ビニール加工とは
ビニール加工とは、ビニール素材を加工してビニール製品を製造することです。
ビニールは、ビニル基 CH2=CH- を持つ化学物質を重合した高分子化合物の総称で、特にポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)を指すことが多いと言えます。日本では日常用語として、ポリ塩化ビニル以外の軟質樹脂もすべてビニールと呼ぶ習慣があります。
ビニール加工は、フィルムの場合、表面処理、印刷、型押し、裁断、打ち抜き、高周波ウェルダなどで溶着・溶断等の工程があります。
ビニール加工のみを受託するメーカーは殆どなく、ビニール加工をすればほぼ最終製品になるので、ビニール製品を製造販売やOEM製造するところが多くあります。
日常ビニールと呼ばれているもので、本当のビニールではないものは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンなどです。これらの加工もビニール加工に一括して呼ばれています。
ビニール加工の使用用途
ビニール加工で作られた製品は、日用品、玩具、ケース、空気ビニール製品、産業用収納などがあります。
日用品では、ファイル、手帳カバー、ポーチ、バッグ、洗面用具入れ、及び写真アルバム、診察券入れ、ウォールポケット、シリコンバンド、契約書ファイルなどがビニール加工で製造されています。さらに、車検証入れ、携帯灰皿、スライダー付袋、レインコート、レインハット、シャワーカーテンなどがあります。また、吹き矢収納ケースなどの玩具、鉛筆・文房具、ビニールバインダー、値札、小物入れ、マスクケース、ブックカバー、防水ケース、証書ケースなどのケース類に多く使われます。
また、ビーチボールや浮き輪、人形、及びエアーPOP、空気枕、梱包資材などの空気ビニール製品などもビニール加工で製造されます。さらに、保護カバーやX線防護カーテン、タペストリー、及び防犯タグ、廃棄物収納袋、腕章、IDケース、原稿袋、宿泊約款ファィル、不動産重要書類ファイル、葬儀記録書などの産業用として生産に使用されます。
高周波ウェルダ加工の原理
一般的な溶着技術には、熱溶着、超音波溶着、高周波溶着などがあります。溶着する素材や用途により、適切な加工法があります。
ビニール加工では、高周波ウェルダ加工が多く使われます。高周波ウェルダと呼ばれる機械を使用して、ビニール同士の溶着・溶断を行います。
溶着は、熱によってビニール同士が溶け合い、冷めると凝固して一体になることを利用して接着する方法です。熱を加える手段に高周波ウェルダを使用します。
高周波ウェルダでは、高周波発振の短い時間の間だけ、高周波によって素材自体の分子を振動させ、 その分子運動による発熱を利用します。溶着したい素材そのものが熱源となります。高周波ウェルダは、一対の電極板の間にビニールを挟んで加熱を行うため、部分的に深い加熱を行うことができる特徴があります。
高周波ウェルダ加工は、直接外部熱源を使用しないので、短時間で安定した品質を確保できます。また、溶着部以外に対する熱の影響も最小限になります。分子レベルでの溶着なので、高い強度が得られます。直火を使用しないため、環境面や作業者の安全・健康面でも優れた加工法と言えます。
溶着溶断用金型
高周波ウェルダ加工では、一方の電極に金型を使って溶着・溶断を行うケースが多いと言えます。完成製品は使用する金型と密接な関係があります。製品の仕上り、品質、加工効率に大きく影響します。
素材のシートを溶断する場合、溶断部の仕上がり状態は、金型の刃先形状によって決まります。金型の刃先の代表的なものには、片刃型と巻刃型があります。
片刃型金型は、単純な溶断型の形状をしており、全体的な刃当たり調整が簡単で、シートに対する進入角度も平均化しやすい特徴があります。主にビーチボールや人形などの空気ビニール製品に長年使われています。
巻刃型の金型は、溶着部とは別に溶断刃を設けたタイプです。溶着部の仕上がりを変えたり、厚手のシートを加工する場合などに向いています。主に単純な平袋状の製品、ポーチやブックカバーなどの加工に使用されます。形状特性上空気ビニール製品には不向きです。
巻刃型を使用した溶断部は、製品外周に細い凹み線が付き、仕上がりイメージが変わります。またローレット加工によりステッチ状にしたり、太目の溶着仕上げにすることができます。