アリルアルコールとは
アリルアルコールとは、構造式CH2=CHCH2OHで表される、最も単純な構造の不飽和アルコールです。
別名として、2-プロペン-1-オール、プロペニルアルコール、3-ヒドロキシプロペンなどがあります。構造式上、最も分子量が小さい不飽和アルコールは、ビニルアルコール (CH2=CHOH) ですが、ビニルアルコールはより安定構造であるアセトアルデヒド (CH3COH) に異性化するため、実質状アリルアルコールが最も低分子の不飽和アルコールとなっています。
アリルアルコールの使用用途
アリルアルコールは、各種合成原料としてさまざまな分野で使用されています。化学分野では、エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテル、プロパンスルトンを合成をするための中間体として有用です。
また、ジアリルフタレート樹脂の原料、樹脂添加剤やグリセロール等のアリル化合物の原料として使用されています。その他、医薬品、香料、農薬、殺菌剤、難燃化剤などの原料としても使用されます。
アリルアルコールの性質
アリルアルコールは、分子量が58.08の無色透明な液体で、強い刺激臭があります。密度は0.854g/cm3、融点は-129℃、沸点は97℃、引火点は21℃、発火温度が443℃、屈折率は1.4134です。
水に極めて溶けやすく、エタノール、クロロホルム、エーテル等に可溶、引火しやすい性質があります。アリルアルコールの蒸気を吸入すると、主に眼や鼻への影響が強く、化管法の第一種指定化学物質、毒劇物取締法の毒物として指定されています。
また、引火性も高いため、消防法の危険物第4類第2石油類水溶に分類されており、取扱いと保管数量が制限されています。この他、労働安全衛生法の引火性危険物、名称等を表示・通知すべき危険物及び有害物に指定されています。
アリルアルコールのその他情報
1. アリルアルコールの製造方法
工業的には、プロピレンオキサイドの異性化、プロピレンを直接酸化する方法が行われています。合成方法としては他にもアリルクロライド法、アクロレイン法、プロピレンオキサイド法、酢酸アリル法など複数あります。
プロピレンオキサイドの異性化
CH2CH(CH3)O → CH2=CHCH2OH
酸化プロピレンを、硫酸カリウムアルミニウムの存在下で加熱することで、異性化してアリルアルコールが生成します
プロピレンの直接酸化
CH3CH=CH2 + CH3COOH + 1/2O2 → CH2= CHCH2OCOCH3 + H2O
CH2= CHCH2OCOCH3 + H2O → CH2=CHCH2OH + CH3COOH
プロピレン、酢酸、酸素が反応して、アリルアルコールが生成する反応です。この反応は、プロピレンからアリルアルコールを直接的に合成する方法の1つであり、反応条件の最適化によって、高収率でアリルアルコールを得ることができます。
酸触媒による酸化
プロピレンをリン酸や硫酸などの強酸の存在下で酸化させる方法で、アリルアルコールのほか、アリルアルデヒドやアリル酸が生成されます。後処理によってアリルアルコールを分離・精製する必要があります。
アリルクロライドの加水分解
CH2=CHCH2Cl + H2O → CH2=CHCH2OH + HCl
クロロアリルを加水分解させることで、アリルアルコールが得られます。
2. アリルアルコールの取扱時の注意事項
アリルアルコールは、強い刺激臭を持つため、取扱いには注意が必要です。また、強酸化剤と反応し、爆発的な反応を起こすことがあり、取り扱いには十分な安全対策が必須となります。
皮膚や粘膜に刺激を与えるため、取り扱う際は、ゴム手袋や保護メガネ、マスクなどの適切な防護具を着用します。さらに、アリルアルコールは水に良く溶けるため、取り扱う際は十分な換気が必要です。皮膚や粘膜に触れた場合は、すぐに流水で洗い流し、医師へ相談します。
また、揮発性が高く、可燃性があります。引火点が22℃と低いためため、火気や熱源から遠ざけての保管が重要です。腐食性や酸化性の物質からも離して保管することを推奨します。