トロイダルコイル

トロイダルコイルとは

トロイダルコイル

トロイダルコイル (英: toroidal coil) とは、円環状の磁性体コアに電線を巻いて作られたコイルのことです。

円環という閉じた磁性回路を形成することで、通常のコイルとは異なる特性があります。円柱状に電線を巻いたコイルは、誘起される磁力線がコイル内を通り外部へ放射されることから、周囲の物質に影響を及ぼす可能性が出てきます。

トロイダルコイルは、磁力線が閉塞していることで、周囲への影響を最小限に抑えることが可能です。

トロイダルコイルの使用用途

トロイダルコイルは、漏れ磁束が少ない閉磁路構造の特性を活かす用途で使われます。電源回路内のチョークコイル、高周波回路内の高調波除去用やインダクタとコンデンサ構成によるフィルタなど、エレクトロニクス分野で幅広く活用されます。

例えば、携帯電話や無線LANなどでは、超高周波数帯域で回路近辺の環境の影響を受けるので、通常のインダクタは正常に作用しないことがあります。トロイダルコイルの採用により解決が可能です。

また、核融合装置や超電導磁石あるいは荷電粒子加速器用などの大型装置のコイルとしても使われます。電動機用のステータ側コイルなどにも利用されます。

トロイダルコイルの原理

電線を巻いたコイルは、電流が流れると電線と直角方向に磁束が発生します。トロイダルコイルは、ドーナツ状の円環コアに銅線を巻いたものです。コアが円環であるため、磁力線が内部にとどまり、外部へはほとんど出ません。多数回銅線を巻けば磁束が重なり合い、強力な磁界が得られます。

発生する磁束が外部に漏れにくいため、コイル効率が非常に優れ、磁束がほかの素子などに影響を与えにくい長所があります。トロイダルコイルに使用されるコアは、鉄系の鋼板が使われます。具体的には、FeSiケイ素鋼板鉄心、ナノ結晶合金鉄心、FeSi系合金鉄心、Fe(CO)5カーボニル鉄心などです。漏れ磁束が少なくインダクダンスが安定しています。

トロイダルコイルの特徴

トロイダルコイルは、ドーナツ状の磁性体に巻いたコイルに電流を流して発生した磁力線を閉じ込めることが可能で、コンパクト化、高磁性化を可能にし、外部への磁力線の漏れを防止します。

電気回路の基本となるのが、RLCという「R」の抵抗、「L」のインダクタンス (デバイスはインダクタ) 、そして「C」のコンダクタンス (デバイスはコンデンサ) の3つです。

トロイダルコイルは、空芯コイルより大きなインダクタンスを得られるインダクタで、流す電流の周波数が高くなるほど効果も大きくなることから、高調波の除去などに使うことができます。また、トロイダルコイルの磁性体にもう1つコイルを追加すれば、高周波トランスになります。

さらに、周波数と反比例して周波数が高くなるほど、電流を通りやすくなるコンデンサCと組み合わせることで、各種フィルタの構成が可能です。

トロイダルコイルのその他情報

トロイダルコイルの役割

1. 平滑化作用
トロイダルコイルは、銅線などに電流が流れようとすると、コイルは電流を流すまいとし、電流が減ると流し続けようとする性質を有します。これはレンツの法則と呼ばれ、ある閉じた回路を貫く磁束が時間的に変化するとき、その磁束の変化を妨げる方向に磁界を生じるような誘導起電力を生じる現象です。

この性質を利用して、トロイダルコイルは、交流から直流に変換する電源回路の平滑化や高周波のフィルタなどに使われます。

2. 相互誘導作用
相互誘導作用は、コイルを2個近づけると、一方の電力を他方のコイルに誘導することです。この原理を利用して、トロイダルコイルが電源トランスに使用されます。

電源トランスは、1次側のコイルの巻き数と2次側のコイルの巻き数の比により、出力電圧を変えます。2次側コイルに中間タップを設ければ、複数の電圧を得ることが可能です。

3. 電磁石作用
コイルの電磁石を利用するのが、回路の開閉を行うリレーです。また、発電機、電動機、ベル、ブザーなどにも応用されます。

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