チタン酸ストロンチウムとは
チタン酸ストロンチウムとは、ストロンチウムとチタンの複合酸化物です。
三酸化チタン (IV) ストロンチウムとも呼ばれています。チタン酸ストロンチウムは人造石ですが、同様の化学組成を有する天然鉱物にタウソン石があります。チタン酸ストロンチウムは、かつてはダイヤモンドの代用品として扱われていました。
モース硬度が6と、ダイヤモンド (モース硬度10) より低いものの、ブリリアンシー (輝き) がダイヤモンドの4.3倍であること、およびファイアー (スペクトルカラーに分散する光の外観) の良さが評価されていました。
チタン酸ストロンチウムの使用用途
1. 現在の主な用途
チタン酸ストロンチウムは、代表的なペロブスカイト構造をもつことから、強誘電体や超伝導体薄膜などの基板として広く利用されている素材です。応用研究においては、ジョセフソン素子用、SQUID (超電導量子干渉素子) 用基板として重要な位置を占めています。
また、優れた誘電特性や熱電特性を活かして、セラミックコンデンサの材料や、ニオブなどの添加物によりで容易に半導体化することから、バリスタ、センサ、熱電素子などにも利用されています。
2. 今後の用途
近年において、チタン酸ストロンチウムは、水素生成光触媒として注目されている素材の1つです。光照射下での高い安定性や光還元力の強さから、太陽光のみを利用した水素製造を可能にする光触媒として研究が行われています。
また、高品位なペロブスカイト型酸化物でありながら、金属的性質を持つ新基板として、これまでにない新しい応用の可能性があることから、盛んに開発が進められています。
チタン酸ストロンチウムの性質
1. 物理的性質
チタン酸ストロンチウムは、化学式SrTiO3で表わされる白色固体です。分子量は183.5、CAS番号は12060-59-2で登録されています。融点は約1,900℃、密度は5.1g/cm3で、可燃性、酸化性に関するデータはありません。
結晶系は立方晶、格子定数はa=0.3905nm、ベルヌーイ法で育成されます。誘電率は310 (27℃,1MHz) 、熱膨張係数は11.1×10-6/℃ (室温~1,000℃) です。相転移温度は110K、屈折率は2.407 (at 589 nm) です。
2. 化学的性質
水およびほとんどの溶剤に不溶で、室温密閉の状態では安定です。混触危険物質には強酸化剤、強酸類が指定されているため、使用時は接触を避ける必要があります。
室温では,無色のペロブスカイト型構造の立方晶系結晶ですが、110K以下では正方晶系です。高温に熱すると酸素の一部を失い、黒変し電気導伝性を帯び、低温で圧電性を示します。
不燃性であり、消防法において非危険物です。火災時は、消火方法に制約がないため、他の危険物の消火方法に従って消火を行います。
チタン酸ストロンチウムのその他情報
1. 安全性
非危険物であり、人体への影響は確認されていませんが、作業者に曝露しないよう適切な身体保護具を着用する必要があります。皮膚や眼に付着した場合は、直ちに流水で洗浄し、痛みが続く場合は医師の手当が必要です。
作業時は、局所排気装置が設置されている場所、もしくは換気の良い場所で作業を行い、物質に直接触れたり、蒸気、粉塵を吸引しないよう対策を行います。水性環境有害性や、魚毒性、蓄積性、土壌への影響は現在のところ確認されていません。廃棄時は専門の業者での処理が必要です。
2. バンドギャップ
バンドギャップとは、結晶のバンド構造において電子が存在できない領域 (禁制帯) のことを指します。バンドギャップが無い導体の代表は、鉄、銅、銀、金、アルミニウムなど金属系の物質です。
チタン酸ストロンチウムは、3.2eVのバンドギャップを持つ間接遷移型の絶縁体です。室温の場合、紫外線で励起しても蛍光を示しませんが、低温で励起すると電子、正孔が自己束縛状態を形成し、その結合によって500nmで発光します。