ジエタノールアミンとは
図1. ジエタノールアミンの基本情報
ジエタノールアミンとは、二級アミンとジオールの有機化合物です。
よくDEAと表記されます。ジオラミン、2,2′-イミノジエタノール、イミノジエチルアルコールなどの別名もあります。
取り扱いの際には、注意が必要な物質です。皮膚への刺激性があり、重篤な眼の損傷を起こし、飲み込むと有害です。また、発がんや生殖能、あるいは胎児への悪影響を及ぼす恐れもあります。消防法により、「危険物第4類」「第三石油類」に指定されています。
ジエタノールアミンの使用用途
ジエタノールアミンは、化粧品やシャンプーの原料、洗剤や工業用洗浄剤、金属加工での潤滑油、塗料、農薬や殺虫剤、ガス吸収剤、金属腐食防止剤などに利用されています。ゴム、製紙、繊維の加工材料などにも、幅広く用いられています。
そのほか、ジエタノールアミンは、天然ガスから硫化水素と二酸化炭素を除去する目的で利用可能です。石油精製所では、酸性ガスから硫化水素を除去するために、一般的にジエタノールアミン水溶液を用います。
同じ腐食電位のモノエタノールアミンよりも、高い濃度で使用できるため、ジエタノールアミンの方が優れています。したがって、精製に必要なエネルギー使用量を抑えて、硫化水素を洗浄可能です。
ジエタノールアミンの性質
ジエタノールアミンの融点は28°C、沸点は217°Cであり、常温では無色またはうすい黄色の液体です。水溶性が高く、反応後には水洗で除去できます。一般的なアミンと同じく、ジエタノールアミンも弱塩基性を示します。
なお、ジオールとは、分子内にヒドロキシ基を2つ有する化合物のことです。化学式はC4H11NO2と表されます。モル質量は105.14 g/mol、密度は1.090g/cm3です。
ジエタノールアミンのその他情報
1. ジエタノールアミンの合成法
図2. ジエタノールアミンの合成
アンモニア水溶液と酸化エチレン (英: ethylene oxide) の反応によって、モノエタノールアミン (英: monoethanolamine) を製造可能です。反応条件によってはジエタノールアミンとトリエタノールアミン (英: triethanolamine) も合成できます。生成物の比率は、原料の化学量論比を制御すると変えられます。
アンモニア水と酸化エチレンの反応では、最初にモノエタノールアミンが生成します。モノエタノールアミンと酸化エチレンが反応すると、ジエタノールアミンを生成可能です。ジエタノールアミンがさらに酸化エチレンと反応すると、トリエタノールアミンが生じます。
2. ジエタノールアミンの反応
図3. ジエタノールアミンの反応
モルホリン (英: morpholine) の合成に、ジエタノールアミンは原料として使用されます。ジエタノールアミドは、ジエタノールアミンと脂肪酸から生成されます。
ジエタノールアミンと2-クロロ-4,5-ジフェニルオキサゾール (英: 2-chloro-4,5-diphenyloxazole) が反応すると、ジタゾール (英: Ditazole) を生成可能です。水を除去してジエタノールアミンとイソブチルアルデヒド (英: Isobutyraldehyde) を反応させると、オキサゾリジン (英: Oxazolidine) が得られます。
3. ジエタノールアミン誘導体の使用用途
ジエタノールアミンと脂肪酸から得られるジエタノールアミドは両親媒性です。ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド (英: Coconut Fatty Acid Diethanolamide) やラウリルアミドジエタノールアミン (英: Lauryldiethanolamine) などは、界面活性剤として使用可能です。クリーム状の触感や泡立ちを良くする材料として、シャンプーなどの石鹸類に一般的に利用されています。