監修:シグマアルドリッチジャパン合同会社
試験紙とは
試験紙とは、溶液の性質や溶液に含有する特定の化学物質の濃度を調べるために用いられる、指示薬を浸透させて乾燥させた紙です。
溶液の性質や含有物質によって試験紙に浸透した指示薬が呈色し、色見本と見比べて判定を行います。物理化学及び分析化学的性質を利用した比色分析の一種です (比色法) 。最も有名なものにpH試験紙 (万能試験紙) がありますが、その他にも様々な種類があります。
図1. 試験紙の使い方
試験紙の使用用途
試験紙は、教育・研究・開発・品質管理や排水試験を始めとする、幅広い用途で使用されています。
1. 教育
教育では、小学校から大学まで、リトマス試験紙やヨウ化カリウムデンプン試験紙、塩化コバルト紙、pH試験紙など、様々な試験紙が活用されています。こうした試験紙は比色法により結果がわかりやすく、また、特別な機器を必要とせずに定性分析ができるため、教育機関で活用されています。
2. 研究・開発
研究・開発の分野においても試験紙は簡易的な分析の方法として広く使用されています。pH試験紙は溶液等の液性 (酸性/アルカリ性など) を判定するために、化学を始めとする様々な分野で使用されています。
また、水分試験紙は、固体表面上の付着水や有機溶剤中に含まれる水分の検出に用いられます。
酸化剤を測定するヨウ化カリウムデンプン試験紙は、微量の酸化剤と反応して呈色し、塩素、オゾン、過酸化水素、次亜塩素酸塩などの検出に使用されます。
3. 検査
試験紙の中には検査に用いられるものも多くあります。水質検査試験紙は、残留塩素の測定や、各種水質モニタリングに使用されます。具体的な用途は、
- プール、浴槽施設における残留塩素の測定
- 貯水槽、鑑賞魚水槽などにおける残留塩素濃度の測定
- 飲料水の残留塩素濃度の測定
- 食品工場などで消毒に使用される塩素消毒液の濃度測定
- 工業排水、畜産排水などの窒素成分の測定 (排水処理施設のモニタリング)
- 河川や湖沼水、地下水などの水質モニタリング (富栄養化対策)
などです。また、オイル試験紙は、水や土壌に含まれるオイルの有無を検出するために使用されることがあります。
尿検査用試験紙など、医療用に使用されている試験紙もあります。
この他にも、水溶液中の鉄、マンガン、カルシウムなどの金属を測定する試験紙やブドウ糖、アンモニウム、過塩素酸などの特定の化学物質を測定するための数多くの種類の試験紙が存在します。
試験紙の原理
通常、試験紙は、ろ紙に各種指示薬を染み込ませて製造されます。試験紙に測定したい試料溶液を滴下もしくは塗布する、あるいは、試験紙を浸すことで呈色させる仕組みです。また、試料溶液に試薬を添加してから試験紙に滴下して呈色を確認する試験紙もあります。
例えば、万能pH試験紙では、複数の指示薬を組み合わせて浸透させてあり、幅広いpHがわかるようになっています。万能pH試験紙を測定試料に浸漬し呈色させ、試験紙と付属のカラーチャート (色見本) を比較して試料溶液のpHを目視で読み取ります。また、試験紙によっては専用機器やスマートフォンでpHを読み取る事が出来るものもあります。
試験紙の種類
1. pH試験紙
pH試験紙で最も一般的なものは、ロールタイプの試験紙です。使用する分だけちぎって主に広い範囲を大まかに測る時に使用します。
その他に短冊タイプや、変色する部分が複数あるスティック状の試験紙もあります。
図2. pH試験紙
2. 水質検査試験
水質検査試験の分野では、窒素・リン成分を検出する試験紙や、残留塩素を検出する試験紙などがあります。
硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、アンモニア性窒素、リン酸イオンなどを検出する試験紙は、主に排水中の成分検出に用いられています。
残留塩素を検出する試験紙は、塩素濃度の測定範囲毎に種類があり、用途によって使い分けられます。
この他にも、亜鉛、亜硝酸、アスコルビン酸、亜硫酸、アルミニウム、アンモニウム、過酢酸、過酸化物、カリウム、カルシウム、グルコース (ブドウ糖) 、クロム酸、コバルト、シアン化物、硝酸、スズ、全硬度 (総硬度) 、炭酸塩硬度、鉄、銅、鉛、ニッケル、ヒ素、ペルオキシダーゼ、ホルムアルデヒド、マンガン、モリブデン、硫酸、遊離脂肪酸などの試験紙があります。
3. その他
上記以外にも様々な試験紙があり、多様な分野で使用されています。
- オイル試験紙は、水や土壌に含まれるオイルの有無を検出する試験紙です。炭化水素やガソリン、潤滑油と反応すると青色の試験紙が濃青色に変色します。
- 塩化コバルト紙は、水分の有無を検出する試験紙で、乾燥時には濃青色ですが、水分を含むと淡紅色を呈します。
- ヨウ化カリウムデンプン試験紙は、塩素、過酸化物など微量の酸化剤と反応して青紫色を呈する試験紙です。
- ヨウ素試験紙は、ヨウ素の有無を検出します。ヨウ素が試験紙のデンプンと反応し、試験紙は青色に呈色します。例えば、ヨウ素を含む消毒剤の使用後に、ヨウ素が残留していないか確認することが可能です。また、教育現場でもヨウ素デンプン反応の観察のために用いられます。
本記事は試験紙を製造・販売するシグマアルドリッチジャパン合同会社様に監修を頂きました。
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