ピエゾ素子

ピエゾ素子とは

ピエゾ素子

ピエゾ素子とは、水晶や石英などの誘電体で起こる圧電効果と逆圧電効果を利用して、微小動作制御や検知などをする受動素子のことです。

動作にギアやモータなどを必要としないシンプルな構造なため、他の微小動作機構素子に比較して小型の素子になります。

ピエゾ素子の使用用途

ピエゾ素子は、主に工業向けの微小動作の検知および制御する装置に使用されています。

例えば、振動計にも使用されており、振動による微小な力変化を圧力としてピエゾ素子にインプットし、圧力を与えられたピエゾ素子に生じる電圧をアウトプットとして電圧値を得ることで振動の大きさとして数値化する仕組みです。

また、精密な動きが要求される顕微鏡や干渉計のような装置のステージ動作に付随する駆動系としても使用されています。

このような駆動系のピエゾ素子の部材は、ピエゾドライバピエゾアクチュエータと呼ばれており、ピエゾ素子を複数積層させた積層アクチュエータなども汎用的な部材です。これらにおいては、ピエゾ素子に微小なパルス電流を加えることで、微小動作を実現しています。このように高応答性と精密な動作制御が必要な場面では、ピエゾ素子が好適です。

1. 電子機器冷却

PCなどの電子機器の冷却と言えば、DCファンを用いた冷却方法が良く用いられていますが、ピエゾ素子を用いた冷却方法も提案されています。

具体的には、ピエゾ素子の逆圧電効果を利用して、ピエゾ素子と風を起こすブレードが一体となった構造物を振動させ、風を発生させています。

このピエゾ素子を用いた冷却方法では、DCファンと比べて騒音が少なく、省エネルギーで駆動することが可能です。

しかしながら、長時間駆動させた場合、ピエゾ素子とブレードが乖離してしまう問題が発生することがあるため、長時間駆動をさせる工夫として、支持板を設置して構造体に加わる応力を分散する方法が取られています。

2. 発電

ピエゾ素子を用いた発電システムの開発も行われています。

例えば、JR東日本研究開発センターのフロンティアサービス研究所では「床発電システム」の研究がおこなわれており、2006年から東京駅で実証実験を行っています。

具体的には、「ピエゾ素子を縦横と敷き詰めて床のようにして、その床の上を歩くと圧電効果で電気が発生し、発電されるという仕組み」の研究です。

JR東日本研究開発センターのフロンティアサービス研究所では、2008年〜2009年の実証実験計画では、発電量を約10W秒と見込んでいます。

このように、発電能力があまり高くなく、コストに見合う発電量が得られないことやピエゾ素子が脆性材料なので耐久性が低いという問題などがあるものの、現在様々な企業や研究機関などで研究開発が行われており、実用的なレベルまで発電することができるかどうかがテーマです。

3.スピーカー

ピエゾ素子を利用したスピーカーも開発されています。

ピエゾ素子の原理

ピエゾ素子で用いられる素材には、主に圧電体セラミックスが使用されており、圧電体は結晶内部に電気的な歪みである極性を持っています。

図1に示すように、ピエゾ素子は、圧電体をプラス側の電極とマイナス側の電極で挟み込んだ構造です。

ピエゾ素子の原理

図1. ピエゾ素子の模式図

電極間に電圧をかけることにより圧電体に圧力がかかり、電圧の大きさに応じて青い矢印のように伸縮して変位し、この変位を駆動力などとして利用しています。なお、その逆でピエゾ素子を変形させるような圧力をかければ電圧を検知することも可能です。

圧電体内の結晶格子は、図2に示すように、平常時は、雰囲気中のイオンを取り込むことで電気的に安定した状態を保っています。ところが、電圧が加わると図2に示すように容易にそのバランスが崩れ結晶内の極性が変化し、結晶格子自体が矢印で示すような方向に伸縮し、これによる変位が圧電体の変位です。

圧電体の図

図2. 圧電体の異常状態 (左) / 圧電体に電圧をかけた状態 (右)

すなわち、圧電体の変位は、結晶格子の電子的な極性を利用した歪み変形のため、高々数ミクロンレベルの変形量であり、一般的には圧電素子自体の駆動量は、数ミクロンと微小です。

このため、さらに大きな駆動量を確保しようとする場合には複数のピエゾ素子を合体積層させた積層アクチュエータなどが使用されます。

ピエゾ素子のその他情報

1. ピエゾ素子を用いたスピーカーの原理

これも、ピエゾ素子の圧電効果を利用したもので、図3に示すように、ピエゾ素子の伸縮方向に振動部材を接するように配置しておきます。
スピーカーの図

図3. ピエゾ素子を使用したスピーカー

そして、再生デバイスからの信号による電圧が加わると、ピエゾ素子が圧電効果で青い矢印方向に伸縮し振動するため、その振動が振動部材に伝達して音を再生する仕組みです。

2. 具体的な商品

このようなピエゾ素子を利用したスピーカーとして、TDK株式会社からPiezoListen™と呼ばれるスピーカーを販売されています。

基本的な構造は、ピエゾ素子を樹脂フィルムでコーティングをし、フレームと配線用の端子を取り付けた構造です。

このスピーカーでは、高変位が可能なピエゾ素子を用いることによって、低音域の出力を高め、広い音域の出力を実現しています。

また、ピエゾ素子にファインセラミックスを使用することで、スピーカーの小型化と薄型化を実現しています。

参考文献
https://www.matsusada.co.jp/column/whats_piezo.html
https://www.pi-japan.jp/ja/technology/piezo-technology/fundamentals/
https://www.fujikura.co.jp/rd/gihou/backnumber/pages/__icsFiles/afieldfile/2009/10/19/116_R05_low.pdf
http://www9.wind.ne.jp/fujin/diy/denki/zatugaku/chouonpa.htm
http://sustainablejapan.net/?p=3265
https://product.tdk.com/info/ja/products/sw_piezo/speaker/piezolisten/index.html
https://eetimes.jp/ee/articles/1308/29/news120.html
https://www.jreast.co.jp/development/theme/pdf/yukahatsuden.pdf

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