アクリルパイプ

監修:日本真空化学株式会社

アクリルパイプとは

アクリルパイプとは、アクリルを利用して製造された透明な円筒型のパイプです。

透明プラスチックの中でもひときわ透明度が高く、ショーケース等の各種ディスプレイや、水族館の大型水槽などにも採用されています。優れた耐薬品性、耐候性、加工性が特徴です。

アクリルパイプの使用用途

アクリルパイプは、高透明度を生かした多様な用途で使用されます。

  • 光学部品
  • 照明器具
  • 室内装飾や各種ディスプレイ、看板
  • ドリンクサーバー
  • 実験装置
  • 建材

アクリルパイプの原理

1. 製造法

アクリルパイプには押し出し製法で製造されるものもありますが、押し出し製法の場合には押し出して筒状に仕上げるため、わずかに押し出しの押し出し痕が残ります。

特に高透明度の製品は遠心重合製法で製造されます。遠心重合製法とは、高純度のメタクリル酸メチルモノマーを円筒状型管に注⼊し過熱回転させながら重合固化させ、更に外⾯仕上げをする製法です。この方法では素材を高速回転する製造機で噴射しながら形を作り上げていくため、摩擦が生じず表面に痕が残りません。

2. 工程

遠心重合製法で製造されるアクリルパイプの詳細な工程は下記の通りです。

原料の保管: 原料のメタクリル酸メチルモノマーは、地下タンクに貯蔵し保管される場合があります。地下タンクでの保管は、ドラム缶等での保管よりも品質の劣化が抑えられ、異物の混入も防止できます。

  1. 原料の重合・加熱: 熟成窯内でメタクリル酸メチルモノマーの重合反応や加熱を行い、固形化前のアクリル樹脂を生成します。
  2. 触媒の添加と撹拌: アクリル樹脂を固形化するための触媒を配合し、撹拌します。製作物の厚みや大きさ、室温によっても適切な触媒量は異なります。
  3. 材料の注入・成形: 材料を機械に注入し、パイプを成形します。遠心重合製法では、原料を筒状の型管に入れ、加熱回転させて成形します。
  4. 表面磨き・歪みの除去: 機械から成形したアクリルパイプを取り出して両端を切り落とした後、機械と人力の両方で表面を磨き光沢を出します。
  5. アニール処理: 成形品を加熱することでアクリルパイプを構成する分子を安定させる処理です。アクリルが変形する寸前の温度で成形品を加熱し、クリアな外観を保ちます。
  6. 検査・出荷: 目視で異物やキズ、歪みの有無を検査します。必要な場合は、画像測定器による検査が行われる場合もあります。

2. 性質

アクリルパイプは主に下記のような特徴があります。

  • 軽量性
  • 耐衝撃性
  • 高透明度
  • 耐薬品性
  • 耐候性
  • 加工性

アクリルパイプは非常に軽く、比重はアルミニウムの1/2.3、ガラスの1/2です。耐衝撃値は無機ガラスの15倍です。光線透過率も92%以上と高く、透明度が高い素材です。表⾯はガラスのように滑らかになっています。硬質ポリ塩化ビニル管・塩化ビニル管などの1.5倍の抗張⼒、1.5〜2倍の曲げ強度を示します。

耐薬品性では、無機塩類、油、ガソリン、酸やアルカリにも耐えることができます。耐候性も高く、⻑期間の屋外使⽤から寒冷地の使⽤まで可能です。また、⼯作機械での切削、切断、孔あけなどの加⼯もスムーズに行うことが可能です。また、加⼯⾯も研磨によって透明性と光沢を復活させることができます。 

アクリルパイプの種類

アクリルパイプには径の細いものから太いものまで様々なものがあります。最も細いものでは外径30mmから製造されており、標準サイズは概ね外径30mmから510mmです。それ以上の大径パイプでは600mm、800mm、1000mm、1200mm、2000mmなどがあります。

また、断面の仕上がりには、切りっぱなし (切断面に多少凹凸ができる) 、糸面取り (切断面を平坦にする) 、ツヤミガキ (平坦になった断面を更に磨く) などの処理の種類があります。色では、無色のクリアパイプだけではなく、意匠性の高い多彩な色調の製品た蛍光カラーの製品が提供されています。様々な製品があるため、多様な用途で使用することが可能です。

本記事はアクリルパイプを製造・販売する日本真空化学株式会社様に監修を頂きました。

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