双眼鏡

双眼鏡とは

双眼鏡とは、2つの鏡胴を平行に並べて、両目で遠くのものを拡大して見る光学機器です。

双眼鏡は、片眼で見るより、疲労が少なく、遠近感や立体感を感じることができます。主な用途は、バードウォッチングやスポーツ観戦、観劇、ドライブ、旅行、登山、船舶の監視、天体観測などです。

小型・軽量なものは携行に優れ、高性能な大型のものもあります。見える像は、正立像で上下はそのままです。プリズムを使って正立像にしています。

観劇用の双眼鏡は、オペラグラスと呼ばれます。倍率は2~6倍程度で、美術館での観賞用に1~2mの近距離にもピントが合うものが製品化されています。

双眼鏡の使用用途

双眼鏡の用途は、遠いところにある物体を拡大して観察することです。例えば、野鳥観察では羽根や胴体の色・模様・嘴の形状・目の色などが分かります。スポーツや観劇では、人の動き・ボールの位置などの観察です。船舶や軍事用は、海上の安全確認のための監視などを行います。

付加機能として、屋外で使用する場合の防水型や、手ぶれ補正が付いた防振型が使われます。

双眼鏡の原理

1. 拡大の原理

対物レンズは物体の実像を目の前に結像し、接眼レンズによって虚像として拡大された像が観察でき、これが拡大の仕組みです。この像は一般には倒立像であるため、両レンズの間のプリズムにより正立像にします。

倍率が比較的小さいオペラグラスは、倍率が3~4倍程度、一般の手持ち双眼鏡は5~10倍位です。倍率の表示は、例えば8×30のように表します。倍率が8で、対物レンズの口径が30です。

レンズの口径は、視野の明るさに影響します。ある程度大きさがある物体の明るさは、対物レンズの口径を倍率で割った射出ひとみ径の二乗に比例します。

2. 倒立像を正立像にする方式

両レンズに凸レンズを採用した望遠鏡は、上下が逆で左右も逆の倒立像を観察します。天体観測ではそれほど問題にならないが、一般の観察には不便です。

倒立像を正立像に変換する方法として、複数のプリズムを使う方法があり、多くの双眼鏡がこのタイプです。プリズムのタイプは、ポロプリズムとダハプリズムがあります。

ポロプリズムは、2個の直角プリズムを使用して、倒立像を正立像へ変換します。対物側と接眼側の光路が直線ではなく、平行的にずれが生じます。その分大きさの面で不利です。

ダハプリズムは、複数のプリズムを使用します。対物側と接眼側の光路が直線的になるメリットがあり、スリムなデザインが特長です。

双眼鏡の種類

1. ガリレオ式

対物レンズに凸レンズ、接眼レンズに凹レンズを使い、正立像であり、双眼鏡はガリレオ望遠鏡を2つならべたものです。倍率は2~4倍程度であり、高倍率は困難です。プリズムを使用しないので、小型軽量になります。

一般的には、視野が狭く、視野周辺がボケる問題があります。軍用に使われていたが、現在ではオペラグラスや玩具に使われる程度です。

2. ポロプリズム式

対物レンズ及び接眼レンズに凸レンズを使います。見える像が倒立で、左右も反対に見えるため、プリズムを複数個使って正立像にします。低倍率から高倍率まで明るくシャープな視界です。光軸を1直線にできないため、やや大型です。

3. ダハプリズム式

ダハプリズムは、屋根型のダハ面を有し、上下と左右を同時に反転させて正立像を得ることが可能です。光軸がずれることなく鏡筒は真っすぐになり、小型でスマートです。ただし、光学性能を上げるためのコストが必要です。即ち、ダハ面の精度が高く、精密な技術の加工が要ります。

双眼鏡の選び方

多くの種類がある双眼鏡から選定するには、使用目的と性能・重量を考慮することが大切です。

使用目的が、探鳥か、旅行用か、観劇用か、スポーツ観察か、美術館用か、監視用か、防犯用か、などで適した仕様があります。また、性能と重量は相反するもので、携行用か、据え置き型かで大きく変わります。

双眼鏡の仕様で重要なのは、倍率・レンズ径・明るさ・最短合焦距離・視界の大きさ・重量・サイズなどです。一般的な観察では、8~10倍ぐらい、口径30~40mm程度で、持ち運びしやすいタイプが適しています。

口径が大きいと重量が増えるので、主な目的が何かを良く考える必要があります。

化成肥料

化成肥料とは

化成肥料とは、2種類以上の原料を混ぜて粒状に成形された肥料です。

化成肥料とは、化学的に合成された肥料のことで、植物の生育に必要な窒素 (N) 、リン酸 (P) 、カリウム (K) などの成分のうち2種類以上を含んでいる複合肥料の一種のことを指します。

原料は、有機質肥料でも化学肥料でもよく、植物が吸収しやすいように、粒状、粉末状、液体状、固形状に加工指定あります。

化成肥料は、植物の生育に重要なもので、農業やガーデニング、公園などで使われます。

化成肥料の使用用途

化成肥料の用途は、主に短期間で土に養分を補うことです。この肥料は肥料成分が植物の根から吸収し易いので、効果が比較的速く出ます。ただし、成分がゆっくり溶けて長続きするタイプもあります。

具体的な用途は、米・野菜・果樹・花卉などの栽培、家庭菜園、盆栽、鉢植え、公園の樹木・芝生・花壇、ゴルフ場の芝生育成などです。

化成肥料の原理

この肥料は、窒素・リン酸・カリウムの3要素を含むものが多く、植物の種類や用途により、適した比率の肥料を選びます。各成分の役割は次のようです。

1. 窒素N

葉・茎・根の成長を早める成分です。葉肥とも呼ばれ、窒素が不足すると、葉が小さくなったり、緑色が薄くなったりします。逆に窒素が多すぎると、葉や茎だけが大きくなって、実や花が少なくなります。

2. リン酸P

リン酸は、植物が花や実をつけるための栄養素です。花肥や実肥とも言われ、リン酸が不足すると、実や花が良く付きません。

3. カリウムK

根肥とも言われ、根の成長に必要な要素です。カリウムはもともと土中に殆どないので、植物を育てるには肥料が必要です。病害虫への抵抗力を高め、環境の変化に対しても効果大です。

化成肥料の種類

化成肥料は、肥料成分の合計含有率によって大きく2種類に分けられます。

1. 普通化成肥料

窒素、リン酸、カリウムの合計含有率が15%~30%の肥料です。成分バランスが比較的穏やかで、幅広い作物に利用されます。

2. 高度化成肥料

窒素、リン酸、カリウムの合計含有率が30%以上の肥料です。成分濃度が高いため、施肥量が少なくて済むというメリットがありますが、施用量を誤ると植物を傷める可能性もあります。

また、肥料が効く速さにより即効性・緩効性・液体肥料などに分かれます。

  • 即効性肥料
    成分が水に溶ける速さが大きく、効き目がすぐに表れます。長く持続しないので、追加の施肥が必要です。  

  • 遅効性、緩効性肥料
    成分がゆっくり水に溶けるので、1~12か月にわたり効果が持続します。製品によりこの期間が異なり、一般のガーデニングに多く使われます。

  • 液体肥料
    原液や粉末の肥料を水に溶かしたもので、植物の根にすぐ届き、速く効きます。鉢植え・プランターに良く使用されます。

化成肥料の選び方

1. 3要素等分型

N-P-Kの量が、8-8-8のものや、14-14-14など各種あります。花壇用、菜園用などに適しています。1つの成分が多すぎることが無いので、元肥にも追肥にも安心して使えます。ただし、数字が大きいものは、肥料成分が多く、根を痛めることがあるのでに注意が必要です。

2. 左上がり型

N-P-Kの値が、12-8-8などの肥料があります。窒素成分が多いので葉物野菜や観葉植物、芝生など、葉を育てたい作物用です。

3. 山型

N-P-Kが山型で、6-10-5などがあり、リン酸が多い肥料です。火山灰性土壌はリン酸分を利用するのが困難であるため、山型肥料で補うのに使われます。赤土や鹿沼土に使うときの元肥や追肥に便利です。

4. 右上がり型

N-P-Kが右上がりに増加するタイプです。6.5-6-19などがあり、カリウムが多いのが特徴です。観葉植物を冬越しさせる時などに使います。

 5.谷型

N-P-Kが10-5-10のものは谷型です。リン酸は果実の実が小さくなるので、このタイプを使うのは特殊な場合です。

化成肥料のその他情報

化成肥料を構成する化学肥料と有機肥料には下記のような特徴があります。」

1. 化学肥料

  • 窒素質肥料:尿素・硫安・塩安・石灰窒素

  • リン酸質肥料:過リン酸石灰、よう成リン肥

  • カリ質肥料:塩化カリ・硫酸カリ   
  • 複合肥料:高度化成肥料・普通化成肥料・配合肥料   
  • 石灰質肥料:消石灰・炭酸カルシウム肥料    
  • その他の肥料:ケイ酸質肥料・苦土肥料

2.  有機質肥料   

  • 堆肥:牛ふん堆肥・豚ふん堆肥・鶏ふん堆肥

  • 動植物質肥料:魚粕粉末・菜種油粕・骨粉    

  • 有機副産物肥料:汚泥肥料

化粧板

化粧板とは

化粧板とは、合板や集成材、石膏ボードなどの表面に薄いシートや薄い板を貼った建材です。

化粧板の表面は、印刷した紙、合成樹脂のシート、薄い木の板などで化粧されており、特徴は、美しく、見た目が良いことです。低コストの板に化粧板を貼ることにより、コストを抑えて見栄えを良くします。

さらに、見た目以外に、加工により耐水性、耐汚染性、耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性、防火性、平滑性などが向上します。

化粧板の用途は、壁・天井・床などの建材、机や家具の材料、包装材、小物品入れ、棚板、間仕切り、衝立など広範囲です。

化粧板の使用用途

1. 建材

住宅やオフィスの壁・天井・床、間仕切り・建具などに広く使用されます。カウンタの用途もあります。

2. 家具

机・本箱・TV台・収納家具・下駄箱、棚板など日常生活で目に入ります。

3. 小物

宝石入れ、オルゴール、文具、コースタなどです。

化粧板の種類

化粧板は大きく分類すると、天然木化粧板と特殊加工化粧板とがあります。

1. 天然木化粧板

天然木化粧板は、天然の木材を薄く削ったシートを合板や集成材の表面に張り付けたもので、自然で独特な雰囲気を出すことが可能です。

張り付けるシートの厚さは、約0.2~0.6mmと薄く、高価な木材の使用量を大幅に減らすことが可能です。環境に優しい使い方です。

天然木化粧板は、突板ともよばれます。突板は強度を担う基材として合板や集成材を使い、表面にデザイン性を担う天然木の薄い板を接着剤で張り付けて製造されます。

2. 特殊加工化粧板

特殊加工化粧板は、大きく分類すると、高圧メラミン化粧板、低圧メラミン化粧板、その他化粧板などです。

高圧メラミン化粧板は、印刷紙・クラフト紙にメラミン樹脂を含ませて乾燥し、数枚重ね合わせて高圧 (約100kg/cm2) ・高温 (約150℃) で積層形成したプラスチック板です。テーブルの天板やカウンターなどに使われます。

特徴は、表面が堅いことです。耐汚染性・耐摩耗性・耐熱性・耐水性なども優れています。デザインも木目柄・石目柄・単色など豊富で、色など用途に合わせて選択が可能です。

低圧メラミン化粧板は、チタン紙などの化粧紙にメラミン樹脂を含ませたシートを、繊維板やMDF (中密度繊維板) などの木質基材に貼り合わせて、低圧で成形したものです。表面が堅く、耐汚染性・耐摩耗性・耐熱性・耐水性などが優れており、高圧メラミン化粧板の約1mmより薄い特徴があります。

低圧メラミン化粧板の用途は、建材、システム収納、台所の扉、棚板、ロッカーなどです。

3. その他の化粧板

化粧板はメラミン樹脂含侵ばかりでなく、フェノール樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタンコート紙、塩ビ (PVC) などをコーティングしたものもあります。

オレフィンシートはポリプロピレンやポリエチレンなどからできたもので、耐汚染性・耐候性・耐水性に優れていますが、熱・傷に弱い難点があります。また、合板と化粧板を貼り合わせ、その上からポリエステル樹脂を塗布したものは、傷・熱に弱いが、若干の耐摩耗性・耐水性があるものです。

ウレタンコート紙は、合板、繊維板、ウレタンコート紙を貼り合わせたもので、乾燥が速く、耐汚染性・耐熱性・耐薬品性に優れています。また、合板や繊維板に、印刷した塩ビフィルムを張り付けたものがあります。表面に凹凸が作れ、色・柄が豊富で安価で、用途は家の内装です。

化粧板の選び方

化粧板には多くの種類があり、選び方を次に示します。

1. 用途で選ぶ

見た目を美しくした化粧板は、その特徴を活かした使い方が重要です。用途を考えて選定するのが基本で、例えば、ダイニングテーブルの天板では、熱い鍋を置いても、耐熱性が高ければ異常は出ません。食器を置いても跡が付かない頑丈さがあれば便利です。

2. デザインで選ぶ

化粧板には多くの形・色・柄・機能などがあり、それらを発揮させるのが、選び方の1つです。表面が滑らかなもの、ざらざらで凹凸があるものなどがあり、質感も重要です。また、同じ部屋にある他の家具、インテリアとの調和も考慮が要ります。

段ボール

段ボールとは

段ボールとは、平らな紙(ライナ)と波状の紙(中芯)を接着剤で貼り合わせて作られた板紙のことです。
この板紙を箱状にして、主に商品を入れるのに使います。段ボールの箱は、商品を衝撃から中身を守り、水漏れや日光などの環境からの保護が可能です。

さらに、まとめて運ぶことができるので、輸送の効率化が図れます。段ボールに種々のデザインの図柄を印刷して、識別を明確にし、商品価値を上げることもできます。

段ボールは、リサイクルが可能なので、環境に優しい商品です。日本のリサイクル率は、約95%にもなり、環境の優等生です。

段ボールの使用用途

段ボール箱は、一般的には商品の包装・保管・輸送に使用されます。ファーストフードのパッケージ、封筒状にした包装材料などもあり、葬儀用の祭壇・棺桶などの用途もあります。

シート状の段ボールを加工して、ベッド・家具・テント・間仕切りなど災害用の用途です。

手作りの防音部屋用の素材として、コルゲート面を表面にして、ある程度の吸音・遮音性を利用した使い方があります。

段ボールの種類

段ボールは、波状に成形した中芯の片面又は両面にライナを貼り合せたものです。ライナと中芯の品質は、JISの規定があります。 (JIS P 3902 段ボール用ライナ、JIS P 3904 段ボール用中しん原紙) 構造により分類すると、次のようになります。フルートは中芯の波型の部分のことです。

1. Aフルート

外装用に多く使われる段ボールです。中芯の両側にライナーを張り付けた標準品で、全体の厚さが約5mmです。30cmあたりの山数は約34、段の高さは、約4.5~4.8mmです。山の高さが高いので、垂直方向の衝撃吸収力が大きく、箱の積み上げに適しています。

2. Bフルート

軽い商品の内装箱に多く使われる段ボールです。全体の厚さが約3mmで、30cm当りの山数が約50です。厚さが薄く、平面的な衝撃に強い特徴があります。カラー段ボールが可能です。

3. Wフルート

強度が強く、重い商品や海外向けの商品などに使われます。厚さ5mmのAフルートと3mmのBフルートを重ねて接着したもので、全体の厚さは約8mmです。

4. Eフルート

ギフトボックスや内装箱に使われる段ボールです。全体の厚さは約1.5mm、30cmあたりの山数は約93で、山の高さは1.1~1.15mmです。カラー段ボールに対応し、強度が小さいので、発送用には不向きです。メール便には、薄いのでよく使われます。

5. Fフルート

小型軽量な商品に使われます。厚さが約1.1mmの薄い段ボールです。保管場所が少なくて済みます。30cmあたりの山数は約120です。

6. Gフルート

最も薄い段ボールです。厚さが約0.9mmで、30cm当りの山数は約177です。ダイレクトオフセット印刷が普通紙のようにできます。

段ボールの構造

段ボールは、ライナーと中芯に各々種類があり、組み合わせに多くの構成ができます。

1. ライナー

古紙含有率で種類分けされています。K5,K6、K7、C5などが使われ、Kの方が古紙含有が少なく、強度が大きい紙です。数字は紙の重さを表します。

2. 中芯

中芯も重さで区分されます。重いものが強度が大きく、S120g、S160g、S180g、強化180g、強化200gなどがあります。強化は特殊加工により強度を上げたものです。

S120gが多く使われますが、中芯の選定には、全体のバランスが重要です。ライナーが弱く、中芯が強いと平滑性が悪くなり、ライナーの割れが発生することがあります。

3. 貼り合わせ

コルゲーターと呼ばれる機械で貼り合わせを行います。2種類のライナー、中芯用の紙をセットして両面を貼り合わせます。接着剤はコンスターチです。こうして、段ボールのシートが作られます。

4. 段ボール箱の成形

段ボールのシートから箱に成形します。段ボール箱成形機に入れると、罫線引き、カット、糊付け等の作業を自動で行い、箱に成形されます。

防水キーボード

防水キーボードとは

防水キーボードとは、水や液体をこぼしても故障しにくいように設計されたキーボードです。

パソコンのキーボードは、近くに水やコーヒーなどの飲料がある環境で使われることが多く、うっかりこぼす機会が多々あります。こうした場合にも水で洗うことが可能です。

1口に防水と言っても、各種ランクがあります。国際電気標準会議 (IEC) が定めた防水・防塵規格で表示します。防水規格は、9等級の性能が定められ、IPX0からIPX8まであり、IPX4以下は防滴タイプ、IPX5~8は防水タイプです。汚れたとき水で手入れをする場合は、IPX5以上を選びます。

防水キーボードの使用用途

防水キーボードは、パソコンをはじめ、データーサーバ、制御装置、工作機械、産業機械などのデータ入出力装置に使用されます。このほかの用途は、ゲーム機、食品機械、射出成型機、製鉄機械、製紙機械などです。

単なる防水性能だけではなく、食べこぼし、ほこりがたまったときに、掃除がしやすい防塵性能も備えたキーボードが実際には使われます。汚れたとき、水で洗えるのは、IPX5以上です。

防水キーボードの原理

最も一般的な方法は、キーボードの下面に水を受けるアルミ板を設けることです。バスタブ構造と呼ばれます。キーボードの上から水をこぼしても受け皿で水を受け止め、プリント基板などへの水の侵入を止める効果があります。

キーボードの底面に排水口を付け、受け皿にたまった水は外部へ流れ出る構造です。早く排水して乾燥してから使用します。

この他、各メーカーは独自の方法で、防水性能を発揮しています。

防水キーボードの種類

防水キーボードには多くの種類があり、代表例を次に示します。

1. 有線キーボード

タイピングしやすい、JIS規格準拠の標準日本語配列のキーボードです。有線式なので、パソコンに 接続するだけの簡単操作で、すぐに使用することができます。

数字入力に便利なテンキー付きのフルキーボードで、エクセルなどの作業が効率的です。また、キートップをラバードームで支持するメンブレン方式であり、キーストロークは深めで、しっかりとしたタッチ感です。

誤って水などの液体をキーボード上にこぼした場合、本体裏面に水抜き穴があり、すぐに液体を排出できる排水機能があります。

2. 静音型キーボード

本格静音設計でありながら、軽い打ち心地を実現しています。ワイヤレスタイプの静音薄型キーボードです。

各キートップにシリコンラバーを採用して、従来品と比べて打鍵音を大幅に低減しています。。公共施設や会議室、夜中や朝方など騒音が問題となる場所での使用に適しています。

薄型キーはキーストローク1.4mm近辺であり、素早いキー入力が可能です。薄型なので、とてもスタイリッシュです。

3. 薄型キーボード

抗菌仕様のサクサク軽い打ち心地の薄型キーボードです。最薄部は12.7mm程度の薄型で、スタイリッシュなタイプです。

JIS規格準拠の標準日本語配列であり、打ちやすい設計です。

4. トラックボール付きキーボード

高性能光学式センサー採用のトラックボールを使用し、快適な打鍵感を実現しています。手首の負担を軽減するリストレストが付いています。また、キーの軸受けは、摩耗に強いポリアセタール製リングを採用し、がたつきがなく、滑らかに打鍵可能です。

トラックボールの支持に、大型人工ルビーを使っており、格段の操球感が得られます。

防水キーボードの構造

防水仕様のキーボードは、汚れた場合水洗いができます。ただし、IPの各等級は真水に対応しており、塩水・コーヒー・ジュース、汁などの場合は、速やかに水洗いする必要があります。底面に水抜き穴があり、底から排水できるようになっています。

多くの機種は、キーボードの底面に鉄板を内蔵して、キー入力時の不快な沈み込みを防止しています。ラバードームでキーを支持する構造です。

無線キーボードの場合、デスク周りをすっきりできます。

エアシリンダ

監修:有限会社双葉製作所

エアシリンダとは

エアシリンダとは、圧縮空気を動力源として直線的な運動へ変換する装置です。

エアシリンダは、圧縮空気源があるところで容易に動力が得られるので、生産ラインの自動化、産業用ロボット、搬送装置、扉の開閉、制御装置、工作機械、工具などに広く使われます。

エアシリンダの使用用途

エアシリンダは、軽量・安価で力がある特徴があります。したがって、ハンドリング、クランプ、圧入などに向いており、2点間の高速移動や重量物の搬送にも使われます。工程別の使用用途は次のようです。

1. ハンドリング装置

ロボットハンドなどが生産ラインで部品をつかむ場合です。

・ハンドチャックは力が強いので、変形しにくい部品のハンドリングに向いています。軽量なチャックを選びます。

・グリッパは、壊れやすい部品に衝撃を与えないように、速度可変が可能です。

2. 搬送・昇降装置

搬送機構では、製品や部品を生産ステージから次の生産ステージへ移動させます。エアシリンダは、重量を優先し速く動かしたい場合に使います。

昇降機構としても利用されます。例えば、工場内での材料の持ち上げや、作業台の高さ調整などに使用されます。

3. クランプ装置

クランプ工程は、部品やワークを特定の位置に正確に固定し、圧入、形状変更、検査、組み立てなどの作業を行います。エアシリンダは力が強く動作も速いため、硬い部品のクランプに適します。

4. プレス機構

エアシリンダは、プレス機構としても利用されます。例えば、金属板のプレス加工や、部品の圧入工程で使用されます。

5. ドアやバルブの開閉装置

ドアやバルブの開閉装置としても使用されます。例えば、自動ドアの開閉や、工業用バルブの操作に利用されます。

エアシリンダの原理

エアシリンダは、圧縮空気をシリンダ内に供給することでピストンを動かし、その動きをピストンロッドを通じて外部に伝えます。これにより直線的な押出し・引込みの動作が可能になります。

1. 押出し作動

圧縮空気をシリンダのヘッド側に入れると、ピストンは押出し方向に動き、ピストンロッドは外側に押出し作動します。また、ロッド側の空気が外部へ排出します。

2. 引込み作動

圧縮空気をシリンダのロッド側に入れると、ピストンは引き込む方向に移動し、ピストンロッドは引込みます。このとき、ヘッド側の空気が外部へ排出します。

3. 複動式エアシリンダの作動

圧縮空気を供給することでピストンロッドが両方向に動作する仕組みです。電車のドア開閉、制御装置、ロボットなどに使います。 空気消費量が単動式と比べ約2倍になります。

4.単動式エアシリンダ

圧縮空気を供給することでピストンロッドが一方向に動作し、ばねの力で初期位置に戻る仕組みです。 空気消費量が複動式と比べ少ないです。

エアシリンダの種類

エアシリンダは自動化・省力化に欠かせないものです。代表的なタイプを次に示します

1.一般形

標準形は一般に最も普及しているタイプです。シンプルな形状をしており、安価です。

2.省スペース型

標準形よりストロークを短くしたものです。したがって、コンパクトで軽量であり、狭いスペースに設置する場合などに便利です。

3. ガイド付き型

ピストンをガイドする部品を付加して、正確な直線運動ができるようにします。ガイド付きは、精密な位置合わせを可能にし、ピストンロッドに側面から外力を受ける場合などに使います。

4. ブレーキ付き型

標準形にブレーキを追加してピストンを停止できるタイプです。ピストンを特定の位置で止めることができます。停止が必要な場合や電源トラブルでの安全対策に使われます。

5. ロッドレス型

ロッドレス型は、ロッドが無いのでそのぶん全体の長さが短くなり、スペースを小さくすることが可能です。非常に長いストロークのものは、移動や長さを最小限にしたい場合などに使われます。

エアシリンダの特徴

1.  シンプルな構造

エアシリンダはシンプルな構造を持ち、小型で軽量です。このため、設置やメンテナンスが容易です。

2. 高速動作

圧縮空気を利用するため、エアシリンダは高速で動作することができます。これにより、生産ラインの効率を向上させることができます。

3. コスト効率

圧縮空気は比較的容易に入手できるため、エアシリンダはコスト効率が高いです。また、エネルギー源としての空気は安全で環境に優しいです。

4. 多様な用途

エアシリンダは多様な用途に対応できるため、産業機械や自動化システムなど、さまざまな分野で利用されています。

5. 制御の簡便さ

エアシリンダは、電動アクチュエータに比べて制御が簡便であり、特に細かな制御が必要ない場合に適しています。

 

本記事はエアシリンダを製造・販売する有限会社双葉製作所様に監修を頂きました。

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板鍛造

監修:株式会社寺方工作所

板鍛造とは

板鍛造とは、板金加工と冷間鍛造を融合させた加工サービスです。

板鍛造は、板金加工のコイル材を使って高品質で大量に生産が可能な点と、冷間鍛造の塑性変形を常温で行い高精度な成型が可能な点の両方のメリットを融合させた加工法です。板鍛造を活用すると、複雑な形状の肉厚部品を一気に成型ができます。しかも、高精度かつ低コストです。

FCF工法 (英:Flow Control Forming in Sheet Metal) とも呼ばれています。板鍛造の加工を引き受ける会社はまだ少ないが、依頼すれば、適切な加工サービスを受けられます。

板鍛造の使用用途

板鍛造は、板厚がほとんど変化しない通常のプレス加工に、鍛造要素を取り入れて板厚の変化を制御可能な加工法で、自動車部品や電機製品の小物精密部品などに多く使用されます。例えば、歯車構造を有するギヤ部品や、フランジのように部分的に増肉が必要な部品です。事例の一部を次に示します。

1. 自転車リアーディレーラー用ブラケット

外寸40mm以下の材質S45C、板厚4.6mmの部品です。鍛圧部の公差4.4±0.03、穴径10.15±0.08、座ぐり部11±0.1mmが主要寸法です。工法の特徴は、減厚・エンボス・座ぐり加工などの複合成形です。

2. シートリクライナー用ロックギア

材質S45C、板厚6.0mm、ギアモジュール0.55の部品で、特徴は、つぶしによりギヤとカム面を成形です。粉末冶金による成形部品や、溶接・圧入などによる部品を板鍛造に変更すると一体成形ができ、大幅なコスト削減が得られます。

3. 4輪ブレーキ用ブラケット

材質SAPH440、板厚6.0mmの部品で、ファインブランキング順送加工して、必要な部分のみ増肉することで、材料費を低減し軽量化を実現したものです。

4. ドアロック用ラッチ・ラチェット

前方押し出しによりエンボスを一体成形し、ピンの製作と圧入の工程を省きます。板鍛造により材料のファイバーフローが切断されないので、強度が上がり、ピンが抜ける製品不良もなくなります。

板鍛造の原理

板鍛造は、打ち抜き・絞り・曲げ・バーリングなどを行う板金成形工法と、据えこみ・しごき・押し出しなどの鍛造成形工法を取り込んだ複合成形加工法です。板鍛造の主なメリットを次に示します。

1. 後加工の切削が不要

後加工の切削加工が不要であり、「ネットシェイプ加工」の一つです。加工時間の短縮や材料歩留まりの向上などで大きなコスト低減が可能です。

2. 高強度

製品形状に沿ったファイバーフローができるので、高強度になります。また、鍛造加工で金属内部の気泡や欠陥を押しつぶして、金属の結晶構造を緻密にすることで、粘り強い金属になります。

3. 高精度

板鍛造の加工で、ファインブランキングを用い、高精度な平面度・直角度が得られます。また、従来のプレス成形では困難であった高精度、差厚・段差、歯形のような、高付加価値形状の成形が可能です。

ただし、板鍛造では金型の負担が大きくなるため、金型を高剛性・高精密にし、高剛性のプレス機械が必要です。

板鍛造のその他情報

加工サービス

鍛造は日本が発祥の技術で、2015年前後から普及が始まりました。コスト低減に大きな効果があり、今後の発展が期待されています。板鍛造用の金型を設計・製作できるメーカーはまだ少なく、現時点では専門メーカから加工サービスを受けるのが得策です。

本記事は板鍛造を製造・販売する株式会社寺方工作所様に監修を頂きました。

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ハロゲンフリーフラックス

ハロゲンフリーフラックスとは

ハロゲンフリーフラックスとは、活性剤にハロゲン化物を使わないで、主に有機酸を使用するフラックスです。

ハロゲンは、周期表の第17族にあるフッ素 (F)、塩素 (Cl)、臭素 (Br)、ヨウ素 (I)、アスタチン (At) の5元素を指します。

フラックスは、はんだ付けされる母材や部品、はんだ自身の金属酸化物などを除去して、清浄な接合面を作り、はんだのぬれ性を確保するために、使用されます。

はんだ付けの場合、Cl、Br等のハロゲンをフラックス中に入れ、はんだのぬれ性・作業性を高めてきました。しかし、Cl、Brを含む電子基板を焼却すると、生物に有害なダイオキシンが発生する恐れがあり、ハロゲンを使用しないフラックスが必要となった経緯があります。

ハロゲンフリーフラックスを使用すると、酸化を減らし、電気的接触が改善され、はんだの流れを助けます。

ハロゲンフリーフラックスの使用用途

ハロゲンフリーフラックスは、ハロゲン成分を意図的に含有していないフラックスで、電子部品などのハンダ付けに必要不可欠です。次の用途があります。

  • はんだ付け促進剤として、はんだ付けを可能にします。
  • はんだや部品リード、基板銅箔などの金属表面に酸化被膜を付着させないようにし、クリーンな接合面を作る部材です。
  • はんだ付け後の残渣を少なくし、腐食を抑制します。
  • 乾燥性を利用して水洗浄後の水切り剤として使用することも可能です。

ハロゲンフリーフラックスの特徴

ハロゲンフリーフラックスは、一般社団法人電子情報技術産業協会 (JEITA) の規格では、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素がそれぞれ1,000ppm以下で、ハロゲン成分の含有がありません。特徴は次の通りです。

  • ハロゲンフリーですが、ぬれ性に優れています。
  • 塩素や臭素含有率は、ハロゲンフリー規格どおりです。
  • はんだ付け促進剤として、はんだ付けを可能にします。
  • 独自の活性成分配合でフラックスの飛散を抑制します。
  • より線の端末処理に最適です。
  • 乾燥性を利用して水洗浄後の水切り剤としても使用可能です。
  • 鉛フリーはんだを使用したプリント基板に最適で、はんだ付け後の残渣信頼性が優れ、無洗浄化がはかれます。

ハロゲンフリーフラックスのその他情報

はんだ付けの場合のハロゲンフリー、ぬれ性、フラックス飛散、ボイド、印刷性、タック時間、電気的信頼性などの各種課題を解決した 多機能ソルダーペーストが出ています。すずに銀や銅を加えたペーストです。

・環境対応
ハロゲンフリーであり、各種環境規制に対応します。

・ぬれ性
2種類の活性剤の混合効果により、プロファイルや表面処理を選ばず、安定したぬれ性が得られ、母材に確実なぬれを発生させます。

・フラックス飛散抑制
はんだ溶融直後にフラックスがはんだ上面から捌けるため、気泡排出時のフラックス成分の巻き込みを抑制することにより、フラックス飛散がわずかになります。特に、カメラ、センサー部品の実装へ適用されます。また、飛散フラックスの除去工程が削減可能です。

・ボイド低減
はんだ粒子同士の凝集の他にフラックス同士も凝集するため、発生したガスをフラックスが吸収し外部へ排出します。はんだ内に取り残されるフラックスを減らすことで、低ボイドの実現が可能です。

・印刷性
安定した連続印刷性が得られ、印刷停止時間を延長し、微細パターン印刷性が向上します。

・タック力向上
タック時間を延長し、安定した部品搭載が可能です。

・電気的信頼性向上
表面絶縁抵抗SIRが高く、また、コーティング剤とのコンビネーションに優れ、高信頼性です。

・ブリッジの発生阻止
引きはんだ付けでも、ブリッジが発生しません。

アルミはんだ

アルミはんだとは

アルミはんだとは、アルミ材の接合に使われるはんだです。

アルミ材同士のはんだ付けは、高温の作業が困難であり、強酸性のフラックスが必要、電解腐食の問題などの課題があり、かなり難しいと言えます。

最近は、濡れ性に優れた「やに入りはんだ」が出現し、比較的容易に接合が可能です。また、超音波によるキャビテーション効果を利用した方法はフラックスなしで、はんだ付けができます。キャビテーションによる泡が、溶けたはんだの表面や母材表面の酸化膜・油脂・ゴミ・埃等の汚れを除去し、活性化させるので、はんだ付けが可能です。

アルミはんだの使用用途

アルミはんだの用途例を次に示します。

1. 冷却関連の製品

冷却管、水冷フィーダ、水冷ジャケット、水冷ヒートシンク、水冷筐体、冷却板など (内部に水を通して製品を冷却するもの。気密性・耐熱性ともに重要)

2. 無線通信用の製品

導波管、テーパー管、ホーンアンテナ、給電管、分配器、結合器、トランデューサー、放電管など (電波を扱うため、気密性が重要)

3. 研究機関や大学向けの製品

試作品、特注品、オーダーメイド品など (アルミの溶接品)

4. アルミ線と銅線・端子との接合

扇風機モータのアルミ線の端子、IHクッキングヒータコイルのアルミ線、電子部品のアルミ端子など

アルミはんだの原理

アルミのはんだ付けの方法は次の通りです。

1. はんだ付け

母材を溶かしたり傷つけることなく接着でき、仕上がりが綺麗で、利点は寸法精度への影響が少ないことです。接合部にはんだの液相が形成され母材を溶かさないようにして、接合します。母材表面の酸化膜を取る必要があり、通常フラックスや「やに入りはんだ」を使います。

鉛入りはんだは、融点が約183℃と低く、はんだ付けがしやすく、濡れ性に優れています。しかし、有害な鉛が規制されるようになり、鉛フリーが主流です。鉛フリーは、融点が高くなるのが課題です。

鉛フリーのはんだは、主流がすず:96.5%、銀:3.0%、銅:0.5%の成分であり、融点が217℃ぐらいで、鉛入りより30℃程度高くなります。

2. 共晶アルミはんだ付け

共晶はんだは、すず:63%、鉛:37%の成分を持ち、隙間なく密着させて接合が可能です。

350℃近辺の比較的低温で、母材のアルミニウムと完全な合金になるはんだであり、アルミの表面を摩擦して、フラックスなしで酸化膜を破壊する方法です。薄い合金層で接合するため、接合強度はそれほど強くはなりません。

3. 鉛フリー低温はんだ

すずにビスマスを加えたはんだで、融点は約138~170℃と低く、特徴は、熱に弱い電子部品の場合に使用が可能なことです。

4. 超音波はんだ付け

超音波によるキャビテーション効果を使って、母材表面の酸化膜や汚れを除去し、活性を高めてはんだ付けを行います。超音波により拡散や酸化膜の破壊が促進されるため、より強固に接合できます。

アルミはんだのその他情報

1. 実装用途別はんだの種類

・はんだペースト

電子部品を基板に実装する場合に、はんだペーストを使います。金属粉にフラックスを混合した複合材料で、ペースト状です。比較的大きな面積の場合や、ワークのはんだ付けの場合が主な用途です。

・糸はんだ

はんだこてにより電子部品をはんだ付けする場合に、糸はんだを使います。細い金属の線材で中心にフラックスが入っており、特徴は、はんだ付けがしやすいことです。

・棒はんだ

はんだ槽に棒はんだを溶かし、挿入した部品の端子と基板のランドをディッピングにより、はんだ付けします。糸はんだによるはんだ付けと比較すると、はんだ表面の細かいクラックが減少し、はんだの形状が良くなります。

2. ろう付けとはんだ付けの差異

ろう付けと、はんだ付けは、いずれも金属を接合する方法で、母材を溶かさない点は共通です。重要な違いはろう材の融点で、ろう材が450℃以上、はんだが450℃以下です。

ろう付けは、接合する母材の間に、ろう材を母材の融点より低い温度で溶かしたものを流し込んで冷却して接合します。ろうは固まる際に合金を生成するため、強度が強く、半永久的に強固です。また、ろうは高温環境に耐えるので、高温での作業性や強度は、はんだより優れています。

はんだ付けは、はんだごてによりはんだを溶かして接合するか、自動機で接合します。はんだも高強度ですが、ろう付けよりは劣ります。

低融点はんだ

低融点はんだとは

低融点はんだとは、融点が183℃を下回るはんだです。

低融点はんだは、一般のはんだに比べ融点が低いので、耐熱性が弱い部品がある場合などに使用されます。はんだは、すずと鉛からできており、すずの量で融点が変わり、作業に合わせたはんだを選択します。

特に、すず63%、鉛37%のはんだは、「共晶はんだ」と呼ばれ、183℃で液体から個体に変わります。特長は半溶融状態がないことです。信頼性が高いので、初心者でも容易に扱えます。

低融点はんだは、カドミウム、ビスマス、インジウムなどを加えて、融点を下げたものです。

低融点はんだの使用用途

低融点はんだは、弱耐熱部品の実装に多く使用されます。カメラモジュールなど耐熱性が弱い場合などです。これまで、これらの部品は、従来やに入りはんだを用いた後付けがされていましたが、さらに低温化、自動化のために、低温はんだとレーザー加熱を行うようになっています。

低融点はんだ付けの課題は、融点に合わせた専用のフラックスが必要になることです。また、ビスマスなどを使用するので、車載部品、医療機器、産業機器など信頼性が高い部品への採用には、注意が要ります。シリンジ型ソルダペースト、ハロゲンフリー対応シリンジ型ソルダペーストなどを使うのが最適です。

低融点はんだの原理

1. 融点低下の問題点

プリント基板や金属部品に使用するはんだは、融点が低く、強度が大きいものが必要です。融点が低いと、はんだ付けに必要なエネルギーが小さくなり、またプリント基板の場合、繊細な電子部品に高温にさらさなくても良いからです。融点183℃の共晶はんだが良く使われてきました。これはすずと鉛の合金です。

近年、鉛の有毒性が大きく注目され、2006年にはRoHS指令として、EUで鉛入りはんだが、原則として禁止され、鉛フリーのはんだが利用されるようになっています。鉛の代わりに銀、銅などを使用して鉛を使わず、融点を極力低下させたものです。

鉛が使えないという制約のため、融点が200℃以上に高くなる問題があり、はんだ付けに必要な温度が250℃以上に上がります。これははんだ付けのコスト増になります。

2. 低融点はんだの出現

低融点はんだは、ビスマスやインジウムなどの金属を加えることで、融点を劇的に下げたはんだです。当初低融点はんだは、高価な金属が必要でコストが高いなどの問題で、それほど普及しませんでした。

その後、技術開発が続けられ、コストや強度・耐久性の面で、著しく改善され、融点も180℃より低いものが出現しています。中には、融点が140℃台の低融点はんだは、プロセスの温度が180℃と従来の温度より70℃低くできるので、多くの利点があるものです。プロセスコストの大幅低減、基板や電子部品の信頼性の向上や不良率の低下などがメリットです。

さらに、低融点はんだの利点は、プロセス温度を下げられるので、プリント基板に耐熱性の低い素材が使えることです。フレキシブル基板の素材に、ポリエチレンテレフタレートPETを使い、融点140℃近辺のはんだを採用して、プロセス温度180℃でリフローが可能です。

低融点はんだのその他情報

1. 低融点はんだ付けの利点

低融点はんだ付け材料、FA装置、工法の3つが一体になって初めて量産が可能になります。低融点にすることで、CO2が削減できコストも低減可能です。

低温実装用のはんだは、一例として、すず-ビスマスの合金が使われます。ピーク温度が141℃の共晶組成のはんだや、145℃の低融点仕様のはんだです。

共晶組成のはんだは、従来のすず-鉛はんだよりも低温仕様にして、省エネに貢献し、コスト低減が可能です。また、低融点仕様のはんだは、耐落下性と耐熱疲労性を向上させています。

2. 低融点はんだ付け工法

低融点はんだを用いた基板実装での工法が最近確立され、炊飯器などの製品が出ています。また、耐熱疲労性や耐落下性に優れたはんだ合金による低温リフローはんだ付け工法も出現し、パソコン、カメラモジュール、洗濯機などに採用されています。

3. 低融点はんだ付け用のフラックス

低融点はんだ付けを行う場合は、必ず低融点はんだ用のフラックスの使用が必要です。例えば、従来の220℃よりも80℃低い139℃でのはんだ付けが可能になり、濡れの向上、低温での飛散防止、良好な耐腐食性・絶縁特性が得られます。