ラップ加工

ラップ加工とは

ラップ加工 (英: lapping) とは、ラップ盤に加工物を置いて、ラップ剤を流し込み圧力をかけながらこすり合わせる研磨方法です。

砥粒と潤滑油が含まれたラップ剤が加工物の表面を削ることで、滑らかな表面に研磨できます。加工面を研磨することによって、製品の長寿命化が可能になり、溶着防止にも貢献します。

ラップ加工の使用用途

ラップ加工は、主に仕上げ精度が必要なものや、平らで滑らかに仕上げる際に使用します。使用用途によって、湿式ラッピング、乾式ラッピング、鏡面ショットマシン加工、マイクロフィニッシュ加工などがあります。

1. 湿式ラッピング

湿式ラッピングは、粗削りや中間仕上げなどに使われます。砥粒と大量の工作液 (石油、機械油など) からなるラップ剤の中に、加工物を入れた状態で、弱い加圧力で加工します。

ラップ剤の中で砥粒が転がることにより、高精度の平面に研磨されます。加工量が大きいため、梨地の無光沢な表面仕上がりです。

2. 乾式ラッピング

精密部品の仕上げ用です。ラップ盤の微小な凹凸にラップ剤をすり込み、高い圧力をかけて研磨加工します。加工量はわずかですが精度は高く、光沢がある鏡面の表面に仕上がります。

一般的な砥石などを利用して研磨をすると、切り込む深さによっては熱を逃がすことができず、焼けが発生します。また、研磨が不可能な場合もあります。この場合、ラップ加工が最適です。

ベアリング部品や測定器のマスターゲージなどの精密部品や、半導体ウエハーなどの削りにくく、加工が難しい難削材の表面処理にも使用されます。

3. 鏡面ショットマシンによる加工

鏡面ショットマシンは、ダイヤモンドの粉を吹き付けて研磨する機械です。ドリル・エンドミル・リーマなどの超硬工具のラップ加工、コーティング前のラップ加工、コーティング処理後に面粗度を上げるためのラップ加工などに使用されます。

刃物の切り屑が通る溝などを研磨して、切り屑の排出性を高め、切り粉詰まりによる工具破損のリスクを小さくします。

4. マイクロフィニッシュ加工

マイクロフィニッシュ加工は、非圧縮性のポリッシングフィルムにより、円筒面を高精度に仕上げるラップ加工です。マイクロフィニッシュ加工は、真円度などの形状誤差を小さくする効果のために使用されます。

ラップ加工の原理

ラップ加工は、ラップ盤の下定盤と上定盤との間で加工物を挟み込み、加工物の上下を研磨することです。研磨をするため、遊離砥粒が含まれる液体状のラップ剤を使います。

固形の砥石による加工は精度に限界があり、ラップ加工では潤滑液に砥粒が混ぜてある遊離砥粒を加工物とラップ盤の間に流して研磨します。砥粒を固定する結合剤を使用しないので、砥粒が加工物を直接削り、均一に安定した研磨ができます。0.1µオーダーのフラットな平面仕上げが可能です。

ラップ加工による精密仕上げでは、平面部でRz0.05µm、異形状部でRz0.2µm程度の鏡面仕上げができます。また、ラップ液ではなく、砥粒粉をショットする方法やフィルムによるラップもあります。

ラップ加工の特徴

ラップ加工の大きな特徴は、加工精度が高いことと、表面の焼けが少ないことです。固体の砥石を使う研磨では、加工物の片面がフラットにできても、もう1方の面と平行に仕上げるのは困難です。ラップ加工は、砥粒が固定されずに遊離しているため、両面を平行に精度よく加工できます。

加工物にストレスを与えず、加工熱によるひずみも少ない加工法です。また、砥石を使用する加工は、ドライで切り込む深さが少ない研磨をすると、表面が焼ける可能性があります。ラップ加工は、液体の研磨剤を使用して、表面焼けの少ない美しい加工が可能です。

ラップ加工の短所は、加工に時間がかかることです。砥粒で少しずつ研磨するので、速度が遅くなります。大量生産には、不適です。

ラップ材のその他情報

ラップ剤の砥粒の種類

ラップ剤は、砥粒に少量の潤滑油をまぜたものです。砥粒は主に3つの素材が使用され、用途によって使い分けます。

1. アルミナ
アルミナは、酸化アルミニウムの別称で、適度な硬度と靭性を持っています。耐摩耗性に優れ、研磨剤とし多く用いられます。鉄鋼や樹脂、ガラスなど幅広い加工物に使用できます。

2. 炭化ケイ素
炭化ケイ素は、アルミナに比べると凹凸が少ない砥粒です。ただし、硬くて欠けやすい短所があります。アルミニウム、非鉄金属などの加工物に使用されます。

3. ダイアモンドスラリー
ダイアモンドスラリーの砥粒は、人工ダイヤモンドで作られており非常に硬い素材です。主に超硬合金やセラミックスなどの加工物に使用されます。

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