タングステン酸ナトリウムとは
タングステン酸ナトリウム (英: Sodium tungstate) とは、組成式 Na2WO4で表されるナトリウムのタングステン酸塩です。
水和物として用いられることも多い物質ですが、無水物のCAS登録番号は 13472-45-2です。タングステン酸二ナトリウムと呼ばれることもあります。
タングステン酸ナトリウムの使用用途
タングステン酸ナトリウムは、タングステン鉱石からタングステンを抽出する場合の重要な中間生成物という位置づけです。主な用途は、塩基性染料媒染剤、金属表面処理剤、窯業用副原料、触媒などです。
また、組織細胞化学において、染色剤/電子染色剤として用いられます。電子密度の高い重金属は、検体組織を構成する元素に比して電子顕微鏡で観察する際のコントラストに優れます。この原理により電子顕微鏡用染色剤として用いられる物質です。
それ以外では、微生物実験で培地の作成する場合に微生物の飼育に必要なタングステン分を補うサプリメントとして使用されます。タングステン酸ナトリウムは、血糖値降下作用も有しているとされています。
タングステン酸ナトリウムの性質
図1. タングステン酸ナトリウムの基本情報
タングステン酸ナトリウムは、分子量293.836、融点698℃で、常温においては白色の固体です。水に溶けやすい物質であり、水への溶解度は、57.5g/100 mL (0℃) です。
水溶液はアルカリ性を示します。また、クロム酸塩よりもはるかに弱い、弱い酸化剤として作用します。
タングステン酸ナトリウムの種類
タングステン酸ナトリウムは、研究開発用試薬製品や工業用触媒原料などとして一般に販売されています。無水物が販売されていることはほとんど無く、水和物や水溶液がメインです。
1. 研究開発用試薬製品
研究開発用試薬製品は、タングステン酸ナトリウム・二水和物の形で主に販売されています。容量の種類は25g、100g、500gなどであり、通常、室温で取り扱い可能な試薬製品です。
それ以外では、二水和物にして9.3%程度の濃度の水溶液の状態で販売されていることもあります。
2. 工業用製品
工業用としては、主に触媒原料などの用途で販売されています。二水和物が販売されることが多く、主な用途は塩基性染料媒染剤、金属表面処理剤、窯業用副原料などです。
タングステン酸ナトリウムのその他情報
1. タングステン酸ナトリウムの製造
図2. タングステン酸ナトリウムの合成
タングステン酸ナトリウムは、工業的には鉄マンガン重石などの鉱石を水酸化ナトリウムあるいは炭酸ナトリウムと共に融解させ、水酸化ナトリウム水溶液で抽出することで粗製品が製造されています。
それ以外の製造・合成方法としては、酸化タングステンと水酸化ナトリウム、または炭酸ナトリウムとの混合物を加熱融解する反応があります。あるいは、炭酸ナトリウム水溶液に酸化タングステンを加えて溶かした後、溶液の濃縮により得ることも可能です。
2. タングステン酸ナトリウムの水和物
図3. タングステン酸ナトリウム二水和物の基本情報
また、タングステン酸ナトリウムは水に溶けやすく、水溶液はアルカリ性を示します。水溶液から6℃以下では十水和物が、6℃以上では二水和物が析出します。
タングステン酸ナトリウム二水和物は、化学式Na2WO4·2H2Oで表され、分子量329.85の物質です。100℃で結晶水が除去され、698℃で融解します。常温での外観は白色結晶です。CAS登録番号は10213-10-2 です。
3. タングステン酸ナトリウムの化学反応
タングステン酸ナトリウムは、塩酸と反応すると三酸化タングステンやその水和物を生成することが知られています。三酸化タングステンは酸化タングステン(VI) とも呼ばれ、分子式WO3で表される物質です。三酸化タングステンも、工業的に広く使用されています。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/13472-45-2.html