トロイダルコイルとは
トロイダルコイル (英: toroidal coil) とは、円環状の磁性体コアに電線を巻いて作られたコイルです。
円環という閉じた磁性回路を形成することで、通常のコイルとは異なる特性があります。円柱状に電線を巻いた通常のコイルは、誘起される磁力線がコイル内を通り外部へ放射されることから、周囲の物質に影響を及ぼす可能性が出てきます。
トロイダルコイルは、内部の磁性体コアの影響で磁力線が閉塞していることで、周囲への影響を最小限に抑えることが可能です。
トロイダルコイルの使用用途
トロイダルコイルは、漏れ磁束が少ない閉磁路構造の特性を活かす用途で使われます。電源回路内のチョークコイル、高周波回路内の高調波除去用やインダクタとコンデンサ構成によるフィルタなど、エレクトロニクス分野で幅広く活用されます。中でも車載向けや電源装置の昇圧およびAC平滑用途向け、医療機器や産業用FA機器向けなどの使用用途が多いです。
また、核融合装置や超電導磁石あるいは荷電粒子加速器用などの大型装置のコイルとしても使われます。電動機用のステータ側コイルなどにも利用されます。
トロイダルコイルの種類
トロイダルコイルの種類ですが、コアの形状には様々な形があります。コイルの内部に使われるコア材料で代表的なものをあげます。
1. フェライトコア
マンガン系とニッケル系が代表的な材料のコアです。マンガン (Mn) 系は透磁率が高いですが、適用周波数は低いです。ニッケル (Ni) 系は逆にマンガン系と比較して透磁率は低いですが適用周波数は高いので、適用アプリケーションで所望の材料を選択します。
2. ダストコア
鉄系の材料のコアです。具体的には、FeSiケイ素鋼板鉄心、ナノ結晶合金鉄心、FeSi系合金鉄心、Fe(CO)5カーボニル鉄心などです。コストは低いですが、周波数特性はフェライトに劣ります。
3. アモルファスコア
商用のトランス用途で良く使われています。損失が少なく透磁率が高いという特徴を有しています。
トロイダルコイルの原理
電線を巻いたコイルは、電流が流れると電線と直角方向に磁束が発生します。トロイダルコイルは、ドーナツ状の円環コアに銅線を巻いたものです。コアが円環であるため、磁力線が内部にとどまり、外部へはほとんど出ません。多数回銅線を巻けば磁束が重なり合い、強力な磁界が得られます。
トロイダルコイルは、ドーナツ状の磁性体に巻いたコイルに電流を流して発生した磁力線を閉じ込めることが可能で、コンパクト化、高磁性化を可能にし、外部への磁力線の漏れを防止します。発生する磁束が外部に漏れにくいため、コイル効率が非常に優れ、磁束がほかの素子などに影響を与えにくい長所があります。電源チョークコイル向けのトロイダルコイルに使用されるコアは、鉄系の鋼板が良く使われます。漏れ磁束が少なくインダクダンスが安定しています。
トロイダルコイルは、空芯コイルより大きなインダクタンスを得られるインダクタで、流す電流の周波数が高くなるほど効果も大きくなることから、高調波の除去などに使うことができます。また、トロイダルコイルの磁性体にもう1つコイルを追加すれば、高周波トランスになります。
トロイダルコイルのその他情報
トロイダルコイルには、AC平滑や電源のチョークコイルの役割の他に、以下のような役割があります。
1. 相互誘導作用
相互誘導作用は、コイルを2個近づけると、一方の電力を他方のコイルに誘導することです。この原理を利用して、トロイダルコイルが電源トランスに使用されます。
電源トランスは、1次側のコイルの巻き数と2次側のコイルの巻き数の比により、出力電圧を変えます。2次側コイルに中間タップを設ければ、複数の電圧を得ることが可能です。
2. 電磁石作用
コイルの電磁石を利用するのが、回路の開閉を行うリレーです。また、発電機、電動機、ベル、ブザーなどにも応用されます。