ジメチルスルホンとは
ジメチルスルホンとは、スルホンにメチル基が2つ結合した有機硫黄化合物です。
メチルスルホニルメタン (MSM) とも呼ばれています。融点108〜111℃、沸点238℃で常温において白色の固体です。水、アセトン、エタノールに溶けやすい性質があります。
ジメチルスルホンは天然の硫黄化合物であり、牛乳や野菜、果物など様々な食品に含まれています。また、人間の関節部の軟骨や筋肉、皮膚、髪、爪などにも存在しています。鎮痛作用や抗炎症作用などがあると知られています。
ジメチルスルホンの使用用途
ジメチルスルホンは、たんぱく質、コラーゲン、ケラチンなどの生成に関与していると考えられており、コラーゲンを健康に保つ効果、関節痛や腰痛などの痛みや炎症を鎮める効果があると注目を集めています。しかしながら、その有効性や安全については十分に検討されていません。また、関節炎に対する効果についても、動物レベルでは検討されているもののヒトにおける有効性については報告がありません。
ジメチルスルホンは、化粧品、ローション、美容液、保湿クリーム、サプリメントなどに添加されています。
ジメチルスルホンの性質
ジメチルスルホンは常温では無色の液体で、吸湿性があります。ジメチルスルホンは極性が大きいため水に溶けやすく150g/L(20℃) 、メチル基を持つため、メタノール、アセトンなどの有機溶媒にも溶けます。化学的には安定で、高温でも分解されにくいという性質があります。
ジメチルスルホンは構成元素として硫黄を含みますが、硫化水素のような特有の臭いはなく無臭です。また、味は苦みがあります。
ジメチルスルホンの構造
ジメチルスルホンは、硫黄と酸素の間に2つの二重結合があるスルホニル基に2つのメチル基が結合した構造をしています。スルホニル基の酸素は硫黄よりも電気陰性度が高いため、ジメチルスルホンは全体として極性を持ちます。この極性は、分子間相互作用や溶媒中での溶解性に影響を与えます。
図1. ジメチルスルホンの構造式
ジメチルスルホンのその他情報
1. ジメチルスルホンの効果
関節炎
ジメチルスルホンは関節の組織の破壊を抑制する効果があるといわれています。また、関節炎はリウマチの痛みを緩和する作用があるとされています。40歳から76歳までの50人の膝の変形性関節症患者を対象にした試験で、12週間にわたって1日あたり3グラムを2回摂取させたところ、痛みの指標が改善されたと報告されています。
季節性アレルギー鼻炎
ジメチルスルホンは、花粉症に伴うアレルギー性鼻炎の症状を緩和する効果があるという研究結果があります。ある試験では、50人の患者を対象にジメチルスルホンを1日2,600mg、30日間投与したところ、呼吸器系の症状の改善が報告されています。また、この試験によると、ジメチルスルホンはアレルギーを引き起こすヒスタミンやIgEの濃度には影響を与えなかったとされています。
間質性膀胱炎
間質性膀胱炎は、膀胱の粘膜に慢性的な炎症を引き起こす疾患で、頻尿や尿意の圧迫感などが主な症状です。この病気は、日本ではあまり知られていませんが、アメリカでは多くの患者が存在しており、そのほとんどが女性です。ジメチルスルホンの投与により、間質性膀胱炎の症状が改善されることが報告されています。
2. ジメチルスルホンの製造
ジメチルスルホンは、工業的にはジメチルスルホキシド (DMSO) と過酸化水素水を反応させ酸化させることで生産します。反応後の生成物には水や不純物が残っていますが、蒸留法を用い沸点の違いを利用して、ジメチルスルホンのみを分離します。次に、気化したジメチルスルホンを冷却して、噴霧乾燥することによって、粉末状の結晶にします。
図2. ジメチルスルホンの製造
3. ジメチルスルホンの安全性情報
ジメチルスルホンは一般的に安全であるとされており、適切な摂取量を守ることで副作用のリスクを最小限に抑えることができます。しかし、妊婦や授乳婦、局所使用に関しては情報が不十分であるため、使用には注意が必要です。また、米国輸入品については、摂取量が高く表示されている場合があるため、留意が必要です。