バニシングドリルとは
バニシングドリルとは、穴あけとバニシングを同時に行えるツールのことです。
バニシングは表面の研磨を意味し、高い面粗度が求められる穴加工に広く用いられています。似た性能を持つツールとしては、リーマ (またはバニシングリーマ) があります。
リーマは既に開けられた穴の面の仕上げを行うことができますが、バニシングドリルは先端角のついた「チゼル」と呼ばれる切れ刃を持ち、穴あけと同時に仕上げが可能です。一般的な穴あけ後の仕上げ作業には時間がかかり、表面に欠陥が残りやすいため、バニシングドリルによる同時加工は効率的かつ精密な仕上げを実現できます。
ただし、バニシングドリルを使用する際は、切れ刃の角度や回転速度を間違えると、穴あけ時に欠けたり、切れ刃が破損したりする可能性があります。また、バニシングドリルはリーマよりも負荷が高く、適切なクーリングを行わなければならない点にも注意が必要です。
バニシングドリルの使用用途
バニシングドリルは、穴あけ後の面仕上げが不要となるため、精度の高い穴あけ加工に適しています。例えば、自動車や航空機のエンジン部品の加工に広く使用され、金型加工においても、バニシングドリルによる穴あけ加工は欠かせないものです。
さらに、バニシングドリルは多段形状になっているものが多く、複数の穴径を持つワークの加工に適しています。また、樹脂やアルミニウム合金などの軟質材料の加工にも応用可能です。
穴あけとバニシングを同時に行えるため、加工時間の短縮や工具数の削減され、様々な製造現場で適用可能なツールです。バニシングドリルの刃は基本的にストレート状ですが、高速送りや深穴に対応するために、とぐろ状の刃が付いたものもあります。また、オイルホール付きのものや1mm以下の小径穴に対応できるものなど、用途に合わせて種類が豊富な点も特徴です。
バニシングドリルの原理
バニシングドリルは、バニッシュマージンと呼ばれるマージンによって切削面と穴壁面をスムーズに接続し、高精度な加工を実現する加工道具です。チゼルと逃げ溝があるため、剛性が低くなることが欠点ですが、それでもサイクルタイムを短縮し、下穴用のドリルが不要になるといった利点があります。そのため、生産性を重視するワークの加工に適したツールです。
また、バニシングドリルは、穴あけにリーマを使用する場合と比較して、短時間で正確な加工ができるという利点があります。穴あけの際に、バニシングドリルは先端が球形になっていおり、切削力が均一に分散され、加工面の仕上げも均一です。そのため、バニシングドリルはリーマよりも滑らかな表面仕上げが実現できます。
一般的に、深い穴にはリーマが使用されますが、バニシングドリルを使用する場合は、オイルホール対応のものを使用することが推奨されます。
バニシングドリルの種類
バニシングドリルの種類として、ストレート刃バニシングドリル、ゲージ刃バニシングドリル、多刃バニシングドリル、オイルホール付きバニシングドリルの4種類があります。
1. ストレート刃バニシングドリル
ストレート刃バニシングドリルは、刃先がストレートになっているタイプのドリルです。簡単な穴加工に使用されます。ストレートな形状であるため、直径が大きくなるほど加工精度が落ちてしまうという欠点があります。
2. ゲージ刃バニシングドリル
ゲージ刃バニシングドリルは、刃先が円錐形になっているタイプのドリルです。穴底をキレイに削ることができるため、穴の底面の加工に使用されます。また、ステップドリルと組み合わせて使用することで、穴径の加工範囲を広げることもできます。
3. 多刃バニシングドリル
多刃バニシングドリルは、複数の刃を持つタイプのドリルです。切りくずの除去性が良く、加工時間を短縮することができるため、大量生産に向いています。ただし、刃の数が多い分、刃先同士の間隔が狭くなり、刃先の強度が低下するというデメリットもあります。
4. オイルホール付きバニシングドリル
オイルホール付きバニシングドリルは、刃先の中心にクーラントのオイルを供給する穴が開いているタイプのドリルです。切りくずをクーラントの水圧で除去することができ、高速・大量生産に適しています。
参考文献
https://sakusakuec.com/shop/pg/1drill06/
http://www.btktool.co.jp/products/drill_jouken.html
https://saikenma.com/word/word-639/