耐摩耗コーティングとは
耐摩耗コーティングとは、材料表面の摩耗を防ぎ、寿命を延ばすための表面処理サービスです。
具体的には、基材の表面に硬質皮膜を形成し、摩擦や摩耗による損傷を抑制する技術の総称です。機械部品や工具は、稼働中に接触や摺動を繰り返すため、摩耗による寸法変化や破損が課題となります。そこで、物理蒸着法 (PVD) や化学蒸着法 (CVD) 、溶射技術を用いて、ダイヤモンドライクカーボン (DLC) やセラミックスなどの高硬度材料を被覆し、表面硬度を向上させます。
こうした処理により部品の耐久性が高まり、メンテナンス頻度の低減や製品寿命の延長が実現します。また、潤滑性に優れた被膜は摩擦係数を低減し省エネルギーにも寄与するため、幅広い産業分野で不可欠な基盤技術として確立されています。
耐摩耗コーティングの用途
耐摩耗コーティングの主な用途を以下に示します。
1. 自動車産業分野
自動車エンジンのピストンリングやカムシャフト、燃料噴射装置などの重要保安部品には、高い信頼性と耐久性が求められます。
そのため、DLCコーティングなどの低摩擦かつ高硬度な表面処理が施され、金属接触による凝着摩耗を防ぎつつ摩擦抵抗を減少させています。摩擦損失の低減は燃費向上やCO₂排出量の削減につながるため、トランスミッションのギアやベアリングといった駆動系部品への適用範囲も拡大しています。
2. 工作機械・金型分野
切削工具やドリル、エンドミルなどの工具類は、被削材との激しい摩擦と高熱により刃先が摩耗しやすいため、窒化チタンや窒化チタンアルミなどのPVDコーティングが不可欠です。
この硬質皮膜により工具寿命が数倍に延びるだけでなく、難削材の高速加工や潤滑油を使用しないドライ加工が可能となり、生産効率が大幅に向上します。また、プレス金型やプラスチック射出成形金型においても、離型性 (型離れの良さ) の向上や摩耗防止を目的に広く採用されています。
3. エネルギー・航空宇宙分野
発電用ガスタービンや航空機エンジンのブレード部品は、高温ガス流中で高速回転する過酷な環境下で使用されます。
そのため、単なる硬さだけでなく、耐熱性や耐食性を兼ね備えたサーメット溶射や遮熱コーティング (TBC) などの高度な技術が施されます。これにより、高温酸化や微粒子によるエロージョン摩耗を効果的に防ぎ、インフラ設備の安定稼働とメンテナンス周期の延長を支えています。