イソブタノール

イソブタノールとは

イソブタノール (IBA) とは、構造式 (CH3)2CHCH2OHで表される分岐鎖アルコールで、分子量が74.12の化学物質です。

常温で無色の透明液体です。イソブチルアルコールとも呼ばれ、マジックインキやマーカーに似た特有の臭気があります。水にほとんど溶解しませんが、ほとんどの有機溶媒には溶解します。

IUPAC命名法では「イソブタノール」は慣用名としても許容されていませんが、特許公報など産業分野では広く受け入れられています。イソブタノールの異性体には1-ブタノール、2-ブタノール、そしてtert-ブチルアルコールが存在します。

イソブタノールは、天然には、紅茶・緑茶等の茶葉の主成分であり、また、果物などの香気成分として食品に含まれています。

化学式 C4H10O
英語名 2-Methyl-1-propanol
分子量 74.12

イソブタノールの使用用途

イソブタノールの主な使用用途は、有機合成原料です。

イソブタノールの誘導体には、塗料樹脂、合成ゴム、石油添加剤、可塑剤等があり、重要なものが多いです。主にラッカーや塗料、食品工業の香料として使用される、酢酸イソブチルの出発原料となります。酢酸イソブチルは、高濃度では発酵したような刺激臭があるため、特定悪臭物質に指定されています。

他にも、アクリル酸イソブチル、フタル酸イソブチル (DIBP) 、メタクリル酸イソブチルなど、種々の化成品のエステル化合物の原料にもなります。これらのイソブチルエステルは、プラスチックやゴムの可塑剤やポリマーの相分離を予防する分散化剤などに使われます。

また、様々な有機物を溶解することから、化学反応の溶媒・塗料やインクの溶剤としても用いられます。イソブタノールの塗料の粘性を低下させる性質を利用して、白化と呼ばれる塗装面での油分の分離を防ぐ目的にも使用されます。カーボン付着を防止するプラグ洗浄剤としてガソリンに添加されたり、ワックスやクリーナーにも利用されています。

調整をせずに、そのまま燃料用ブレンドストックへ応用することもできます。高価なハイオクタン価ガソリンやエタノール、その他の燃料用酸素化合物への混合や代替も可能です。

さらには、香料原料、医薬品原料、分析用試薬としても利用されているほか、近年では、バイオ燃料の原料としても注目されています。持続可能な航空燃料 (SAF: Sustainable Aviation Fuel) と呼ばれるバイオ燃料は、従来のジェット燃料と比べて二酸化炭素排出量を最大98%削減できます。

イソブタノールの性質

第一級アルコールの一種であり、異性体の1-ブタノールに近い性質を示します。融点は-108℃、沸点は108℃、引火点は30℃、比重は0.8 g/mL (at 25℃) 、屈折率n20/D 1.40、常温で液体です。エーテルやアルコールなど多くの有機溶剤と混和します。水への溶解性は87 g/L (at 20℃) です。

イソブタノールのその他情報

1. イソブタノールの製造法

プロピレン (CH2CHCH3) のヒドロホルミル化で生成した、イソブチルアルデヒド ((CH3)2CHCHO) を還元することで得られます。炭水化物の発酵産物や工業的な化成品の分解物としても生産されています。

2. 法規情報

消防法に定める第4類: 引火性液体、第二石油類、非水溶性液体に該当します。

3. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密閉し、涼しく換気の良い場所に保管する。
  • 防爆型の機器、装置を使用する。
  • 熱や火花などの発火源から遠ざける。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 静電気放電による引火対策を行う。
  • ミストや蒸気を吸入しない。
  • 皮膚刺激、強い眼刺激があるため、使用時は保護手袋、保護眼鏡を着用する。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 被液した場合は、汚染された衣類を直ちに脱ぎ、皮膚を流水で洗う。
  • 眼に入った場合は、多量の水で数分間注意深く洗浄する。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0914.html

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