スラスト玉軸受

スラスト玉軸受とは

スラスト玉軸受

スラスト玉軸受とは、回転軸の長さ方向と同方向の荷重である「アキシアル荷重」を受けながら、滑らかに回転させることができる軸受のことです。

アキシアル荷重を受け持つことに特化しているため、アキシアル荷重と直行方向に作用するラジアル荷重を負荷することはできません。なお、アキシアル荷重を「スラスト荷重」と表現することもありますが、どちらも同じ意味で使われています。

スラスト玉軸受の使用用途

スラスト玉軸受は、高いアキシアル荷重を支持できることから、家庭向け機械から工業用機械にまで、幅広く使用されます。

身近なところでは、冷蔵庫や掃除機プリンター周辺機などの家電製品、釣具リールなどに使われています。工業用機械ではCNC旋盤フライス盤マシニングセンタなどの工作機械の主軸に使われるケースも多いです。

CNC旋盤等で工作物の中心をドリル加工すると、主軸にはスラスト方向に高い荷重がかかります。加工による衝撃や荷重は加工精度にも影響を及ぼす可能性がありますが、スラスト玉軸受を組み付けることで、主軸の軸方向への変位を最小限に抑えられるようになります。

スラスト玉軸受の原理

スラスト玉軸受は大きく、3つの部品で構成されます。転動体と呼ばれる金属球、転動体同士が擦れるのを防ぐ保持器、軌道盤です。軌道盤は転動体が転がる溝が付いたワッシャ形の部品を指します。

高い荷重に耐えながら滑らかな回転をするために、転動体や軌道盤には熱処理された鉄系の合金鋼が使われます。中には、セラミックの転動体を使ったものもあります。

また、表面の粗さも小さくなるように仕上げられていることも特徴です。転動体同士の大きさの均一性等も非常に重要なポイントとなります。使用条件によっては、適切な潤滑油が必要となるケースもあります。潤滑油は摩擦抵抗を低減し、高荷重・高速回転で発熱を伴うような場合には、冷却する役割も担います。

スラスト玉軸受の種類

スラスト玉軸受は大きく、「単式スラスト玉軸受」と「複式スラスト玉軸受」の2種類に分けられます。

1. 単式スラスト玉軸受

転動体も1列で、その転動体を上下に挟む2つの軌道盤で構成されたタイプです。単式スラスト玉軸受は、1方向だけの荷重を支えます。

2. 複式スラスト玉軸受

転動体が2列あり、3枚の軌道盤で構成されたタイプです。複式スラスト玉軸受なら、両方向に対応できます。ただし、その分厚みが増すので、組み付けできるスペースを確保する必要があります。

3. その他のスラスト玉軸受

単式、複式どちらにも「調心座形」「調心座金付き」と呼ばれるタイプがあります。

調心座形
調心座形は軌道盤の取付け座が球面になっているタイプです。球面加工された相手部品に取り付けることで、軌道盤の位置が自動的に回転の中心軸の位置で保持されるようになります。回転軌道の位置ずれを抑制する効果があります。

調心座金付き
調心座金付きは、球面加工された軌道盤に組み合わさる調心座金が加えられたタイプです。スラスト玉軸受を取り付ける相手部品の取り付け面に、球面加工を施さなくても使用することができます。ただし、より多くのスペースを使うことになります。

スラスト玉軸受のその他情報

軸受を使う上での注意点

軸受を設置する際は、軸にどのように荷重がかかり、どのように支えるのが的確かをよく考えたうえで、用途や目的に合ったものを選ぶことが大切です。また、軌道盤やスラスト玉軸受の取付け面が、支える荷重に対して十分な剛性を確保していることも、軸受をトラブルの発生から防ぐ重要なポイントになります。

高荷重、高回転数の条件で使われる場合には、潤滑も注意するようにしましょう。潤滑油には摩擦抵抗を減らすだけでなく、発熱したスラスト玉軸受を冷却する効果もあります。

参考文献
https://koyo.jtekt.co.jp/products/type/thrust-ball-bearing/
https://www.nsk.com/jp/company/introduction/index.html

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