細胞解析とは
細胞を解析する方法にはさまざまなものがあり、細胞の何を知りたいかによって解析の装置や実験の方法を変える必要があります。
たとえば、細胞の数や状態、生存率を顕微鏡やカメラで確認することもその一つです。イメージングと呼ばれることもあります。最近では人工知能を応用したソフトウェアが開発されて、長時間の観察や細胞の計数を自動で測定することが可能になっています。
こうした細胞解析機器の発展により、細胞の移動や分裂、増殖、浸潤や形態変化などを的確に分析することができるようになりました。
昨今の飛躍的な細胞生物学の進歩は、細胞解析技術の革新によってなされてきたともいえます。
細胞解析の使用用途
細胞解析は、臨床や生物学の研究をはじめ、生殖医療の現場や医薬品の開発などに使用されています。なかでもがん細胞の研究は、がんの発現から転写、移動、ネットワークの形成など複雑な相互関係が多岐に渡っており、細胞解析が必要とされています。
細胞解析はさまざまな方法があるので、その目的に合わせて解析の方法を選択します。古くから、細胞の観察に蛍光顕微鏡が利用されてきましたが、観察者が大量の細胞の数を数える方法に限界があったり、人によって見え方に差があるなどの問題がありました。最近では自動で細胞を数えることができる装置が開発されており、研究が発展しています。
細胞解析の原理
細胞解析には画像による解析が多く利用されています。なかでも細胞の様子がわかりやすい蛍光顕微鏡が一般的で、その原理を紹介します。現在では蛍光顕微鏡だけではなく、カウンタなどの機能を付加した装置が多く利用されています。
蛍光顕微鏡は、サンプルから発せられる特定波長を持つ蛍光を利用して画像を取得します。
光源から発せられた強い光が試料に照射されると、試料の物質ごとに分子が励起され、光源の光とは別の波長を持つ蛍光が発せられます。特定の物質ごとに異なる波長を分析できるので、物質ごとのイメージングを重ねると、より細胞の状態がわかりやすい画像を取得することができます。
例としては、細胞の骨格やミトコンドリアを蛍光物質で染色し、生きた細胞の観察を行うと、分裂期などの変化をカラーでイメージングすることができ、大変見やすい像を得ることができます。
細胞解析のその他情報
細胞解析の方法
1. 顕微鏡/イメージング解析
可視光や近赤外といった幅広い波長を検出できる顕微鏡やカメラを利用することで、細胞の形態や変化をカラーで観察することができます。細胞を生きたまま観察したり、インキュベーター内で長時間観察できる機種もあります。
また、ソフトウェアを利用することで観察だけでなく細胞の画像からその数や形態を分析し、自動で定量化した数値として測定が可能な機種が増えています。
2. フローサイトメーター
主にレーザー光線を利用して、蛍光物質で標識された細胞を流体とともに流しながら、光線の反射や散乱により蛍光をとらえ、細胞の計数や特徴を測定する装置です。複数の種類の細胞が混ざっている場合にも、個別に計数できます。
フローサイトメーターは白血病や悪性リンパ腫の診断や、細胞集団のクラスターの解析などもおこなわれています。フローサイトメーターは細胞一つ一つの蛍光強度を高感度に分析できるものが多く信頼度が高いです。
3. セルアナライザー
フローサイトメーターのうち分析に特化した装置で、スライドに染色した細胞を置き、細胞の数をカウントできます。カウントしづらいとされる末梢血単核球や凝集細胞についても可能な機種もあります。基本的には試料の回収はできない機構です。
4. プレートリーダ
吸光、蛍光を測定することにより細胞の増殖や生存率を見ることができます。
5. 遺伝子導入装置/細胞融合装置
細胞に遺伝子を導入したり、細胞を融合することができます。植物における新しい品種の開発や、遺伝子治療の研究に利用されています。