ジャイロセンサー

ジャイロセンサーとは

ジャイロセンサー

ジャイロセンサーとは、角速度を検出するためのセンサーのことです。

ジャイロスコープとも呼ばれています。角速度とは、単位時間あたりに物体が回転する物理量を指し、高度で正確な制御が求められている現在の工業機械製品において不可欠なセンサーです。

特に、ロボットや航空機、自動車の車体制御などの分野では、微小な回転を考慮したフィードバック制御を行う必要があり、必ずジャイロセンサーが使用されています。

ジャイロセンサーの使用用途

ジャイロセンサーの使用用途は、スマートフォンやデジタルカメラ、ゲーム機器、宇宙産業、航空、自動車、産業用ロボットなどの制御に幅広い分野で使用されています。

ジャイロセンサーの具体的な使用用途は以下の通りです。

  • スマートフォンやデジタルカメラの手ブレ防止機能
  • 2足歩行ロボットの歩行制御
  • 航空機の機体位置の計測および制御
  • VRゲームの使用者の動作および位置測定

ジャイロセンサーは、熱や振動耐性、大きさなど製品によって特徴が異なります。そのため、ジャイロセンサーを使用する装置の制御の精度や使用環境を考慮して選定する必要があります。

ジャイロセンサーの原理

ジャイロセンサーの代表的な測定方法として、コリオリの力を使って測定する振動型と、光のサニャック効果を使って測定する光学型が挙げられます。

1. 振動型ジャイロセンサー

振動型ジャイロセンサーで用いるコリオリの力とは、回転している物体が移動する際に物体に作用する見かけ状の力のことです。振動型はさらに、圧電方式と静電容量方式に分類できます。

  • 圧電方式
    コリオリの力に相当する物理量として回転状態の振動子に生じる電圧値を計測する方法です。
  • 静電容量方式
    回転している際のコリオリ力で、振動子の左右の検出電極との容量に差分が発生するため、その容量差からコリオリ力を測定し、角速度を算出する方法です。

なお、コリオリの力と角速度の関係は次式で表現可能です。

ω=F/2mv (ω:角速度、F:コリオリの力、m:物体の質量、v:移動速度)

2. 光学型ジャイロセンサー

光学式ジャイロセンサーで用いるサニャック効果とは、光が通過する光路が運動していれば、光路の長さが長くなる原理のことです。この物理現象は、光速が常に一定であるために生じます。光学式ジャイロセンサーでは、周回している光自体が回転することによって、光路が長くなり、それによって生じる位相差を測定することで角速度を算出できます。

ジャイロセンサーのその他情報

1. ジャイロセンサーの補正手法

ドリフト補正
ジャイロセンサーの出力に対して誤差を発生させる要因は複数あります。その中でも気をつけなければならない特性が「ドリフト」です。ドリフトとは、本来初期値として与えられるゼロ点がドリフトし、初期値が少しずつずれて検出誤差が大きくなることを指します。

ドリフトが生じる内的要因としては、DC成分のゆらぎ (低周波の変動) と高周波のノイズによる影響です。DC成分のゆらぎはバイアス不安定性、高周波ノイズは角度ランダムウォークと呼ばれます。バイアス不安定性に関しては、供給電圧の安定性に依存しますので、電源の見直しで改善することが可能です。

角度ランダムウォーク補正
角度ランダムウォークの補正方法については各社のノウハウとなりますが、一般的に良く用いられている補正方法としてカルマンフィルタを用いた補正が挙げられます。

カルマンフィルタとは、直前までの情報と現在取得したデータをもとに、最も適切なシステムの状態を推定する手法のことです。時間とともに変化する変数を、過去の情報と現在取得した情報から本来のあるべき姿を推定する問題と言い換えることもできます。この測定値及び変数そのものにもノイズが乗っているものとして取り扱うことが重要です。

2. ジャイロセンサーと加速度センサーの違い

ジャイロセンサーとよく似た性質を持つセンサーの1つに、加速度センサーがあります。両者は混同されることもありますが、全く別のものです。

加速度センサーはその名の通り、加速度を検知するためのセンサーです。慣性力を利用して物体の移動速度の変化を測定し、電気信号として出力します。加速度からは物体の振動の様子や衝撃の大きさといった情報を得ることもできるため、加速度センサーは幅広い用途に使用されています。基本構造はジャイロセンサーに似ています。

一方、ジャイロセンサーは前述した通り、角速度を検知するために用いられるセンサーです。コリオリの力を利用して物体の動き (回転) や向き・姿勢の変化を測定し、それを電気信号として出力することができます。

3. 3軸・6軸・9軸対応センサー

昨今、慣性力の検出センサーでよく解説される言葉に、3軸・6軸対応センサーがあります。各々前後、左右、上下の加速度 (3軸) と角速度 (6軸) を対応させていて、車載センサーとして自動車の運転支援システムであるADASや自動運転技術に欠かせません。

一例として、自動車のカーナビにはジャイロセンサーと加速度センサーの両方が搭載されており、ジャイロセンサーで自動車の向きを、加速度センサーで移動距離を検知することで、トンネル内など電波が届きにくい場所でも現在地を高精度に表示することができます。

3軸はロール・ピッチ・ヨーで表現され、これらの軸によって姿勢を表現することが可能です。特に、ロール・ピッチに関しては、誤差要因のドリフトそのものをフィードバック回路として自身で補正させることもできます。さらに、ドリフト補正のために異なるRefとして、現在の基準に地磁気センサーを6軸対応センサーに追加して用いるものがあり、この場合は9軸対応センサーと呼ばれています。

4. ジャイロセンサーでのMEMS対応

ジャイロセンサーは、回転運動を伴う機械において、その運動の様子を画面表示したり、制御したりする場合に使用しますが、ジャイロセンサーの小型化に大きく貢献しているのが、MEMS (Micro Electro Mechanical Systems) 技術です。MEMS技術は、半導体業界の薄膜微細加工の技術を展開して用いられています。

ジャイロセンサーにおいても、「光学式」や「機械式」とは異なり、小型・集積化が比較的容易です。MEMS式のセンサーは、比較的高度な制御を可能にするASICとの親和性も高いために、スマートフォン等のモバイル機器をはじめとして多くのデバイスに内蔵されています。

さらに、ジャイロセンサーはその用途によって必要とされる角速度の検出範囲が異なります。例えば、スマートフォンなどのモバイル機器の場合は300~2000dps (degree per second、1秒間あたりの回転角度) 、カーナビなどの自動車向け機器の場合は100~500dpsほどの範囲が必要です。

そのため、センサー選定時には、機器の使用状況を踏まえ、どのくらいの検出範囲があれば充分なのかを考慮しなければなりません。

参考文献
http://yokoya.naist.jp/paper/datas/79/PRMU.pdf
https://industrial.panasonic.com/jp/ss/technical/b14
https://ednjapan.com/edn/articles/1406/09/news014.html
https://www.analog.com/jp/analog-dialogue/raqs/raq-issue-139.html
https://qiita.com/MoriKen/items/0c80ef75749977767b43
https://mems.tamagawa-seiki.com/words/

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