チタン酸カリウムとは
チタン酸カリウムとは、化学式K2O · nTiO2で示される合成無機化合物です。
nは1から12の整数であり、例えばnが6の場合は、K2O · 6TiO2となり「6チタン酸カリウム」と呼ばれます。
チタン酸カリウムの製造方法は、K2MoO4またはK2WO4をフラックスとして用いて合成するフラックス法や、混合原料 (TiO2、K2CO3、K2MoO4) を1,200~1,500℃で溶融、冷却し結晶化させる溶融法などがあります。
チタン酸カリウムの使用用途
チタン酸カリウムは主に、耐熱性、断熱性、耐薬品性に優れている6チタン酸カリウム、8チタン酸カリウムが、工業用途として利用されています。
主な用途は、石綿の代替原料、ブレーキパッドやクラッチなどの摩擦材、エンジニアプラスティックの補強剤、フィルター、コーティング材、耐候性塗料、耐火断熱材、多層基板です。
また、造形性、精度、強度および剛性が求められている3Dプリンター用のフィラメント (成形樹脂) にも配合されています。
チタン酸カリウムの性質
4チタン酸カリウムは、化学式K2O · 4TiO2、もしくはK2Ti4O9と表わされる白色の固体です。分子量は413.7、CAS番号は12056-49-4です。
融点、沸点、可燃性のデータはありません。容器内部を乾燥雰囲気にして密封し、室温で保存すると化学的に安定です。
混触危険物質は現在のところ知見はありませんが、水との接触を避けます。なお、n数の違いにより、性質が変化するため、使用時は購入した製品のSDSを確認することが大切です。
チタン酸カリウムのその他情報
1. 安全性
皮膚腐食性および刺激性があり、眼に対する刺激性が強いです。また、特定標的臓器として全身毒性の恐れ、単回曝露では呼吸器系への刺激の恐れがあることから、使用時は十分な注意が必要です。
現在のところ、水性環境急性、慢性有害性や、魚毒性は確認されていませんが、廃棄時は専門の業者に委託し処分を行います。消防法では非危険物であり、毒物および劇物には指定されていません。
また、不燃物であることから、火災時は消火に関する制約がほとんどありません。消火時は、他の危険物の消火条件に従って消火を行います。
2. 取り扱い方法
作業時は、作業者が物質の蒸気や粉塵を吸引しないよう、局所排気装置が設置されている作業場、もしくは換気の良い場所で作業を行います。
作業者は、適切な呼吸用保護具、防塵マスク、 保護眼鏡、保護面 (防災面) 、保護手袋、また作業内容に応じて、保護服、長靴、前掛け、アームカバーの着用が必要です。
3. チタン酸カリウム繊維
チタン酸カリウム繊維は、高強度、高剛性、高アスペクト比といった特長があり、プラスチックス等の補強材、自動車用ブレーキの摩擦調整剤、精密フィルターなど、幅広い用途で使用されています。
6チタン酸カリウムは、特に断熱性、耐熱性、耐薬品性に優れていることから、断熱材、耐熱材、断熱塗料の他、熱可塑性樹脂、プラスチック発泡体、セメント補強材などに利用可能です。
また、チタン酸カリウム繊維の誘導体である結晶質チタン酸繊維は、イオン吸着材としての特性を持ち、工業用排水処理材、高レベル放射性廃液処理材、触媒、担体、フィルターへの利用が期待されています。
4. チタン酸カリウム繊維の構造
チタン酸カリウムの中で、現在まで実際に合成、構造解析がなされているものは、nが、1、2、4、6、8です。n=2、4は、層状構造を示し、n=6、8はトンネル構造を示します。
層状構造、トンネル構造どちらも繊維状で合成されますが、構造の違いにより化学的および物理的性質は大きく異なります。層状構造を有する繊維は化学的に活性で、カリウムイオンが強い交換性を持つため、種々の誘導体を合成可能です。トンネル構造を有する繊維は、断熱性、耐熱性、体化学性に優れていることが特徴です。