ロールコータとは
ロールコータ (英: roll coater) とは、フィルムなど平面形状のものにローラーを用いて塗布を行う機械です。
ロールコータは、塗料・接着剤・薬品などを均一に塗工します。また、スパッタ源やプラズマCVDを搭載しており、バリア膜・透明導電膜などを連続的かつ高速で成膜することが可能です。一般的にシートやフィルムなど薄い平面形状への塗布に限定されます。
技術の組み合わせによって用途は多種多様であり、さまざまなコーティング板厚・粘度を使い分けられます。そのため、光学・液晶製品・電子部材から薬品・食品まで使用分野は幅広いです。
ロールコータの使用用途
ロールコータは、タブレットやスマートフォンなどの高機能・薄型化と構成部品の高密度・小型化のための光学製品の機能性フィルムに使用されています。フィルムの種類は、光制御・反射防止・防眩・偏光・光拡散・画面保護・透明伝導性などです。
太陽電池や二次電池のフィルムにも使用されます。フィルムの種類として、反射板・遮光・加飾・放熱などが挙げられます。自動車・繊維・住宅・電子部品・半導体などには、薄膜コーティング技術が使用されています。
ロールコータの原理
ロールコータは、複数のローラを使用して、塗料・接着剤・薬品・導電膜・バリア膜・光学膜などをフィルムなどに塗布します。ロールは、「コータロール」「ドクターロール」「送りロール、」「ナイフロール」「ガイドロール」「グラビアロール」などさまざまな名称があります。
リニアベアリングを上ローラー部の昇降に使用することで、高精度かつ円滑な動作を長時間維持できます。開口高さは調整が可能です。短時間でロールの取り外し・組付けができる交換性に優れています。
ドクターロール開閉ハンドルは、左右一体なため、正確・迅速な塗布量の調節が可能です。各ロールは独立駆動方式となっており、成膜プロセスによって種類に分けられます。塗工量の計量・選定や塗工液の状態が、塗工前か塗工後かにより方式が分類され、複数の方式を組み合わせて使用することも可能です。
ロールコータの種類
ロールコータは、さまざまな方式が実用化されています。大きく分けると、ダイレクトロールコータとリバースロールコータがあります。また、塗工液が解放か、密閉化かにより分類できます。
1. ダイレクトロールコータ
ロールの回転する方向とコート対象物の進行方向が同じ方式です。ナチュラルロールコータとも呼ばれます。塗られる対象物は、ゴムライニングしたコーティングロールとスチール製のバックアップロールの間から送り出されます。
2. リバースロールコータ
コート対象物の進行方向がロールの回転方向と逆方向の方式です。バックアップロールと呼ばれるローラによって送られてきた対象物の上に、コーティングロールが逆に回転して転がし塗りします。
リバースロールは、ダイレクトロールに比べて、一度に厚く塗ることができ、表面もきれいなので、下塗り等に広く用いられます。
3. 後計量塗工ロールコータ
後計量塗工方式は、塗工液を一旦余分に塗布した後、目的の量に掻き落とす方法です。ナイフコータやブレード付ロールコータなどと呼ばれ、ロールの形状と隙間を設定することにより、掻き落とす量と膜厚を決定します。
ロールコータのその他情報
1. 専用用途のロールコータ
スパッタロールコータ
スパッタロールコータは、スパッタリング法を用いて太陽電池・タッチパネル・ウィンドウフィルム・FPDなどに使用される金属膜・透明導電膜・光学膜を成膜します。
プラズマCVDロールコータ
プラズマCVDロールコータは、ローラ間で発生する放電を利用してシリカ膜を成膜し、有機EL・電子ペーパ・照明・太陽電池などに使用されるバリア性を実現します。
AIPロールコータ
AIPロールコータは、真空アーク放電を用いてターゲット材料を蒸発させることで、金属化合物膜を成膜します。
2. ロールコータの発展・動向
ロールコータの課題は、対象物の面積が大きいことから設備が大型で、段取り替えが大掛かりになることです。近年では、ローラーをカセットチェンジ式にして、塗工条件の変更に簡単に対応できるコータが出ています。
また、コータ装置が高度化・複雑化し、レーザ変位計やカメラ、センサ類を利用して、塗工面・設備・ワークの各状態の測定・状態監視・記録が可能なコータが望まれます。
参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure/sealing/coater-type/roll.jsp
https://www.kobelco.co.jp/products/function/rollcoater/