TVSダイオード

監修:Littelfuseジャパン合同会社

TVSダイオードとは

TVSダイオードとは、瞬間的な電圧サージから機器を保護するために設計された半導体デバイスです。

Transient Voltage Suppression (過渡電圧抑制) の略であり、一般的に電子回路や電気機器の保護装置として使用されます。雷や電源スイッチングなどの突発的な高電圧から回路を保護します。これにより、機器のダメージや故障を防ぐことが可能であり、機器の信頼性を向上させることが可能です。

TVSダイオードの使用用途

TVSダイオードは様々な機器に使用されます。以下はその一例です。

1. 通信機器

通信機器では、TVSダイオードがEthernetやUSBなどの通信ポートやインターフェースで使用されます。これらのポートは外部のデバイスと接続されており、静電気放電などの外部異常電圧から回路を保護する必要があります。また、通信回線自体もTVSダイオードで保護されることが多いです。

2. 自動車

自動車産業ではTVSダイオードが車両の電気系統で幅広く使用されます。エンジン制御モジュールやブレーキ制御システム、エアバッグシステムなどの制御ユニットにTVSダイオードが組み込まれています。これらの電子制御システムは、車両の動作に重要な役割を果たすため、過電圧や異常電圧から保護する必要があります。

3. 産業機械

工業環境では産業機械の内部回路などにTVSダイオードが使用されます。産業用ロボットやPLC (Programmable Logic Controller) および製造プロセス制御システムなどの産業用電子機器は厳しい環境条件下で動作することも多いです。これらの環境では電力の変動やノイズが発生しやすいため、TVSダイオードが回路を保護し、信頼性を向上させます。

4. 医療機器

医療機器では患者の安全性と信頼性が非常に重要です。医療機器の電子回路は電源からのサージやノイズによって誤動作することが許されません。したがって、心臓モニターや人工呼吸器、MRI機器などの医療機器には、TVSダイオードが組み込まれています。

TVSダイオードの原理

TVSダイオードの動作原理は通常のダイオードと同様に、半導体のpn接合に基づいています。p型半導体とn型半導体を接合することでダイオードとして動作します。

p型半導体は正孔(電子が不足した状態) を持つ半導体であり、n型半導体は自由電子を持つ半導体です。これらの半導体が接合すると、特定の条件下でp側の正孔とn側の自由電子が再結合して、電子がp側に移動しつつ正孔がn側に移動します。このプロセスにより電流の流れやすさを制御することが可能です。

TVSダイオードは高い電圧が加わるとpn接合が導通します。この際、ダイオードは過電圧をアースなどに逃し、回路内の他の部品が損傷を受けるのを防ぐ仕組みです。さらにTVSダイオードは非常に速い応答時間を有するため、保護回路として適しています。

また、TVSダイオードの多くはシリコンが基本材料です。シリコンは半導体材料として広く使用されており、安定性や信頼性に優れています。また、希少金属を使用せず、安価な点も特徴の一つです。

TVSダイオードの選び方

TVSダイオードを選ぶ際は、以下の要素を考慮することが重要です。

1. 実装方法

表面実装 (SMD) またはスルーホール (THD) などの実装方法を選択します。回路基板の設計や組立プロセスに合わせて、適切な実装方法を選ぶことが重要です。

2. ブレークダウン電圧

TVSダイオードのブレークダウン電圧により、過電圧保護デバイスの適用範囲を決定します。過電圧の予想される最大値よりも高いブレークダウン電圧を持つダイオードを選択します。

3. 最大電流

TVSダイオードが吸収できる最大電流は、回路内で発生する異常電流を処理する能力を示す指標です。回路で予想される最大電流よりも大きな最大電流を持つダイオードを選択する必要があります。

4. サイズ

TVSダイオードのサイズは、回路基板上での実装スペースや物理的な制約に応じて選択する必要があります。小型のダイオードは密度の高い回路に適していますが、大容量の過電圧を処理する場合には大型のダイオードが必要です。

5. 応答時間

TVSダイオードの応答時間は、過電圧が発生してからダイオードが反応するまでの時間を示します。瞬時の過電圧に対して速やかに反応するダイオードを選択することが、回路の保護に重要です。

本記事はTVSダイオードを製造・販売するLittelfuseジャパン合同会社様に監修を頂きました。

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