保温カバーとは
保温カバーとは、工業機器などをカバーする部材です。工業機器に必要な低温度から高温度の範囲まで対応して保温および断熱をおこない、機器類からの熱エネルギーの放散を防いで省エネ効果をもたらします。
保温カバーの使用用途
保温カバーは、低温から高温まで保温および断熱が必要な様々な工業用品に使用されています。保温カバーは、例えば、使用時に高温になる押出成形機や焼結炉、乾燥炉および熱交換器などの工業機器類の保温および断熱に使用されています。また、機械の中で高温になる発電機やエンジン廻りなどを部分的に保温および断熱するなどの用途にも好適です。
さらには、保温カバーは、一定の温度下で管理されることが好ましい各種配管やタンク、バルブなどの断熱および保温にも使用されています。なお、保温カバーは、低温下でも使用されており、結露防止、凍結防止用などを目的として配管カバーとしても使用されています。
保温カバーの原理
保温カバーは、保温対象である各種工業用品に合わせた形状を有し、保温可能な材質よりなるカバーです。そして、保温カバーは、保温対象に密着できるよう、固定具などを備えています。保温カバーにより保温対象をくるむことで、保温対象からの熱エネルギーの放散を防いで省エネ効果をもたらします。
熱エネルギーの拡散を防ぐことから、高温のものは高温のまま、低温のものは低温のままと元の温度に近い状態で維持することが可能です。また、保温カバーでくるむことにより、周りで作業する作業者が保温対象に接触することも防止可能です。このため、ケガの防止や火傷防止にもつながり作業環境そして労働環境の改善にもつながります。
なお、保温カバーは、保温対象である工業用品に被せ固定具で装着するため、粉塵やゴミの発生がありません。また、工業用品の定期点検や修理交換時も脱着作業が簡便です。
保温カバーの種類
保温カバーは、様々な工業用品に使用されています。このため、よく利用される分野では用品に特定した製品が流通しています。
このような定型のもののほか、各メーカーでは、保温対象の形状や保温条件に合わせてオーダーメイドでの製作にも対応しています。
保温カバーの保温対象への固定具としては、マジックテープや、ベルトまたは耐熱紐などがあり、オーダーメイドの製品はもちろん、定型の製品でも変更できるよう対応しているメーカーもあります。
保温カバーその他情報
保温カバーは、表面を構成する表裏外装材の内部に断熱材を挟みこんでいる構成です。表裏外装材および断熱材の材質と耐熱温度の目安、またこれらを縫製する縫製糸の材質と耐熱温度の目安は以下の通りです。
1. 表裏外装材質について
代表的な表裏外装材質の種類と耐熱温度の目安は以下の通りです。
- アルミナクロス(耐熱1200℃)
- 生体溶解性クロス(耐熱1100℃)
- シリカクロス(耐熱1000℃)
- 高耐熱ガラスクロス(耐熱700℃)
- ガラスクロス(耐熱400℃)
- テフロンコーティングガラスクロス(耐熱250℃)
- シリコンコーティングガラスクロス・アルミガラスクロス・アラミドクロス(耐熱200℃)
2. 断熱材について
代表的な断熱材の種類と耐熱温度の目安は以下の通りです。
- 生体溶解性ブランケット(耐熱1100℃)
- ハイシリカニードルマット(耐熱1000℃)
- シリカニードルマット(耐熱700℃)
- ガラスニードルマット(耐熱500℃)
- グラス―ル(耐熱200℃)
3. 縫製糸について
代表的な縫製糸の種類と耐熱温度の目安は以下の通りです。
- アルミナ糸(耐熱1200℃)
- シリカ糸(耐熱1000℃)
- テフロンコーティングシリカ糸(耐熱800℃)
※テフロンコーティングは800℃もちません - ステンレス糸(耐熱600℃)
- ガラス糸(耐熱400℃)
- テフロンコーティングガラス糸(耐熱300℃)
- テフロン糸(耐熱250℃)
- アラミド糸(耐熱200℃)
4. 保温カバーの工業用品以外の使用用途
保温カバーは、工業用品の保温以外にも、工場内の間仕切り耐熱カーテン、焼結炉の耐熱カーテンなどにも使用されています。作業人員の作業環境向上や作業効率の向上にも寄与しています。なお、これらの用途においても脱着が容易なことがメリットです。