ドライフォグノズルとは
ドライフォグノズルとは、物体を濡らさない微細な霧を発生させる産業用の噴霧装置です。
具体的には、平均粒子径が10μm以下という極めて微細な液滴を生成する精密機器です。最大の特徴は、霧が物体に衝突しても破裂せずに弾かれるため、対象物を濡らすことなく加湿や冷却ができる点です。一般的に圧縮空気と液体を高速で衝突させる二流体構造を採用しており、中には超音波振動を併用して微粒化を促進する高度な製品も開発されています。
このように生成された微細な霧は空中で素早く気化するため、床や壁を濡らすリスクを最小限に抑えながら効率的に湿度を上昇させることができます。そのため、電子部品の製造現場や印刷工場など、水濡れが品質不良に直結する厳格な環境下での湿度管理において、ドライフォグノズルは不可欠な技術要素となっています。
ドライフォグノズルの使用用途
ドライフォグノズルの主な使用用途を以下に示します。
1. エレクトロニクス・製造分野
電子デバイス製造や実装工程 (SMT) では、静電気放電 (ESD) による製品破壊を防ぐため、厳密な湿度管理が不可欠です。
ドライフォグノズルは、精密機器や製品を濡らすことなく空間を加湿できるため、半導体工場や塗装ブースなどで標準的に採用されています。さらに印刷工場においては、紙の伸縮防止や静電気による紙詰まりトラブルの解消にも寄与しています。
2. 環境・リサイクル分野
廃棄物処理施設や製鉄所などの原料投入場所では、作業環境の悪化や粉塵爆発のリスクとなる浮遊粉塵の抑制が課題です。
ドライフォグは微細な水滴で粉塵粒子を捕捉し、重力によって沈降させます。この方式は散水スプリンクラーとは異なり、現場の床や機械設備を泥状に汚すことがないため、排水処理の負担を軽減しつつ、クリーンで安全な作業環境を維持できます。
3. 医療・食品衛生分野
食品工場や医療機関、介護施設などでは、空間除菌や消臭を目的とした薬液散布に活用されています。
ドライフォグ状に噴霧された除菌剤は、気体のように空間の隅々まで拡散するため、人の手が届かない隙間の除菌に適しています。こうした特性により、過度な濡れによる金属腐食やカビの再繁殖を防ぎながら、効率的かつ衛生的な環境管理を実現する手段として広く採用されています。