高周波基板

高周波基板とは

高周波基板は、高周波信号の伝送に用いる基板です。概ね500MHzから5GHzまでの周波数レンジの信号を扱うのが一般的です。

高周波回路に使用するプリント基板は、信号の周波数や許容されるサイズ、コストなどを総合的に判断して、基板の材質が選定されます。具体的には誘電率、誘電正接、誘導体の厚み、回路の精度などを検討します。

大容量かつ高速データ通信に対応するための高周波回路では、信号の速度が重要になります。基板の材料は、誘電率が低く、伝送損失が低いことが特に必要です。ガラス布基材エポキシ樹脂、セラミック、およびフッ素樹脂などが使われます。

高周波基板の使用用途

高周波基板は、身近にあるモバイル機器から航空宇宙向けの産業用分野まで、広範囲の機器に使用されています。

高周波回路は高い周波数帯で動作しているため、一般的な回路と比較すると高いレベルでのノイズ対策が重要となってきます。機器からノイズを放射させない、ノイズの影響を受けない対策が必要です。

具体的用途は、テレビ放送、携帯電話・業務用無線・Wi-Fi・ミリ波レーダーなどの通信機器、GPS位置測定、及び気象観測センサ、人体センサなどの通信機器です。

高周波基板の原理

高周波基板は、高い周波数の信号に対処するため、基板の素材の誘電率が低いことと、信号の損失が少ないことが特に必要になります。

信号の伝送速度を上げるには、周波数を高くする必要があります。基盤素材の誘電率が低いほど信号速度は早くなり、光速に近づきます。高分子材料の中で誘電率が最も低いフッ素樹脂が有利です。

信号の伝送によって磁場が発生し、基板の分子が反応して振動します。これが伝送損失となって、高周波ほど損失が大きく、熱に変換されてしまいます。誘電正接が低いほど信号の損失が減少します。誘電正接が低い材料には、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)やフッ素樹脂(PTFE)があります。

伝送損失が大きくなるもう一つ要因は、の導体そのものにあります。基板の配線部分に流れる電流の周波数が高くなるにつれ、電流が流れる場所は最大表皮深さまでの部分に限られてしまいます。表皮効果と呼ばれている現象です。導体全体に流れる場合に比べ、導体の抵抗が増大して、損失が増加します。

さらに、熱膨張係数を銅箔に近づけることも必要です。温度変化により銅箔の剥離が発生する可能性があるからです。

高周波基板の材料

高周波基板の素材には、ガラス布基材エポキシ樹脂(FR-4)、ガラス布基材ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、及びセラミックフィラー樹脂(ロジャース社)、フッ素樹脂(PTFE)、ハイブリッド材などが使用されます。

1. FR-4

FR-4は、ガラス布基材エポキシ樹脂であり、安価であるため、両面基板や多層基板で多く使われています。高周波には限界があり、概ね1GHz程度までです。

2. PPE

PPEを使用した基板は、FR-4基板に比べ、高周波域での耐熱性を表すガラス転移温度が高く、低吸湿、低誘電率、低誘電正接のため、高周波帯での周波数特性が優れています。大型コンピュータ、高周波計測装置、アンテナ装置などに使われます。

3. セラミックフィラー樹脂

低誘電率、低誘電正接で、高周波域の特性が優れており、FR-4と同じ製造装置を使用して加工できます。モバイル機器用基地局、車載衝突防止レーダーなどに使われます。

4. PTFE

代表的商品名がテフロンで知られているフッ素樹脂は、最も誘電率が小さい絶縁材料であり、低吸水性で高周波用として適しています。

PTFEは、FR-4と比較して、誘電率と誘電正接が低いことはもちろん、周波数依存性や温度依存性も非常に安定していることが特徴です。さらに、絶縁抵抗が大きく、化学的安定性、耐熱性、耐薬品性に優れており、高速通信用に多く使われています。アンテナ、レーダー、衛星通信、航空宇宙などの用途があります。

5. ハイブリッド材

ハイブリット材は、材質の異なる材料を組み合わせた複合基板です。高周波材料と一般材料(FR-4)とで積層・非貫通穴構造をつくることでハイブリッド構造の基板を構成します。高周波対応基板のコストを下げ、多層化対応、配線の自由度を向上させます。

ハイブリット材は、高周波回路と制御基板を一体化するのにも使われます。また、薄い高周波材の強度向上や厚さ向上が図られます。

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