軽減し、安全性を向上させます。

5. ラボやクリーンルーム

導電性マットは、研究室やクリーンルームなどの特定の環境で使用されることもあります。静電気の管理や電磁波シールディングが重要な要素となる環境で、導電性マットがその一助として機能することが期待できます。

導電性マットの原理

導電性マットは、導電性素材による静電気放電を促すものです。以下に導電性マットの原理を簡潔に説明します。

1. 導電性素材

導電性マットは、通常、導電性の素材で作られています。この素材には、導電性繊維や導電性ゴム、導電性ポリマーなどが使用されますが、これらの素材の抵抗率は一般的には10-6 Ωmから10-4 Ωm 程度で、鉄と比較すると1桁から3桁大きな抵抗値です。

抵抗値が小さいと静電気放電時に大きな電流が流れて危険なため、敢えて抵抗値が大き目の物質を採用しています。導電性マットには、表面や内部に導電性素材が織り込まれており、電荷や電流がこれらの素材を通してアースに流れます。

2. 静電気の放電

導電性マットは、帯電している物体から静電気の放電を促進する役割を果たします。静電気は物体や人体に蓄積 (帯電) されますが、導電性マットに織り込まれている導電性素材に触れると、静電気は素早く放電されます。

3. 大地への接続

導電性マットは、地面や接地システムに接続されることで効果を発揮します。人や物体に帯電した静電気 (電荷) は、導電性マットに触れた瞬間にアース線を介して大地へ流れます。

 

以上の様に、導電性マットの効果は導電性素材による電気の導通と静電気の放電によるものです。これにより、静電気の抑制や安全性の向上、電磁波シールディングなどの目的を達成することができます。

導電性マットの選び方

導電性マットにはいくつかの種類がありますが、適切な導電性マットを選ぶためには、以下の要素を考慮する必要があります。

1. 導電性素材の種類

導電性マットに使用される導電性素材はさまざまで、導電性繊維、導電性ゴム、導電性ポリマーなどが一般的です。用途や要件に応じて、素材の特性 (耐久性、抗菌性、耐熱性など) を考慮し、適切な素材を選ぶ必要があります。

2. 電気的な性能

導電性マットの電気的な性能も重要です。素材の抵抗率を確認し、静電気の放電能力やアースの効果を検討する必要があります。

3. サイズと形状

導電性マットはサイズや形状がさまざまで、作業スペースや設置場所に合わせて適切なサイズを選ぶ必要があります。現場でカットできるタイプも存在し、設置環境に合わせて適切な形状に加工することも可能です。

4. 耐久性とメンテナンス性

導電性マットの耐久性も重要です。耐摩耗性や耐化学性が求められる場合、それに応じた耐久性を持つマットを選ぶ必要があります。また、メンテナンスの容易さを踏まえ、清掃や定期的な点検が簡単に行えるマットを選ぶことも重要なポイントです。

5. 規格と規制要件

特定の産業や環境では、導電性マットに関して特定の規格や規制要件 (RoHS2規制や消防法など) が存在する場合があります 。適用される規格や要件を確認し、それに準拠したマットを選定して下さい。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/283/
https://detail-infomation.com/electrostatic-conductive-mat/

比例計数管

比例計数管とは

比例計数管とは、放射線検出器の一種で、カウント当りの全電離が最初の電離現象で生み出された電離に比例するよう印加電圧が調整された計数管です。

エネルギーを持つ粒子が気体中を通過すると、気体の分子が電離し電子が生成されます。比例計数管は、電子の量すなわち電流を計測することで、放射線を検出する装置です。似たような原理の放射線計測器として、電離箱とGM (ガイガー・ミュラー) 計数管がありますが、これらは電流を計測するために印加する電圧の大きさが異なります。電離箱は比例計数管よりも低い電圧領域で動作し、GM計数管は比例計数管よりも高い電圧領域で動作します。

比例計数管の使用用途

比例計数管は、X線、α線、β線、γ線や中性子線などの放射線を検出し、放射線数やエネルギーを測定するために使用されます。構造が単純で製作も比較的容易であるため、学術研究などの現場で使用される検出器です。

一般的には空間線量の測定に使われ、特に中性子検出、β線汚染検出などの用途があります。また、X線用比例計数管は、半導体検出器に比べて入射窓が大きく、効率が良いという理由から、メッキの厚さなどを非接触で測定する蛍光X線膜厚計に、検出器として組み込まれることもあります。

比例計数管の原理

1. 概要

比例計数管は、通常、円筒形のアルミニウム製容器で製造されており、入射窓から放射線が管内に入る仕組みです。容器の中にはアルゴンヘリウム、ネオンなどの不活性ガスと、メタン、ブタンなどを混合した気体を充填し、管の内部に張ったワイヤーに高電圧をかけて印加します。

入射した放射線が気体中を通過するとき、その軌跡沿いの気体は、電離して電子と陽イオンを生成します。このとき発生した電子を一次電子と呼びますが、一次電子は管内の電界で加速され、新たに気体を電離し、この電離電子がさらに次の電離を引き起こして電子の数が爆発的に増えます。これがガス増幅と呼ばれる現象です。増幅した電子は管内のワイヤーに流れ込み、これが電気パルスとして検出されます。

このとき増幅された電子の個数が入射放射線のエネルギーに比例することが、この検出器は比例計数管と呼ばれる所以です。電子の増幅率は気体の種類と印加電圧に依存しますが、気体と電圧が分かれば、入射放射線のエネルギーを測定することができます。

2. 電離箱との比較

電離箱は、比例計数管と似たような原理ですが、低い電圧で動作するため、ガス増幅が起こりません。そのため、比例計数管は電離箱より感度が高いというメリットがあります。一方、比例計数管は、電離箱のように一次電子の数を正確に測定することができず、エネルギー分解能が劣るというデメリットもあります。

3. GM計数管との比較

GM (ガイガーミューラー) 計数管は比例計数管と殆ど同じ仕組みですが、比例計数管よりも印加電圧が高いという特徴があります。GM計数管で使用される印加電圧の領域はGM領域 (1000V〜) と呼ばれます。GM領域では、電子雪崩による気体増倍作用に加え、更に光子の作用による増倍作用が加わることで、入射放射線のエネルギーに関わらず波高が増大する領域です。比例計数管では放射線のエネルギーを知ることができますが、GM計数管は放射線のエネルギーを測定することができないとされています。

4. 比例計数管の特徴

上記のような他の計数管の特性を踏まえると、比例計数管は下記のような特徴があると言えます。

  • 検出感度が高い
  • 放射線のエネルギー分析が可能
  • 混合放射線を弁別することができる
  • 電流パルスの持続時間が短く、計数率が比較的高い条件で使用できる

また、比例計数管は特に電離箱では十分な感度を得ることのできないβ線の測定に適しています。GM管と比較して分解時間が短い (0.2〜0.5μsec) のでより高計数率の測定が可能です。また、適切なガス増幅率となるように印加電圧を十分に高くすることで、増幅器の増幅率を下げることができ、S/N比が良くなるという特徴もあります。

比例計数管の種類

主だった比例計数管の種類には、熱中性子検出用の3He比例計数管、BF3比例計数管などがあります。その他では、キセノン (Xe) や低エネルギーX線用にネオン (Ne) が封入ガスとして使用されています。

直径 (13mm径、19mm径、25mm径など) や全長など様々な寸法バリエーションがあり、また、動作電圧やガス圧なども多様なラインナップが展開されています。用途に合わせて適切なものを選択することが可能です。

参考文献
http://www.u.phys.nagoya-u.ac.jp/uxge/r_e/r_e6_1.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsms1952/5/39/5_39_761/_pdf
http://ieice-hbkb.org/files/12/12gun_06hen_05.pdf
http://www.020329.com/x-ray/bougo/contents/chapter3/3-3-ref02.html
https://www.flex-service.com/products/coatingxrf/

固定減衰器

固定アッテネータとは

固定アッテネータ (固定減衰器とも呼ばれる。)(Attenuator、アッテネータ)とは、送られてきた信号を所定のレベルまで減衰させるために回路や機器のこと言い、一般的に減衰量の単位としてdB(デシベル)を使います。

両端がBNCコネクタやF型コネクタのオスとメスとなっていて、両コネクタ間にアッテネータの本体が挟まっており、太さもコネクタと同程度のサイズでコンパクトな形状をしているものが主流です。

中には、数種類の減衰量を切り替えて使用することができるタイプの固定アッテネータもあります。

固定アッテネータは電気信号だけでなく光などの物理的な量の計測の際にも使用されます。

固定アッテネータの使用用途

固定アッテネータを用いる目的としては入力信号に対して出力側へ供給する信号のレベルを調整するために使用させたり、インピーダンス整合と言って送り出す側のインピーダンスに対して受け入れる側のインピーダンスを変換することにより期待する出力を得たり、回路上の不要な反射波と言われる信号の発生を防ぐために使われます。

固定アッテネータは信号を減衰させるものですが、逆に入力された信号のレベルが低すぎるためにこれを期待する信号レベルまで増幅させる回路もしくは機器にブースターと言われるものがあります。

ブースターは、例えば郊外など受信電波が弱まった地域において、入力信号を増幅することによりテレビやラジオなどの受信状態を改善する場合などに使われます。

固定アッテネータの原理

固定アッテネータはT型やπ型と言われる形状に抵抗を配置することにより構成されています。
配置する抵抗値およびT型やπ型回路の段数により減衰量を設計することができます。

固定アッテネータの主たる利用例としてオーディオ機器における固定アッテネータの活用とテレビなどの放送電波の受信機器における固定アッテネータの活用が挙げられます。

オーディオ機器において、内部回路において、入力されたオーディオ信号に対して、ユーザが設定した様々なイフェクトを付加したりして最終的にスピーカに接続されます。

個々の様々なイフェクトは、多くの場合、夫々独立した回路構成をとっていることがあります。ある回路にて低域特性をブーストする回路があった場合、その出力を次段の回路に信号を渡します。

この場合、出力させる信号のレベルが低すぎてもいけませんし高すぎてもいけません。出力信号のレベルが高すぎることが予測される場合は固定アッテネータを回路上に配置する必要があります。

仮に高すぎる信号レベルのものがスピーカまで出力されてしまった場合、音が割れるといった現象として再生されてしまうからです。他方で、回路構成上、出力信号のレベルが低すぎることが分かっている場合は、ブースタに相当する回路を配置する必要があります。

テレビやラジオなどの放送電波を受信する場合、前述の通り、受信電波のレベルが小さすぎる場合はアンテナ入力端子の手前にブースタを挿入しますが、逆に入力される受信電波のレベルが大きすぎる場合もあります。

例えば、放送電波を送出するすぐ近傍でこれを受信するケースです。この場合は、アンテナ端子の手前に固定減衰器を挿入して所定の入力信号レベルまで落としてやる必要があります。さもないと、再生された映像や音声に不要なノイズなどが混入する可能性があります。

参考文献
http://t-sato.in.coocan.jp/terms/attenuator.html
https://www.wti.jp/contents/hint-plus/hint-plus076.htm
http://www.rf-world.jp/bn/RFW08/samples/p044-045.pdf

双方向直流電源

双方向直流電源とは

双方向直流電源とは、電力を直流で供給し、同時に電力を受け取ることができる電力装置です。

従来の直流電源は電力を単方向に供給するため、逆方向への電力の流れを制御することができませんでした。双方向直流電源では、電力の供給と回収の両方を行うことが可能です。また、電力の供給と回収を柔軟に行うことができます。

そのため、エネルギー効率向上や電力ネットワーク安定化などに役立つ技術として注目されています。電気自動車の電源としても採用されている状況です。

双方向直流電源の使用用途

双方向直流電源はさまざまな使用用途で活用されています。以下は代表的な使用用途です。

1. 再生可能エネルギー発電系統

双方向直流電源は、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー発電系統に組み込まれます。双方向直流電源を使用することで、再生可能エネルギーから得られる直流電力を効率的に回収し、電力ネットワークに供給することが可能です。

また、マイクログリッドに応用される場合もあります。マイクログリッドは小規模な電力系統です。再生可能エネルギー発電や蓄電池、電力変換装置などを組み合わせて独立した電力系統を形成します。

2. 自動車

電気自動車の充電インフラにも重要です。直流充電スタンドでは双方向直流電源を使用して、蓄電池から電力を供給して電気自動車の充電を行います。また、蓄電池からの逆流電力を制御して、電力ネットワークへの電力供給も可能です。

3. その他

双方向直流電源は、電気バスや路面電車などの車両インフラにも使用されます。双方向直流電源を使用することで、電力供給や逆流電力の回収が効率的に行うことが可能です。

また、建設機械などにも応用が可能です。フォークリフトやクレーンがその一例です。建設機械は動・停止を頻繁に繰り返すため、双方向直流電源によって効率的な運用が実現できます。

双方向直流電源の原理

双方向直流電源は、電力変換装置や制御システムなどが構成要素です。これらの装置やシステムによって、電力の変換、制御、保護などが行われます。

双方向直流電源ではインバーターやコンバーターを使用して、直流から交流への変換と逆変換を行います。これにより、電力の供給と回収を両方向に制御することが可能です。

また、電力供給と回収を制御するための制御システムも重要です。制御システムは電力の流れや電圧・電流の制御を行い、必要な電力の供給や回収を実現します。なお、系統側に電力を戻す様子から回生電源とも呼ばれます。

蓄電池を使用する場合、蓄電池管理システムも必要です。蓄電装置にはリチウムイオン電池鉛蓄電池が使用されます。蓄電池管理システムは蓄電池の充電状態や放電状態を監視し、適切なタイミングで電力の供給や回収を制御します。

双方向直流電源の選び方

双方向直流電源を選定する際は、以下の要素が存在します。

1. 定格出力

双方向直流電源の定格出力は、必要な電力の供給や回収に関わる重要な要素です。必要な電力の大きさや目的に応じて、適切な定格出力を選ぶ必要があります。定格出力はワット (W) やキロワット (kW) などで表されます。

定格出力が大きな製品ほど大きな電力を取り扱うことが可能です。ただし、高価となる場合が多いです。

2. 出力電圧

双方向直流電源の出力電圧は、接続する機器やシステムの要件に合わせて選定します。機器やシステムが動作するために必要な電圧レベルを考慮し、適切な出力電圧を選択することが必要です。一般的にはある程度の電圧幅から調整可能な製品が多いです。

3. 交流電圧

交流電力を供給または回収する場合、考慮するべき重要な要素は交流電圧です。供給または回収する交流電圧は、接続する電力ネットワークや機器の仕様に合わせて選択される必要があります。交流電圧は、一般的に周波数 (Hz) と電圧 (V) の組み合わせで表されます。

国内では、3相200Vまたは400Vなどの電圧が使用されます。周波数は60Hzまたは50Hzの製品が多いです。

4. インターフェース

システムや機器との接続や通信方法も重要な要素です。通信プロトコルやコネクタの種類、制御信号の伝送方法などがインターフェースに関連します。使用するシステムの互換性や適合性を考慮して、適切なインターフェースを選択します。

参考文献
https://www.matsusada.co.jp/column/column-bi-directional-power-supply.html
https://www.keisoku.co.jp/pw/ufaqs/g-guide11/
https://www.toyo.co.jp/material/casestudy/detail/id=30455
https://product.tdk.com/info/ja/techlibrary/techjournal/index9.html

リードインダクタ

リードインダクタとは

リードインダクタとは部品の両端にリード線がついたタイプのインダクタのことです。
コイルと呼ぶこともあります。
その他のタイプとして表面実装型のインダクタもあります。

リードインダクタは電気回路や電子回路において使用される抵抗、ダイオード、コンデンサなどと同様に電子部品の1つで比較的良く使われる部品です。

一般的な用途としての各種の信号処理回路に加え、電源回路や高周波回路などで使用されます。
構造はシンプルで電線を巻きつけたものや、コアに電線を巻き付けて作られたタイプがあります。
インダクタに電流を流すと磁界が発生し、これを誘導磁界と呼んでいます。直流電流はそのまま流しますが、誘導磁界の発生により交流に対しては、電流の流れを抑制する働きをします。

リードインダクタの使用用途

以上の様なインダクタの特性を利用して様々な回路に使われます。

直流は流すが、交流はその流れを抑え込もうとする性格から、各種電子機器の内部回路で発生するノイズを除去するフィルター回路に使われます。

現状の各種電子、電気回路は処理速度の向上や小型化が図られていますが、これに伴い内部の動作周波数がどんどん高くなっています。動作周波数の増加に伴い、機器内部で発生する高周波ノイズへの対策は避けて通れません。

この様な各種機器におけるノイズ対策用としてインダクタが使用されています。

また、機器内の電源用の回路では、交流で入ってくる商用電源を直流に変換して内部回路に供給する役割を果たします。この際に、直流を通すインダクタが波形の平滑化を行う際に使われます。

リードインダクタの原理

前述の通りインダクタに電流を流すことにより磁界を発生させることができるわけですが、この磁界によりコイルに流れる電流がなくなっても磁界から電流が発生します。

電流が流れない状態において磁界から電流が流れるということは、コイル自体に電流を蓄える働きがあることを示すものでどの程度の電気エネルギーを蓄えることができるかということを、単位としてヘンリー(H)で表します。

このエネルギーを蓄える能力をインダクタンスと呼び、値が大きいほど電気エネルギーの蓄積能力が高くなります。

高周波同調コイル、チョークコイルなどがインダクタにはあります。
チョークコイルは比較的大きなインダクタンスを有するタイプのインダクタです。

電源回路や高周波回路に使用され、コアとして比較的しっかりとしたものが使用されているため比較的大きなインダクタンスを有しておりています。

コンデンサと並行してつなぐことにより高周波同調コイルは構成されており、ある特定の周波数のみを通過させる設定を行うことが可能です。

高周波同調コイルはシールドカバーで本体が覆われ、中心にコアがありその周囲を電線で巻きつけて構成されています。部品の先端にマイナスドライバなどインダクタンスを可変可能な構造になっています。

参考文献
https://www.koaglobal.com/product/library/inductor/basic
https://www.jp.tdk.com/tech-mag/electronics_primer/1

マイクロリレー

マイクロリレーとは

マイクロリレーとは、外部からの信号を受けて電気回路を入切するリレーの中でも小型の機器です。

一般的なリレーよりも小さく、数cm~数mmとコンパクトなサイズとなっています。そのため、制御システムや電子機器など、スペースが制約されている用途に適しています。

また、高速なスイッチング動作が可能です。リレーの接点が迅速に開閉するため、高速な信号処理やタイミング制御が必要な場合にも適用できます。さらに動作の信頼性も高く、長寿命です。

ただし、マイクロリレーは小型なために、電流容量が制限されています。大電流を制御する必要がある場合は、より大型のリレーを検討すると良いです。

マイクロリレーの使用用途

マイクロリレーはさまざまな用途で使用される機器です。以下は代表的な使用用途一例です。

1. 電子デバイス

代表例はスマートフォンです。スマートフォン内の回路制御に使用されます。カメラのオートフォーカス制御やスピーカーの切り替えなどに使用されることが多いです。

また、デジタルカメラではシャッターの制御やズーム機構の切り替えなどに使用されます。OA機器にも使用され、プリンターの紙送りやカートリッジ位置制御などにが利用されることが多いです。

2. 自動車

自動車においても広く使用される機器です。ウィンドウの開閉制御にマイクロリレーが使用されます。また、ヘッドライトの切り替えやブライトモードの制御などに使用されることがあります。

また、自動車のドアロックシステムでは、ロックやアンロックの制御に使用されることが多いです。

3. 医療機器

マイクロリレーは、医療機器にも広く使用されます。心電計では、心電信号の取得や処理にマイクロリレーが使用されるこことが多いです。血圧計では、圧力センサーの制御や表示装置の切り替えに利用されることがあります。

マイクロリレーの原理

マイクロリレーはコイル、接点、スプリングなどで構成されます。これらの部品を、樹脂などの絶縁性材料を使用したケーシングで取り囲んで保護します。

1. コイル

マイクロリレーには、電磁コイルを用いることが多いです。電磁コイルは細い導線が巻かれたコイルの形状をしており、電流が流れると磁場を生成します。この磁場が接点の動作を制御します。

2. 接点

接点は電気の流れを制御する部品です。接点は電流が流れるか否かを制御する役割を果たします。金や銀、銅などの導電率が高い金属が使われることが多いです。

3. スプリング

スプリングは接点に適切な圧力を加え、開放状態から閉鎖状態への切り替えを行います。スプリングは、接点の信頼性と確実な切り替え動作を確保するために重要です。

マイクロリレーの選び方

マイクロリレーを選ぶ際は、さまざまな要素が存在します。以下はマイクロリレーを選ぶ要素の一例です。

1. コイル電圧

コイル電圧は、マイクロリレーが動作する電圧です。一般的なシステムコントローラはDC3.3VもしくはDC5Vで動作します。高電圧な製品としては、DC12VやDC24Vなどで制御される製品も存在します。

また、リレーが動作する瞬間に逆起電力による大きな電流が流れる場合があります。この電流によって周辺デバイスの誤動作が発生する可能性があるため、コイル部分に保護ダイオードを組み込んだ製品も販売されています。

2. 接点電流

接点電流は、接点に通電することが可能な電流値です。マイクロリレーは小型なために、2A以下程度の低定格電流の製品が多いです。定格電流を超えて電流を流した場合、接点の溶着などの故障が発生する危険性があります。

3. 接続方法

マイクロリレーを回路に組み込む際に、さまざまな接続方法が存在します。一般的な方法は、ピンによるソケット接続です。また、はんだ付けによる表面実装が可能な製品も存在します。

4. 極数・接点構成

極数は、マイクロリレーが有する接点の数です。マイクロリレーは小型化するために、1極の製品がほとんどです。接点構成は 接点の種類であり、通常時開のa接点、通常時閉のb接点、2つを組み合わせたc接点が存在します。

参考文献
http://startelc.com/elc/elc_3_6Lr.html
https://www.fa.omron.co.jp/products/family/2839/

ステップアッテネータ

ステップアッテネータとは

ステップアッテネータとは、信号をひずませることなく所定の量だけ減衰することができる回路や機器のことです。

減衰量の異なる複数種類のアッテネータを組み合わせた装置であり、ダイヤルを切り替えることで減衰量の調節が可能です。スペクトラムアナライザなどの計測器において、入力段の保護を目的として使用されます。

ステップアッテネータの使用用途

ステップアッテネータの代表的な用途は、信号レベルの調整機能とインピーダンスの整合機能です。

1. レベル調整用減衰器

入力信号に対して、後段の回路や機器へ接続する場合にその信号レベルが大きすぎる場合に、適切なレベルに調節して後段に送り出すための信号レベル調節機能として使われます。

2. インピーダンスマッチング用減衰器

入力信号に対して後段の回路につなげる場合に送り出し、側と受け側のインピーダンスが整合していない場合、ノイズが発生したり信号の反射が起こったりして期待する動作に不都合が生じることがあります。

このような不都合を防ぐために、インピーダンス整合機能として使われます。

ステップアッテネータの原理

ステップアッテネータは、複数のアッテネータがスイッチを介して直列に接続された構造になっており、スイッチを切り替えることで減衰量が調節できるようになっています。各アッテネータの使用を切り替えることで、一定の減衰ステップの実現が可能です。

例えば、7種類のアッテネータを使用した場合は128通りのアッテネータ使用の組み合わせが考えられます。7ビット分の信号制御を実行することで、減衰量を調節します。

ステップアッテネータの構造

ステップアッテネータは、抵抗器を直列・並列に組み合わせたシンプルな構造です。抵抗を組み合わせることによりT字とπ字で抵抗器を組み合わせた回路があり、それぞれT型回路・π型回路と呼ばれます。抵抗の分圧比によって減衰量が定まります。

ステップアッテネータはさらに所定の減衰量を得るために、T型回路やπ形回路をそれぞれ複数段もしくは従属接続しています。ダイヤルで抵抗値を切り替え、減衰量の調節が可能です。

ステップアッテネータのその他情報

1. テレビ受信機での使用例

単純に信号を減衰させる目的であれば適当な抵抗を入れることで目的を果たせますが、例えばテレビ受信機において、テレビ放送などの受信性能を測定しようとした場合を考えます。入力される受信電波の強度をステップアッテネータによって、段階的に減衰させることにより受信条件を悪くした場合に、どの程度の入力信号の減衰に対して問題なく受信できるかの評価を行い、その減衰量が設計目標値をクリアできているかの評価が可能です。

この場合、地上デジタル放送では470~710MHz範囲で放送信号が送出され、テレビにこの周波数が入力されます。したがって、いずれの周波数においてもフラットに信号の減衰を行う必要があるため抵抗ではこの様な試験はできず、ステップアッテネータが必要となります。このように高周波回路におけるアッテネータは、インピーダンスを保持しながら減衰させなければなりません。

2. 計測主体としての使用例

ステップアッテネータは、計測主体としても使用可能です。以下は増幅器の利得計測でステップアッテネータが使用される例です。

増幅器の入力に電圧計を接続する一方で、増幅器の出力側にはステップアッテネータを通して電圧計を接続し、各電圧を測呈します。次に、電圧計の指示値が入力電圧と同じ指示値になるようにステップアッテネータを調節します。

入力と出力で電圧計の指示値が一致したタイミングは、ステップアッテネータの減衰量と増幅器の増幅度が等しい値です。そのため、ステップアッテネータの設定値から増幅器の増幅度を測定することができます。

参考文献
https://www.stack-elec.co.jp/?p=265
https://www.stack-elec.co.jp/?p=26
 https://as76.net/ant/att.php

コネクターカバー

コネクターカバーとは

コネクターカバーとは、ケーブルのプラグ部分 (オスコネクター) を保護し、安全性を向上させるために使用されるアクセサリーです。

異物の侵入を防ぐだけでなく、誤挿入や電気的な接触事故を防止し、セキュリティ面でも役立ちます。各コネクターの形状に合わせて容易に着脱できる形状になっています。

使用される材質は、プラスチック系のABS樹脂やポリエチレンなどが多いです。類似した部品にコネクタキャップがあります。

コネクターカバーの使用用途

コネクターカバーは、誤挿入防止やコネクター端子の保護、セキュリティ対策などを目的に使用されています。

1. 異物の侵入防止

コネクターカバーがプラグ部分を覆うことで、ホコリや水分などの異物がコネクター内に侵入することを防ぎます。

2. 誤挿入防止

特定の形状や色でデザインされたコネクターカバーは、誤ったコネクターへの挿入を防ぐ役割を果たします。

3. 誤配線防止

複数の異なる色のコネクターカバーを組み合わせて使用することにより、誤配線の防止が可能です。

4. セキュリティ対策

ロック機能を備えたコネクターカバーは、不正なアクセスやデータ漏洩を防止する役割を担います。

5. ケーブルの抜け防止

コネクター部分を固定することで、ケーブルの抜けやすさを軽減し、接続の安定性を向上させます。

6. ストレス軽減

コネクターカバーがケーブルとコネクターの接続部にかかるストレスを軽減し、長寿命化に寄与します。

コネクターカバーの構造

コネクターキャップの中には、特殊な形状を持つものもあります。例えば、つばの側面が湾曲しているタイプでは、コネクターとつばの間に隙間が生じ、USBコネクターを抜きやすくなります。また、つばが広いタイプのキャップは、コネクターの金属面が見えにくいです。

一部のUSBコネクターキャップには、USBコネクターに差し込むとロックがかかる機能が搭載されています。このロックは、専用の引抜ツールを使ったときのみ解除可能です。この機能により、誤挿入や不正アクセスのリスクがさらに低減されます。

コネクターカバーの種類

コネクターカバーには機器やインターフェースに応じて様々なタイプが存在します。以下はその一例です。

  • PCのケーブル用
  • PDAのケーブル用
  • タイプA、B、Mini-B、Micro-B、CなどのUSBケーブル用
  • VGA、DVI、HDMIなどのデジタル映像機器のケーブルコネクター用
  • ネットワークLANや電話モジュラージャックケーブル用
  • オーディオやビデオ機器のケーブル用

コネクターカバーのその他情報

1. コネクターキャップとの違い

コネクターカバーは、ケーブルのプラグ部分 (オスコネクター) を保護するために使用されます。一方で、コネクターキャップは、機器のメスコネクタを保護するために使用されるものです。

しかしながら、区別されずに呼ばれることも多いため、文章や会話では文脈からどちらの部品を取り扱っているのか注意する必要があります。

2. 法令や規格への対応

各種製品や部品を国内で販売するには、国内の法令や規制に合わせて製品の設計を行う必要がありますが、欧州に製品や部品を輸出する場合にはROHS指令(Restriction of Hazardous Substances(危険物質に関する制限))という規制への対応が必須となります。コネクターカバー製品の中には、ROHS指令に対応したものもあります。

ROHS指令では各種製品や部品への有害な特定の化学物質の含有の濃度が一定以下であることおよび鉛はんだフリー (鉛成分を含まないハンダを使用すること) であることが求められています。なお、特定の化学物質は以下の通りです。

  • 水銀
  • 六価クロム
  • カドミウム
  • ポリ臭化ビフェニル
  • ポリ臭化ジフェニルエーテル
  • フタル酸ジエチルへキシル
  • フタル酸ジプチル
  • フタル酸プチルベンジル
  • フタル酸ジイソプチル

それぞれの含有量が0.1%以下に定められています。これはROHS指令が、各種製品や部品のリサイクルを容易にすることおよび廃棄時に、有害物質が人体に悪影響を及ぼさないことを目的としているからです。 

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/
https://www.ainex.jp/products/connector-cover/
https://www.monotaro.com/
https://www.sanwa.co.jp/product/dosvparts/cap/index.html

BNCレセプタクル

BNCレセプタクルとは

BNCレセプタクルとは、BNCケーブルと電気機器を接続する際に使われる両方のコネクタのうち、電気機器の方の受け側のコネクタのことです。

BNCケーブル (英: Bayonet Neill Concelman cable) はデジタル信号の伝送に使われるケーブルで、映像や音声の伝送を始め無線通信機や各種計測機器で広く用いられている同軸ケーブルです。BNCケーブルの接続にはBNCコネクタが使用されます。BNCコネクタは、最も一般的に使われている同軸ケーブル用のコネクタの一つです。

BNCコネクタのうち、電気機器側のパネルや基板上に固定されて、BNCケーブル接続の際の受け口となる部品のことをBNCレセプタクルと言います。

BNCレセプタクルの使用用途

BNCレセプタクルは、映像や音声をデジタル信号で送受する電気機器等で使用されています。

BNCケーブルは、映像や音声のデジタル信号を送るときに使用されるケーブルであり、各種計測機器に接続される信号ケーブルとしても広く使用されます。

映像や音声を扱う機器としては、放送局内で使用されているような機器類や通信機器がそれに該当します。また、計測機器の代表的なものであるオシロスコープもBNCケーブルから伝送されてくる信号を取り込めるようになっています。したがって、これらの電気機器類には、BNCケーブルの受け口としてパネルや基板上にBNCレセプタクルが取り付けられています。

BNCレセプタクルの反対側では、信号線が機器類の基板などにつながっています。つまり、BNCレセプタクルの役割は、BNCケーブルを受け止めて固定し、ケーブルを通して伝わって来るデジタル信号を基板などに送り込むことです。

BNCレセプタクルの原理

BNCレセプタクルは、同軸ケーブルとの接続用として細い円筒形状の外装金属フレームを持ち、その中心部にはケーブル側の芯線を挿入するためのコンタクト部があります。これは細長い金属製のホール形状をしています。コンタクト部と外装フレームの間には樹脂部があり、絶縁とコンタクト部の固定の役目をしています。

BNCレセプタクルとBNCケーブルとの接続を安定的に保持するために、パヨネット機構というロック方式が採用されています。パヨネット機構では、BNCケーブル側のコネクタをレセプタクルのガイドに合わせて差し込み回転させて、レセプタクルの円筒フレームについている小さなリング状の凸の部分をコネクタの窪みにはめ込むことで、両者がロックされます。

一方、BNCレセプタクルは、電気機器のパネルや基板に固定するために、ネジ穴が開いたフランジを持っていたり、円筒形の外装フレームのBNCコネクタ接合部と反対側にナットを取り付けるためのネジ穴が切ってあります。

BNCレセプタクルの種類

様々なBNCレセプタクルが市販されていますが、次のような違いがあります。

1. 形状

BNCレセプタクルの接合部の形状は、ケーブル側のBNCコネクタと接合させるために、全て同じ形状です。BNCレセプタクルの形状で違いがあるのは、BNCレセプタクルを電気機器のパネルや基板に取り付ける部分です。様々な形状と大きさのフランジがある他、フランジを持たずにナット締めをするボルト形状のものもあります。また、コネクタ接合部から先の部分がストレートではなくて90°折れ曲がったタイプのものもあります。

2. 材質

BNCレセプタクルの外装は主に黄銅で作られており、表面はニッケルメッキされています。コンタクト部分のホールは、リン青銅やベリリウム銅で作られていて、銀めっきまたは金めっきされています。絶縁体はPTFE樹脂 (テフロン) などの高性能プラスチックで作られています。

3. 電気的特性

電気的にはSDI (Serial Digital Interface) という規格に基づいた信号を扱えるようになっています。映像用の機器のインターフェースとしては特性インピーダンスが75Ωのものが、無線機器用のインターフェースとしては50Ωのものが主に使用されます。

4. HBNCレセプタクル

BNCコネクタより小型なコネクタとして、HBNCコネクタがあります。HBNCコネクタを使うと、BNCコネクタとの比較で約4倍の高密度実装が可能になります。レセプタクルとケーブル側のコネクタとの勘合方式はBNCコネクタと同様にパヨネット機構を採用しています。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/222000518707/?HissuCode=BNC-R
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/coaxial-connectors-guide
https://engineer-climb.com/%E5%90%8C%E8%BB%B8%E3%82%B3%E3%83%8D%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%81%A8%E9%81%95%E3%81%84/

ブラインドリベット

監修:ニッセンファスニング株式会社

ブラインドリベットとは

ブラインドリベットとは、2枚以上の板材を接合するための部材です。

用途としてはボルト・ナットと同じで、接合する際は専用の工具であるリベッターを使用してワンアクションで片側から接合します。

裏側に手が回らない密閉状態でも容易に部材を取り付けでき、溶接が困難な異種金属同士を接合できるという特徴があります。また、溶接のような資格も必要ないという点や溶接の後工程で必ず発生するさび止め塗装の工程やひずみ取りの工程が省けるという点、さらに溶接のように火気を使用することがないため安全配慮的な点でも優れていると言えます。

ブラインドリベットの使用用途

ブラインドリベットとは

図1. ブラインドリベット

ブラインドリベットは2枚の薄板を接合するために広い分野で使用されます。(製造機会、産業機械、自動車、電気設備、建築、土木など) 

ブラインドリベットはリベットボディとマンドレルの2つの部品から構成され、2枚の薄板を接合するために広い分野で使用されます。ボルト・ナットや溶接の代わりに使用されたり、溶接や接着の補助部材としても使用されたりすることがあります。取り外すことを容易にさせないためにブラインドリベットを使用することもあります。

ブラインドリベットの原理

ブラインドリベットの原理

図2. ブラインドリベットの原理

マンドレルの端部には軸部よりも大きい頭部があり、締結する板材にあらかじめ開けられた下穴 (1) にマンドレル頭部とリベットボディ部分を挿入 (2) (3) し、マンドレルをリベッターで引っ張る (4) ことで、マンドレル頭部がリベットボディ内部に入り込み (5) 、リベットボディの外径を大きく塑性変形して締結します。マンドレル頭部が接合する板材の裏側表面付近まで来た後に、マンドレル自体があらかじめ設定された破断部で引きちぎられ、接合作業は完了します。(6)

ブラインドリベットの種類

ブラインドリベットの種類は、下記の違いによって種類が多岐にわたって区分されます。適切な種類を選定するには注意が必要です。

1. 材質

リベットボディとマンドレルのそれぞれの材質の違いによって区分されます。材質はスチール、ステンレス、アルミニウムが主流であり、他にも銅やチタンもあります。材質の組み合わせによっても区分されます。

2. リベットボディの太さ

リベットボディの太さはφ2.4、φ3.2、φ4.0、φ4.8、φ6.4で区分されます。接合に対して求められる強度や接合するワークの大きさにより選定します。ブラインドリベット自体の強度はリベットボディに使用されている材質によっても違いがあります。

3. リベットボディの長さ

リベットボディの長さに応じて、接合できる合計板厚の範囲が決まっています。使用する板材の合計板厚を確認してください。適正な板厚以外で使用すると適正な性能を得ることができません。

4. フランジ部の形状

フランジ部の形状

図3. フランジ部の形状

リベットボディのフランジ部の形状によっても区分されます。標準的な「丸頭」、仕上がりをフラットにするための「皿頭」、軟質材を接合するための「ラージフランジ」があります。

5. リベットボディの形状

リベットボディの形状

図4. リベットボディの形状

リベットボディに貫通穴がある標準的な「オープンタイプ」とリベットボディが袋状になっている「クローズドタイプ」に区分されます。クローズドタイプは、埃や水分を通しにくい特徴を持ち、締結後のマンドレル頭部の脱落を忌避する場合も有効です。

6. かしまり方

かしまり方の種類

図5. かしまり方の種類

リベットボディの変形する形状の違いによっても種類が分かれます。標準的な変形状態の「スタンダードタイプ」に対して、座屈変形によるこぶを作る「バルブタイプ」、下穴径との隙間を埋める効果 (ホールフィル効果) を持つ「高強度タイプ」に区別されます。

ブラインドリベットの選び方

かしめ状態の比較

図6. かしめ状態の比較

ブラインドリベットを選ぶ場合は先に挙げた違いや区分に注意しながら選定します。接合の目的、必要な強度、接合する板の合計板厚数、適正本数か、使用する材質の適性などの確認が必要です。

リベットボディの太さによって、取り付けるために開ける下穴の径も適正な寸法がリベットごとに定められているため、設計する際には注意が必要です。下穴径が適正でない場合、適正な接合性能が得られなくなります。 (図6参照) 

リベット接合を設計検討する場合、かしめを行う時のリベッターの母材への干渉も考慮する必要があります。工具が母材と干渉し母材面と垂直な姿勢を取れない場合かしめが適正でなくなることがあります。

最後に、ブラインドリベットを選定する際にもう一つ注意する点とすれば、電食の対策です。電食は異種金属間同士が密着する箇所において水分が介在した場合、材質の持つ電位差によって材料が腐食することです。特に母材がステンレスに対してアルミのブラインドリベットを使用するとブラインドリベットのほうが腐食しやすくなり、最終的にはブラインドリベットがなくなってしまうこともあります。従って、異種金属間で電気を通らせないようにする対策をブラインドリベットもしくは母材の方に施すことが必要になります。

ブラインドリベットのその他情報

ブラインドリベットの規格

現時点でブラインドリベットの形状や性能に対するJIS規格は存在しません。基本的な仕様は各メーカーで決められており、さほど違いはないこともありますが、場合によっては特殊品として対応することもあります。

本記事はブラインドリベットを製造・販売するニッセンファスニング株式会社様に監修を頂きました。

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