クロロベンゼン

クロロベンゼンとは

クロロベンゼンの基本情報

図1. クロロベンゼンの基本情報

クロロベンゼンとは、ベンゼン環の1つの水素が塩素に置換した芳香族ハロゲン化物です。

かつてはクロロベンゾール (英: Chlorobenzol) と呼ばれ、今でもその名が使用される場合もあります。通常クロロベンゼンは、一置換体のモノクロロベンゼンのことを指します。

クロロベンゼンは無色の液体で、多くの有機化合物の原料中間体として、多種多様な用途で使用されています。主にジフェニルエーテルやクロロニトロベンゼンの原料に利用できます。消防法で第四類第二石油類に分類されている危険物です。

クロロベンゼンの使用用途

クロロベンゼンは、有機化合物、医薬中間体、染料中間体などの原料に使用されています。求電子置換反応での反応性がベンゼンより高いため、多くの化合物の原料として有用です。

クロロベンゼンは、かつて有機塩素系の殺虫剤であるDTT (ジクロロジフェニルトリクロロエタン) の原料として、大量に使用されていました。日本でもシラミなどに対する防疫として積極的に使われていましたが、現在ではDTTは環境汚染物質として使用禁止になっています。

クロロベンゼンの性質

クロロベンゼンの融点は−45.2°Cで、沸点は131°Cであり、引火点は-19°Cです。

半数致死量 (LD50) は2.9g/kgであり、低〜中程度の毒性を示します。クロロベンゼンを扱う労働者の8 時間加重平均で、75ppm (350mg/m3) に許容暴露限界 (英: Permissible exposure limit) が設定されています。

クロロベンゼンの構造

クロロベンゼンはハロゲン化アリール (英: Aryl halide) の一種です。分子量は112.56で、化学式はC6H5Clと表されます。20°Cでの密度は1.1066で、屈折率 (nD) は1.525です。

クロロベンゼンのその他情報

1. クロロベンゼンの合成法

クロロベンゼンの合成

図2. クロロベンゼンの合成

1851年に初めてクロロベンゼンは、五塩化リンとフェノールの反応によって合成されました。2014年には火星の岩石中に、クロロベンゼンが含まれていると報告されています。

現在では工業的に、鉄や塩化鉄を触媒として、塩素によるベンゼンの置換反応で合成されます。塩素の置換が進むと、ジクロロベンゼンが生じる場合もありますが、冷却して再結晶化によって容易に分離可能です。

実験室では、ザンドマイヤー反応 (英: Sandmeyer reaction) を用いて、アニリン (英: Aniline) から塩化ベンゼンジアゾニウム (英: Benzenediazonium chloride) を経由して合成できます。ザンドマイヤー反応とは、芳香族ジアゾニウムイオンから触媒に銅塩を使用して、ハロゲン化アリールを得る化学反応のことです。

2. クロロベンゼンの反応

クロロベンゼンの反応

図3. クロロベンゼンの反応

クロロベンゼンをニトロ化すると、2-ニトロクロロベンゼンと4-ニトロクロロベンゼンの混合物が生成します。これらのモノニトロクロロベンゼンを分離して、それぞれ塩化物の求核置換反応に使用可能です。例えば2-ニトロクロロベンゼンから、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、二硫化ナトリウム、アンモニアによって、2-ニトロフェノール、2-ニトロアニソール、ビス(2-ニトロフェニル)ジスルフィド、2-ニトロアニリンに変換されます。4-ニトロクロロベンゼンも同様に使用可能です。

フェノールの合成法の一つに、ベンゼンを塩素化して得られたクロロベンゼンを、水酸化ナトリウム水溶液とともに高温下で加熱する合成法があります。この反応では塩化ナトリウムが副生成物として生じます。ただし、フェノールの工業的製造法には、クメン法 (英: Cumene process) が使用される場合が多いです。

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