ジョーフレックスカップリング

ジョーフレックスカップリングとは

ジョーフレックスカップリング

ジョーフレックスカップリング (英: Flexible Jaw Couplings) とは、フレックスカップリングの一種です。

カップリング (軸継手) は、駆動軸と従動軸を連結し動力伝達する機械要素で、フレックスカップリングとリジットカップリングがあります。フレックスカップリングは、駆動軸と従動軸の芯ずれを吸収し、ミスアライメントの低減が可能です。

一方で、リジットカップリングはゼロバックラッシュで効率的な動力伝達が特徴です。ジョーフレックスカップリングは、回転による振動や衝撃吸収性に優れており、取り付け・取り外しが容易となります。

ジョーフレックスカップリングの使用用途

ジョーフレックスカップリング_図1

図1. ジョーフレックスカップリングの使用例

ジョーフレックスカップリングは、一般的に機械の振動・衝撃が大きな機械の軸継手として使用されています。特に、振動や芯ずれの吸収に優れ、高速回転や高トルク対応が必要な場合の、インダクションモーター用軸継手などに有用です。

ジョーフレックスカップリングのようにスリーブ付きタイプは、メンテナンス性が高いです。スリーブを取り外すことで、駆動軸と従動軸を移動させずに、分解と組み立てが可能となります。

そのため、ポンプ、コンプレッサ、送風機、工作機械や包装機械、ロボット、などの軸継手としても使用されています。

ジョーフレックスカップリングの原理

ジョーフレックスカップリング_図2

図2. 芯ずれ (ミスアライメント)

カップリングの重要な役割は、以下の4つです。

  • 駆動軸から従動軸へ動力の伝達
  • 駆動軸と従動軸の取り付け誤差の吸収
  • 駆動軸の振動を吸収し周囲の機器に伝播させない
  • 駆動軸から熱を従動軸へ伝達しない

特にジョーフレックスカップリングは、上記の2、3項に優れたカップリングです。フレキシブル性を持たせるために、スリーブ (またはスパイダー、インシアスパイダー) を料軸間に挟み込み結合した構造となっています。

これにより、駆動軸と従動軸のある程度の芯ずれ (偏心、偏角、軸方向変位など) を許容し、フレキシブル性で振動や衝撃を吸収し安定した回転を維持します。また、駆動軸と従動軸の芯ずれを許容できるため、部品それぞれの加工精度をある程度下げることが可能です。その結果、製作コストも抑えられ、機械の組み立て調整が容易になります。

なお、ジョーフレックスカップリングをモーターの結合に使用する場合は、運転によるモーターの発をカップリングがある程度遮蔽します。

ジョーフレックスカップリングの種類

ジョーフレックスカップリング_図3

図3. ジョーフレックスカップリングの種類

ジョーフレックスカップリングは、構造やスリーブの形状や材質によって複数の種類があります。

1.  構造による分類

ジョーフレックスカップリングの基本的な構造は、軸と締結するハブが駆動軸と従動軸側に各1個ずつあり、ハブ間に緩衝材を挟み込み両軸を結合します。

緩衝材の形状の違いで、スリーブ形、スパイダー形、インシアスパイダー形の3種類があります。インシアスパイダー形は、インシアスパイダー外側に保護のためのリテイナを取り付けます。 

2.  材質による分類

ジョーフレックスカップリングの一般的な材質は、下表のとおりです。

材質

ハブ

スリーブ、スパイダー、インシアスパイダー

リテイナ

アルミニウム合金 (A2017など)

ニトリルゴム (NBR)

オーステナイト系ステンレス (SUS347など)

オーステナイト系ステンレス (SUS303など)

ポリウレタン (PU)

機械構造用炭素鋼 (S45Cなど)

銅合金

 

ハブの材質は、腐食環境などの使用環境により選定します。緩衝材のスリーブやスパーダーは、材質により特性が異なり、使用温度環境や衝撃の適合性に応じて選定します。

項目

緩衝材 (スリーブ、スパイダー、インシアスパイダー) 材質

ニトリルゴム (NBR)

ポリウレタン (PU)

銅合金

フレキシビリティ (柔軟性)

耐衝撃性

耐油性

耐薬品性

使用温度範囲

約-40~100℃

約-34~70℃

約-40~232℃

偏心 (許容平行誤差)

偏角 (許容角度誤差)

 

ニトリルゴムは耐衝撃性に優れていますが、ウレタンと比べると耐薬品性が劣り、ニトリルはウレタンと比べて若干使用温度範囲が広いです。銅合金は、特に低速回転での高トルクに適しています。

参考文献
https://www.tsubakimoto.jp/power-transmission/shaft-coupling/plastic-rubber/jaw-flex/l/
https://www.mekasys.jp/series/detail/id/RS_0166

シュミットカップリング

シュミットカップリングとは

シュミットカップリング (英:Schmidt Coupling) とは、回転する機器において、平行で異なる軸心を持つ軸同士を接続し動力伝達が可能なカップリング (軸継手) です。

シュミットカップリングの使用用途

シュミットカップリングは数mm単位から数十mm単位での軸心違いの接続で、コンパクトで効率の良い動力伝達が可能です。内部のリンクの設定によっては、回転中に軸心間距離を平行移動可能なタイプもあります。

1. 平行軸の接続

平行で軸心が異なる軸同士を接続する場合は、ユニバーサルジョイントやギヤ、ベルト、プーリなどの使用が一般的です。このような機構では、機構が複雑、長さなどのスペースが必要、数mm単位での軸心違いは対応困難などの問題があるため、シュミットカップリングが有効です。

2. ロール成型機

ロール成型機のロール駆動では、ロール間調整のためロールが上下にも移動します。モータなど原動機は固定して、ロールのみ回転しながら移動させるのに、軸心間を移動可能なシュミットカップリングが有効です。

繊維機械においても、送りロール間調整など同様の用途で使用されます。

シュミットカップリングの原理

図1. シュミットカップリング 1段目のリンク機構

シュミットカップリングは、リンクモーションと呼ばれる運動様式を利用した軸心違いカップリングです。

リンク機構は、エンドディスクとセンターディスク間を円周上等間隔にリンクを配置し、2枚のディスク間の位相を一定に保つ平行リンク機構の応用です。

リンクでつないだ状態でエンドディスクを回転させた場合、センターディスクは、エンドディスクと位相のずれなく回転しますが、各ディスクの軸心間距離は、リンクの長さと同じになります。

図2. 軸心間距離の変化

そこで、センターディスク反対面に同様のエンドディスクとリンク機構を配置することで、リンク長さは一定としながら、2枚のセンターディスクの軸芯間距離を変化させても、位相のずれなく回転可能した機構がシュミットカップリングの原理です。

シュミットカップリングの構造

図3. シュミットカップリングの構造

シュミットカップリングは、両端に2枚のエンドディスクがあり、その中心に1枚のセンターディスクが挟みこまれています。これらのディスクの間を複数のリンクで接合した構造です。なお、2枚のエンドディスクはフランジ形状であり、軸などとフランジのタップで接続します。

リンク部は、ニードルベアリングが埋め込まれて、ピンとの適切なクリアランスが保てており、円滑なリンク運動を実現します。長さ方向はスラストワッシャとピン端のストッパにより抜け防止と、オイルシールとキャップにより異物混入を防止する構造です。

シュミットカップリングのその他情報

1. シュミットカップリングの材質

シュミットカップリングの各部の材質は、主に炭素鋼やステンレス鋼が使用され、ピンなど可動部には焼き入れ鋼や軸受け鋼が使用されます。

2. 使用上の注意点

シュミットカップリングは構造上、軸心ずれの許容幅は大きいですが、軸間の偏角はリンク部のピンとニードルベアリングのクリアランス内で許容するため、過大な偏角がある軸間の接続には向きません。また、カップリング長さ方向のクリアランスは小さく、スラスト方向のずれ量の許容幅も少ないです。カップリングに軸のスラスト方向、曲げ方向の力が作用しないように注意が必要です。

複数のリンクで複数枚のディスクを接続するので、わずかにバックラッシがあり、高精度の角度伝達、高トルク伝達の用途には向いていません。

3. 同心付近での使用の制限

シュミットカップリングは軸心の平行移動も可能ですが、ほぼ同心位置ではリンクの動きが不安定となるため使用できません。平行移動する場合は、同心付近を避けた片側の偏心範囲内で使用か、同心を含む両側偏心範囲を使用する場合は、同心位置付近では平行移動を止めずに通り過ぎる用途のみ使用可能です。

また、平行移動の際、リンク機構によりセンターディスクが移動方向に対し垂直に移動するため、周囲の干渉なども考慮が必要です。

参考文献
https://www.mikipulley.co.jp/JP/Products/FlexibleCouplings/SCHMIDT/index.html
https://www.npr.co.jp/products/products0201.html

サーモコン

サーモコンとは

サーモコンとはコンクリートの一種です。流入されてから泡を出して大きく膨らみ、固まります。高い膨張率を持っているため隅々まで隙間無く行き渡らせることが可能です。泡が出始めてから固まるまでにおよそ1.4倍~2倍にまで膨らみます。また、発泡前は流動性が高く、自由に動くことができます。細い入り口や細かな隙間にも簡単に侵入することが可能で、様々な場面で活躍します。主に空洞の充填に使われるコンクリート材料の一つです。

サーモコンの使用用途

サーモコンは空洞や隙間を埋めるために用いられます。例えば地盤沈下後の地下の空洞空洞の充填です。自身や洪水などによって地盤沈下が起こると地下に空洞が発生します。空間が空いたままだと地表が陥没したり落下事故が発生する恐れがあるため、サーモコンを用いて埋められるのです。また、水道管やトンネルを掘った際にできた空洞を埋めるためにも用いられます。穴を掘った際にできてしまう隙間は放っておくと事故の危険性があります。耐久性を高めるためにもサーモコンを充填させる必要があるのです。

サーモコンの原理

サーモコンは空洞を充填させるために非常に優れた素材です。ここではその特徴をいくつかご紹介します。

  • 膨張性が高い
    サーモコンは膨張性が高い材料です。発泡してから固まるまでに約1.4倍~2倍程度に膨らみます。この性質によって隅々まで充填させることが可能になるのです。また、充填前のサーモコンは少ない量で済みます。移動や運搬が楽になることはもちろん製造費を抑えることも可能です。
  • 流動性が高い
    固まる前のサーモコンは流動性が高い物質です。粘度が低くとてもスムーズに流れます。この性質によって運搬が簡単になったりロスを減らしたりすることができます。また、充填に時間がかからず、狭い部分にも早く侵入することが可能です。
  • 優れた多様性
    サーモコンは優れた多様性も持ち合わせています。いくつかの材料を混ぜ合わせることで製造されますが、この配合を変化させることで性質を変えることも可能なのです。例えば、含まれる空気の量や圧縮強度を変化させることも可能で、用途に応じて製造することができます。

参考文献
http://www.ito-syouten.com/thermo/

カットアウト

カットアウトとは

カットアウトとは、電気を遮断するために作られた小型の開閉器です。

特に6,600Vまたは3,300Vなどの高圧電圧に使用される場合が多く、高圧カットアウトとも呼ばれます。カットアウトのケースは絶縁性の高い磁器で作られており、このケースの蓋を開けることで回路が開放します。

また、内部には短絡を起こした際に流れる大電流による上位回路への波及事故を防止するために、ヒューズが内蔵されます。

カットアウトの使用用途

カットアウトは高圧配電線路に使用されることが多いです。以下はカットアウト使用箇所の一例です。

  • 柱上トランスの上流側
  • 屋内トランスの上流側
  • アレスタの上流側
  • 進相コンデンサの上流側

下流の機器が故障した際に、上流側に流れる事故電流を遮断する目的で設置されます。また、工事やメンテナンスの際にはカットアウトで回路を開路して、機器へ供給される電圧を遮断して作業員の感電事故を防止します。

カットアウトの原理

カットアウトの中でも多く使用される箱型カットアウトは、本体、蓋、ヒューズ・ヒューズリンクなどで構成されます。

1. 本体

カットアウト本体は絶縁性能・対候性が共に高い磁器で製作されます。そのため、長期の使用にも劣化があまり発生しません。磁器製の本体には取付ボルトが埋め込んでおり、このボルトで架台や柱上に取り付けます。

また、本体には配線を入線する配線口が上下に設けられ、内部の端子でヒューズリンクと強固に接続されます。

2. 蓋

蓋は本体と蝶番などで接続されています。表面にはフックが取り付けられており、操作用フック棒などで回路を開放可能です。蓋内部にはヒューズなどが取り付けられており、開路して開放することで取替ができる構造です。

3. ヒューズ・ヒューズリンク

ヒューズは下流配線が短絡した際に回路を遮断する目的で設置される部品です。ヒューズ内部にはヒューズエレメントと珪砂が収められています。短絡時にはヒューズエレメントが断線し、珪砂がアークを消弧することで保護能力を果たします。

ヒューズリンクにはブレード (接触刃) が取り付けられており、本体の固定電極端子に挿入されることで回路を導通させます。

カットアウトの種類

カットアウトは複数種類販売されており、状況や取り付け場所に応じて使い分けます。

1. ダブルヒューズ型カットアウト

ダブルヒューズ型は内部に2つ限流ヒューズを有するカットアウトです。一段目が過電流によって断線した場合、二段目が自動で接続されます。落雷などによる一時的な過電流が発生しても停電を防止することが可能です。

2. 耐振型カットアウト

耐振型カットアウトは振動に強いように設計されたカットアウトです。通常のカットアウトよりもヒューズや蓋を保持する能力が高い点が特徴です。クレーン上など、振動の発生が予期される場所で使用します。

3. 耐塩型カットアウト

海辺などの塩害発生地域で使用されるカットアウトです。表面に塩分が付着した際の耐電圧値などを汚損特性と言います。耐塩型カットアウトはこの汚損特性が高い点が特徴です。

内部の構造は通常のカットアウトと違いはありません。ただし、配線入線口や蓋との接合部などには塩分侵入防止を目的にパッキンが取り付けられます。

4. 円筒型カットアウト

円筒型カットアウトは円筒碍子の内部にヒューズを設けたカットアウトです。電車への給電などに使用されます。円筒の下部から限流ヒューズを引き抜くことができる構造です。

カットアウトのその他情報

カットアウトの寿命

カットアウトは風雨や紫外線の影響を受けて経年劣化します。経年による寿命は10年~15年です。

また、負荷電流の開閉回数は50~100回程度が限度であり、短絡電流の遮断は5回程度が限度です。したがって、保守などの場合は可能な限り無電圧または無負荷状態で開放することが推奨されます。

ただし、上記はあくまでも目安であり、設置環境や使用状況によって寿命は変動することに注意が必要です。

参考文献
https://koujishi.com/glossary/cutout/
https://denki-study.com/

エンドプレート

エンドプレートとは

エンドプレート

エンドプレートは様々な機器に幅広く使用される言葉であり、機器により異なったパーツを指しています。

エンドプレートはその名の通り機器などの終端に取り付けられる板状のパーツを指していますので、この条件に当てはまれば基本的にエンドプレートと呼ぶことができます。

自動車業界や電機業界などで汎用的に使用されていますが、エンドカバーやエッジプレートのように便利で使いやすい言葉ですので他にも機器類のパーツ名として使用されていることを目にすることもあります。

エンドプレートの使用用途

エンドプレートは機器や機構の終端部に使用されているプレートですが、例えばモーターの端板やターミナルユニット側壁のカバーなどにも使用されています。

例えば減速機などのシャフト固定にエンドプレートが使用される場合があります。この場合はネジ用の穴が開いているエンドプレートが使用されます。そしてもう一方のシャフトの方の終端にもネジ穴が開いてあり、エンドプレートとシャフトがボルトでしっかりと固定されます。

エンドプレートの原理

モーターにトルクを増す目的で減速機を取り付ける場合、ギヤヘッドに回転軸を取り付けますが、この軸を固定する際にはエンドプレートを挟んで回転軸にボルトを締め付けることで回転軸が固定されます。減速機のタイプによりエンドプレートを使用しないで済む場合もあります。

他にもターミナルユニットなどは端が開いていると見栄えが悪く、安全性にも配慮してエンドプレートが取り付けられる場合があります。このエンドプレートはプラスチック製であり、ターミナルユニットの端にただはめ込むだけで装着することができます。

また、スポーツカーなどウィングを持つ車のウィングの端に取り付けられる板をエンドプレートと呼ぶこともあります。自動車が高速で走ると強い空気圧を受けますが、ウィングやフィンがあると安定します。エンドプレートはウィングの端に取り付けられたフィン状のプレートであり、ウィングが車体に対して横向きに設置されていることに対してエンドプレートは縦向きに設置され、高速での走行でより安定するようになっています。

参考文献
https://www.iwata-fa.jp/html/index-15.html#01

ウォームホイール

ウォームホイールとは

ウォームホイール

ウォームホイール (英: Worm Wheel) とは、ウォームギヤを構成している歯車です。

ウォームギヤは、ねじ歯車の1種です。ねじ状の歯付きシャフト「ウォーム (ウォームシャフト) 」と、ウォームの軸方向と90度方向が回転軸となる斜歯歯車 (はすば歯車) の「ウォームホイール」とで構成された、歯車の組み合わせを示します。

ウォームが回転することで、これに噛み合うウォームホイールの歯を送り、回転させる機構になっています。ウォームギヤの構成におけるウォームホイールは、図1を参照してください。

ウォームホイール_図1

図1. ウォームギヤの構成

ウォームホイールの使用用途

ウォームホイール_図2

図2.ウォームギヤ (ウォームホイール) の使用例

ウォームホイールは、ウォームギヤとしてウォーム (ウォームシャフト) と組み合わせて使用されます。つまり、ウォーム以外の歯車以外との組み合わせでは使用できません。

ウォームギヤは、入出力の回転軸方向を90度変えて動力を伝達することができる直交軸で、ギヤが小形でも大きな減速比を作り出すことができます。そのため、工場設備のベルトコンベア、スクリュージャッキ、自動車のハンドルのステアリングシステム、ワイパーの駆動装置、扇風機の首振り機構、食品や薬品製造装置の材料投入部分 (フィーダー) 、オルゴール、弦楽器のペグなど、さまざまな分野や装置で使用されています。

1. 工作機械

旋盤やフライス盤などの工作機械で使用されています。金属の切断や切削に必要な高トルクを出力し、正確な位置決めのための動作を行うことができます。

2. コンベヤ

重い荷物を移動させるための高トルクと、スムーズなベルトの移動を行うことができます。

3. エレベーター

エレベーターのかごの巻き上げ装置に使用されています。重い荷物を持ち上げたり、降ろしたりするために必要な動力と、スムーズな動作を行うことができます。

4. 自動車のステアリングシステム

自動車、トラックおよびその他の車両のパワーステアリングシステムで使用されています。パワーステアリングの駆動装置用減速機でウォームギヤが使用されているものがあります。

5. ウインチ (吊り上げ装置)

ウインチの中には、ウォームギヤが使用されているものがあります。高トルクを出力し重い荷物を持ち上げることができます。

ウォームホイールの原理

ウォームホイール_図3

図3. ウォームギヤの回転方向とねじれ方向、スラスト荷重の方向

ウォームホイールは、ウォーム (ウォームシャフト) に加工された螺旋形の溝にはまり込むような、はすば (斜歯) 状の歯車です。これは、はすば歯車 (斜歯歯車) と呼び、英語では「Helical Gear」で、歯筋がつるまき線状になっている円筒歯車の1つです。

斜めに切られた溝と歯車の形状を噛み合わせることから滑りが大きく、歯車同士を噛み合わせた時に摩擦が大きくなります。また、高速で回転させると摩擦熱で歯面は高温になります。そのため、ウォームは硬い金属、ウォームホイールは柔らかい金属と言った異なる材料を使用し、摩擦係数を下げることが必要です。

ウォームギヤは、ウォームを回転させるとウォームの螺旋状の溝が回転します。そして、ウォームの歯が、ウォームホイールのはす歯を押すことで、ウォームホイールに回転が伝達され回転します。

ウォームギヤの回転方向は、双方向 (例えば入力軸側から見て時計方法、反時計方向) 回転が可能です。これはウォームのねじれ方向を左ねじれ、右ねじれで選択することで実現できます。また、ウォームギヤは回転に伴い、ウォームホイールとウォーム軸中心方向にスラスト荷重が働きます。そのためウォームギヤは、入力軸の回転方向とウォームのねじれ方向によって、スラスト荷重の方向が変化します。

ウォームホイールの種類

1. ウォームギヤの形状による分類

ウォームホイール_図4

図4. ウォームギヤの形状

ウォームギヤは、ウォームとウォームホイールの形状により、上記のような種類があります。

円筒ウォームとウォームホイール
多くの場合に使用されて、歯面同士は線接触で伝達能力は中程度

鼓形ウォームとウォームホイール
特殊な形状で高度な製作精度が必要、歯面同士は面接触で伝達能力が高い

2. ウォームギヤの条数

ウォームホイール_図5

図5. 1条と2条のウォームギヤ

ウォームギヤの条数とは、ウォーム (ウォームシャフト) の歯数を示し、ウォーム端面を見て軸1周当たりの歯数で確認することができます。1枚歯の場合は1条、2枚歯の場合は2条となります。

ウォームの条数とその特徴は下記の通りになります。

1条 (Single-start)
ウォームは1歯で、ウォームホイールは同数の歯があります。ウォーム1 回転に対してウォームホイールは1歯分回転します。減速比は比較的低く、トルク伝達が安定しています。

多条 (Multi-start)
ウォームは複数歯で、ウォームホイールは同数の歯があります。ウォーム1回転に対してウォームホイールは2歯分回転します。減速比は1条よりも大きく、大きなトルク伝達が可能ですが、セルフロックする可能性が低くなります。

参考文献
https://www.khkgears.co.jp/gear_technology/basic_guide/KHK380.html

ねじ切り機

ねじ切り機とは

ねじ切り機

ねじ切り機とは、水道管やガス管などを接続するために、工事現場で配管に外ねじを加工する際に使用する機械です。

配管の加工に使われるので、パイプマシンとも呼ばれます。水道管やガス管などを設置する際には必要な長さに切断し、さらに配管同士を接続するにはねじが必要です。ねじ切り機は現場で切断した配管に、おねじを加工するために使用します。

ねじ切り機と似たような器具にねじ切りダイスがありますが、こちらは小さな配管の加工に使用されます。大口径のパイプは非常に強い力が要るため、ねじ切りダイスを人間の力で回してもねじ山を作ることは困難です。そこで、専用のねじ切り機を用います。

ねじ切り機の使用用途

工事現場では水道管、ガス管、電線管など様々な用途で配管を使用します。これらの配管の接続には、配管にねじ山を切って接続用のコネクタにねじ込むことで接続されるケースが大半です。

配管に直接ねじ山を切って締め込むと、接続したときの強度は非常に高いので、安定した施工に適しています。ステンレス製の配管は非常に硬く、耐腐食性も高く安価なのでよく使用されていますが、加工が難しいという難点があります。このような加工の際に、ねじ切り機が使用されています。

ねじ切り機は手動と電動の両方がありますが、電動の方が加工が速く便利なため、使用される場合が多いです。手動のねじ切り機はメインに使用されるよりも、どちらかと言うと電気が無い場所で加工する場合のバックアップとして使用される機械です。

また、一部のねじ切り機ではガスや水道の配管以外に、ボルトや電線管のねじ加工にも使用できる製品もあります。

ねじ切り機の原理

ねじ切り機は、切削加工によってねじを形成します。パイプに切削加工でねじを形成するために大切なのが、ダイヘッドとチューザーです。ダイヘッドは、外ねじを加工する刃物であるチューザーを固定する役割を担う部品です。

ねじが規格通りのサイズに仕上がるよう、チューザーを固定します。また1つのダイヘッドで4つのチューザーを90°ピッチで保持します。ダイヘッドを交換することによって、サイズが異なるねじを加工することが可能です。

チューザーは、実際に配管と接することによって外ねじを形成するための刃物です。ねじの規格に合ったねじ形状の刃物で複数の凹凸形状の刃が並んでいます。チューザーは通常4個セットで、1〜4までの番号がつけられており、ダイヘッドに記された同じ番号の位置に取り付けなければなりません。

セットされたダイヘッドとチューザーに配管をセットし、配管を回転させることによってねじ加工が行われます。

ねじ切り機の種類

電動のねじ切り機は、大きく分けて2種類あります。

1. 自動切上式

自動切上式のねじ切り機では、加工するねじ長さを設定することがきます。あらかじめ設定したねじの長さになると、自動的に加工が終了します。現在のねじ切り機の主流です。

2. 手動切上式

手動切上式のねじ切り機では、ねじ長さを設定することはできません。作業者が確認しながら加工する必要があります。

ねじ切り機のその他情報

1. 転造ローラータイプのねじ切り機

一部にチェーザーを使用しない、転造ローラータイプのねじ切り機もあります。配管の外周を切削してねじ山を形成のではなく、配管の表面に転造ローラーを強く押し付けることで配管表面を塑性変形させてねじ山が形成されます。

この転造ローラータイプは配管表面の肉が失われないため、配管の接続強度がチェーザータイプよりも高いという特徴がありますが、値段も高価です。

2. ねじ切り機を使用する上での注意点

チェーザーを使用する際は、切削オイルを使用することが必須です。オイル無しではチェーザーを傷めてしまい、チェーザーの寿命を早めてしまいます。

また、配管の素材によってもチェーザーを使い分ける必要があります。余計な消耗を避けるために、使用する前にしっかりと確認することが大切です。

参考文献
https://www.bildy.jp/mag/pipemachine-guide/

エンボスパンチ

エンボスパンチとは

エンボスパンチ

エンボスとは金属や紙など塑性変形する素材の薄いシートに凹凸をつける加工のことを指しており、エンボスパンチとはこのエンボス加工を行う器具のことを言います。

エンボス加工でつけられる凹凸は様々であり、文字や数字から丸や四角、さらには幾何学模様など多岐にわたっています。特に書籍などにエンボス加工を施すと高級感が得られますので、見た目をよくするためによく使用される技術です。

また、エンボス加工は意匠的な意味合いのみではなく機能的な用途でも使用されており、エンボス加工は表面の摩擦を低くしたり表面のつや消しなどの目的でも使用されています。

エンボスパンチの使用用途

エンボス加工は非常に幅広く使用されており、使用用途は大きく分けて2点あり、見た目を強調することと機能性を向上させることにあります。

見た目をよくする目的では、クレジットカードの名前や口座番号に使用されていたり、車のナンバープレートのナンバーにも使用されています。これらのエンボス加工された部分は数字や文字が飛び出していますので見た目が強調されており、これらのエンボス加工処理にエンボスパンチが使用されています。

また、トイレットペーパーにもエンボス加工が施されている商品もあり、よく見るとトイレットペーパーの表面に凹凸があることが分かります。この場合は機能性を向上させる目的でエンボス加工が施されています。

エンボスパンチの原理

エンボス加工は凹凸を上に出す加工ですが、反対に凹凸を下側に出す加工もありデボス加工があります。これらの加工は上に出すか下に出すかの違いで原理的には同じです。

エンボスパンチには二つのシートが設置されていますが、これらのシートにはエンボス加工を施すための模様などが施されています。上下のシート共に同じような模様があるのですが、噛み合わせた際に両者の模様がぴったりとはまるように作られています。そして、これらのシートの間に紙などを挟んで押し付けると滑らかであった紙の表面に凹凸の模様が作られます。

エンボス加工は変形する素材でのみ行え、例えば木材などを無理やりエンボス加工すれば木の板が割れてしまいできません。プラスチックの場合は温度が低い状態でエンボス加工を行うと割れてしまいできませんが、温度を上げることで塑性変形を行えますので、プラスチックのエンボス加工は高温で行われます。

また、紙や金属のエンボス加工を行う際には厚さが大事であり、厚すぎると凹凸が作れませんので注意が必要です。

参考文献
https://www.sakaemark.co.jp/products/process/emboss

ソケットハンドル

ソケットハンドルとは

ソケットハンドル

ソケットハンドルはソケットレンチ、すなわちナットなどを回して締め込みを行う器具のハンドル部分のことを指します。

ソケットハンドルは単体では使用できずに、ヘッド部分にソケットを取り付けて使用します。ソケットはナットなど締め込む対象のサイズに合わせて販売されていますので、使用ごとに適切なサイズのソケットに交換して使用します。

ソケットハンドルには幾つかの種類があり、よく使用されているタイプがラチェット機構を持ったソケットハンドルです。その他にも先端の角度を変えられるスピンナハンドルやTの形状をしているT型ハンドルなどもあり、用途に応じて使い分けられています。

ソケットハンドルの使用用途

ボルトやナットを締めつける場合には緩まないように強い力で締め付けなければなりません。もちろん、緩める場合も同様で、レンチを使ってもナットが緩まずに緩めるためにかなり強い力を必要とした経験がある方も多いと思います。

ソケットハンドルはハンドルの長さを長くすることで高い回転トルクを生み出すことができ、しっかりと締め付けを行うことができます。一方で、狭い場所では使い勝手を良くするためにハンドルの短いタイプのソケットハンドルが使用されることもあります。

ソケットハンドルの原理

ソケットレンチは基本的にソケットハンドルとソケットから構成されていますが、ソケットハンドルとソケットのサイズが合わない場合には使用できません。このようにサイズの異なる場合にはアダプタを使用して接続させます。

また、アダプターの代わりに長い棒状のエクステンションバーを取り付け形状を変えることで機器の奥の方にあるナットにもアクセスできるようになる場合があります。他にもソケットの角度をつけたいときにはにユニバーサルジョイントを使用しようします。ユニバーサルジョイントを使用すると、通常の使用ではソケットハンドルに対して直角でしか使用できないソケットが好きな角度に傾けることが出来るようになります。

ソケットを回転させるラチェット機構は歯車と歯車のストッパーとなる爪から構成されています。爪は順方向に回転する限り歯車に引っかかりませんが、逆方向に回転させると歯車に引っかかり回転できなくなります。このため、一方向のみに回転させることができますので、往復運動により締め付けを行うことが出来るようになります。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/productinfo/socketwrench_handle/

ステー

ステーとは

ステー

ステーは玄関のドアや収納の扉、さらには蓋など蝶番を取り付けて開閉させる際に開閉速度を調整する目的で使用される器具です。

蝶番のみを取り付けたドアですと、開け閉めする際に勢いがつきやすく大きな音を伴ったり、強い力で指を挟みこんだ場合には怪我をしてしまうリスクがありますが、このようなリスクを低減するためにステーが取り付けられます。

ステーを取り付けるとドアを開閉する際にはステーにより生み出される抵抗でゆっくりと動作するようになりますので、住居や事務所などの大抵のドアに使用されています。

ステーの使用用途

ステーには用途に応じて様々な種類があり、適宜選択されて使用されています。

最も一般的なステーはドアに使用される横開き用のステーでドアの上部に設置されています。このステーを設置されたドアは開ける際には少々力が要りますので、開ける際にはゆっくりと開き、閉める際には同様に抵抗がかかりますのでゆっくりと閉まります。

他にも油圧や空気圧を用いることで引き出しなどがゆっくりと閉まるように作られてたステーや、上向きに開放するタイプの扉には扉を好きな角度で停止させることが出来るタイプのステーが使用される場合があります。

ステーの原理

ステーの動作機構は油圧、空気圧、スプリングなどがありますが、どれも抵抗を発生させることでドアなどがゆっくりと開閉されるようになります。

ステーを選択する際にはステーが発生させることのできる抵抗、すなわち力を知ることが大切であり、ドアの開閉時に発生する力に近くないと動作に不具合が生じます。例えば、力の弱いステーを大型のドアに設置するとドアの回転力の方が強すぎてステーを取り付けた意味が無くなってしまいます。

このドアが発生させる力のモーメントはトルクと言いますが、このトルクが大きいと回転力が強いということになります。ステーを選定する際には安定的な動作をさせるためにステーの持つトルクがドアのトルクを上回っている必要があります。このステーのトルクがドアのトルクよりも小さいとステーを取り付けてもドアはゆっくりと開閉しないことになります。

ステーの素材にはアルミなど異なる素材が使用されている場合がありますが、屋外など湿気に触れることが多い場合には錆びにくいステンレス製の物を選択するなど気を付ける必要があります。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/productinfo/stay/