潤滑塗料とは
潤滑塗料とは、潤滑作用を持つ特殊な塗料です。
塗るだけで潤滑作用のある被膜を作ることができ、粒子や粉末によって潤滑作用を発揮します。機械部品や搬送機器などにおいて使用されます。周囲の環境などの影響で、通常の液体潤滑剤が機能しづらい状況で有用です。
潤滑性能の核となる固体潤滑剤と、その粉末を部品の表面に密着させるためのバインダー成分、そして塗料を液体状に保つための溶剤から構成されます。オイルやグリスのような潤滑剤とは異なり、ホコリや汚れが付着しにくいという利点があります。また、液だれや飛散の心配がなく、周囲を汚染するリスクが低いのも特徴です。
潤滑塗料の使用用途
潤滑塗料は様々な産業において、以下のように使用されます。
1. 自動車
自動車のエンジン部品では高温および高圧下での潤滑が必要です。特にシリンダーライナーやカムシャフトなどのエンジン部品で使用され、摩擦を減少させて効率を向上させます。これにより、燃費が向上し、エンジンの寿命を延ばすことが可能です。
2. 製造業
ベルトコンベアは製造業で広く使用され、大量の材料や製品を運搬する機械装置です。潤滑塗料はコンベアの摺動部分に塗布され、摩擦を減少させることでメンテナンスの頻度を減少させます。その他にも、モーターやポンプなどの回転機器において、軸受部分に採用されることもあります。
3. 食品・医療
食品産業の機械および装置は食品衛生基準を満たす必要があります。潤滑塗料を製造装置の可動部品に塗布することで、液体潤滑剤の使用を避けて食品の汚染を防ぎます。同様に、MRI機器や歯科機器などの可動部品に使用し、人体の内部へ機械油などの汚染物質が侵入するリスクを低減します。
潤滑塗料の原理
潤滑塗料は対象物の表面に潤滑剤の薄い膜を形成し、滑りやすい層を形成して摩擦を低減させる仕組みです。
潤滑塗料には、滑りを生み出す微細な固体潤滑剤の粒子と、その粒子を物体の表面に固定するためのバインダーで構成されます。固体潤滑剤の粒子は、それ自体が非常に滑りやすい性質を有します。原子や分子が規則正しく並んだ特殊な構造と他の物質が付着しにくい特性を併せ持っており、これらの相乗効果で低い摩擦係数を実現します。
潤滑塗料を対象物に塗布し乾燥させると、まず塗料に含まれる溶剤が蒸発します。次に残されたバインダーが硬化することで丈夫で薄い潤滑被膜が完成します。この被膜が物と物の間に存在することで、硬い面同士が直接ぶつかり合うのを防ぎ、摩擦を劇的に減少させることが可能です。
潤滑塗料の種類
以下は一般的な潤滑塗料の種類です。
1. 二硫化モリブデン (MoS2) 塗料
MoS2塗料はモリブデン原子と硫黄原子から構成される塗料です。黒色の固体粉末であり、非常に低い摩擦係数を持つ点が特徴です。MoS2は微細な層状構造を持ち、部品表面に塗布された場合は相互に滑りやすく、摩擦を軽減します。自動車部品や産業機械、航空機部品などで使用され、特に高温及び高負荷環境で使用しやすい点が特徴です。
2. グラファイト塗料
グラファイト塗料は炭素原子によって構成される塗料です。高真空条件下でも安定して機能し、金属間の摩擦を軽減します。電子機器や金属成形工具などで使用され、特に高い耐熱性が求められる用途において有利です。
3. ポリテトラフルオロエチレン (PTFE) 塗料
PTFE塗料は潤滑性を持つポリマーで構成された塗料です。一般的に「テフロン」として知られており、化学的に安定している点が特徴です。食品産業や医療機器、電子機器などの幅広い用途で使用されます。