バイメタル式温度計

バイメタル式温度計とはバイメタル式温度計

バイメタル式温度計 (英: Bimetal thermometer) とは、バイメタルの特性を利用して温度を測定する計測器です。

バイメタルは、熱膨張率が異なる2種類の金属板を接着したもので、温度変化により湾曲する特性があります。湾曲する力を利用して、表示板の目盛りを指す針の軸を回し、測定温度を直読する機器です。

ガラス温度計と比べて、耐久性に優れていて、取り扱いも容易で安全性があります。構造が単純で保守点検も簡単であることから、家庭用から工業用まで幅広く用いられています。

バイメタル式温度計の使用用途

バイメタル式温度計は、壁掛け型や据え置き型の気温計として屋内で使用されます。主に目盛りが印刷された円形の表示板の針を動かすために、ぜんまい状のバイメタルを組み込んだものです。

その他、水温計・土壌温度計・調理用温度計などに利用されます。表示板の裏側にある突出した筒の中に、つる巻き状のバイメタルが組み込まれています。さらに、産業用途では、防水性・耐腐食性・耐薬品性・耐圧性等を付加しやすい特徴から、化学プラント等のライン温度管理に使用されています。

市販されているバイメタルの種類と仕様については、「JIS C 2530」に規定されています。

バイメタル式温度計の原理

バイメタルの一方は、鉄とニッケルの合金で、室温付近にて熱膨張率がほぼ0になる低熱膨張合金です。バイメタルの他方は、マンガンクロムなどを添加した熱膨張係数が非常に大きい合金です。バイメタルは、これらの2つの金属板を重ね合わせて、冷間圧延によって1枚の金属板として製造します。

長期間使用すると、熱により性質が変化する場合があることから、製造には高度な技術が必要です。バイメタルを加熱することによって、膨張係数の大きい合金側が延びるため、低熱膨張合金側を内側にして反り返ります。この時に生じる力を利用して、温度計の針を動かす機構を有するものがバイメタル式温度計です。

実際の構造は、バイメタルをつるばね状に巻いて、温度変化によるねじれにより指針を回転させるようになっています。低熱膨張合金は、英語でインバー (invar) と呼ばれ、商標登録されています。鉄を64%、ニッケルを36%、マンガンを微量含む合金です。その特徴は、温度が上昇しても、結晶全体としてほとんど熱膨張が起こらない低熱膨張性にあります。

バイメタル式温度計の取り付け方法

製品を落下させたり、過度な衝撃が加わったりすると、示度に狂いが生じてしまいます。そのため、以下の点に注意しながら取り付ける必要があります。

1. 振動

感温部が振動している状態が続くと、温度計の各部品が摩耗し、破損に繋がります。感温部の振動は、指針が小刻みに震える現象として観察されます。この場合は、放置せずに速やかに適切な対策を講じる必要があります。

2. 周囲温度

周囲の温度と、測定対象物の間に温度差がある場合、周囲の温度の影響で測定誤差が生じることがあります。使用設備を保温し、放熱や吸熱を抑制することで、改善できる場合があります。

3. 凍結環境

測定対象物の温度が氷点を下回る場合には、温度計の内部が凍結して、製品の破損に繋がることがあります。凍結環境下で製品を使用する場合には、専用の製品を取り付ける必要があります。稀に専用の製品で内部が凍結してしまうこともありますが、その場合は、シリコンオイル入りを使用するなど、特殊な仕様の製品を選択することで、解決できるケースも多いです。

バイメタル式温度計のその他情報

1. バイメタル式温度計の保護管

保護管が必要になるケースとして、以下が挙げられます。

  • 測定対象物が感温部を腐食させる可能性がある場合
  • 感温部に高い圧力がかかる場合
  • 測定対象物が流体である場合
  • 温度計を取り外すと測定対象物が漏れ出て支障がある場合

2. 保護管の材質

測定対象物に腐食の恐れがある場合には、保護管の材質は耐食性のあるものを選定します。また、感温部に圧力がかかる場合は、耐圧性のあるものを使います。

3. 保護管の種類

保護管の種類は、非鉄性保護管・ステンレス製溶接保護管・くりぬき保護管などがあります。感温部の長さなどを考慮して選定します。

参考文献
https://ktc-bimetal.co.jp/pdf/bimetal.pdf
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.107.065901

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