ジエチル亜鉛

ジエチル亜鉛とは

ジエチル亜鉛 (英: Diethylzinc) とは、有機亜鉛化合物の1種であり、化学式(C2H5)2Znで表される有機化合物です。

常温での外観は無色の液体ですが、ヘキサン溶液などの状態で販売されていることも多くあります。空気に触れると自然に発火する性質を有しており、消防法において「第3類自然発火性物質及び禁水性物質」として定められいます。CAS登録番号は、557-20-0です。

ジエチル亜鉛の使用用途

ジエチル亜鉛は、空気に触れると自然発火する特性を活かし、ロケットの高エネルギー燃料および点火剤として利用されています。また、合成的には重要なアルキル化剤として利用される物質です。特に、1900年にグリニャール試薬が登場するまでは、求核剤として一般に用いられる有機金属化合物でした。

さらに、今日では透明酸化亜鉛膜用原料としても重視されており、タッチパネルなどの液晶表示素子、太陽電池に用いられています。

ジエチル亜鉛の性質

ジエチル亜鉛の基本情報

図1. ジエチル亜鉛の基本情報

ジエチル亜鉛は、分子量 123.50、融点-33.8℃、沸点117.6℃であり、常温での外観は無色透明の液体です。特異臭を有します。密度は1.205 g/mLです。水とは激しく反応し、 有機溶媒には芳香族炭化水素や脂肪族飽和炭化水素に任意の割合で溶解します。

ジエチル亜鉛の種類

ジエチル亜鉛は、工業用の有機金属化合物及び、研究開発用試薬製品として一般に販売されています。

1. 研究開発用試薬製品

研究開発用製品は主に1.0 M前後のn-ヘキサン溶液として販売されています。容量の種類は、100mL、800mL、2Lなどがあります。外観は無色透明の液体です。

2. 工業用薬品

工業用薬品として販売されている製品は、医薬品原体・中間体の合成反応に用いられたり、電子情報材料用原料などとして用いられたりしています。ガスとして販売されているものもあります。

ジエチル亜鉛のその他情報

1. ジエチル亜鉛の合成

ジエチル亜鉛の合成

図2. ジエチル亜鉛の合成

ジエチル亜鉛は、ヨウ化エチルと臭化エチルの1:1混合物と亜鉛–銅カップルの反応によって合成される化合物です。歴史的には、1848年のエドワード・フランクランドによる世界初の報告では亜鉛とヨウ化エチルから合成されています。

後に、この反応は、ジエチル水銀を出発物質とする改良法が報告されました。

2. ジエチル亜鉛の化学反応

シモンズスミス試薬の調製とアルケンのシクロプロパン化 (シモンズスミス反応)

図3. シモンズスミス試薬の調製とアルケンのシクロプロパン化反応

ジエチル亜鉛は、有機合成化学においてエチル基を導入する求核剤として用いられます。カルボニル基やイミンなどに対する付加反応が一般的です。

また、ジヨードメタンを作用させるとシモンズ・スミス試薬  (ICH2ZnI) を生成します。シモンズ・スミス試薬は、アルケンをシクロプロパン化する化学反応に用いられる活性種であり、この反応をシモンズスミス反応と呼びます。

3. ジエチル亜鉛の危険性

ジエチル亜鉛は、常温で自然発火性がある物質です。また、水やアルコール類との接触により爆発的に反応し、メタン等の可燃性炭化水素や金属の水素化物を生じます。人体への有害性では、皮膚への火傷、蒸気による粘膜や眼への刺激、肺水腫の恐れがあります。

これらの危険性から空気や水、アルコールとの混触を避け、不活性ガス中で取り扱うことが必要です。市販されているものは、ヘキサンやヘプタン、トルエンなどの溶液で販売されていることが多いです。

4. ジエチル亜鉛の法規制情報

ジエチル亜鉛には前述のような危険性があるため、各種法令による規制があります。消防法では、「危険物第3類 有機金属化合物 第1種 自然発火性物質および禁水性物質」に指定されており、労働安全衛生法では「施行令別表 第1危険物 (引火性 のもの) 」に指定されています。

法令を遵守して取り扱うこと、適切な保護具を使用して取り扱うことが必要です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/51/10/51_10_955/_pdf/-char/en

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