組み込みPC

組み込みPCとは組み込みPC

組み込みPC (英: embedded computer) とは、装置に組み込み、特定の用途に特化したコンピュータを言います。

組み込みPCは、機械や装置等の特定の機能を実現するために搭載されます。産業用機器・医療用機器・家庭用機器など、制御を必要とする多くの製品に用いられています。

組み込みPCの使用用途

組み込みPCは、汎用パソコンと使い方が異なる点がいくつかあります。

  • 長期安定供給・・・汎用パソコンは、モデルチェンジの頻度が多いので、産業用途には不適です。CPUやOSなどは、長期の安定した供給とサポートが必要です。
  • 高信頼性・・・事務作業などに使用するパソコンは、稼働時間や環境条件が比較的穏やかであり、産業用途に使用するとトラブルの発生が懸念されます。組み込みPCは、高耐久で信頼性の高い部品を使用しています。
  • 高い耐環境性・・・温度や湿度だけでなく、粉塵・振動・電磁波・防水性能など厳しい環境条件に対応できます。
  • トラブル原因の追究・・・故障が発生した場合は、どの部品が故障したか、なぜ壊れたか、他の製品に波及しないかなど、徹底的な調査が行われます。汎用パソコンでは、部品の交換が主体で、調査が不十分のケースが多いと言えます。
  • 入出力の差・・・汎用パソコンに比べ、入出力の種類が多い特徴があります。

具体的な組み込みPCの用途

  • FA・産業機器・・・工場のロボット・製造装置・検査装置など
  • 医療機器・・・CT (コンピュータ断層診断装置) ・MRI (磁気共鳴画像診断装置) ・X線検査装置など
  • ネットワーク機器・・・サーバー・モデム・通信制御機器など
  • 計測/精密機器・・・ガスクロマトグラフなど
  • 輸送機器・・・鉄道車両・自動車など

組み込みPCの原理

1. マイコンとの違い

組み込みPCによく似たものに、マイコンがあります。マイコンは、主として家電製品に使用され、装置に組み込む場合は、部分的な、局所的な役割に使われます。一方、組み込みPCは、装置内のいくつかのマイコンとの接続や、外部装置のインターフェース及び使用する人間とのコミュニケーションなど、装置全体の統括を行い、目的とする操作を行います。

2. 高度なデータ処理とグラフィックス機能

組み込みPCは、OSにWindowsやLinuxなどを使用し、パソコンやサーバーなどの汎用コンピューターに近いものです。そして、組み込みPCを装置に組み込むことにより、高度なデータ処理が実施でき、高次元グラフィックス機能が使用できます。

3. 熟練工の操作を再現

高性能なコンピューターを使用することにより、熟練工の絶妙な操作を機械化し、自動化が可能になります。

4. 設計と製造現場との連携

製造現場では、CADでの設計を利用するのが、主流になっています。そのため、装置をコンピュータ化して、設計データをCADシステムから製造装置まで直接連携できるようにします。生産性向上にも効果があります。

5. 医療機器への利用

医療機器においては、組み込みPCが診断情報や検査情報などのデータを管理することにより、カルテを院内で持って回る必要がなくなります。さらに、例えばAI (人工知能) を活用した診断支援や高度医療化への展開が期待されます。

6. 汎用パソコンのリスク

機器メーカーが汎用パソコンを採用して、新機種を開発した場合、汎用パソコンは、製品寿命が短く、サポートの面で不利になります。したがって、機器メーカはコンピュータ専門メーカに、専用の組み込みPCの開発を依頼するのが、多くなっています。

組み込みPCの選定

1. 処理能力

必要なスペックに対し、必要で十分な処理能力を有するPCとソフトウェアを選ぶのが第一です。

2. 使用環境を考慮

組み込みPCを搭載する装置の使用環境条件を十分検討する必要があります。稼働時間・寿命・環境温度/湿度/振動・スペース・他の機器の接続性などを考慮します。

3. 長期のサポート

組み込みPCを搭載する装置は、長期間稼働するので、組み込みPCも同様の寿命が必要です。とくに、PCのサポートを長期にわたって受けられることが条件となります。

4. 災害時の対応

地震や台風などの災害時にも、供給が途絶えることがなく、サービスが受けられることが必要です。

組み込みPCの動向

1. 継続性

組み込みPCは、装置使用者が長期間使い続けることができる継続性が、必要不可欠です。長寿命設計と、部品供給が求められます。

2. 省スペース

装置は機能が多くなり、小型で組み込みやすいPCが有利になります。PCの高性能化・機能強化も必要です。

3. 共通化

組み込みPCは、高くても専用のものから、リーズナブルな共通品への流れがあります。使用する部品の共通化も必要です。

4. AI技術の活用

AI (人工知能) の技術が産業界に広まっています。組み込みPCにAIを導入して、例えば、IoTセンサーからの大量データを解析したり、装置の状態を自己診断したりすることができます。また、検査装置では、検査精度を上げることも可能です。

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