ティンフリースチール

ティンフリースチールとは

ティンフリースチールとは、錫を使用しない表面処理鋼板のことです。

JIS (日本産業規格) G3315で規定された材料であり、電解クロム酸処理金属クロムクロム水和酸化物のめっきが形成された炭素鋼板す。めっきの形成により、一般的な鋼板より腐食に強くなっています。

ティンフリースチールは腐食しにくいだけでなく、錫めっき鋼板と比べて環境負荷が低く、リサイクルも容易です。錫めっき鋼板と比較して低価格であるため、飲料缶や電子部品など多くの用途で活用されています。

ティンフリースチールの使用用途

ティンフリースチールは耐食性や機械的強度に優れていることから、使用用途が多岐にわたっています。

1. 缶詰

食品や飲料用の缶詰は、主要用途の1つですティンフリースチールは耐食性が高く、長い間使用してもほとんど錆が発生しません。酸素や湿気などから食品を保護できるため、食品・飲料水の品質劣化を防げます。

2. 電子部品

薄いシート状にされたものが、パソコンケースや電子機器の筐体などで使用されています。腐食しにくい特性に加え、強度や加工性が良好であることが採用理由です。

3. 建築材料

屋根材、壁材、サイディング材、屋根排水管などの建築材料として使用されることもあります。適用される理由は、強度と耐久性、外観の美しさのためです。

4. 車両部品

ティンフリースチールは、自動車の外装パネルやドアなどの車両部品の材料としても使用されています。

5. 家庭用品

調理器具、食器、玩具、ゴミ箱、洗濯機、乾燥機などの家庭用品も用途の1つです。

ティンフリースチールの性質

ティンフリースチールは、以下に示す様々な性質を持っています。

1. 耐食性

ティンフリースチールは、化学的に安定なクロム水和酸化物層で表面が覆われており、耐食性が高いことが特長です表面のクロム水和酸化物層が、基材 (鉄) の腐食を防ぎます。

2. 塗料の密着性

塗料の密着性が高いことも、ティンフリースチールの性質です。クロム水和酸化物層は均一に形成されており、塗料均等に塗布できるため、密着性が向上します。化学的に安定な層であり、塗料との反応性が低いことも密着性が良好な理由です。

3. 機械的強度・加工性

ティンフリースチールは冷間圧延コイルで製造されており、金属組織が微細であるため強度が高く、加工性が良いです。容易に形状を変えられるので、自動車部品や建材など幅広い用途に使用されます。

4. 環境負荷が低い

ティンフリースチールは錫を使用しないため、鉛やカドミウムといった有害物質を含まず、環境負荷が低いことが特徴です。材質の主成分は鉄であり、鉄として再利用できます

5. 耐熱性

耐熱性が高いことも特長の1つです。表面に形成されるクロム水和酸化物層は、高温下でも化学的に安定です。耐熱性に優れていることから、オーブンやレンジなどの高温環境で使用される食品容器などにも使われています。

6. 耐摩耗性

クロム水和酸化物層は非常に硬く、耐摩耗性に優れていることが特長です。ティンフリースチールは摩耗により損傷・破損しにくい材料であるため、自動車部品や建材など摩擦や摩耗が激しい環境でも長期間使用できます。

7. 耐硫化黒変性

硫化黒変に対して良好な耐性を持つことも特長の1つです。硫化黒変とは、食品や飲料水などが加熱滅菌されたときに発生する硫黄と、食品缶の鉄が反応して硫化鉄ができ、変色する現象です。ティンフリースチールは、クロム水和酸化物層が硫黄と鉄との反応を防ぐ役割を果たし、硫化黒変から保護します。ただし、使用環境や条件によっては、硫化黒変が発生する可能性がありますので、適切なメンテナンスが必要です。

ティンフリースチールの構造

ティンフリースチールは、基材表面に金属クロム層を形成し、その上にクロム水和酸化物層が成膜された二層構造です。最表層のめっきが基材の腐食を防いでおり、金属クロム層は基材との密着性を高める効果があります。

ティンフリースチールのその他情報

色彩の種類

ティンフリースチールは、表面に電解着色処理を施すことで、様々な色彩を表現できるのが特徴です。

金属の色彩は、表面の酸化膜の厚みに応じて変化します。電解着色処理によって酸化膜の厚みを変えられるため、建築用材料や家電製品など、色彩の重要性が高い用途にも使用されています。

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