真空タンク

真空タンクとは

真空タンク

真空タンクとは、内部に真空状態を保持することができる容器です。

大きさや形状、用途によっては真空チャンバと呼ばれることもあります。内部が減圧状態になるため、外圧に耐えることができる肉厚なステンレス鋼から作られています。

真空タンクは、内部に真空を保持することで熱の伝導を防ぐことが可能です。これにより、外部からの熱の侵入や内部の熱の逃げを最小限に抑えることができます。断熱性に優れた冷蔵庫や断熱容器として使用することが可能です。

また、内部の気体や液体を外部の環境から遮断します。液体や気体の蒸発や酸化を防ぐため、真空中で保管することができます。液体窒素や液体酸素などの冷却材料や特殊な化学物質の保管に有利です。

ただし、真空タンクは気密性が重要な要素です。タンク内の真空を維持するためには、定期的なメンテナンスと監視が必要です。気密性の劣化やリークの問題を早期に発見し、修復することが重要です。

真空タンクの使用用途

真空タンクは、さまざまな使用用途で利用されます。以下は一般的な使用用途一例です。

1. 半導体

電子機器の製造や半導体製造のプロセスでは、真空状態が必要です。真空中では酸素や水分などの不純物が存在しないため、電子機器や半導体の製造プロセスにおいて清浄な環境を提供します。また、真空タンクはガスや液体の分離・除去にも使用され、工業プロセスの効率や製品品質の向上が可能です。

2. 医療分野

真空タンクは、医療分野で利用されることも多いです。医薬品の製造や保存において、真空状態が必要な場合があります。一部の薬剤は酸素や湿気と反応しやすいため、真空タンクを使用してその劣化を防ぐことが可能です。

また、一部の医療機器も真空状態が必要とされる場合があります。さらに、外科手術や処置においても真空装置が使用され、血液や体液の排出や創傷の治療に有利です。

3. 宇宙探査

真空タンクは宇宙探査において、重要な役割を果たします。宇宙空間はほぼ真空状態であり、真空タンクは宇宙船や人工衛星などの内部環境を保護するために使用されることも多いです。

真空タンクの断熱性能により、外部からの熱や放射線を遮断し、内部の機器や乗員を保護します。また、宇宙空間での燃料や冷却材の保管にも真空タンクが使用されます。

真空タンクの原理

真空タンクは内部を減圧状態に保つことができる容器であり、高い耐久性と密閉性が求められます。したがって、真空タンクの素材は肉厚のステンレス鋼で、排気用のラインやリーク用のラインが取り付けられることがほとんどです。また、内部を観察するために窓が取り付けられた製品もあります。

真空タンクは内部の気体圧力を外部の気圧よりも低く保つことで、真空状態を実現する機器です。内部の気体圧力を外部よりも低く維持するために、タンクの構造は気密性が重要です。気密性の高い材料や接合部を使用し、気体の漏れを最小限に抑えます。

真空タンクの選び方

真空タンクを選ぶ際は、真空度や容量を考慮します。

1. 真空度

一部の用途では、超高真空にすることが必要があります。真空タンクの仕様には最大真空度や漏れ率などが明示されているため、それらの値をチェックして真空タンクを選ぶことが重要です。

2. 容量

必要な容量は、保管する物質や液体の量によって異なります。必要な容量を評価し、タンクのサイズや容量を選択することが必要です。容量が不足していると、目的に合った量を保管することができない場合があります。

真空タンクのその他の情報

真空タンクの使い方

真空タンクを使用する際は、容器に亀裂やリークがないことを事前に確認することが必要です。仮に亀裂等があると真空が保たれなかったり、真空環境で大気圧によって装置が破損したりする危険性があります。また、蓋とタンク本体に隙間があると真空引きができないため、蓋をしっかり密着させて留め具で固定してから真空引きを行います。

保管環境によっては、真空タンクの内側の表面に水分や気体が吸着することも多いです。一度吸着した水分や気体は真空状態でも脱離しないことがあるため、使用前に加熱真空乾燥などの処理を行うことが望ましいです。

SICダイオード

SICダイオードとは

SICダイオードとは、シリコン (Si) と炭素 (C) からなる化合物半導体の基本素子の1つです。

SICはSi (シリコン) と比較して絶縁破壊強度が約10倍、バンドギャップが約3倍あり、より高耐圧で小型の電気回路素子を作ることが可能です。この特性を活かしてSICを用いたパワー半導体の開発が進められています。SICダイオードは、SICパワー半導体の代表例であり、ディスクリート (単体) 品として製造されている他、モジュールに組み込まれインバーターやコンバータ、IGBT等で使用されています。

特に、SICのショットキーバリアダイオード (英: Schottky Barrier Diode) は、順方向電圧を小さくしながら小型で高耐圧・高効率なスイッチング動作が可能な素子を作れることから、近年注目されている高性能なダイオードです。

その一方で、SICのウエハはSiのウエハと比較すると結晶を成長させるのが難しく、SICを加工して半導体素子を作るのもSiと比較して難しいと言われています。そのため、SICダイオードはSiダイオードを全て置き換えるのではなく、用途によって使い分けをしながら適用範囲を拡大して行くと予想されています。

SICダイオードの使用用途

SICダイオードは、電気自動車のインバータとして積極的に採用されています。電気自動車に搭載するインバーターにSICダイオードを使用することで、より少ない消費電力で、より遠くまで走れるようになります。

また、電車は消費電力が少なくなることが電気代の節約につながります。SICダイオードを使用した機器の導入はイニシャルコストは高くなりますが、運用コストの削減を実現しやすいです。東海道新幹線の最新車両ではSICダイオードを利用したインバーターが搭載されています。

SICダイオードを使用したパワーデバイスは、小型・軽量でかつ高電圧・高電流を扱えるうえ、高周波数の動作においても効率の低下が少ないのが利点です。今後は、SICダイオードの価格が安くなるに従って、消費電力の大きな機器から順に導入が進むと予想されています。

なお、SICと同じように新世代のパワーデバイスとして、GaN (窒化ガリウム) を素材とした半導体も注目されています。SiCとGaNの住みわけは、SiCがより高電圧・高出力を要する機器に、GaNはより高周波数で動作する機器に使用するのが一般的です。

SICダイオードの原理

SIC製ダイオードは従来のSi製ダイオードと比較してより高い電圧や電流に耐え、より高い動作温度に耐えることができます。これは、ベースとなるSICウエハーの物性が、Siウエハーと比較して優れているからです。

具体的には、SICはSiと比較すると、バンドギャップ、絶縁破壊電界強度、熱伝導度が大きくなります。バンドギャップは、Siの1.12 (eV) に対して、SiCは3.26 (eV) 、絶縁破壊電界強度はSiの0.3 (MV/cm) に対して、SICは2.5 (MV/cm) 、熱伝導度は、Siの1.5 (W/(cm・K) ) に対して、SICは4.9 (W/  (cm・K) ) とそれぞれに優れた値を示しています。

なお、SICウエハーの結晶構造には様々なタイプがありますが、パワーデバイスとして優れた特性を持つのは、4H-SiCと呼ばれる構造をもつもので、上記の値もこれに該当します。

SICダイオードの種類

SICダイオードには、SiCショットキ―バリアダイオードとSICpn接合ダイオード等の種類があります。基本構造はSiダイオードと同じですが、同じ大きさの電圧・電流を扱うのであれば、SICダイオードの方が小型になります。

1. SICショットキーバリアダイオード

構造としては、SICに金属がショットキー接続している形です。電子の移動によって電流が発生する仕組みになっています。

高速性と高耐圧が特徴的なダイオードです。高速性だけで言えば従来のSiダイオードも優れていましたが、SICショットキーバリアダイオードはSiの約10倍の絶縁破壊電圧を持っている点で優れています。1,000Vを超える電圧に対応する製品の製作も可能となっています。

2. SICpn接合ダイオード

構造としては、pn接合を利用しています。SICショットキーバリアダイオード以上の高耐圧と低抵抗が特徴です。これは、n型層に少数キャリアとして正孔が蓄積していくためです。

参考文献
https://techweb.rohm.co.jp/knowledge/sic/s-sic/03-s-sic/4968
file:///C:/Users/karug/Downloads/application_note_ja_20190404.pdf
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/sic/sic_what2

IOエキスパンダ

IOエキスパンダとは

IOエキスパンダとはマイコンの周辺ICとして使用される半導体デバイスです。

一般的にマイコンのピン端子として用意されているIOポートの数は限られています。例えば1つのマイコンを複数の製品に搭載することを考えた場合、機能の限定された製品と高機能の製品に対応する必要があります。

この様な場合、マイコン本体のピン数をできるだけ抑えることで、マイコンのコストを抑え、これを廉価型の製品に搭載します。同じマイコンを高機能製品に搭載する場合、制御ピンが足りなくなりますのでこのような時にIOエキスパンダを使ってIOポートを拡張します。

以上により、マイコンとIOエキスパンダの組み合わせによってシステムの拡張性を広げることが可能となります。 

IOエキスパンダの使用用途

マイコンを含むシステムの設計を行い製品としてリリースした後に、機能変更や機能の拡張が必要となった際に、マイコンに内蔵されているIOポートの数が足りなくなった場合、IOエキスパンダーを使って、不足するIOポートを補う場合に使われます。

用途として考えられるのは、例えば、多くの制御ピンが必要となる7セグメントのLEDを制御する場合の他、ごく一般的な入出力ポートとして使われます。

IOエキスパンダはマイコンからの制御により動作しますが、一般的にはI2Cバスなどのシリアルバスが使用されますので、高速にIOエクスパンダーのポートを切り替えたり、高速にデータを読み込んだりする用途には不向きです。 

IOエキスパンダの原理

IOエキスパンダはI2Cバス等のシリアルバス経由でマイコンから制御されます。一般的に8bitや16bitのIOポートが装備されていることが多いです。

マイコンからIOエキスパンダ内のポート用方向レジスタへ入力もしくは出力の設定をビット単位で行います。

その後、ポート入出力レジスタに所定のデータを書き込むことでデータの書き込みもしくは読み出しを行います。出力ポートに設定した場合はIOエキスパンダの各ポートから設定したデータが出力され、入力ポートに設定した場合は、設定された入力ポートからデータを読み込むことができます。

更に、IOエクスパンダーによっては割込み入力を受け付ける端子が用意されているタイプがあります。
あらかじめセットした所定の条件に合致した場合に、IOエクスパンダーの割込み端子の出力をアクティブにします。

この端子をマイコンの割込み入力に接続すれば、マイコンに内蔵する割込みを動作させることが可能です。この機能は、外部のイベントに対して瞬時にマイコンがこれを受けて、システムの制御を行いたい場合などに有効です。 

参考文献
https://docs.rs-online.com/964b/0900766b8137eed1.pdf
https://www.petitmonte.com/robot/howto_io_expander.html 

 

静電塗装器

静電塗装器とは

静電塗装器とは、静電塗装をするために使用される装置です。

静電塗装は塗装方式の1種で、塗料の粒子および塗装したいターゲットをそれぞれ帯電させることによって塗装します。通常の塗装と比べて塗装の効率が良いとされており、塗料の使用量を減らすことができるという利点があります。

欠点としては、塗装部分の形状によって塗料の付着しやすさが変わること、溶剤系の塗料を用いる際にスパークが生じて引火する場合があり、引火対策が必要なことなどが挙げられます。

静電塗装器の使用用途

静電塗装は、前述の通り塗装効率が良い塗装方式です。塗料の使用量や作業にかかる時間を削減できるため、費用や作業の効率化の面で優れており、大量生産を行う製品の塗装に向いています。自動車や建材、家電製品などの塗装では、静電塗装器が広く用いられています。

静電塗装において、塗料の付きやすさが塗装部分の形状に左右されるという点は課題の1つです。自動車の塗装ではこの課題を解消するため、エアーを利用して塗装部分の形状に合わせた塗装を行う技術が導入されています。

静電塗装器の原理

静電塗装は、静電感応とよばれる現象を利用した塗装方式です。

塗装対象であるターゲットをアースしておき、静電塗装器の負電極を接近させると、ターゲットの表面に正極が現れます。このような現象が静電感応現象です。

静電塗装器にかける電圧を上げていくと、放電電極の先端部ではコロナ放電が生じます。コロナ放電により空気中の酸素がイオン化し、酸素アニオン(オゾン)が大量に生成されます。この酸素アニオンが塗料の粒子に付着することで、粒子が負の電荷を持つようになるのです。

負電荷を帯びた粒子は、酸素アニオンによって形成されたイオン電流に沿って、ターゲットまで運ばれます。ターゲットに到達した塗装粒子は静電的な相互作用により、正電荷を帯びているターゲットの表面に付着します。これが静電塗装器を用いた塗装の原理です。

静電塗装器での塗装は、イオン電流の集中度によって塗料粒子の付着しやすさが異なります。そのため電流が多く集まる凸部は塗装しやすいが、電流が少ない凹部は塗装しにくいといった差が生じるのです。

静電塗装器のデメリット

静電塗装は、大量少品種であれば効率的に塗膜を形成する可能でこれが大きなメリットとして挙げられます。一方で、静電気と粉末を利用すことが逆にデメリットになることもあります。

塗装ムラや特有の欠陥発生
静電塗装は静電感応力を利用した塗装であるため、被塗装物の形状が均一でない場合は電場も不均一になりムラが生じます。凸部では電場が集中しやすいため、そこに塗料が集中するので他よりも厚くなったり、また電場が届く範囲であれば塗装できてしまうことで不要な部分も塗装されることがあるので注意が必要です。

静電気により雰囲気中のゴミや埃も同時に引き寄せられ巻き込み塗装されるため、「ゴミ・ブツ」と呼ばれる塗装の欠陥も生じることがあります。また「ゆず肌」と呼ばれる塗装表面が広い範囲で波打ったような状態なる欠陥で、電圧が高すぎて発生する逆電離現象が原因となります。

薄い膜厚が困難
静電塗装機では粉体を塗料として直接塗装するため、薄い厚みの塗膜を形成することができません。最小値の厚みで30μm程度とされていて、それより塗膜を薄くしようとするとムラなどの欠陥が発生し易くなるため、有機溶剤塗装のような液状塗料による塗装に切り替える必要があります。

少量多品種が困難
静電塗装は塗装前の洗浄に始まり、塗料の密着、高温での焼付乾燥と工程が長く複雑であるため、細かい色調が求められ複数回の塗装が必要とされる少量多品種では、生産性が著しく低下するため対応が困難になります。

専用塗装設備と安全対策が必要
高圧の電気と粉末を使用するため、感電事故や火災に対する安全対策を施した専用の塗装設備が必要なり初期投資費用が大きくなります。また塗装装置だけでなく、塗膜を定着させるための乾燥炉などや油分や錆を落とす前工程の設備も必要となるため、工程全体で見ると設備と作業員のコストも掛かることもデメリットの一つです。

塗料の粉末管理
使用する塗料は粉末であるため、使用だけでなく保管においても粉塵爆発などに対する安全対策が重要になります。また、粉末は表面積が大きく酸化などの汚染が進みやすくこれが欠陥の原因にもなるため、長期間保管する場合は清潔な環境を整える必要があります。 

静電塗装と電着塗装の違い

静電塗装と電着塗装の一番の違いは、静電塗装が塗料をスプレーで噴射し電解の力を利用して塗料を付着させるのに対して、電着塗装は塗料が入った浴槽に被塗装物を浸し、そこに電流を流すことで被膜を析出させる点です。電着塗装の特徴は、液状の塗料に浸し塗装することによる、高い均一性にあります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikizai1937/73/10/73_512/_pdf
https://bikou.cc/201
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1954/9/6/9_6_19/_pdf 
https://www.ncc-nice.com/co_mame/vFl20140815154843-327.html

除塵装置

除塵装置とは

除塵装置とは、水から藻類や小魚をはじめとする塵芥を取り除き、清浄な水を供給するための装置です。主に発電所や用水路などで利用されています。

除塵装置として使用するには、ただ塵芥を除去するだけでなく、その除去した塵芥を搬送したり一次的に貯留したり、水分を分離したりする機能まで求められます。そのため、それぞれの機能を備えたスクリーン、除塵機搬送装置、貯留装置、制御機器といった複数の設備で構成されています。

除塵装置の使用用途

除塵装置は、塵芥が含まれていない清浄な水を供給するための装置です。代表的な導入事例としては、火力発電所や原子力発電所、水力発電所が挙げられます。

火力発電所や原子力発電所では、大量の冷却水が必要です。この冷却水として海水が利用されていますが、海水にはクラゲや海藻、小魚といった多種多様な塵芥が含まれており、そのままでは冷却水に使用できません。

また、水力発電所では大量の水で発電を行っております。取水口に土砂や落葉、倒木などの流木、人の捨てるごみといった塵芥が詰まると発電効率が低下し、機器の故障を引き起こす可能性があります。

そこで発電所の取水口に除塵装置を設置することで、これらの塵芥を除去しているのです。

除塵装置の原理

除塵装置はスクリーンの水中の塵芥を捕捉します。レーキ型とネット型は塵芥を掻き揚げて取り除き、渓流取水工型が余剰水で塵芥を下流に流します。

除塵機はレーキ型とネット型、渓流取水工型に大別されます。

レーキ型・ネット型の除塵機の種類は、1つの箇所に固定する定置式と、台車に積載して移動できるようにした移動式の2つです。移動式はコスト面で秀でていますが、移動の時間がかかるため、除塵能力においては定置式が勝ります。

除塵装置の種類

1. レーキ型

レーキの降下方式によって、回転式と往復式に分類することができます。回転式は、レーキがスクリーンの上流または下流側を降下した後、反対側を上昇する方式です。上昇の際に、スクリーンで捕捉した塵芥を掻き揚げているのです。

往復式では、レーキがスクリーン前面もしくは前方を降下した後、スクリーン面に沿って上昇します。往復式の駆動には、装置の規模が大きい場合はワイヤロープ、規模が小さい場合にはチェーンラックなどが用いられます。

2. ネット型

除塵機は、デュアルフロー式とストレートフロー式が主要なタイプです。ネットの洗浄および除塵を行う際、ストレートフロー式では下流側に塵芥が流出する危険がありますが、デュアルフロー式では流出しにくいといった違いがあります。 

3. 渓流取水型

大規模な水力発電所では、レーキ型やネット型といった除塵機がよく使われていますが、小規模な水力発電所では、これらのタイプに加えて、渓流取水型除塵機などが利用されています。

渓流取水工型には自然取水方式、取水堰方式、水クッション方式、バースクリーン方式、越流水俯角面付着取水堰方式の方式があります。

特に、小水力発電では渓流取水工型バースクリーン方式が主要なタイプとして採用されています。この方式では、渓流河川に固定堰を設置し、堰広頂部に水平又は傾斜したスクリーンを取り付けることでスクリーンの隙間から水を取り込みます。

スクリーンの取り付け角度は重要で、水平から30度以下にすると、土砂や落ち葉などのゴミが詰まりやすくなります。一方、スクリーンの取り付け角度を45度から50度にすると、ゴミが詰まりにくく、大容量の水流にも対応しやすくなります。さらに、スクリーンのスリット幅を小さくすることで、ゴミの除去能力を高めることができます。

参考文献
http://www.kakoki.co.jp/products/m-019/index.html
https://www.ubemachinery.co.jp/totalservice/dustclean/products/rotary-bs.html
https://www.maff.go.jp/j/nousin/mizu/sutomane/pdf/jyojin.pdf 

品質管理用手袋

品質管理用手袋とは

品質管理用手袋

品質管理用手袋は異物混入のリスクを下げる

品質管理用手袋は品質管理や精密作業などで使用される手袋です。通常の手袋を用いた作業では手袋の繊維や糸くずなどが落下、製品に混入する可能性があるため、精密部品や塗装現場などのホコリ、チリを嫌う現場で品質管理用手袋は用いられます。

品質管理用手袋には様々な特徴がある

品質管理用手袋は手先を使った細かな作業を行えるように手のフィット性に優れていたり、グリップ性に優れています。また電子部品など静電気を嫌う現場に向けた帯電を防ぐ手袋も販売されています。

品質管理用手袋の使用用途

品質管理用手袋は幅広い分野の品質管理で用いられる

異物の混入はクレームの原因となるため、品質管理用手袋は様々な業界で使用されています。特に食品加工や精密部品、塗装現場などで品質管理用手袋は用いられています。また、指先にウレタン樹脂をコートして手先を使った細かな作業を行うことができる手袋もあり、この手袋は自動車部品の組み立てや一般機械の組み立てなどのライン作業でも用いられています。

その他、通気性に優れた品質管理用手袋もあり、これは品質管理や仕分け作業など長時間手袋を着用しながら作業を行う際に用いられます。

品質管理用手袋の特徴

品質管理用手袋は糸くず、摩耗によるゴムの粉の発生を防ぐ

品質管理用手袋は綿やナイロンポリエステルなど様々な材質から作られています。いずれの手袋も繊維の糸くずや摩耗によって生じるゴムの粉などの異物が製品に混入しないように作られています。また、ウレタンゴムをコートして指先のフィット感を高めたりグリップ性を高めた手袋や、カーボンを練り込んで導電性を高めることで静電気の帯電を防ぐ手袋も販売されています。

長時間使用し続けるとゴミが発生する可能性あり

一方でゴムがコートされていたり、繊維がむき出しになっている手袋は長時間使用し続けたり強い力を加え続けると摩擦によって糸くずやゴムの粉が発生することがあります。異物混入を防ぐためにも使い捨てタイプの品質管理用手袋は頻繁に交換することが望ましいです。

回転体の近くでは手袋を外した作業が必須

なお回転体などの近くで作業する際は手袋が巻き込まれて大きな怪我につながる恐れがあるため、そのような作業では手袋など引っかかりやすいものは外してから作業する、もしくは回転体の電源を落としてから作業することを強く推奨します。

参考文献
https://ec.midori-anzen.com/shop/c/cHAIA/
https://www.monotaro.com/s/c-17931/
https://jp.misumi-ec.com/vona2/fs_health/T1700000000/T1708000000/T1708140000/

帯電装置

帯電装置とは

帯電装置とは、静電気を生じさせることで、目的の物体を帯電状態にする装置です。

火花の発生原因になったり、電子機器のノイズを引き起こしたりするため、静電気を嫌う環境や製品は多いでしょう。そのためイオナイザとよばれる静電気を除去できる装置や、静電気の防止対策がなされた製品が広く普及しています。

静電気はこうした危険性を持つ一方で、物体どうしの付着などに利用できます。そのため、静電気を強制的に起こしたい際に帯電装置が使用されます。

製品の形状としては、帯電ガンとよばれる銃のような形のものや、棒状の帯電バーなどがあります。

帯電装置の使用用途

帯電装置は静電気を生じさせ、物体を帯電させる装置です。静電気の力を利用して、物体を付着または吸着することができます。

帯電装置を用いると、絶縁性のものであっても帯電させることが可能です。そのため紙やビニール、フィルムなどを帯電させたのち、金属をはじめとする導電体やガラスに付着するといった使い方ができます。この場合には帯電を利用して付着するので、粘着剤やテープを使う必要がありません。

他にも、プラスチックやセラミックなどの粉体を吸引するなどの目的で使用されることがあります。

帯電装置の原理

帯電装置の帯電方式としては、コロナ放電を利用したものが代表的です。

一般に、空気は絶縁体として扱われます。こうした絶縁性を有する気体に高電圧をかけると、一部が電離し、電子およびイオンが生じます。これらが移動することにより電流が流れ、絶縁性であった気体が導電性を持つようになるのです。

この状態で電圧をさらに上げると、電離で生じた電子が加速され、運動エネルギーが上昇していきます。電子のエネルギーが一定以上になると、これに衝突した中性分子を電離し、発生した電子が別の中性分子を電離するといった連鎖的な反応が起こります。こうなると加速度的に電流が増加していき、最終的には火花を伴って発光するのです。この現象がコロナ放電です。

帯電装置の放電極にかかる電圧を上げてコロナ放電を起こすと、周辺の空気が電離されて大量のイオンが生じます。このイオンを付着させることによって、目的の物体を帯電させています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jar/26/3/26_3_203/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1954/9/6/9_6_19/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikizai1937/73/10/73_512/_pdf
https://www.greentechno.co.jp/power/gun.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jar/28/4/28_245/_pdf 

ハンドグラインダー

ハンドグラインダーとは

ハンドグラインダー

ハンドグラインダーとは、高速回転する砥石を使用している研削工具です。

回転数を調整できるモーターやスピードコントローラーが付いている場合が多く、研削の精度を向上できます。様々な砥石や研磨材を使用でき、切れ味や仕上がりに応じて選択できます。

刃物や工具の刃の研ぎ直しや溶接面の研磨、金属の切断面の仕上げなどに使用されます。電動式のハンドグラインダーは電源が必要です。

ハンドグラインダーの使用用途

1. 刃物や工具の研磨

包丁やハサミ、ドリルビットなどの切れ味を回復させること、金属製品やプラスチック、ガラス製品、陶器の表面研磨などに使用されます。

2. バリ取りや仕上げ

鋼板、アルミニウムステンレス鋼などの金属の溶接面や切断面のバリの除去、仕上げ研磨などに使用されます。

3. サビの除去

金属部品の錆の除去や塗装の下地処理などに使用されます。

ハンドグラインダーの使い方

ハンドグラインダーは以下のような流れで使用します。

1. 準備

加工する素材を準備し、必要に応じて素材を固定します。ハンドグラインダーには種類や作業内容に応じて異なるタイプの砥石が使用されます。作業に適した砥石を選択し、ハンドグラインダーに取り付けます。

2. 切削加工開始

ハンドグラインダーを回転させながら素材の表面に接触させ、切削加工を開始します。切削方向を素材の強度や形状に合わせて調整します。

3. 切削継続

ハンドグラインダーを素材に沿って進めながら必要に応じて切削条件を調整します。切削面に対して垂直に、かつ均一な圧力をかけるように注意しながら素材を切削します。

4. 仕上げ

切削加工が完了したら切削面を仕上げます。仕上げに使用する砥石の種類や研磨剤の粒度によって、切削面の仕上がりや表面の粗さが異なります。

5. 粉塵や切削屑の処理

切削加工によって生じた粉塵や切削屑を処理します。切削屑が素材に残留している場合は除去します。

ハンドグランダーの特徴

長所

電動のハンドグラインダーは高速回転する砥石を使用するため、手作業に比べて研削作業が速く作業効率が高くなります。また研削作業中の回転数が一定に保たれるため、手作業に比べて研削作業の精度が高く仕上がりの品質が良くなることが利点です。

さらに電動のハンドグラインダーでは機械自体が回転するため、手作業に比べて研削作業の難易度が低く、初心者でも簡単に操作できるという利点もあります。

また砥石を交換することで砥石の種類や粒度を変えられるため、様々な目的に応じた研削作業をできるので便利です。例えば粗砥粒の砥石を使って表面の傷を取り除いた後、細かい砥粒の砥石を使ってきれいに仕上げられます。

一般的にハンドサイズで比較的軽量であるため、電動のハンドグラインダーは持ち運びや収納が容易であり、利用範囲が広くなります。

短所

ハンドグラインダーは高速回転する砥石を使用するため、騒音や振動が問題です。

またハンドグラインダーを使用すると、素材の表面が削られて粉塵や切削屑が発生します。この粉塵や切削屑は有害物質を含む場合があり、適切な保護対策が必要です。

人の手で操作するため、素材の表面に均一に圧力をかけられない場合があり、切削面の仕上がりにばらつきが生じることがあります。切削精度には限界があり、微細な切削加工や高精度の研削作業には向かない場合があります。

ハンドグランダーのその他情報

1. 動力による分類

ハンドグラインダーには、電動式と手動式の2種類があります。電動式は高速回転する砥石を使用するため、手動式に比べて作業効率や精度が高くなりますが、騒音や振動が問題となる場合があります。手動式は比較的低速で、より細かい作業に向いています。

電動式のハンドグラインダーは電源が必要です。そのため屋内や工場などの電源がある場所でしか使用できません。また屋外で使用する場合は、発電機などの別の電源が必要になる場合があります。

電源にコンセントが必要なタイプのハンドグラインダーに加え、バッテリー式の製品もあり、これらの製品は充電式のバッテリーを内蔵しているため電源コードが不要で屋外や場所を選ばずに使用できます。

2. 砥石の種類

ハンドグラインダーの砥石には、シリコンカーバイドアルミナ、ダイヤモンドなどがあります。それぞれの砥石には特徴があり、使用する素材や作業内容に応じて選択する必要があります。

3. 研磨剤の種類

ハンドグラインダーの研磨剤には、ダイヤモンド研磨剤、シリコンカーバイド研磨剤、アルミナ研磨剤などがあります。砥石と同様に、それぞれの研磨剤には特徴があり、使用する素材や作業内容に応じて選択する必要があります。

プラズマ加工機

プラズマ加工機とは

プラズマ加工機

プラズマ加工機とは、アーク放電によるプラズマを用いて主に切断などを行うための工作機械です。

切断する工作機械にはプラズマ加工機以外には、レーザーやガスによる切断方法があります。プラズマ加工機は他の切断法と比べると切断時間が短く、効率がいいのが特徴です。

また、プラズマ加工機は数mm~100mm程度の厚さまで十分に切断することが可能で、コストも低く抑えられます。昔から使われてきたガス切断などは、酸化しにくいステンレス鋼などの加工は不可能でしたが、プラズマ加工機を使用すれば、通電するものは何でも切断することができます。直線だけでなく複雑な曲線を行うこともできるため、様々な製品の製造に役立っています。

プラズマ加工機の使用用途

プラズマ加工機の主な用途は、金属の切断です。具体的には造船所や鉄骨橋梁メーカーなどで使用されています。特にステンレスやアルミニウム合金など、酸化しにくい材料はガス切断では切断できないため、プラズマ加工機が使われます。

基本的に通電するものならば切断が可能で、処理速度も比較的速いのが特徴です。また、切断できる厚みを比較的広く、ドライプラズマでは150mm程度の厚さにまで対応しています。したがって、レーザーでは切断が難しかった厚みのある素材の切断に適しています。

プラズマ加工機の原理

プラズマ加工機は電気の力で切断する材料と切断機の電極との間でアーク放電を起こし、発生したアーク熱で材料を溶かして切断するものです。さらに、電極周辺を保護する冷却によってアークを緊縮させ、エネルギーを集中させることによって、切断作業の効率を高めます。

溶けた材料はアークと共に発生するプラズマ気流によって、周囲に吹き飛ばされます。プラズマ加工機の電極で用いられるのは、タングステンなどの非摩耗性の材料です。

プラズマ加工機の種類

プラズマ加工機は、使用するプラズマガスの種類よって分類することができます。

1. アルゴン・水素を使うプラズマ加工機

プラズマガスとして、アルゴンガスや水素ガスに窒素ガスを混入したものです。ステンレス鋼や非鉄金属の加工に使われます。水素ガスには還元作用があり、加工する際の酸化が抑制されるため、切断面に光沢があるのが特徴です。

2. 酸素を使うプラズマ加工機

プラズマガスとして酸素を使う場合には、金属の酸化反応によって燃焼エネルギーが増幅されます。効率的な加工をしたい場合に向いており、炭素鋼などの加工に向いた加工機です。

3. 圧縮空気を使うプラズマ加工機

圧縮空気を使うプラズマ加工機は、ランニングコストを抑えることができます。小型のプラズマ加工機にも使われます。

4. 窒素を使うプラズマ加工機

最も古いプラズマ加工機で使われたものであり、近年はNOxの発生源となるため、使われなくなりました。

プラズマ加工機の特徴

プラズマ加工機のメリットは、幅広い厚みに対応していること、曲線の加工も可能であることなどです。切断速度は1~6mm程度切断であれば、レーザー切断の方が優れていますが、厚くなってくるとプラズマ加工機が有利です。しかし、切断できる厚さは150mm程度が限界となります。

また、ガス切断では不可能だったステンレスなど切断が可能で導電性のある材料のほとんどを加工することができます。一方で、高電圧の電源が必要となるため、屋外での使用には適していません。

プラズマ加工機のその他情報

プラズマとは

プラズマとは、高温になった気体に起こる現象によって生まれるものであり、固体、液体、気体に次いで物質の第4の状態と呼ばれます。気体が加熱されると分子は解離して原子になり、さらに原子核のまわりを回っていた電子は原子から離れて電子と正イオンとに分かれます。これは電離といい、電離によって生まれた荷電粒子を含む気体がプラズマです。

プラズマには光や電磁波を出すこと、電流が流れること、物質と反応し、相手の性質を変えるという性質があります。プラズマ加工機では、これらプラズマの性質を利用して金属を加工しています。

参考文献
http://kobe-stainless.co.jp/business/plasma/
http://wwwb.pikara.ne.jp/ogawa-giken/uw_cut/uc71.html

ユニバーサルモーター

ユニバーサルモーターとは

ユニバーサルモーターとは、直流 (DC) または交流 (AC) 電源で使用できるモーターです。

交流で動作させることが多いため、交流整流子モーターとも呼ばれます。さまざまな電源環境で使用することができます。特に、家庭や工業現場など、異なる電源環境が存在する場所で便利です。

また、ユニバーサルモーターは比較的小型でありながら、高い出力と回転速度を実現することができます。そのため、パワフルな動力が必要な機械や装置に最適です。一般的にコンパクトな設計であり、設置スペースが制約されている場所や携帯性が求められる機器にも適しています。

ただし、ユニバーサルモーターは摩耗部品であるブラシを使用するため、定期的な点検や交換が必要です。長時間の連続使用や過負荷の状態では、ブラシの寿命が短くなる可能性があります。

ユニバーサルモーターの使用用途

ユニバーサルモーターは広い用途で使用されるモーターです。以下はユニバーサルモーターの使用用途一例です。

1. 家庭用電化製品

家庭でよく使われる電化製品にユニバーサルモーターが使用されています。強力な吸引力と高速回転が必要な掃除機などに使用されます。小型でコンパクトな設計が可能であり、異なる床面や表面に適応することが可能です。

また、ヘアドライヤーは、高速な風量と温風を提供する必要があります。ユニバーサルモーターはその要件を満たし、強力な風力と短時間での髪の乾燥を実現することが可能です。その他、ミキサーやブレンダーなどにも使用されることがあります。

2. 工具

電動工具にもユニバーサルモーターが利用されます。コンセントが近い場合は交流で電源を供給し、遠い場合はバッテリーで電源を供給することが可能です。

高い回転速度とトルクを提供するため、電動ドリルなどに使用されます。木工や金属加工などの作業において、効率的でパワフルな穴あけが可能です。同様に、インパクトレンチや電動ドライバーにも使用されます。

これらの工具はさまざまな作業に使用され、高い出力と回転速度が求められるため、ユニバーサルモーターが最適です。

ユニバーサルモーターの原理

ユニバーサルモーターは回転子、固定子、ブラシ・整流子などで構成されます。

1. 回転子

回転子はユニバーサルモーターの中心部であり、回転運動を行う部品です。通常、複数の巻線が巻かれた鉄心から構成されています。鉄心は珪素鋼板による絶縁成層構造を採用していることが多く、発熱しにくくなっています。

2. 固定子

固定子は回転子の周囲に配置され、磁性を与える部品です。固定子のコイルに電流を流すことで磁場を生成し、回転子と相互作用することで回転運動を引き起こします。

動作中に流れる渦電流を最小限にするために、ラミネート加工が行われていることも多いです。

3. 整流子

整流子とブラシは、回転子巻線に電気を供給する部品です。整流子とブラシの接触によって回転子巻線に電気を供給します。ブラシと整流子は複数に分かれており、電源の極性を変化させるために使用されます。

ユニバーサルモーターの選び方

ユニバーサルモーターを選ぶ際は、出力容量、回転速度、電源電圧などを考慮することが必要です。

1. 出力容量

出力容量は、モーターが実現可能な出力の最大値です。一般にモーターの仕様書や製品情報で表され、ワット (W) や馬力 (HP) などの単位で示されます。

駆動する負荷に対して十分なパワーを提供する必要があるため、負荷の性質などに応じて適切な出力を選ぶことが大切です。

2. 回転速度

回転速度はモーターが回転する速度です。通常は1分当たりの回転数 (RPM) で表され、製品仕様に記載されます。

作業のスピードや運転効率に直接影響を与えるため、要求される回転速度を適切に選ぶことが重要です。

3. 電源電圧

電源電圧は電源として、使用可能な電圧の種類を指します。DC電源は24Vや18Vなどの規格が使用され、AC電源は100Vや200Vを使用することが一般的です。使用する環境の電圧範囲に合致している必要があります。

参考文献
https://www.nidec.com/jp/technology/motor/basic/00025/