ボールミルとは
ボールミルは粉砕装置の一種であり、粉砕媒体としてアルミナ等のボールを円筒状の容器内にいれ回転させることで粉砕を行う装置です。広い意味だと容器を振動させる振動ボールミルや公転・自転運動させる遊星ボールミルがあるが、一般的には容器を回転させるものをボールミルと呼びます。
水平に回転する機能を有するこの機器に粉砕用ボール(直径20~100mm)と原材料を入れて、粉砕用ボールとの衝突・粉砕用ボールと内面との衝撃・摩砕によって原材料を微粉砕します。
図1. ボールミルの構造
原材料を粉砕する器具としてビーズミルもあります。ボールミルの粉砕力は粉砕用ボールの自由落下によって決まります。それに対してビーズミルは撹拌装置により強制的に遠心力により強い衝撃力が加わります。また、ビーズミルのビーズ径は2mm以下とボールミルに比べて小さいことも特徴です。粉砕エネルギーの違いなどの特性から現場ではこれらの機器が使い分けられています。
ボールミルの使用用途
ボールミルは構造がシンプルであるためスケールアップがしやすいため、鉱石や石炭、セメント、医薬、セラミックスや金属などの多岐にわたる分野での粉砕に用いられています。一例を下記に記載します。
- 酸化チタン(用途:顔料・着色料・光触媒・オフセット印刷・化粧品)
- カーボンブラックゴム(用途:製品補強・塗料・磁気記録媒体用の添加物・電池材料)
- チタン酸バリウム(用途:セラミックコンデンサ・積層コンデンサなどの電子部品)
- アルミナ(用途:セラミックス・研磨剤)
- 樹脂(用途:電池部品の一部や汎用プラスチックへの利用)
ボールミルの原理
ボールミルの最適回転数 N は粉砕媒体の大きさ・粉砕方式(乾式・湿式)・リフタの有無・ミルの大きさによって異なります。一般的には臨界回転数Ncと最適回転数Nの割合(N / Nc)でボールミルの仕様は表されます。ここで示した「臨界回転数Nc」とは粒子が遠心力により遠東内壁に圧着したままになってしまう時の最小速度である。粉砕ボールがφ30mmの場合、回転数の算出時には乾式で75%、湿式で65%の値を求めるのが一般的です。
また、容器内の粉体、ボール、空間の比率は粉砕に影響を及ぼします。一般的にはそれぞれ容積に対して約1/3ずつがよいとされていますが、実際にはサンプルや目的(処理時間やバッチ量)によって条件を変える必要があります。
乾式粉砕では原料とボールを入れて粉砕します。シンプルな構造のため、不純物の混入が起こりにくいことがメリットとして挙げられます。湿式粉砕は原料、粉砕ボールの他に水又は有機溶媒を投入します。この手法は原料の調合及び混合に適しています。エアパージ機構が標準装備されており粉砕品の排出効率を高めています。ボールミルには専用の容器が使われることもあります。これは粉砕時に爆発の危険を伴う試料や酸化しやすい金属の粉砕処理で使われます。
ボールミルの選び方
ボールミルの容器は、主にセラミック系と金属系があります。大型の生産用であれば金属製が使用されますが、金属のコンタミや腐食の懸念がある場合は内壁にゴムやウレタン等でライニングする必要があります。その場合はコストが増加するため、サイズにより製造が困難である場合もあります。ボールは基本的に容器と同じ材質のものを使用します。材質については密度の大きいものほど粉砕力は強く、ボール径が小さいほど接触点が多くなり、粉砕能力を上げることができます。ただし、材質により摩耗しやすいものもあるため、材質選定には注意が必要です。