PEEK3Dプリンタ

監修:株式会社システムクリエイト

PEEK3Dプリンタとは

PEEK3Dプリンタとは、PEEK樹脂及びその他のエンジニアリング・プラスチック、及びスーパーエンジニアリングプラスチックなど、特殊プラスチックの造形が可能な3Dプリンタです。

エンジニアリングプラスチック (エンプラ) とは、耐熱性、機械的強度などの性能が汎用プラスチックより優れ、工業用部品として適している素材です。PEEK樹脂をはじめとするスーパーエンジニアリングプラスチック (スーパーエンプラ) は、エンプラを上回る耐熱性、高温時の機械的強度を持ちます。

スーパーエンプラは、高い融点のため従来の3Dプリンタでの造形が難しい素材でした。PEEK3Dプリンタは、優れた温度コントロールにより、スーパーエンプラの加工も行うことができるようになっています。

PEEK3Dプリンタの使用用途

PEEK3Dプリンタでは、汎用樹脂からスーパーエンプラに至るまで数多くの材料に対応可能であることが多く、様々な産業用樹脂部品を製造することが可能です。下記のような様々な分野で活用されており、様々な樹脂部品が製造されています。

  • 航空宇宙
  • 自動車
  • 医療
  • ガス
  • 石油
  • 半導体
  • エレクトロニクス

特に、自動車や航空機の分野では、これまで金属部品を使用していた箇所を高強度のエンプラ製部品に置き換えることで車体・機体の軽量化が進んでいます。また、医療分野では、人工膝サポーターなどの医療器具を製作することに活用されています。

PEEK3Dプリンタの原理

1. PEEK樹脂及びスーパーエンプラの性質

エンジニアリングプラスチック (エンプラ) とは、強度と耐熱性に優れたプラスチックの総称であり、工業用部品として適した高機能樹脂です。一般的には、耐熱性100℃以上、強度49MPa以上、曲げ弾性率が2.4GPa以上を持つ素材をエンプラと呼び、150℃以上の連続使用温度を持つ樹脂素材をスーパープラスティック (スーパーエンプラ) と呼びます。

代表的なスーパーエンプラの1つが、PEEK (ポリエーテルエーテルケトン樹脂) です。PEEKは、200℃以上の耐熱性に優れ、また、機械的強度、耐薬品性、再スチーム、耐油性、電気絶縁性、耐放射線性などにも非常に優れています。

エンジニアリングプラスチックの素材例

図1. エンジニアリングプラスチックの例

2. PEEK3Dプリンタの仕組み

PEEK3Dプリンタは、熱融解積層方式で造形を行います。熱溶解積層とは、樹脂などを高温で溶解させ、ノズルから出力させながら重ねていくことで立体を造形する方式です。

PEEK樹脂をはじめとするスーパーエンプラは、融点が高いため、PEEK3Dプリンタは優れた昇温機能と共に、高温や温度変化に耐える構造を有しています。例えば、通常搭載されるノズルは最高で500℃前後まで昇温可能な高温対応ノズルです。造形を行うチャンバ内も高温環境になるため、機械ユニットに使用されるモータやリニアレール、駆動ベルトやPCB基板などには、高温耐性を持つ部品が使用されています。

PEEK3Dプリンタの仕組み

図2. PEEK3Dプリンタの仕組み

3. 3Dプリンターによる造形の利点

PEEK樹脂をはじめとするスーパーエンプラを用いて3Dプリントを行うことには、主に下記のような利点があります。

  • 切削機にはできない形状が造形可能
  • 軽量化が簡単にできる
  • 材料のロスが少なくコスト削減できる
  • 内製化によるリードタイムの短縮
  • 3Dデータを用いて形状をカスタマイズできる柔軟性

PEEK3Dプリンタの活用事例

図3. PEEK3Dプリンタの活用事例

PEEK3Dプリンタの種類

PEEK3Dプリンタには様々な製品があり、用途に合わせて使い分ける/選定することが可能です。最大造形体積は製品によって異なり、大型のものでは400x300x300mmまでの造形が可能です。基本的にノズル温度は前述の通り高温対応ですが、機種によって最高温度は450℃から540℃程度と幅があります。

医療現場に特化した機種では、フィラメントから発生する臭気を外部に漏らさないよう、高性能なHEPAフィルターを装備していることがあります。また、騒音が抑えられた機種ではオフィスなどに設置することも可能です。多様な機種があり、用途に合わせて自由に選択することができます。

本記事はPEEK3Dプリンタを製造・販売する株式会社システムクリエイト様に監修を頂きました。

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