シラン

シランとは

シランは、ケイ素の水素化物で、特異な臭気を有する無色の気体です。

化学式SiH4で表される無機化合物で、分子量は32.12です。ケイ素 (Si) の数が1つの場合の水素化物をシラン (別名: モノシラン) と言い、ケイ素の数が2つの場合の水素化物をジシラン、ケイ素の数が3つの場合の水素化物をトリシランと言います。

シランの使用用途

シランは、半導体シリコンの原料であり、工業用材料として重要なものです。420 ℃以上でシランがケイ素 (Si) と水素 (H) へ分解するため、シリコンの化学蒸着に使うことができます。

シランの4つの水素が、アルコキシ基とアルキル基に置き換わった化合物 (例えば(CH3O)3SiCH3) は、主に無機フィラーなどの表面処理による分散、流動性改良などに使用されます。また、ヘキサメチルジシラザン ((CH3)3SiNHSi(CH3)3) は無機材の表面処理による有機樹脂へのなじみ改良などに用いられます。

また、ジメチルクロロシラン ((CH3)2SiHCl) は、シリル化剤やシランカップリング剤などの原料となります。これらは、有機質材料と無機質材料とを結びつける重要な役割を果たしており、医薬品合成や合成樹脂、接着剤、ガラス繊維など、様々な用途で利用されています。

さらに、ジメチルクロロシランの加水分解・重合を行えば、シリコーンオイルが得られます。シリコーンは、シロキサン結合 (ケイ素と酸素が交互に結合してポリマーが形成された状態) に有機基が付いたオルガノポリシロキサンをベースとした材料の総称です。

シリコーンポリマーは、シロキサン結合が主骨格であるため耐熱性や耐候性、化学的安定性などに優れています。有機基 (主にメチル基CH3) を有することから、撥水性や離型性といった独特の界面特性も備えています。

ケイ素系高分子化合物ポリシラン (主鎖がSi-Si結合で構成され、側鎖としてメチル基やフェニル基などの有機置換基を有する物質) は、有機感光体材料や有機EL、有機薄膜太陽電池などの光電子材料として知られています。ポリシランの一種であるポリジメチルシランは、炭化ケイ素繊維の原料として利用されています。

シランの性質

空気中の酸素により、速やかに酸化されて水 (H2O) と二酸化ケイ素 (SiO2) に分解します。また、水と徐々に反応するため、取り扱いには注意が必要です。融点は-185 ℃、沸点は-112 ℃で、エーテルやベンゼンクロロホルムエタノールには不溶です。

シランのその他情報

1. シランの製造法

金属ケイ素 (Si) と塩酸 (HCl) との反応で主に生成するトリクロロシラン (SiHCl3) を、触媒を用いた不均化反応によって、ジクロロシラン (SiH2Cl2) 、テトラクロロシラン (SiCl4) 、モノクロロシラン (SiH3Cl) 、シランの混合物を得ます。その後、蒸留によって精製分離することでシランが製造されます。

その他シランの工業的製造法としては、クロロシランやテトラエトキシシラン ((CH3CH2O)4Si) を還元する方法、ケイ化マグネシウム (Mg2Si) とアンモニウム塩とを反応させる方法、トリアルコキシシラン (RO3SiH) を不均化する方法などが知られています。

2. シランの取り扱い・保管

シランは、極めて可燃性・引火性の高いガスで、空気に触れると自然発火することがあります。また、加熱や燃焼によって分解し、シリコン、水素を生じ、火災や爆発の危険をもたらします。そのため、熱や火花のような着火源、酸化剤や酸素、爆発物、ハロゲン、圧縮空気、酸・塩基などから話して保管することが大切です。

容器は密閉し、直射日光や火気を避け、40℃以下の温度で換気の良い場所で施錠して保管します。また、皮膚刺激、強い眼刺激、呼吸器への刺激のおそれがあるため、取り扱いの際は適切な保護手袋、保護眼鏡、保護面を着用し、換気の良い区域でのみ使用する必要があります。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0806.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です