セライトとは
セライトとは、ケイソウ土を炭酸ナトリウムとともに焼成した多孔質固体です。
ケイソウ土の一種という位置づけであり、セライトという商標名で、ケイソウ土そのものとして販売されてている商品もあります。成分は主に酸化ケイ素で、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどを含みます。
セライトの使用用途
セライトの原料であるケイソウ土は、植物性プラントンの1つであるケイソウの化石です。植物プランクトンの化石には、微細な穴が開いており、セライトは、それを利用してろ過に使用します。
1. 工業的用途
果汁や医薬品・ゼラチン・排水・オイルなど、粘度が高いものでも、比較的安定に長時間のろ過が可能です。工業的には、ろ過速度を維持するために、セライト水に混濁させて、ろ紙の間に約2mm厚でプレコートして使用する方法が多く用いられています。
2. 実験室的用途
実験室でも、ろ紙では目詰まりがひどい検体のろ過に用いられます。また、物質によってろ過される速度が違うので、実験室的には液体クロマトグラフィーのカラムや薄層クロマトグラフの薄層成分、カラムクロマトグラフィーの担体にも使われます。
セライトの特徴
セライトの原料となるけいそう土は、数万年~数千万年前に地球上に繁殖していたけいそうと呼ばれる藻 (植物プランクトン) の化石です。ケイソウは現在も世界中の海や川や湖に生育しています。
海藻とおなじく一般に藻類の仲間です。特に細胞の周りにガラス質の殻をもつものを、ケイソウと呼びます。ケイソウは、地球上いたるところに生育する単細胞の光合成生物です。数十マイクロメートルの大きさで、水中のシリカを取り込んで、内部と外部に通じる0.1~1.0μmの無数の細孔を作ります。
そして、ケイソウが大量に死滅、沈積し、化石となると、シリカ質の遺骸のみを残してケイソウ土となるのです。このケイソウに炭酸ナトリウムを加え焼成すると、セライトとなります。
セライトの種類
セライトは、ろ過性能によっていくつかの種類に分かれます。一般的にケイソウ土といわれるグレードの製品も、セライトという名称で発売されており、ろ過がスムーズな液に使用されています。
ろ過の難しい液やゲル、コロイドに使用されるグレードは、国内では503と535、545です。一般的には535と545が多用されています。
1. セライト No. 503
- 粒径:12~20マイクロメートル
- 流速比:約900
- 150メッシュの残留率:9%
- 用途:比較的ろ過しずらい液に使用
2. セライト No. 535
- 粒径:20~30マイクロメートル
- 流速比:約1,350
- 150メッシュの残留率:9%
- 用途:比較的ろ過しずらいビール・果汁・寒天・抗生物質・酵素・ポリマー・アルギン酸・粗糖・アルカリ液・動物油・グリセリン・糖液・水処理水などに使用
3. セライト No. 545
- 粒径:25~40マイクロメートル
- 流速比:約2,160
- 150メッシュの残留率:12%
- 用途:ニカワ・ペクチン・鉱物油・寒天・松ヤニ・ラテックス・タール、触媒など粘度が高く、異物の特に多い原液に使用
セライトのその他情報
1. セライトの法的規制
セライトは、労働安全衛生法では、名称等を表示すべき危険有害物に指定されています。 (※安衛法57条・有害物表示対象物質 労57-2)
また、CASNoはケイソウ土として68855-54-9が付加されています。
2. セライトろ過の原理
ろ過は、小さな穴の開いたろ剤を通して異物を取り除く作業です。ろ紙の場合、セルロースに物質が吸着しやすく、引っかかって、次第に詰まってしまいます。セライトの主成分である二酸化ケイ素は、物質を吸着しにくい性質を持っています。
セライトをろ紙の上に敷き詰めると、ろ紙に物質が吸着して詰まるを防ぎ、ろ紙を詰まらせる原因になる微細な粒子は、セライトが捕捉してくれるので、スムーズなろ過ができ、時間が節約できます。また、セライトを使っている場合、表面を削れば再度ろ過スピードを上げることが可能です。