ピストンポンプとは
ピストンポンプ (英: piston pump) とは、ピストンの往復運動により液体や気体を供給・移送するポンプです。
円筒状のピストンが、ポンプ筐体内のシリンダ内部で直線往復運動するときに生じる容積変化を利用して、液体や気体を移動させます。ピストンと2つの弁の組み合わせによる最も単純な構造のピストンポンプは、古くから井戸などに利用されています。高い吐出圧を持つ特性を活かし、工業分野でも広く普及しています。
ピストンポンプは、容積式ポンプの一つです。容積式ポンプには、歯車式・ベーン式・スクリュー式・スクロール式・プランジャ式・ダイアフラム式などがあります。
ピストンポンプの使用用途
構造が比較的単純で取り扱いも容易なピストンポンプは、古くから手動井戸用ポンプや灯油ポンプとして日常生活で身近に利用されています。その他、具体的な使用用途は以下の通りです。
- 工業的生産ラインにおける排水システム・粘度の高い液体の移送システム・上下水道ライン・高圧ガスライン等
- 食品油・食品材料・化粧品・薬液・試薬・電解液・シャンプー・リンス・添加剤・香料等の移送や定量充填
- 油圧ポンプとして建設車両・鉄鋼・造船・工作機械・産業機械等
- 下水脱水ケーキ・異物を含んだ下水脱水スラッジ・石炭スラリー等の搬送
ピストンポンプの原理
基本的な作動原理はどのポンプでも共通で、吸入と吐出を繰り返すことで液体や気体を移送します。ピストンポンプは、吸入口と吐出口には弁を設け、逆流を防止し、圧力をかけることができます。
ピストンポンプの容量を決める要素は、ピストン径・ストローク・ピストン数の3つです。流量は回転数で決定されます。そして、ポンプの特性は、横軸に流量、縦軸に圧力を表したチャートで示します。液体用途のピストンポンプの特性は、流量に対する圧力の変化が非常に小さいのが特徴です。
ピストンポンプのうち、アキシャル形やラジアル形では、容量を連続的に変化させることができます。必要容量が変化しても、回転数を変えずに容量が変えられるため、制御が容易で省エネにもなります。
ピストンポンプの特徴
1. 高い圧力に対応可能
ピストンポンプは、他の形式のポンプに比べ耐圧が高く、50MPaクラスまで対応できます。ポンプ効率も高い特徴があります。
2. 可変容量形への展開
アキシャル形やラジアル形のピストンポンプは、可変容量形への展開が比較的容易です。
3. モーターとしての利用
アキシャル形やラジアル形は、ポンプとモータとは基本的に同一設計であり、モーターとしても使用できます。そして、ポンプとモータとを接続して動力伝達ができます。
ピストンポンプの種類
ピストンポンプは、アキシャル形・ラジアル形・レシプロ形の3種類に大きく分類されます。
1. アキシャル形
複数のピストンを駆動軸に近い方向に配置しているもので、ピストンが往復運動する方法により、斜軸形と斜板形の2種類に分けられます。また、同じ構造でモータにもなるので、容積式ポンプの中で最も多く使われています。
アキシャルピストンポンプは、斜軸や斜板の角度を変えることにより、ピストンによる押しのけ容積を変えて、可変容量形にすることが可能です。ゼロから最大容積まで連続的に変化できます。
2. ラジアル形
複数のピストンを駆動軸に対し、ラジアル方向に環状配置して、偏心カムリングやカムによりピストンを往復運動させる方式です。偏心したカムリングを使った偏心ラジアルポンプは、ピストンとシリンダブロック全体が回転することにより、ピストンが往復運動します。モーターとしても使用できます。
偏心ラジアルポンプは、カムリングの偏心量を変えることにより、可変容量形になり、応答性も優れています。
3. レシプロ形
レシプロ形は、クランク軸やカムを駆動して、ピストンを往復運動させる方式です。単動単ピストン・複動単ピストン・並列複数ピストンなどの種類があります。吸入口・吐出口に弁があり、モーターの用途には不向きです。構造的に大きさ・重量が大きくなりますが、他方式に比べ、比較的高圧に対応できます。
参考文献
https://www.apiste.co.jp/column/detail/id=4599
https://xn--zck0cra1cf9c3c.jp/knowledge/detail08/
https://monozukuri.sqcd-aid.com/